Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
9 巻, 3 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著
  • 谷山 智子, 清水 千佳子, 垣本 看子, 小林 典子, Saad Everardo
    2014 年 9 巻 3 号 p. 101-109
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/11
    ジャーナル フリー
    【目的・方法】がん診療において治療法の優先順位に関する認識を明らかにするため, 乳がん患者, 医師, メディカルスタッフを対象にアンケート調査を行った. 調査項目は1)がん告知後の治療法選択, 2)悪性度の高いがんに対する年齢設定別の治療選択, 3)生存期間(survival time; ST)と生活の質(quality of life; QOL)の異なる治療法の選択とした. 【結果】1)がん告知後の治療法選択について, 医療者より患者の方が, STとQOLのどちらを重視するかがはっきりしている傾向にあった. 2)医師は患者やメディカルスタッフと比べて高齢者に対してもSTを重視する傾向にあった. 3)患者と医師はSTを重視し, メディカルスタッフはQOLを重視する傾向にあった. 【結論】患者と医療者はがん診療に対し異なった意識をもっている可能性があり, その意識の違いを認識する必要がある.
  • 飯野 京子, 綿貫 成明, 小山 友里江, 栗原 美穂, 市川 智里, 岡田 教子, 上杉 英生, 浅沼 智恵, 大幸 宏幸, 藤田 武郎, ...
    2014 年 9 巻 3 号 p. 110-117
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    【背景】食道がんの術後は多様な症状・徴候があり, 長期的な外来でのケアが重要であり, 看護師が行う外来の看護ケアを明らかにする必要がある.【目的】胸部食道がん根治術後患者に対する外来での看護ケアの実態を明らかにする.【方法】2009年1月~2010年12月にかけ, 外来の看護ケアについて記載された診療録を前向きに調査し, 質的記述的分析を行った. 【結果・考察】66名の対象患者の診療録から, 外来の看護ケアに関する記録単位は372であり, 12カテゴリ, 74コードに分類された. 看護師は, 患者のもつ形態・機能の変化に伴う症状・徴候をアセスメントするとともに, 患者の主体的なセルフモニタリングを活用していた. 術後回復過程に合った栄養摂取と身体活動の促進のため, 系統的なプログラムを開発する必要が示された.【結論】今後,胸部食道がん術後回復促進のためのプログラムを考案したい.
  • 栗秋 佐智恵, 上村 智彦
    2014 年 9 巻 3 号 p. 118-123
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/23
    ジャーナル フリー
    【目的】がん患者の臨死期の意思決定について検討した. 【方法】52例の診療記録, 半構造化面接による医師の意向をもとに, 臨死期の意思決定について分析した. 【結果】医師が病状説明した対象は52例中49例において家族・代理人で, 48例で家族・代理人が意思決定していた. 患者が臨死期の意思決定をしているのは4例だった. 話し合いから死亡までの日数中央値は4日だった. 患者が意思決定を行わなかった際の理由は, 病状悪化が最多だった. 臨死期の意思決定者にかかわらず, 全例でdo not attempt resuscitationが選択されていた. 15名中8名の医師が臨死期の話し合いを家族と行うと回答, 患者と話し合うと答えた医師はいなかった. 【結論】臨死期の意思決定は, 医師が患者より家族と話し合う傾向があること, 話し合いの時期が死亡時期に近いこともあって, 大部分の患者で家族が行っており, 全例がDNARの意向だった.
  • 新藤 悦子, 茶園 美香, 近藤 咲子, 本多 昌子
    2014 年 9 巻 3 号 p. 124-131
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル フリー
    【目的】大学病院看護師への, 生きる意味を問う患者とのコミュニケーションスキル向上教育効果を検討した. 【方法】対象: 看護師24名. 介入方法: 村田が開発したスピリチュアルケア教育プログラムを用いた. 評価: 森田らの質問紙調査による介入前と1・3・6カ月後の平均値の差の比較. SPSS ver.21. を用いて対応のある15名を分析対象とした. 【結果・考察】経験年数平均12.5 (SD 8.2)年. 「Confidence of Communication」 と 「Sense of Helplessness」 は, すべての時期で, 「Positive Appraisal」は6カ月後で有意な差がみられた(p<0.05). “Self-Reported Practice”は積極的な姿勢に変化した. 本教育により大学病院看護師はコミュニケーションの自信を高め, 患者のそばに留まる傾向がみられ, 本プログラムの効果が示唆された.
