小児神経外科手術における外視鏡の有用性や問題点について考察した.病変の局在によってはテント下にも仰臥位でアプローチが可能であり,体位設定に制約が生じる小児において有用である.後頭蓋窩腫瘍においては死角となりやすい部位の観察が可能であり,術者の姿勢負担も大幅に軽減される.一方で,視覚と手の操作に方向性の「ずれ」が生じるため,特に高倍率での精緻な操作には慣れや訓練が必要であると考えられた.
2022年8月~2023年5月に当院を受診した137人を対象に,超音波での縫合線評価の結果と,CraniometerⓇという専用の計測ノギスを用いたcranial asymmetry(CA),cephalic index(CI)の計測結果を検討した.3Dスキャンによる正確な値と比較しCAを5 mm以上軽症に計測した例が10.3%,5 mm以上重症に計測した例が2.3%であった.短頭症ではCIを重症と計測する傾向を認めた(−5.7~2.8%,中央値−1.1%).超音波検査を施行した130人(77~366日齢)で,縫合線の癒合の有無を確認できた.
偶発的に発見されたlow-grade glioma疑い病変について,当院での経過観察症例を対象として増大の有無に影響する臨床的因子を中心に検討した.増大の有無を18歳以上と18歳未満の二群に分けて検討すると,18歳以上の群は18歳未満の群と比較して有意に増大が多かった.また,画像診断についてT2-FLAIRミスマッチサインに着目すると,小児の症例や病変が小さい症例においては星細胞腫,IDH遺伝子変異陽性の感度と特異度が低下した.
当センターで実施したバクロフェン髄注療法について報告した.スクリーニング時の体位設定シミュレーションと穿刺時の透視管球角度を再現することで手術時間の短縮につながった.特に高度側弯例においてはスクリーニング時のポンプ植え込みを見据えたプランニングが重要となる.合併症回避については,脊椎弯曲を考慮したカテーテル留置高位の決定や直視下カテーテル挿入が有用であった.また脳室腹腔シャント留置例のdry tapや高度るい痩症例のポンプ植込部の創管理などにも注意を要する.
ヘルメット療法HTが可能となり外来対応が増えている.今回頭蓋変形を主訴に当科外来を受診した291症例を検討.受診目的は整容と頭蓋変形の不利益に対する不安に大別された.4例が頭蓋縫合早期癒合症CSと診断された.頭位性頭蓋変形PHDは258例で多くが頭蓋変形の不利益を懸念しての受診で2割がHTを施行した.外来においてはCSが適切に診断されることが第一であり,PHDへの対応は頚定までの時期は適切な対応方法を指導すべきで,HTを行う場合家族の十分な理解を得ることが適応条件であると考えられた.
NF1の4歳女児.脳血管撮影で両側内頚動脈終末部周囲の狭窄と異常血管網を認めたが,典型的もやもや血管と異なり,twig-like MCAと類似する異常血管網が狭窄近位から遠位を吻合する様相を呈していた.異常血管の存在部位が内頚動脈狭窄周囲であること,右大脳半球の血流低下と最近生じた虚血症状があることから,NF1関連類もやもや病による後天性の血管病変と診断した.類もやもや病の血管形態の特徴と遺伝子異常の関連は不明な点も多いが,本症例はNF1バリアントによるニューロフィブロミン機能障害が血管病変発生に関与したと考えた.
巨大後頭部脳瘤の1例を経験したので報告する.胎児エコーで後頭部脳瘤を指摘された女児.在胎37週5日に帝王切開で出生し,生後4日目に脳瘤切除術および頭蓋骨欠損部の頭蓋形成術を施行した.術後6か月時点で多発のう胞病変を伴う水頭症病態を呈していたため,のう胞-腹腔シャント術,のう胞開窓術および頭蓋形成術を行った.初回手術では骨欠損部を吸収性プレートなどで覆わないと,術後に脳が再び突出する危険性がある.頭蓋欠損が自然に形成されることはなく,二次手術時に自家骨片を骨膜とともにrotation flapとして用いた頭蓋形成術を行うことが望ましい.
症例は1歳7か月の女児.右眼瞼皮下血腫および頭部CTで硬膜外血腫様の所見を認め増大傾向にあったため開頭血腫除去術を行った.術中所見では血腫とともに頭蓋骨の異常と硬膜外に軟部腫瘍を認めた.術後全身CTで右副腎腫瘍を認め,摘出した組織標本の病理所見を含めて神経芽腫の診断に至った.神経芽腫は早期治療介入で生命予後が改善することが知られている.しかし脳神経外科医にとって馴染みの薄い疾患であり,眼瞼皮下血腫と硬膜外血腫様の所見の合併が外傷によるものと断定せず,知識を持ち合わせることで早期治療介入できる.
1歳9か月女児.長径71 mmの左側頭葉atypical teratoid/rhabdoid tumorに対し,小開頭で内視鏡手術を行った.皮質小切開を行い,細径超音波手術器を用いて腫瘍を亜全摘した.その際,左側脳室下角が開放した.術2週後に嘔吐,右不全片麻痺を伴うExtra-axial fluid collection(EAFC)を認め緊急ドレナージ術を要した.腫瘍を摘出した際に脳室が開放し,さらに髄液循環不全を伴った場合は,症候性EAFCを合併する可能性があるため注意すべきである.
AEDHを契機に発見されたITPの1例を経験したので報告する.症例は14歳男児,早産・低出生体重児であり二絨毛膜二羊膜双胎(DD twin)の第二子として出生した.けいれん,意識障害で受診しAEDHを認め開頭血腫除去術を施行した.術中の出血量は1,500 mlであったが明らかな骨折線や活動性の出血は認めなかった.術後経過は良好であった.血小板数の低値遷延から血液疾患の合併を疑い,精査した結果ITPの診断に至った.
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