Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
3 巻, 2 号
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原著
  • 高田 慎也, 江口 久恵, 加藤 則夫, 和泉 啓司郎
    2008 年 3 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    経管栄養カテーテルからモルヒネ細粒・顆粒製剤の投与が行われているが, カテーテルの閉塞やカテーテル, シリンジへの付着が問題となっている. そこで, 経管投与可能な4種のモルヒネ製剤(パシーフ®カプセル, カディアン®カプセル, MSツワイスロン®カプセル, モルペス®細粒)と内径が異なる2種類の経管栄養カテーテル(10.5 Fr, 13.5 Fr)と4種の注入剤(精製水, 牛乳, 経腸栄養剤, 嚥下補助ゼリー)にて簡便で正確な投与法を検討した. その結果, パシーフ®カプセルでは, 2種のカテーテルと嚥下補助ゼリー以外の3種の注入剤において, 残存顆粒数にばらつきがあるが有意差は認められず, 嚥下補助ゼリーにおいて有意に少ない結果であった. MSツワイスロン®カプセルは, パシーフ®カプセル同様13.5 Frカテーテルにおいて嚥下補助ゼリー以外の3種の注入剤間での有意差は認められないが, 嚥下補助ゼリーでは有意に少ない結果であった. 一方, 10.5 Frカテーテルと精製水との組み合わせにおいて, カテーテルの閉塞が認められた. この閉塞は, 嚥下補助ゼリーの使用により改善した. カディアン®カプセルでは, 2種のカテーテルと精製水, 牛乳, CZ-Hiのいずれの組み合わせにおいても閉塞を起こすが, 嚥下補助ゼリーでは, 2種のカテーテルで閉塞せずに通過させることが可能であった. モルペス®細粒は, 2種のカテーテルと4種の注入剤のどの組み合わせにおいても, 付着箇所が確認されたが, カゼインを含む注入剤である牛乳, 経腸栄養剤において付着量が少ない傾向にあり, カテーテルの内径の影響より注入剤の影響をより強く受ける結果が得られた. 今回の検討により, 各製剤に合わせた注入剤を選択することで, 医療従事者や患者が在宅で投与する際にも簡便で正確に投与可能な方法を確立できたと考える. Palliat Care Res 2008;3(2):101-107
症例報告
  • 荒川 真紀, 斎藤 寛子, 長谷川 高明, 加藤 康人, 石川 清仁
    2008 年 3 巻 2 号 p. 308-315
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/22
    ジャーナル フリー
    前立腺がんでは骨転移を併発する. 骨痛が増強し疼痛コントロールを目的として入院となった前立腺がん患者に対し, 骨痛改善のためのビスフォスフォネート製剤であるゾレドロネート(以下, ZA)の投与を行った症例について患者のQOLを評価した. 疼痛の評価は, 疼痛日記を用い, 鎮痛効果はオピオイド使用量から, QOLの評価はThe 36-item short form of the Medical Outcomes Study Questionnaire (SF-36)を用いて評価した.化学療法とZAの投与により, 疼痛緩和が得られQOLは改善した. 疼痛緩和を行うために, 痛みの評価である疼痛日記とQOLの評価であるSF-36を組み合わせた全人的な疼痛評価は有効であった. Palliat Care Res 2008 ; 3 (2) : 308-315
  • 杉本 雅和, 松井 正輝, 原田 昌典, 山内 由美子, 森山 菜緒, 安藤 香苗, 山本 誠人, 山岡 尚世, 小野 智恵美, 端山 軍, ...
