Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
7 巻, 1 号
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原著
  • 松村 千佳子, 中村 暢彦, 青松 幸雄, 桑田 博文, 高山 明, 矢野 義孝
    2012 年 7 巻 1 号 p. 101-111
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル フリー
    【目的】大腸がん患者に対するがん化学療法において, 制吐目的でデキサメタゾン(DEX)の予防投与を長期に受けた患者が異常な血糖値の上昇を示す場合がある. 本研究は, 転移性大腸がん患者のDEXによる血糖値上昇について調査し, 患者のQOLを改善するための薬学的ケアの重要性について考察することを目的とした. 【方法】DEXの投与群, 非投与群のがん化学療法を受けた50名の患者のデータを後ろ向きに調査した. 【結果】DEX投与群の患者30名の中で8名の患者に異常な血糖値の上昇(随時血糖値200 mg/dl以上が2回以上と定義)がみられ, その中で3名は糖尿病と診断された. DEX非投与群の20名の患者は注目すべき血糖値上昇はみられなかった. 【考察】がん化学療法においてDEX投与も受けている患者において血糖値上昇が見られることを確認した. 血糖値上昇は糖尿病の症状である倦怠感といった症状を引き起こす可能性があることから, 血糖値上昇を早期に発見するために適切な薬学的ケアをすることが合併症の予防に重要である.
  • 荒木 貢士, 原口 勝
    2012 年 7 巻 1 号 p. 112-120
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/03
    ジャーナル フリー
    【目的】がんの症状コントロールのために, 持続皮下注射が多く行われている. しかし, 使用薬剤によっては刺入部に発赤・ 硬結が認められることも多い. 予防にはデキサメタゾンの混注が良いといわれるが, その効果を提示した文献は少ない. 今回, われわれは持続皮下注射刺入部の発赤・硬結の出現頻度を測定し, デキサメタゾンの発赤予防効果の検討を行った. 【方法】当院における持続皮下注射の治療法に従い, 前向き観察研究を行った. 刺入部に発赤・硬結が生じた場合, まず刺入針を翼状針からカニューレ針に交換した. その後も改善を認めない場合にはデキサメタゾンの混注を少量から開始した. 【結果】検討を行った66例のうち, 発赤・硬結を認め, 刺入針の変更を行ったのは20例, それでも改善なくデキサメタゾンを混注したのは5例であった. 【結論】刺入針の変更を行うだけでも, 発赤・硬結が減少する可能性が示唆された. デキサメタゾンの混注は, 0.5 mg/日という少量でも効果が認められることが分かった.
  • 森田 達也, 野末 よし子, 花田 芙蓉子, 宮下 光令, 鈴木 聡, 木下 寛也, 白髭 豊, 江口 研二
    2012 年 7 巻 1 号 p. 121-135
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが行われた地域の医師・看護師の体験した変化を収集することである. OPTIMプロジェクト介入後の医師1,763名, 看護師3,156名に対する質問紙調査の回答706件, 2,236件を対象とした. 自由記述の内容分析を行い, それぞれ327, 737の意味単位を同定した. 好ましい変化として, 【チーム医療と連携が進んだ】 ([相談しやすくなった][名前と顔, 役割, 考え方が分かるようになった]など), 【在宅療養が普及した】 ([在宅移行がスムースになってきた]など), 【緩和ケアを意識するようになり知識や技術が増えた】が挙げられた. 意見が分かれた体験として, 【病院医師・看護師の在宅の視点】【活動の広がり】【患者・家族・市民の認識】が挙げられた. 地域緩和ケアプログラムによるおもな変化は, チーム医療と連携, 緩和ケアの意識と知識や技術の向上, 在宅療養の普及であると考えられた.
