Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
2 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
Reviews
  • 宮下 光令, 佐藤 一樹, 森田 達也, 濱島 ちさと, 祖父江 友孝
    2007 年 2 巻 2 号 p. 401-415
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル フリー
    緩和ケアにおけるケアの質保証・評価は重要な課題である. 近年, 欧米を中心として, 既存のデータベースや診療記録から簡便に抽出可能な質の評価指標 (Quality Indicator; QI) の開発が行われている. 本稿では, 緩和ケアに関するQIの開発と実際の測定状況についてレビューを行う. 文献検索とハンドサーチによって文献を収集した. データベースから抽出するQIとして, がん登録・支払い請求・緩和ケアデータベースを用いた積極的治療, ホスピス・ICUの利用などの測定が行われていた. 診療記録から抽出するQIとしては, 地域高齢者を対象とした, 終末期ケアのQIの作成と実測が行われていた. その他のQIとしては, ICUのQI, ナーシングホームのQIなどの提案と, 遺族調査による質評価が行われていた. 今後は, わが国の現状に沿った緩和ケアのQIの測定項目・方法の開発とその実施可能性・信頼性・妥当性の検証が必要である.
Rapid Communications
  • 佐々木 直子, 山田 智香, 伊藤 智子, 森田 達也
    2007 年 2 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、緩和ケアチーム(PCT)に依頼されていないがん患者における鎮痛治療の適切性を評価し、薬剤師と緩和ケア医師からなるスクリーニング回診の推奨によって鎮痛治療が変化するかを明らかにすることである。聖隷三方原病院の4つの一般病棟に2005年5月から12月に入院したがん患者で、PCTが介入しておらず、かつ、オピオイドか化学療法を受けているすべての患者を対象とした。週1回薬剤師と緩和ケア医師によりカルテ回診を行い、鎮痛治療の適切性を評価し、推奨を主治医・病棟看護師に行った。対象患者は62例であった。全患者の44%で鎮痛が不十分であり、オピオイドの投与を受けている43例の42%で副作用対策が不十分であった。52例に対して合計80件の推奨を行い、94%が1週間以内に実施された。薬剤師・緩和ケア医師によるスクリーニング回診は患者のより良い鎮痛に貢献しうると考える。
  • 橋本 秀子, 宮本 謙一
    2007 年 2 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/02
    ジャーナル フリー
    薬剤師として1980年代にがん患者中心の病棟で臨床に密着した業務を展開する中で, 抗がん剤の副作用やがん末期の諸症状に苦しむ患者を目の前にし, 医師や看護師のがん患者への情報提供と彼らの意見を調査した. その後, 1996年と2005年にも同様の質問を行い, その変化に応じて薬剤師の患者への関わり方を探った. 1988年には72.7%の医師が早期がんでも病名告知しなかったが, 1996年には70%の医師が早期がんのみ病名告知するようになり, 2005年には100%の医師が, 進行度に関係なく病名を告知するとの回答を得た. しかし,「いつまで抗がん剤治療を続けるか」「終末期の症状緩和の技術が未熟である」といった新たな問題が生じており, 薬剤師がスタッフの中で独自の立場で主張することも必要となってきている.
  • 古宇田 裕子, 花田 和彦, 緒方 宏泰
    2007 年 2 巻 2 号 p. 211-217
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/12
    ジャーナル フリー
    末期がん患者における睡眠障害に対して, ミダゾラムの持続静脈投与が行われている. しかし, 適切な投与量, 投与方法に関する報告は少なく, また, ミダゾラムの耐性の可能性についてもいくつかの報告がある. 本研究では, ホスピスに入院し, 夜間の睡眠を目的としてミダゾラムを処方された患者19名のミダゾラムの投与速度を後向きに調査した. それぞれの患者で1日ごとに最も長時間用いられた投与速度を“維持投与速度”として, ミダゾラム投与期間における変化と変動要因について検討した. 2名の患者でミダゾラムの投与量は著しく増大した. しかし, 他の17名では, 時間経過に対する変化は統計的に認められず, ミダゾラムの夜間のみの間欠投与においては耐性が起こらない可能性がある. 変動要因としてハロペリドールを投与している患者で維持投与速度の増大が認められた.