    2008 年 3 巻 2 号 p. 316-320
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/27
    ジャーナル フリー
    がん性腹膜炎を伴う大腸がん再発症例に対しmodified oxaliplatin/l-LV/5-FU (mFOLFOX6)療法を行い, 腹水の消失, 腫瘍マーカーCA19-9の低下を認め, QOLの改善を得た1例の症例を報告する. 症例は62歳, 男性. 上行結腸がん・肝転移と診断され, 結腸右半切除, 肝右葉切除術を施行した. 外来にてTS-1を開始するも術後半年のCTにて大量の腹水貯留および腹膜播種を認め, がん性腹膜炎と診断. PS (performance status)がグレード3の状態であった. そのため, 腹水穿刺およびmFOLFOX6療法を減量し, 緩和的治療を施行した. 10コース後に腹水の消失が認められ, 腹部にあった硬結も消失し, PSはグレード1に回復した. 10カ月後の現在, mFOLFOX6療法の副作用である末梢神経障害ならびに転移性腫瘤の発現のため, CPT-11/l-LV/5-FU (FOLFIRI)療法に変更した. 経過は良好で腹部膨満もなく, 腹水も出現せず外来通院中である. Palliat Care Res 2008; 3(2): 316-320
  • 一楽 由貴, 福重 哲志, 山田 信一, 大石 羊子, 佐野 智美, 加納 龍彦
    2008 年 3 巻 2 号 p. 321-325
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/01
    ジャーナル フリー
    症例は舌がん術後の42歳男性. 多発性骨転移に伴う疼痛コントロールのため緩和ケアセンター入院中であった. 肺炎治療中の胸部X線写真で心嚢気腫が判明した. その後, 心嚢膿瘍をきたし, 臥床するに伴い多量の痰が排出され眠れないという症状を呈した. ドレナージチューブを経皮的に心嚢内に留置し, 心嚢内貯留物の吸引を行うことで臥床できるようになり苦痛を軽減することができた. Palliat Care Res 2008; 3(2): 321-325
  • 上林 孝豊, 川島 市郎
    2008 年 3 巻 2 号 p. 326-330
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    がん性胸水に対して一般的には胸水穿刺, 胸腔ドレナージや胸膜癒着療法などを行うが, 成功率, 処置操作やカテーテル留置に伴う苦痛の程度や入院期間などにおいて必ずしも満足される結果が得られているとはいえない. 今回われわれは高齢者肺がん患者に生じたがん性胸水症例に対して皮下埋め込み型の胸腔―腹腔シャント造設を行い, 患者の希望する在宅移行に有効であった症例を経験した. 本法はがん性胸水に対する緩和医療, 特に在宅緩和医療の有効な手段の1つとなりうる可能性がある. Palliat Care Res 2008; 3(2): 326-330
  • 篠原 明子, 有賀 悦子
    2008 年 3 巻 2 号 p. 331-334
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    【目的】今回, 門脈高度狭窄症例において経口投与されたオピオイドにより予測を超えた傾眠を呈し, 投与経路変更にて改善した1例を経験したので報告する. 【症例】下部胆管がんの術後局所再発およびリンパ節転移により門脈高度狭窄をきたした60歳代女性に, 外科で経口オキシコドン徐放錠剤10mg/日が投与され, 傾眠が出現したため当科に診察依頼があった. 生体利用率は低いが分割投与が可能な散剤を用いて, 経口モルヒネ徐放剤10mg/日に切り替え, さらに投与量を5mg/日に減量したが, 傾眠は持続した. これをフェンタニル貼付剤2.5mg半面貼付に変更したところ, 症状が改善した. 【結論】門脈血流低下症例では, 初回通過効果を受けないために経口オピオイド製剤の血中濃度が上昇する可能性があり, 投与時に十分な観察が必要である. また, 経口から経皮へのオピオイド投与経路変更が血中濃度上昇に伴う副作用の改善に有用である可能性が示唆された. Palliat Care Res 2008; 3(2): 331-334
  • 荒金 英樹, 下村 雅律, 稲田 聡, 片野 智子, 安井 仁, 閑 啓太郎, 清水 正啓
    2008 年 3 巻 2 号 p. 335-342
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    われわれは, 経皮経食道的胃管挿入術により悪性消化管閉塞患者の症状コントロールを試みているので報告する. 悪性消化管閉塞患者6名に対して, 経皮経食道的胃管挿入術を施行した. 腸管減圧目的にイレウス管を3例, 栄養補給目的に専用栄養チューブを1例, 腸管減圧と栄養補給の双方を目的にW-EDチューブを2例に留置した. 留置期間は24~460日(中央値52日), 栄養補給目的で設置した3例は, 全例で在宅療養が可能となった. 消化管閉塞に対して設置した5例中4例で十分な減圧と症状コントロールが得られたが, 1例で挿入部からの消化液流出により中止, 2例でチューブの閉塞から交換を要した. 経鼻チューブ留置に伴う不快感は全例で大幅に軽減した. 経鼻カテーテルの長期留置を必要とする患者にとって経皮経食道的胃管挿入術は留置後の苦痛が少なく, 有用な方法であった. 各種チューブの留置が可能なことは, 症例に応じた応用性に富む方法と考えられた. Palliat Care Res 2008; 3(2): 335-342
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