  • 岡田 雅邦, 新城 拓也, 向井 美千代, 皆本 美喜
    2012 年 7 巻 1 号 p. 136-141
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/02
    ジャーナル フリー
    一般には動物を病院に連れてくることは許可されないが, 緩和ケア病棟ではペット面会やセラピードッグの訪問を取り入れている施設が多い. 全国の緩和ケア病棟におけるペット面会許可の現状, セラピードッグ導入の現状につき, 2009年2月現在の緩和ケア病棟承認施設193施設を対象に郵送によるアンケート調査を行い, 149施設(77%)より回答を得た. 135施設で病院敷地内でのペット面会を許可し, うち36施設はペットの宿泊を, 121施設は病室での面会が可能であった. セラピードッグは22施設に導入されていたが, 特に宗教を母体とする施設で有意に多かった. 病室にペットが宿泊できるところは宗教を母体とする施設に, 病棟でのペットとの面会は緩和ケア病棟開設年度が古い施設で有意に多かった. しかし, 無宗教の施設や新しく開設された施設でも, 多くの施設でペット面会が行われていた. 昨今の緩和ケア病棟でも癒しや心の温もりが大切にされていることが示された.
  • 古村 和恵, 森田 達也, 赤澤 輝和, 三條 真紀子, 恒藤 暁, 志真 泰夫
    2012 年 7 巻 1 号 p. 142-148
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル フリー
    終末期がん患者はしばしば家族や医療者に対する負担感(self-perceived burden)を経験するといわれている. 負担感を和らげるためのケアが必要とされる一方で, どのようなケアが望ましいかを実証した研究はほとんどない. 本研究では, 終末期がん患者の感じている負担感の実態と, 患者の負担感を和らげるために必要なケアを調査するために, 28名のがん患者の遺族を対象に半構造化面接を行った. 内容分析の結果, 「がん患者の負担感の内容」(例: 下の世話をしてもらうのがつらい), 「がん患者が行っていた負担感に対するコーピング」(例: 家族の仕事や予定を優先するようにいう), 「家族の気持ちと対応」(例: 患者の遠慮は家族への思いやりの表れだと思った), 「患者の負担感に対して必要なケア」(例: ことさら何かを強調するのではなく, 自然な言葉がけをする)が抽出された. 収集された患者の負担感を和らげるためのケアの有用性の評価が今後の重要な課題である.
  • 市原 香織, 宮下 光令, 福田 かおり, 茅根 義和, 清原 恵美, 森田 達也, 田村 恵子, 葉山 有香, 大石 ふみ子
    2012 年 7 巻 1 号 p. 149-162
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/31
    ジャーナル フリー
    【目的】Liverpool Care Pathway (LCP)は, 看取りのクリニカルパスである. LCP日本語版のパイロットスタディを実施し, LCPを看取りのケアに用いる意義と導入可能性を検討する. 【方法】緩和ケア病棟入院患者を対象にLCPを使用し, ケアの目標達成状況を評価した. 対象施設の看護師に, LCPの有用性に関する質問紙調査を行った. 【結果】LCPに示されたケアの目標は, 80%以上の患者・家族において達成されていた. 対象看護師の65%以上が, 看取りの時期の確認, ケアの見直し, 継続的で一貫したケアの促進, 看護師の教育においてLCPを有用だと評価した. 【結論】LCPは緩和ケア病棟での看取りのケアと合致し, 看取りのケアの指標を示したクリニカルパスとして導入可能であることが示された. 看護師の評価では, LCPが看取りのケアの充実や教育における意義をもつことが示唆された.
  • 森田 達也, 井村 千鶴, 野末 よし子, 鈴木 聡, 渋谷 美恵, 木下 寛也, 原田 久美子, 白髭 豊, 平山 美香, 江口 研二
    2012 年 7 巻 1 号 p. 163-171
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムの体験者が「同職種・他職種に勧めたいこと」を収集することである. 地域緩和ケアプログラムが実施された地域の介入に中心的に関わった101名を対象としたインタビュー調査を行い, 89名から回答が得られた. 合計107の意味単位を取得した. 勧められたことは, 【職種にかかわらず勧めること】(n=59)として, [多職種カンファレンスに参加してネットワークを増やす] [相手の置かれている状況をまずよく理解する] [1人で抱え込まず勇気を出して誰かを探す] [できないと決めてかからないで可能性を探す] [がんばりすぎない]などが挙げられた. 職種別では,【保険薬局に関すること】【介護支援専門員に関すること】が多く挙げられた. 地域緩和ケアプログラムの体験者が勧めることを学ぶことにより, 地域緩和ケアを向上させる方策についての洞察を得ることができた.
