【背景】がん患者の疼痛には非がん痛が含まれることがあり,心身症傾向を伴う場合,その評価や介入は困難となる.進行がん患者に生じた心身症傾向を有する筋筋膜性疼痛に対し,心身医学的アプローチが奏功した一例を報告する.【症例】症例は70歳代男性で,夜間に出現する上背部の発作痛が問題となっていた.(i)良好な治療関係の構築を基盤に,(ii)心身両面からの評価を行い,失体感症を踏まえた病態仮説を医療者間で共有した.(iii)アームチェアサインを通じて無自覚の持続的上背部筋緊張の存在が患者と共有され,心理的緊張と身体症状の関連について患者自身が洞察するに至った.(iv)漸進的筋弛緩法の介入が可能となり,セルフケア行動が促進され,発作痛は軽減した.【結論】身体診察を媒介とした心身医学的アプローチは,症状のセルフケアを引き出す有効な枠組みとなり得る.
【目的】緩和ケア病棟におけるキーパーソンという言葉の使用実態と,代理意思決定との関連についての看護師の認識を明らかにする.【方法】国内25施設の緩和ケア病棟に勤務する看護師を対象にWeb調査を実施した.【結果】137件の回答を得た.99.2%が同語を使用していたが,運用ルールが「統一されていない」「分からない」との回答が約3割を占めた.依頼する役割は意思決定関連が最多で,キーパーソンは「必要な情報の把握」「患者の意向の理解」「事前意思の尊重」「最善の利益の考慮」という代理意思決定に関する要件を「常に」または「ときどき」満たしていると約9割の看護師が認識していた.【結論】本用語は運用基準が曖昧なまま頻用されている.緩和ケア従事者は多義的な言葉に依拠せず,依頼する内容ごとに最適な人物を個別に検討し,意図が明確な呼称を用いて情報共有することが望ましいと考えられる.