Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
6 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 今井 堅吾, 池永 昌之, 児玉 智之
    2011 年 6 巻 1 号 p. 101-108
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    終末期がん患者の神経障害性疼痛に対するガバペンチンの鎮痛効果, 適切な投与方法, 安全性を明らかにするため, 200X年11月から200X+2年10月に淀川キリスト教病院ホスピスでがんに伴う神経障害性疼痛に対しガバペンチンを投与した患者の観察研究を行った. numerical rating scale (NRS)で疼痛評価し, 投与前, 1週間後, 維持投与時のNRSをWilcoxonの符号付順位和検定で比較検討した. 調査を開始した44名中19名が投与終了まで調査可能で, 投与期間平均52.0日, 死亡まで平均67.2日であった. 1週間後の投与量は平均358 (200~1,200) mg/日, 維持投与開始は平均11.6日, 維持投与量は平均463 (200~2,400) mg/日で男性620 mg/日, 女性289 mg/日であった. NRSの平均値は投与前5.7, 1週間後 2.1 (p<0.001), 維持投与時1.9 (p<0.001)で, 有意に低下した. 57.9%で副作用を認め, 眠気52.6%, せん妄5.3%, 振戦5.3%であった. ガバペンチンを少量から副作用に注意して調整することで, がんに伴う神経障害性疼痛に対し鎮痛効果が得られ, 終末期でも長期間安全に投与可能である. Palliat Care Res 2011; 6(1): 101-108
  • 中島 誠, 加藤 浩充, 後藤 拓也, 松本 修一, 石井 沙代, 鱸 稔隆, 佐野 公泰, 加藤 達雄, 酒々井 眞澄, 杉山 正
    2011 年 6 巻 1 号 p. 109-118
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/31
    ジャーナル フリー
    【目的】肺がん患者が持つ麻薬性鎮痛薬に対する負のイメージの払拭と, 正しい知識の啓蒙を目的として集団勉強会を実施し, 麻薬性鎮痛薬に対する認識と, 勉強会の実施効果を調査した. 【方法】勉強会への参加同意が得られた肺がん入院患者を対象に薬剤師による麻薬性鎮痛薬に関する勉強会を実施した. 勉強会前後にアンケート調査を行った. 【結果】60名の参加患者から回答が得られた. 負のイメージに関連した設問, 麻薬性鎮痛薬の知識に関連した設問のすべてにおいて勉強会後には認識の改善, 知識の向上が認められた. 【考察】勉強会により負のイメージを完全に払拭することはできなかったが, 勉強会は患者教育を行ううえで1つの有用な手法であると考えられた. 患者が麻薬性鎮痛薬導入に抵抗を感じることは, 疼痛緩和医療の遅れをきたしQOLの低下を招くおそれがあるため, 事前に正しい知識を啓蒙しておくことが必要であると考えられる. Palliat Care Res 2011; 6(1): 109-118
  • 宮本 信吾, 大熊 裕介, 高木 雄亮, 下川 恒生, 細見 幸生, 井口 万里, 岡村 樹, 澁谷 昌彦
    2011 年 6 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】非小細胞肺がんに対する終末期epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitor (EGFR-TKI)継続投与の意義を検討した. 【方法】EGFR-TKIが以前は治療効果を示したものの増悪し, 最終の化学療法がEGFR-TKIであった非小細胞肺がん患者33例を対象とし, EGFR-TKIを1カ月以内に中止した群(16人)と継続した群(17人)を比較した. 【結果】生存期間中央値は, 継続群191日, 中止群62日であり, EGFR-TKI継続群で有意に長かった(p=0.0098). 継続投与群における有害事象は, Grade 1の皮疹が6人, Grade 2の皮疹が1人, Grade 1の下痢が1人, Grade 1のAST/ALT上昇が4人認められたものの, 制御不能な有害事象は認められなかった. 【結語】EGFR-TKIが奏効したものの, その後, 増悪し, 殺細胞性抗がん剤による治療が困難な非小細胞肺がん患者において, 重篤な有害事象は少なく, 生存期間が延長する可能性もあるEGFR-TKIの継続投与は, さらに検討を進める必要がある. Palliat Care Res 2011; 6(1): 119-125
  • 田邊 智美, 岡村 仁
