【緒言】近年のがん治療の進歩により進行がん患者の長期生存が可能となる一方で,遷延性術後痛など治療関連の長期的有害事象への対応が課題となっている.今回,胸部悪性腫瘍術後に発症した開胸術後疼痛症候群(PTPS)に対し,不適切なオピオイド処方により依存に至った症例に脊髄刺激療法(SCS)を導入したことで,疼痛軽減とオピオイド減量に成功した症例を報告する.【症例】32歳女性.手術に伴って生じた神経障害性疼痛に対してオピオイドが増量され,不適切使用により依存状態となった.SCS導入後,オピオイドは減量できactivities of daily living(ADL)は著明に改善した.【結論】SCSはPTPSのような難治性疼痛に対する有効な選択肢であり,がんサバイバーのquality of life(QOL)向上とオピオイド依存回避に寄与し得る.
【目的】通院患者のがん疼痛セルフマネジメントを促進する看護介入プログラムの有効性を非ランダム化比較試験により評価した.【方法】介入群は本プログラムによる介入を3回受けた.主要評価項目を疼痛強度(brief pain inventory[short form]日本語版:BPI-J),副次評価項目を痛みによる日常生活への支障と疼痛緩和治療の効果(BPI-J),QOL(12-item short-form health survey:SF-12),自己効力感(pain self-efficacy questionnaire日本語短縮版:PSEQ4-J),心理的安定(hospital anxiety and depression scale:HADS)とした.【結果】分析対象者は対照群19名,介入群16名であった.調査前後の変化量を両群で比較したところ,疼痛強度は有意差が認められず,SF-12の日常役割機能(身体)のみ有意差が認められ(P=0.020),対照群で低下し介入群で上昇した.【結論】日常役割機能(身体)以外では両群の変化量に有意差がなく,本プログラムの介入効果は明らかにできなかった.その要因として対象者数がサンプルサイズを満たしていないことがあげられる.
本研究では終末期がん患者に対する死亡時画像診断(autopsy imaging: Ai)の遺族へ与える影響を検討した.Aiを実施した2例の終末期がん患者に対し,7名の遺族を対象に自記式質問紙による量的・質的調査を行った.質問紙の集計結果では,Aiの認知度は低かったが(14.3%),回答したすべての遺族がAiの実施により死因が理解できたと回答し,Aiの必要性に関して一定の理解は得られた(71.4%).自由記述の分析からは,Aiを実施したことで死因への理解や納得が得られ,心理的安心感に寄与する可能性が示唆された.一方で,Ai実施により遺族に葛藤や複雑な感情が生じることも明らかとなり,Ai実施の際は,本人の意思確認や本人と遺族の心理的ケアが重要となる.今後は医療者がadvance care planningの話し合いの中でAiの目的や意義を丁寧に説明し,本人・家族の意思を尊重しながらAiを検討していく姿勢が必要である.