短報
  • 山本 亮, 阿部 泰之, 木澤 義之
    2012 年 7 巻 1 号 p. 301-305
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/23
    ジャーナル フリー
    【目的】がん対策基本法に基づき, がん医療に携わるすべての医師に対して基本的な緩和ケアに関する研修が行われている. 本研究の目的は, 緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会修了者が感じている, 研修会実施による変化を明らかにすることである. 【対象と方法】緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会修了者12名により, 「緩和ケア研修会を通じて得られたもの」についてブレインストーミングを行い, その内容を質的に分析した. 【結果】緩和ケア研修会の開催を通じて得られたものとして, 連携の強化, 知識・スキルの獲得, 緩和ケアの認知度の向上, 地域の緩和ケアリソースの把握, 研修会受講生の行動変容, 院内緩和ケア体制の整備の6つのカテゴリーが抽出された. 【結論】指導者研修会修了者は, 緩和ケア研修会の開催により知識・スキルの獲得という直接的成果だけでなく, 連携強化, 緩和ケアリソースの把握などの間接的成果が得られていると感じていることが明らかとなった.
  • 黒田 佑次郎, 岩満 優美, 轟 慶子, 石黒 理加, 延藤 麻子, 松原 芽衣, 岡崎 賀美, 山田 祐司, 宮岡 等
    2012 年 7 巻 1 号 p. 306-313
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/02
    ジャーナル フリー
    【目的】緩和ケア病棟(以下, PCU)入院中の患者とその家族を対象に, 入院前後のPCUに対する認識と印象の変化を質的に検討した. 【方法】PCUの入院患者5名と家族9名に半構造化面接を実施し, 要約的内容分析を行った. 【結果】入院前の印象は, 患者では“想像がつかない”など「特に印象がない」を含む2カテゴリー, 家族では“最期を迎えるところ”や“穏やかに過ごす場所”など「PCUの環境」を含む5カテゴリーが得られた. 入院後の印象は, 患者では“心のケアが重要”など「PCUでのケア」を含む3カテゴリー, 家族では“個室でプライベートがある”など「PCUの環境」を含む7カテゴリーが得られた. 【結論】PCU入転院に際し, 家族は“安心が得られる”と“最期を迎えるところ”という気持ちが併存していることが示された. また, 入転院前に比し入転院後は, 患者と家族ともにPCUに対して好意的な印象をもっている可能性が示唆された.
  • 上林 孝豊, 中務 博信, 本井 真樹, 加藤 直子
    2012 年 7 巻 1 号 p. 314-316
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/13
    ジャーナル フリー
     【目的】オクトレオチドの悪性腹水に対する有用性は, ケースレポートとしては散見されるが, いまだ明らかではない. 本研究の目的は, 悪性腹水に対するオクトレオチドの有用性を明らかにすることである. 【方法】2008年4月1日から2011年10月31日までに, 当院で消化管閉塞に伴う消化器症状の改善目的にオクトレオチドを使用したがん患者のうち, オクトレオチド使用時期に悪性腹水を伴っていて, 使用開始前後にその量をCTで評価をできるものとした. 評価は, 「明らかに減少」「わずかに減少」「不変」「わずかに増加」「明らかに増加」の5つに分類した. 【結果】同期間内に, 当院においてオクトレオチドを使用された症例は49例. そのうち7例が適格基準を満たした. 明らかに減少, わずかに減少は認めなかった. 不変は1例であった. それ以外の6例は, いずれも増加していた. 【結論】本研究では, オクトレオチドの悪性腹水に対する有用性は認められなかった.