    2011 年 6 巻 1 号 p. 126-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/16
    ジャーナル フリー
    看護師の離職意向の要因を探索するために,組織風土, 健康状態, および今までの働き方を見直す契機として取り組みの推進が提唱されているワークライフバランスに着目し, 離職意向との関連を検討することを目的とした. 2010年3月~4月に, A県7施設の緩和ケア病棟の看護職者105名を対象に, 無記名の自記式質問紙による横断調査を実施し, 回答のあった83名(79.0%)を分析対象とした. 離職意向尺度を従属変数とする重回帰分析の結果, 看護師の離職意向には組織風土の伝統性因子, WLB-JUKU INDEX個人調査票の仕事と生活の評価, 身体疲労度が有意に関連していた. 本結果より, 自律性に乏しい組織風土, 身体的疲労の高まり, 仕事と仕事以外の生活のバランスに対する評価の改善が, 看護師の離職意向の軽減に有効であることが示唆された. Palliat Care Res 2011; 6(1): 126-132
短報
  • 吉田 みつ子, 守田 美奈子, 福井 里美, 樋口 佳栄, 寄森 梓, 奥原 秀盛, 遠藤 公久, 生山 笑, 鈴木 治子
    2010 年 6 巻 1 号 p. 201-208
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/08
    ジャーナル フリー
    本研究は情報提供, 心理的支援, 身体的介入を柱とし, 患者がニーズに応じて選択できることを特徴とする複合型がんサポートプログラムを1年間運用し, 本プログラム内容と運営における課題を検討した. 参加登録者は40名, 病気や治療法, 養生法に関する知識・情報を得たいというニーズの充足, 医療関係者とつながっている感覚や相談できる場がある安心感を得ていた. がん患者個々が必要に応じたプログラムを選択し参加することが, 主体的に治療や療養生活を送る支援につながることが示唆された. Palliat Care Res 2011; 6(1): 201-208
  • 渡邊 裕之, 石川 奈名, 藤本 和美, 山崎 圭一, 藤尾 長久
    2011 年 6 巻 1 号 p. 209-215
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/06
    ジャーナル フリー
    【目的】人的資源が十分とはいえない緩和ケアチームが効率かつ効果的に活動するために, 多職種による情報共有のツールとしてデータベース(以下, DB)を構築・運用し, その効果を検証した. 【方法】DBはMicrosoft Access®にて構築した. 患者評価にはSTAS-Jを用い, 部署ごとに持つ情報も入力できるようにした. 加えて, 問題点を共有するためのフォームを構築し, 継続的な評価ができるようにした. DBによるカンファレンスおよび病棟ラウンド(以下, CR)促進効果を評価するために, 運用前後での1回のCRにおける対象患者数, 患者ごとのCR実施回数について調査した. 【結果】対象患者数(人/回), 患者ごとのCR実施回数は, それぞれ有意に増加していた. 【考察】DBにより情報が効率的に共有できたことで, 多くの患者に対して継続的な評価が可能となり, チーム活動の促進につながると考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(1): 209-215
  • 酒井 禎子, 大久保 明子, 岡村 典子, 阿部 正子, 戸田 幸子
    2011 年 6 巻 1 号 p. 216-221
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    看護師がスピリチュアリティを考える体験をした臨床場面とその内容とはどのようなものであるかを明らかにすることを目的とし, 4病院・1緩和ケア病棟の看護師に質問紙調査を実施した. 835名の看護師から回答が得られた結果, スピリチュアリティを考えた体験を持つ看護師は全体の2割程度であった. 看護師は, 病と共に生きる, あるいは死に向かう患者の姿から人間の強さや人生を考えるとともに, 生と死にまつわる超越的な出来事を通して, スピリチュアリティを考えていた. また, 臨床で困難と感じた患者へのケアなどを通して, 心身領域にとどまらないケアへの考えを深めていた. このような人の生と死や超越的なものへの看護師の関心は, 日本人のスピリチュアリティの構造を反映していると考えられるとともに, スピリチュアリティの概念を自身の体験と関連させながら理解を深める看護教育の必要性が課題として示唆された. Palliat Care Res 2011; 6(1): 216-221
症例報告