  • 佐藤 泉美, 牧野 春彦, 下妻 晃二郎, 大橋 靖雄
    2014 年 9 巻 3 号 p. 132-139
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/22
    ジャーナル フリー
    【目的】乳がん専門医によるうつ病診療の実態調査 【方法】乳がん専門医352名に, うつ病診療状況に関する調査票を郵送した. 【結果】110名(31.3%)から回答を得た. 乳がん患者のうつ病罹患割合は, 90%の医師が20%以下, 約半数が5%以下と回答した. 第一選択薬はベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)が最多で(41.5%), 次が選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)だった(30.9%). BZD使用の医師は, 使用経験の豊富さ(オッズ比[OR] 8.20), 安全性(OR 6.27)で選んでおり, SSRIは, 効果の高さ(OR 7.07)で選ばれていた. 【結論】乳がん専門医の乳がん患者のうつ病診療では, 調査票に基づく診断や薬物療法等において高い水準の医療が均しく行われているとは言い難く, 精神科系専門家との連携も含め, 診療環境整備の必要性が示唆された.
  • 佐野 知美, 草島 悦子, 白井 由紀, 瀬戸山 真理子, 玉井 照枝, 廣岡 佳代, 佐藤 隆裕, 宮下 光令, 河 正子, 岡部 健
    2014 年 9 巻 3 号 p. 140-150
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    【目的】在宅で終末期がん患者の看取りを体験した家族(主介護者)の死別後の成長感の実態と, 成長感と看取り体験との関連を明らかにする. 【方法】在宅緩和ケアを受け, 自宅でがん患者を看取った主介護者112名を対象に, 自記式質問紙郵送調査を行った. 成長感は死別経験による成長感尺度を用い測定した. 【結果】有効回答73名(66%)を分析し, 病死による死別経験のある一般成人と比べ, 自宅で看取った主介護者は, 死別後に高い成長感をもつことが明らかになった. 重回帰分析の結果, 成長感に関わる看取り体験の要因として「看取りの覚悟」「故人の自宅療養の希望」「故人との絆の深まり」「亡くなる時の安らかさ」がおもに挙げられた. 【結論】療養場所や看取りについて十分に納得のいく主体的な選択ができ, 患者との絆の深まりに配慮し, 最期まで安らかでいられるような支援が, 死別後の生活の支えになるような成長感の獲得につながることが示唆された.
  • 山田 正実, 松村 千佳子, 地丸 裕美, 上野 理恵, 矢野 義孝, 高橋 一栄
    2014 年 9 巻 3 号 p. 151-157
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    【目的】外来通院中のがん疼痛患者の痛みを緩和するために, 初回の服薬指導だけでなく電話を利用した通院日以外の継続的な患者教育を行うことで, がん疼痛および副作用発現頻度に及ぼす効果について検討した. 【方法】介入方法は, 新規導入時(1回目面談), 導入後3~7日以内(2回目電話), 次回受診時(3回目面談)とした. 評価項目として疼痛評価(NRS), レスキュー回数, 副作用(便秘, 悪心, 眠気)とし, 各段階における効果を比較した. 【結果】1日の最大の痛みは1回目と比べて2回目および3回目において有意に低下した. レスキューの服用回数および1日のオピオイド服用量は, 2回目と比べて3回目で有意に増加し, 便秘の発現頻度は有意に減少した. 【考察】オピオイド導入時だけでなく通院日以外の日に電話による教育を取り入れた継続的な薬剤師介入は, 外来通院中のがん患者の疼痛の緩和および副作用の減少に効果があることが示唆された.
  • 宮下 光令, 小野寺 麻衣, 熊田 真紀子, 大桐 規子, 浅野 玲子, 小笠原 喜美代, 後藤 あき子, 柴田 弘子, 庄子 由美, 仙石 ...
    2014 年 9 巻 3 号 p. 158-166
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    【目的】東北大学病院のがん看護に携わる看護師の困難感の実態とその関連要因を明らかにする. 【方法】無記名の自記式質問紙調査. 東北大学病院でがん患者のケアに携わる病棟で働く看護師を対象とした. 【結果】512人に調査票を配布し, 有効回答は344人であった(67%). 患者・家族とのコミュニケーションに対する困難感が非常に高く, システム・地域連携に関する困難感, 自らの知識・技術に対する困難感が高かった. また, 医師の治療や対応に関する困難感, 告知・病状説明に対する困難感, 看取りに対する困難感にも改善の余地が示された. がん看護に関する困難感は一般病棟で高く, 過去1年に経験したがん患者のケアの合計人数が多い看護師は低かった. 【考察】今後はコミュニケーション・スキルの向上や, 特にがん看護の経験が少ない看護師に対する教育, 緩和ケアチームの関わりの増加, 退院支援や地域連携などのシステムの再構築などが課題である.