  • 森田 達也, 野末 よし子, 宮下 光令, 小野 宏志, 藤島 百合子, 白髭 豊, 川越 正平
    2012 年 7 巻 1 号 p. 317-322
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 在宅特化型診療所とドクターネットの両方が存在する1都市におけるがん患者の自宅死亡率の推移を明らかにすることを通じて, 在宅特化型診療所とドクターネットの地域緩和ケアにおける役割についての洞察を得ることである. 緩和ケアの地域介入研究が行われた1地域でがん患者の自宅死亡率を2007年から2010年まで取得した. 自宅死亡率は, 2007年の7.0%から2010年には13.0%に増加した. 自宅死亡総数に占める在宅特化型診療所の患者の割合は49%から70%に増加したが, 在宅特化型診療所以外の診療所が診療したがん患者の自宅死亡数も63名から77名と減少しなかった. 在宅特化型診療所と一般の診療所のドクターネットは排他的に機能するものではなく, 両方のシステムが地域に存在することにより自宅で過ごすがん患者の緩和ケアの向上に寄与する可能性が示唆された.
  • 森田 達也, 野末 よし子, 井村 千鶴
    2012 年 7 巻 1 号 p. 323-333
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル フリー
    「顔の見える関係」の概念と地域連携への影響を探索することを目的として, 多職種の医療福祉従事者207名を対象とした質問紙調査と, 5名を対象としたインタビュー調査を行った. 「顔の見える関係がある」の項目は, 「名前と顔, 考え方が分かる」「施設の理念や事情が分かる」「性格, つきあい方が分かる」「具体的に誰がどのような仕事をしているかだいたい分かる」と0.7以上の相関を示した. インタビュー調査では, 「顔の見える関係」とは【顔が分かる関係】【顔の向こう側が見える関係】【顔を通り超えて信頼できる関係】の3つを含んでいた. 顔の見える関係が地域連携に及ぼす影響として, 【連絡しやすくなる】【誰に言えば解決するかや役割が分かる】【相手に合わせて自分の対応を変えるようになる】【効率が良くなる】【親近感を覚える】【責任を感じる】が抽出された. 顔の見える関係の概念と影響についての予備的知見を得た.
  • 柴原 弘明, 渡邉 かおる, 長谷川 陽子, 辻 麻耶子, 前津 和恵, 木下 早苗, 杉山 和美, 黒野 広司, 深田 翼, 西村 大作
    2012 年 7 巻 1 号 p. 334-341
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/05
    ジャーナル フリー
    Liverpool Care Pathway日本語版を電子カルテ(富士通HOPE/EGMAIN-FX®)へ導入した. (1)医療情報部による各テンプレート(「LCPの使用基準・初期アセスメント」「継続アセスメント」「死亡診断」)の作成, (2)パス/レジメン作成, (3)テンプレートのパスへの組込み, (4)クリニカルパス委員会の承認, の過程を要した. 各アセスメントシートをExcelチャート形式かテンプレート形式にするかを最も悩んだが, スクロールせずに1つの表が画面に展開され視野に入り, バリアンス記録の文字制限がほとんどなく利便性が高いテンプレート形式を選択した. 一方, 記録時にはパスのほか, 麻薬使用時の記載で「SOAP & フォーカス」, バイタルサインの記載で「経過表」の3つを立ち上げる必要があること, 日勤・夜勤あるいは日ごとの記録の経時的変化を同一視野に展開できないことは今後改善すべき点である.
  • 山田 博英, 小田切 拓也, 津村 明美, 井村 千鶴, 宮下 光令, 森田 達也
    2012 年 7 巻 1 号 p. 342-347
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 患者・遺族調査の結果から患者・家族の医療者への要望を明らかにし, 「医療者が気を配ること」をまとめた冊子の作成過程を記述することである. 浜松市内の複数の医療施設の進行がん患者, 遺族それぞれ550名, 632名を対象とした質問紙調査を行い, 337名, 432名から回収を得た. その回答から, がん治療・緩和ケアの意見・要望に関する自由記述の内容分析を行った. 378の意味単位が分析対象となり, 医療者に対する要望として6つのカテゴリー(【気持ちに寄り添って一緒に考えてほしい】【希望する場所で過ごせるようにしてほしい】【苦痛が最小限になるように努力してほしい】【後悔しないように, 話しておきたい・やってあげたいことができるようにしてほしい】【生きる希望を支えてほしい】【医療用麻薬についての不安を和らげてほしい】)が得られた. これらに対して, 医療者ができる工夫や工夫の根拠となる情報を含めた冊子を作成できた.