  • 橋本 敏夫, 高橋 俊之, 那須 郁子, 木村 相樹, 山口 勝也, 鈴木 美穂, 遠藤 俊子, 安部 晶子
    2011 年 6 巻 1 号 p. 301-307
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/20
    ジャーナル フリー
    今回, 透析患者の右乳がん術後右胸水貯留に伴う呼吸不全に対し胸腔大腿静脈シャント留置により, 呼吸困難感, 呼吸不全症状の軽快を認め, quality of life (QOL)を改善できた症例を経験したので報告する. 症例は80歳, 女性, 慢性腎不全にて週2回維持透析を施行していた. 入浴中, 右乳腺のしこりに気づき当院外科を受診し, 右乳がんの診断で, 2008年12月に局所麻酔のもと, 右乳腺部分切除術を施行した. 術後経過観察中, 2009年7月に呼吸困難感,右胸水貯留による呼吸不全症状を認め入院となった. 入院時がん性胸膜炎を疑い, 胸水細胞診を施行したが悪性細胞を認めなかった. 透析患者であり, 胸腔腹腔シャント留置術および, 利尿剤による胸水のコントロールが困難であると判断し, 胸腔大腿静脈シャントを留置した. 約7カ月間にわたり右側胸水をコントロールでき, 呼吸困難, 呼吸不全症状の改善が得られた. Palliat Care Res 2011; 6(1): 301-307
  • 加登 大介, 長谷川 久巳, 菊池 大輔, 宇留賀 公紀, 岸 一馬
    2011 年 6 巻 1 号 p. 308-312
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】急性出血性直腸潰瘍は長期臥床の高齢者に多い疾患であるが, がん患者での報告は少ない. 今回, 対麻痺の肺がん患者に合併した急性出血性直腸潰瘍の1例を報告する. 【症例】40歳代の男性. 肺がんの脊髄浸潤により対麻痺を発症し, 緊急入院となった. 第25病日より無痛性の新鮮血下血が始まり, 出血量が増加した. その後, 下部消化管内視鏡検査を施行し, 下部直腸に潰瘍性病変と露出血管を認めた. 臨床症状と内視鏡所見より急性出血性直腸潰瘍と診断し, ただちにクリッピング術を行った. その後は下血の再燃を認めず, 第103病日に退院となった. 【結論】急性出血性直腸潰瘍は終末期がん患者でも治癒しうる病態であり, 症例によって迅速な診断と治療が必要である. Palliat Care Res 2011; 6(1): 308-312
  • 橋本 典夫, 西島 薫, 小林 身和子, 桑原 知恵子, 森本 孝子, 阪口 紀子, 中西 晶子, 田中 裕子, 小山 富美子, 厨子 慎一 ...
    2011 年 6 巻 1 号 p. 313-315
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    骨盤内腫瘍増大による神経障害性疼痛に対し従来の薬物療法では十分な除痛が得られず, エコーガイド下坐骨神経ブロックで良好な鎮痛が得られた症例を経験したので報告する. 【症例】60歳代, 男性. 骨盤内腫瘍による神経圧迫が原因の痛みに対しフェンタニル貼付剤10.5mg, ガバペンチン1,600mg/日, エトドラク400mg/日, アミトリプチリン30mg/日まで増量したが, 眠気が増加するのみで十分な鎮痛効果が得られなかった. エコーガイドで坐骨神経に0.1%ロピバカイン5ml/時で持続投与することで痛みが軽減し, フェンタニル貼付剤8.4mg, ガバペンチン800mg/日, アミトリプチリン10mg/日まで減量が可能となり, 眠気も軽減することができた. 従来の末梢神経ブロックと異なりエコーを使用することで安全かつ確実に鎮痛が得られるため, 全身状態が悪い状況であっても神経ブロックの選択が可能となる. Palliat Care Res 2011; 6(1): 313-315
  • 天野 晃滋, 東口 高志, 篠邉 篤志, 大原 寛之, 村井 美代, 伊藤 彰博, 定本 哲郎, 二村 昭彦, 柴田 賢三
    2011 年 6 巻 1 号 p. 316-323
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    がん患者の浮腫には, 悪液質や低タンパク血症, リンパ浮腫などがあるが, 腫瘍に起因するネフローゼ症候群(NS)がその原因となることもある. これら浮腫はQOLを低下させるだけでなく, 的確に診断・治療しなければ死期を早めてしまう危険もある. 前医にて子宮体がん再発によるリンパ浮腫と診断され, 当院にてNSの治療によりQOLが著明に改善した1例を経験したので報告する. 65歳, 女性, 子宮体がん再発, 肺・脳転移. 在宅療養中, 状態の悪化にて緊急入院. 両下肢に著明な浮腫を認め, 検査成績でTP 5.0 g/dl, ALB 1.3 g/dl, T-Chol 369 mg/dl, タンパク尿(3+)にてNSの診断基準を満たした. ALB製剤の静脈投与にて, 循環動態を安定させ, ステロイド・免疫抑制剤を投与した結果, 全身状態, 浮腫も改善. その後はNSの軽快・増悪を繰り返し, 腫瘍が進展し入院81日目に播種性血管内凝固, 多臓器不全をきたし死亡. 悪性腫瘍が起因となるNSはまれではない. しかし, 肺がんや消化器系がんが多く, 子宮体がんはまれである. 悪性腫瘍の終末期の浮腫の原因としてNSも念頭に入れて治療を行う必要がある. Palliat Care Res 2011; 6(1): 316-323