短報
症例報告
  • 齋藤 季子, 石原 裕起, 増田 由起子, 村上 真基
    2014 年 9 巻 3 号 p. 501-505
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/15
    ジャーナル フリー
    【緒言】婦人科がん術後に生じた続発性下肢リンパ浮腫急性増悪3例を対象とし, 1週間の入院で2段階方式複合的理学療法の集中排液治療を行った. 【症例】3症例はいずれも子宮体がん術後の女性で, 国際リンパ学会重症度分類stage-II早期であった. 退院時の患肢周径は平均92~96%まで改善した. 症例1 (35歳)は退院後のセルフケアが一時不良となり, 下肢周径の増悪を認めたが, 再教育下でリンパ浮腫ケア外来に通院中で, 浮腫は軽減した. 症例2 (63歳)は退院後もセルフケアが良好で, 下肢周径は治療前の83%まで改善し, 治療前の抑うつ状態も軽快した. 症例3 (70歳)もセルフケア良好で浮腫の再増悪を認めずに経過したが, 治療後1年2カ月でがん再発により死亡した. 【考察】下肢リンパ浮腫に対する1週間の短期入院集中治療は有効であった. しかし, 退院後の維持治療期にセルフケアが不良となって再増悪した症例を認め, 長期的ケアの継続が課題となった.
  • 岡山 幸子, 松田 良信, 迫田 淑子, 日吉 理恵, 遠野 かおり, 吉田 こずえ
    2014 年 9 巻 3 号 p. 506-510
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/16
    ジャーナル フリー
    【緒言】メサドンを外来で処方開始後に, 看護師による服薬指導, 精神的支援などを行うことで良好な疼痛管理を得た1例を報告する. 【症例】60歳代, 男性, 膵がん, 多発肝・骨転移. 抗がん剤投与中, オキシコドンによるがん疼痛管理が不良のため, 緩和ケアチームに紹介された. メサドンへの変換が有効と考え, 緩和ケア内科医に紹介, 投与開始前から投与15日目の用量調節完了まで, 緩和ケア認定看護師が患者・家族との面談と電話連絡による支援を行った. 【考察】メサドンの導入後は, 綿密な観察が必要であるとされ, 患者・家族の不安も大きい. 血中濃度が安定して良好な鎮痛効果が得られるまで, 緩和ケア認定看護師が患者や家族と連絡をとり, 不安を緩和し, 全身状態の把握を行うとともに主治医に報告し, 症状マネジメントを行うことで, メサドンは外来通院患者でも, 安全に導入することができると考えられた.
  • 阿部 克哉, 久永 貴之, 東端 孝博, 稲津 和歌子, 木内 大佑, 萩原 信悟, 下川 美穂, 志真 泰夫
    2014 年 9 巻 3 号 p. 511-515
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/22
    ジャーナル フリー
    【緒言】わが国でのメサドンの使用は, 先行する強オピオイドからの変更に限られており, 先行オピオイドを中止してメサドンを開始するstop-and-go (SAG)法が推奨されている. 【症例】悪性腸腰筋症侯群による難治性疼痛に対し, モルヒネとケタミンの併用からメサドンにSAG法で変更した. 一時的に疼痛が増強したが, モルヒネの再開と約2週間の併用によって疼痛緩和を得た. 【考察】本症例のように疼痛コントロールが不良でメサドンに変更する場合には, 段階的に置き換える方法がSAG法よりも有用であると考える. メサドンは, 過量投与の問題を考慮して少なめに開始するのが安全であり, 疼痛の増強を回避するためには, より柔軟な初回投与量の設定や用量調節の検討が必要と考える. 併用している鎮痛補助薬をメサドンへの変更時に継続する妥当性, 特にNMDA受容体拮抗作用がメサドンと重複するケタミンを継続することの妥当性については, 今後も議論を深める必要がある.