症例報告
  • 片山 英樹, 関 千尋, 樋口 洋子, 正木 修一, 三村 雄輔, 上岡 博
    2012 年 7 巻 1 号 p. 501-505
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/16
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 胃がんの診断で胃全摘術を施行されたのち, リンパ節転移と骨転移で再発し, 両側尿管閉塞による慢性腎不全を併発したため緩和ケア病棟へ紹介されて転院となった. 遷延する尿路感染症に対して抗生剤点滴を行い改善がみられたが, その後, 食事摂取量が減少し, 血尿が出現し, さらに口腔内にも出血が認められるようになった. PT, APTTは測定不能と延長していたが, 血小板, フィブリノーゲン, FDPは正常でDICは否定された. 血清のPIVKA-IIが著明高値, ビタミンKは低値であり, ビタミンKの投与にてPT, APTT, 出血症状の改善を認めた. 本症例では, 食欲低下と抗生剤投与によりビタミンK欠乏が起こり, その結果, 出血症状が出現したと考えられる. 進行がん患者を対象とする緩和ケア領域では, 経口摂取の低下や抗生剤使用などのためビタミンKの欠乏が生じやすく, 出血症状がビタミンK欠乏症と終末期DICとの鑑別が必要な場合もあり, 注意が必要と考えられた.
  • 齊藤 理, 赤木 徹, 竜野 真維, 三浦 耕資, 周東 千緒, 工藤 尚子, 村上 敏史, 的場 元弘
    2012 年 7 巻 1 号 p. 506-509
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    がん疼痛に対し, ケタミンが使用されることは多い. 今回われわれは, 多発性骨髄腫の仙骨髄外転移による難治性の臀部痛の症例に対し, 複方オキシコドン注射液に加え, ケタミンを併用し, せん妄が惹起された1例を経験したので報告する. ケタミンを4 mg/時で経静脈的に開始した30時間後からせん妄が惹起され, 36時間後には疼痛の増悪の訴えが表出したため, オキシコドンのレスキューに加え, 2 mgのケタミンを急速に追加投与した. 投与直後, 過活動性せん妄が急激に出現したため, ケタミンの投与を中止した. 中止翌日には, せん妄が改善していた. 今回, このような少量のケタミンで過活動性せん妄が惹起された原因として, チトクロームP 450 (CYP) 3A4阻害作用を有する抗真菌薬のボリコナゾールが投与されていたことにより, ケタミンの副作用が強く出たことが考えられた. ケタミンを使用する際には, CYP阻害薬との薬物間相互作用に十分な注意を要する.
  • 荒木 裕登, 山中 幸典
    2012 年 7 巻 1 号 p. 510-513
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/22
    ジャーナル フリー
    【目的】掻痒感は終末期がん患者の耐えがたい症状の1つである. 終末期がん患者の掻痒感にミルタザピンが有効であった症例を経験したので報告する. 【症例】70歳代, 男性, 脳原発悪性リンパ腫. 入院時, The Japanese version of the Support Team Assessment Schedule, 自覚症状ともに4/4の全身の掻痒感あり, 夜間も掻痒感のため不眠であった. DSM-IVに基づいて大うつ病と診断, 不安も認めるためミルタザピン15 mg/日の投与を開始したところ投与開始2日目より掻痒感は軽減し, 投与開始7日目には0/4程度にまで改善した. また, 掻痒感による不眠も改善した. 以降, 掻痒感は0~1/4程度に保たれ, QOLは維持できた. 【結論】最近, ミルタザピンは終末期がん患者のさまざまな症状緩和に有効であると報告されており, 掻痒感に対しても有用であると考えられた. 本例および文献的考察により, ミルタザピンは終末期がん患者の掻痒感を改善しQOLを改善する可能性があると考える.
  • 柴原 弘明, 戸倉 由美子, 伊勢呂 哲也, 惠谷 俊紀, 池上 要介, 神谷 浩行, 橋本 良博, 岩瀬 豊, 植松 夏子, 今井 絵理, ...
