小児の脳神経
Online ISSN : 2435-824X
Print ISSN : 0387-8023
45 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 舟木 健史, 高橋 淳, 宮本 享
    2020 年 45 巻 4 号 p. 327-331
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    大半が虚血型を占める小児もやもや病において,出血型はまれであり,直接血行再建が再出血予防に有効であるかどうかは明らかではない.小児出血型に対して直接血行再建を行った自験例5例を検討した.10半球中9半球で脈絡叢型側副路が陽性であり,脈絡叢型側副路の術後退縮率は他の脆弱側副路と比べて高かった(87.5%).全例でバイパスは開存し,追跡期間中の再出血はなかった.小児出血型の特徴の一つとして脈絡叢型側副路の存在が示唆され,その退縮効果の高い直接血行再建は小児出血型に対して有効である可能性が示唆される.

  • 守山 英二, 石川 慎一, 藤原 倫昌
    2020 年 45 巻 4 号 p. 332-339
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    小児期の脳脊髄液漏出症はまれではない.典型的な特発性低髄液圧症候群のような明白な起立性頭痛,MRI所見を呈することは少なく,頭痛,立ちくらみ,起立性低血圧,起立性頻脈症候群,睡眠覚醒障害などのために就学,日常生活に支障がある場合,本症を疑う必要がある.脊髄MRI(脂肪抑制T2強調画像)が診断に有用であり,上部~中部胸椎レベルの硬膜外高信号が特徴的である.硬膜外ブラッドパッチ治療は安全かつ有効な治療である.硬膜外持続注入は,診断的治療,さらには患者~家族に治療必要性の理解を促す手段として有効である.

  • 荒木 孝太, 黒羽 真砂恵, 津田 恭治, 井原 哲
    2020 年 45 巻 4 号 p. 340-345
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    後頭蓋窩腫瘍に伴う水頭症14例について,疾患背景,臨床経過,画像所見,診断,永続的水頭症の有無をもとに,術後水頭症発生の予測因子を検討した.初回手術時の水頭症治療は腫瘍摘出手術単独が5例,脳室ドレナージ術8例,内視鏡的第3脳室開窓術+脳室ドレナージ術1例だった.2例が永続的水頭症となりVPシャントの追加を要した.年齢2歳未満,部分摘出,播種の存在が永続的水頭症と相関した.小児後頭蓋窩腫瘍に伴う水頭症の多くは十分な腫瘍摘出により,一時的脳室ドレナージ術で管理可能と考えられた.

  • 山崎 文之, 木下 康之, 碓井 智, 高安 武志, 高野 元気, 米澤 潮, 田口 慧, 露口 冴, 富永 篤, 栗栖 薫, 杉山 一彦
    2020 年 45 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    ジャーミノーマと胚細胞性腫瘍(NGGCT)群の長期的な転帰をSEERのデータベースを用いて比較検討した報告では,5年以上生存した場合にジャーミノーマ群がむしろ生存率が低かったと報告され,広島大学病院の検討でも同様の結果であった.しかし,松果体部や神経下垂体部など部位別に検討した場合,松果体部発生例ではジャーミノーマ群の生存率が高い傾向を示した.神経下垂体部はホルモン分泌不全による二次性イベントが予後を悪化させる一因であり,低侵襲治療と適切なホルモン補充療法の必要性が明らかとなった.

  • 山崎 文之, 木下 康之, 岡田 賢, 唐川 修平, 碓井 智, 高安 武志, 宇都宮 朱里, 高野 元気, 米澤 潮, 田口 慧, 露口 ...
    2020 年 45 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    小児・思春期発症の悪性脳腫瘍サバイバーの低身長とGH補充療法の効果を検討した.広島大学病院で加療を行った18歳未満の患者で1年以上経過観察を行い無再発生存中,または10年間event freeの患者(胚細胞性腫瘍48人,胎児性癌32人)を後ろ向きに解析した.神経下垂体病変を有する患者では補充療法により低身長は改善するが,BMIが高値の傾向であった.低身長のリスク因子は脊髄放射線照射,低年齢発症,女性,末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法で,早期に適切なGH補充療法を行うことの重要性が示唆された.

症例報告
  • 秋本 大輔, 末永 潤, 山本 哲哉
    2020 年 45 巻 4 号 p. 358-364
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    小児後頭蓋窩上衣腫で,播種を伴い多発に再発した場合の治療については一定の見解はない.本症例は第四脳室に発生した退形成性上衣腫の6歳女児で,3回の手術で全摘出後に後頭蓋窩照射するも,その後播種を伴い再発を繰返した.定位照射により各腫瘍は1年程度制御でき,合計14回の手術と11回の定位照射で発症から60か月は良好なQOLを保つことができた.再発時の治療は再手術や追加照射を繰り返すことになり,患児の負担が大きい.定位照射は手術回数を減らしQOLを維持する目的で,治療オプションと成り得ると考えられた.

  • 宇津木 玲奈, 木本 優希, 福屋 章悟, 有田 英之, 前野 和重, 江國 哲, 大西 聡, 起塚 庸, 宇都宮 英綱, 原田 敦子
    2020 年 45 巻 4 号 p. 365-372
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    頭蓋咽頭腫は小児期と成人期の二峰性に好発するが,乳児期発症はまれで,合併症の長期的な管理が難しく予後不良とされる.今回我々は活気不良で発症した14か月男児の頭蓋咽頭腫を経験したので文献的考察を加えて報告する.腫瘍は鞍上部から第三脳室まで及んでいたため,経大脳半球間裂到達法で全摘出した.視神経は温存できたが,術後下垂体機能不全や硬膜下水腫を合併し,治療に難渋した.今後もホルモン補充療法や視力や発達の評価,腫瘍の再発評価など他科と連携しながら厳重な管理を要すると考える.

  • 長坂 昌平, 齋藤 健, 山本 淳考
    2020 年 45 巻 4 号 p. 373-377
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    交通外傷による硬膜損傷を伴う頭蓋骨骨折は,遅発性髄液漏や感染予防のため確実な硬膜閉鎖や頭蓋形成が求められる.症例は6歳男児,交通外傷により外傷性頭蓋内出血と頭蓋骨粉砕骨折を認めた.右前頭葉や眼窩内に陥頓した骨片を除去し,骨膜およびフィブリン糊,吸収性ポリグリコール酸シートを用いて硬膜閉鎖,ハイドロキシアパタイトを使用し頭蓋形成術を施行.術後感染なく独歩退院.交通外傷による硬膜損傷を伴う頭蓋骨骨折では確実な硬膜閉鎖が必須で,審美面を考慮した頭蓋形成術においてハイドロキシアパタイトが有用であった.

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