  • 相河 明規, 大坂 巌, 大野 茂樹, 木村 陽, 安達 勇
    2014 年 9 巻 3 号 p. 516-519
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/05
    ジャーナル フリー
    進行がん患者の倦怠感の緩和には難渋することが多く薬物療法は限られている. がん関連倦怠感にタウリン4,000 mg分2/日を経口投与しCancer Fatigue Scale (CFS)スコアの改善を認めた2症例を経験した. がん関連倦怠感に対するタウリンの効果については, これまで報告された文献は皆無である. しかし, タウリンは古くから多彩な効果が報告されている薬剤であり, がん関連倦怠感に対する有効な薬剤の1つになる可能性がある.
活動報告
  • 木村 彩, 黒田 美智子, 川村 博司, 渡部 芳紀, 山田 里美, 重野 朋子, 國分 恵, 小笠原 未希, 吉田 満美子, 青木 砂織, ...
    2014 年 9 巻 3 号 p. 901-906
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/11
    ジャーナル フリー
    【緒言】地域緩和ケアサポートセンター(以下, センター)は, 「早期からの緩和ケアの実践」「緩和ケアの啓発」そして「地域連携推進」に取り組み, 緩和ケア, 在宅医療, 在宅での看取りに対する誤解・偏見の払拭を図り, がん患者の在宅緩和ケアの推進に努めてきた. センター活動とその結果について報告する. 【方法】センター開設後4年間(2009~2012年度)に行ってきた早期からの症状マネジメントに基づく外来・入院・在宅療養支援と, 院内外における緩和ケアの啓発および地域連携推進活動について評価した. 【結果】センター初診患者数・紹介患者数が増加し, 患者支援期間, 緩和ケア科と腫瘍診療科の併科期間が延長した. また, 在宅療養への移行率が向上し, 在宅療養期間は延長し, 在宅での看取り数が増加した. がん患者の療養と看取りの場が病院から在宅へ徐々に転換してきていることが示された.
  • 山手 美和, 綿貫 成明, 笠原 嘉子, 大石 恵子, 相良 君映, 中島 朋子, 河 正子, 飯野 京子
    2014 年 9 巻 3 号 p. 907-910
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/22
    ジャーナル フリー
    【背景】看護大学と医療機関の看護師が連携し, エンド・オブ・ライフ・ケアに関する連携・協働を目指す看護師同士の交流の場やネットワークを構築するために「たまエンド・オブ・ライフ・ケア交流会」を立ち上げた. 本交流会を立ち上げるにあたりニーズ調査を行い, その結果を基に, 第1回たまエンド・オブ・ライフ・ケア交流会を開催した. 【結果】東京都北多摩北部地区周辺の14病院, 6訪問看護ステーション, 1居宅介護支援事業所から39人の看護師が参加した. 本交流会を実施し, 看護師のエンド・オブ・ライフ・ケアに関する興味関心の高さと看護師の交流や情報交換の場の必要性が再確認された. 【考察】今後の課題として, 継続的な交流会の実施やプログラム内容の検討を行うとともに, 東京都北多摩北部保健医療圏の看護師同士の顔が見える連携を図り, 健康問題を抱えながら生活する患者と家族への看護実践の向上・充実に資することができるような活動の必要性が示唆された.
  • 岸本 寛史, 小島 一晃, 原武 麻里, 藤原 和子, 岩井 真里絵, 石丸 正吾, 金村 誠哲
    2014 年 9 巻 3 号 p. 911-915
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/02
    ジャーナル フリー
    アブストラル®舌下錠は, フェンタニルの速放製剤と位置づけられるが, その用法・用量の調整は, 従来のオピオイド製剤と異なる点が多い. 留意点として, 本剤の増量がレスキュー・アップであることを意識した用量調整, ベース量に見合った1回投与量の上限の目安の設定, レスキュー投与と追加投与の区別, その間隔や回数についての制限の周知, コストなどが挙げられる. これらを鑑みて, 当院では, 原則として経口摂取が難しくなってきた患者で持続注射が導入されていない入院患者を適応とした. 緩和ケアチーム・薬剤部・看護部が協力して上記留意点の周知を図った. 医師向けの講習会を診療科ごとに開催し, 講習を受けた医師のみが処方できるライセンス制を導入し, 医師から看護師への指示を標準化した. また, 看護師をはじめとする医療スタッフ向けに10回の勉強会を開催した. 処方後は, 薬剤部と緩和ケアチームによるモニタリングも行う体制を整えた.
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