    2012 年 7 巻 1 号 p. 514-517
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/22
    ジャーナル フリー
    【緒言】ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)で, 5-HT3受容体拮抗作用をもち, 嘔気を改善する先行研究が報告されている. 【症例】38歳, 女性. 遠隔転移を伴う進行腎がんに対し, スニチニブとオキシコドンを投与した. 経過中に出現した難治性嘔気・嘔吐に, ミルタザピン1.875 mg/日を開始した. 開始翌日に嘔吐は消失し, 2日目に3.75 mg/日へ増量したところ, 3日目には嘔気も消失した. 消化器症状でスニチニブとオキシコドンを中止することなく治療を続行できた. ミルタザピン15 mg/日の投与量では眠気が出現することがあるが, 今回の低用量投与で眠気はみられずに消化器症状の改善が得られた. 【結論】ミルタザピンの低用量投与は, スニチニブとオキシコドン併用時の難治性嘔気・嘔吐に対して, 有効な選択肢の1つであると考えられる.
  • 天野 晃滋, 川崎 宗謙, 篠邉 篤志, 都築 則正, 伊藤 彰博, 東口 高志
    2012 年 7 巻 1 号 p. 518-525
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/22
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは全人的ケアにて鎮静が回避できた肺がん歯肉転移の1例を経験した. 症例は64歳, 男性. 検診で進行肺がんと診断され, 化学療法を施行した. 1年6カ月後に歯肉転移が出現, 急激に増大し出血が著しいため, 動脈塞栓療法を施行したが制御不能であった. その後, 積極的な治療は選択せず, 当院に転院となった. 当初から全人的苦痛(特に精神的, 霊的苦痛)が強く, 希死念慮があり悲観的な発言が目立ち, 自ら深い持続的鎮静(DCPS)を希望したが, 全人的ケアで鎮静をすることなく, 平穏に最期を迎えることができた. 肺がん歯肉転移に関する文献的考察, この症例の全人的苦痛の評価と緩和ケアに関し報告する.
  • 西島 薫, 橋本 典夫, 小林 身和子, 森本 孝子, 阪口 紀子, 中西 晶子, 田中 裕子, 小山 富美子, 厨子 慎一郎, 柴田 邦隆
    2012 年 7 巻 1 号 p. 526-529
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/18
    ジャーナル フリー
    がん性腹膜炎による腹水貯留が原因の腹部膨満感が, 超音波ガイド下両側腹直筋鞘ブロックにより軽減した症例について報告する. 【症例】59歳, 男性, 胃がん. 腹膜再発による腹水貯留に対し利尿剤投与, 腹水ドレナージ, オピオイド投与が行われたが腹部膨満感に対する効果は限定的であった. 超音波ガイド下に両側腹直筋鞘ブロックを施行したところ, 腹部膨満感がNRS(6段階評価; 0~5)で5から1に軽減した. その後, 両側腹直筋鞘後葉にカテーテルを留置し, 週3回の0.25%ロピバカイン投与を永眠されるまで20日間継続し, その間に腹部膨満感の訴えは認めなかった. 【考察】腹水貯留から起きるさまざまな症状のうち, 腹部膨満感に対して両側腹直筋鞘ブロックが症状緩和の一助となる可能性がある.
総説
  • 廣岡 佳代, 梅田 恵, 林 ゑり子, 射場 典子, 坂元 敦子
    2012 年 7 巻 1 号 p. 701-706
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    がん患者のquality of lifeを維持・向上していくには, 症状に応じた適切な鎮痛剤の選択や使用だけでなく, 患者・家族への教育も必要となる. 本稿の目的は, 文献レビューを通じて痛みに関する家族教育の必要性を明らかにし, 示唆を得ることである. 医学文献データベースを用いて文献を検索し, 文献レビューを行った. その結果, 「患者と家族の痛みの認識の相違」「家族が捉える痛み」「痛みのマネジメントに関する家族の懸念」「痛みのマネジメントにおける家族の役割」「痛みのマネジメントに関する有用な資源」「家族への痛みに関する教育プログラム」に大別された. 今後は文献レビューの結果をふまえ, 家族を対象にした痛みの教育プログラムの開発などが求められる.
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