  • 信濃 裕美, 渡部 一宏, 中村 清吾, 玉橋 容子, 土屋 雅勇, 木津 純子, 井上 忠夫
    2007 年 2 巻 2 号 p. 218-222
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
    進行再発乳がん患者の皮膚転移潰瘍部位からの悪臭(がん性悪臭)に対して, メトロニダゾール(MTZ)などの院内製剤が有用との報告があり, 聖路加国際病院においても1% MTZ―親水軟膏および0.8% MTZ―カーボポールゲルの2種類のMTZ外用製剤を調製している. 今回, この2種類のMTZ外用製剤を使用しているがん性悪臭の乳がん患者に対し, 質問紙調査による有用性に関する検討を行った. 2種類のMTZ外用製剤とも使用開始後1週間以内にがん性悪臭が改善し, 重大な有害事象は認められなかった. また便宜性の面からはMTZ―カーボポールゲルの評価が高かった. よってMTZ外用製剤は, がん性悪臭を伴う進行再発乳がん患者に有用な院内製剤であると考えられる. Palliat Care Res 2007;2(2):226-230
  • 深谷 陽子, 安藤 詳子, 稲垣 聡美, 宮崎 雅之, 水野 敏子, 中村 みゆき, 澤井 美穂
    2007 年 2 巻 2 号 p. 223-230
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
    本研究は, がん性疼痛マネジメントにおける患者の主体性と医療者の役割遂行について,「痛み計」の使用頻度をもとに, その効果を検討した. オピオイド使用中のがん患者10名は2週間, 随時「痛み計」に主観的な疼痛の強さを記録し, そのデータをグラフ化して患者と医療スタッフが共有した. その後, 患者と家族, 医療スタッフに質問紙調査を行った. その結果, 1日の入力回数の中央値は4.5回で, 質問項目の「入力しようと思った時は毎回入力した」「グラフを見た頻度」「グラフをもとに医師と話し合った」「他の患者にも勧めたい」「治療に参加しているという実感がある」と相関した. また, 医療スタッフは入力回数が多い患者に対し, 「痛み計のデータは疼痛アセスメトに役立った」「疼痛コントロールに関する患者の満足度は向上した」を高く評価した. 以上, がん性疼痛マネジメントを促進する痛み計の効果が示唆された. Palliat Care Res 2007;2(2):223-230
Case Reports
  • 渡辺 法男, 安村 幹央, 中川 千草, 立山 健一郎, 安田 公夫
    2007 年 2 巻 2 号 p. 310-312
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/07
    ジャーナル フリー
    【目的】オピオイド鎮痛薬は単剤治療が基本であるが, モルヒネとフェンタニルパッチ (FP) を併用することにより, 疼痛, 咳嗽・呼吸困難の症状緩和を得ることができた症例を経験したので報告する. 【症例】50歳代, 女性, S状結腸がん, 肝・肺転移. 疼痛に加え咳嗽・呼吸困難があったため, 硫酸モルヒネを開始し, 症状緩和を得た. 将来的に経口摂取が困難になることを考慮し, FPへの変更を計画した. しかしながら, フェンタニルの咳嗽・呼吸困難に対する効果は確立していないため, 咳嗽・呼吸困難に対しては少量の硫酸モルヒネを継続し, 疼痛に対してはFPにて調節を行い, 最後までモルヒネとフェンタニルの両成分を併用することにより, 疼痛, 咳嗽・呼吸困難の症状緩和を得ることができた. 【結論】経口摂取困難で, 疼痛に加え, 咳嗽・呼吸困難を有する症例に対して, 少量のモルヒネとFPの併用は, 安定した症状緩和を得るうえで有用であると考える.
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