  • 中西 敏博, 武内 有城, 伊奈 研次, 長尾 清治
    2011 年 6 巻 1 号 p. 324-329
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする組織固定剤で, 皮膚腫瘍のchemosurgeryに応用されている. 近年, 緩和医療分野でも, 切除不能な皮膚浸潤・転移巣の悪臭などの症状コントロールにおいて有益性が高いとされている. わが国で広く使用されているMohsペーストは, 重山らが提唱した塩化亜鉛と亜鉛華デンプンの混合物にグリセリンを添加して調製するが, 粘度が高く粘着性もあるため, 塗りにくいという問題がある. われわれは, Mohsペーストを短冊ガーゼにからませて患部に貼付する方法と, ガーゼに塗って患部に貼付する方法の2つのMohsガーゼ法を考案し, 出血や悪臭, 浸出液のコントロールに難渋した胃がんの皮膚転移巣の症例に有用であった. この方法は, 従来のMohsペースト塗布方法と固定効果に差を認めず, Mohsペーストの塗りにくさの問題を解決することができ, 処置時の苦痛を軽減することが可能であった. Palliat Care Res 2011; 6(1): 324-329
  • 赤司 雅子, 有賀 悦子
    2011 年 6 巻 1 号 p. 330-335
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    【目的】高用量フェンタニル貼付剤で除痛困難な疼痛に, オキシコドンへのオピオイドローテーション(以下, OR)が有効であり, オピオイドの著明な減量が可能であった症例を報告する. 【症例】症例は60歳代の男性で, 直腸がんの局所再発性腫瘤と右腸骨・右大腿骨骨頭の骨転移による疼痛に対し, 経皮型フェンタニル貼付剤(以下, TDF) 50.4 mg/72時間にて除痛が得られず, 緩和医療科に診察依頼となった. ガバペンチン400 mg/日併用開始後, NRS 9/10→7/10と疼痛残存していたため, TDFを経口オキシコドン徐放剤(以下, OC)へORを行ったところ, NRS 2/10と除痛できた. 最終的なオピオイド使用量は, 初期投与量の6%であるOC 30 mg/日と, 著明な減量となった. 【考察】ORの理論上と実際の換算比の相違については過去にも報告がある. また, その背景としてμオピオイド受容体機能の多様性の基礎研究も行われている. 本症例ではフェンタニル耐性が疑われ, オキシコドンへのローテーションが除痛に有用であったと考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(1): 330-335
  • 新田 リヱ, 平 俊浩, 西岡 真美, 古口 契児
    2011 年 6 巻 1 号 p. 336-339
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
    【目的】緩和ケア病棟において増悪した幻覚妄想状態に電気痙攣療法(electroconvulsive therapy; ECT)が有効であった症例を経験したので報告する. 【症例】30歳代, 女性. 上行結腸がん再発, 肺転移. 緩和ケア病棟入院18日目に, 幻覚妄想を伴う強い緊張病症状を呈した. 消化管閉塞のため, 内服加療は積極的に行えず, ハロペリドールの点滴加療は奏効しなかった. 患者の苦痛は強く, 治療方針について多職種カンファレンスを重ね, 即効性のあるECT(全身麻酔併用)を選択した. ECT施行1回目より有効性がみられ, 3日間で4回のECTを終了後, 症状はさらに軽減し, 落ち着いた精神状態を取り戻すことができた. 明らかな副作用はなく, 血中のクレアチニンキナーゼや電解質などの異常な変化はなかった. 【結論】ECTは, うつや統合失調症に加え, 続発性の重症緊張病性障害にも適応があり, 迅速かつ確実な治療反応が期待できる. 今回の症例では, がん終末期においても比較的安全で有効な治療法であることが示唆された. Palliat Care Res 2011; 6(1): 336-339
feedback
Top