1985年以後,水頭症のシャント機能不全としてAPC 23例を対象に背景,症状,治療予後など臨床像を調査し,小児17例と成人6例を比較した.小児のほぼ全例が先天奇形であり,成人2例は小児期にシャント留置されており,複数回の再建歴があった.成人の3例で悪性腫瘍の腹部手術歴を認めた.治療は感染所見の有無,腹腔内の性状により腹側カテーテルの位置変更のみか,髄液ドレナージを要するか決定し,最近は光学技術の進歩により内視鏡などの併用もあり,良好な成績であった.成人期においてもAPCは念頭におくべきである.
脳虚血改善目的のバイパス術後,成人後に脳出血を来す小児期発症もやもや病患者を時に経験する.過去40年に経験した9例(4.0%)13回の成人後脳出血について,脳室吻合チャネル(PA)に注目して画像を検討した,出血源が確認できた症例の多くはPAが出血源であった(7例).PAはバイパス術後の退縮が報告されており,成人後脳出血は手術効果の及びにくいPAからの出血が多い可能性がある.今後は脳虚血改善に加えPA退縮も考慮した手術を行うべきと考えた.
1歳未満で半球離断術を行った半球性薬剤抵抗性てんかん9例の特徴と発作予後,周術期合併症を検討した.背景疾患は全例で発達性素因であった.合併症として水頭症を3例,一過性の電解質異常を1例にみとめた.9例中6例で発作が消失した.1歳未満の早期手術の安全性と有効性が示唆された.
手術部位感染症(surgical site infection: SSI)は経済的観点からも重要な課題となっている.本邦でのガイドラインでは投与期間が記載されているものの,特に小児例においてはエビデンスレベルが低い.本研究では小児脳神経外科手術において抗菌薬の投与期間を短縮してSSIの発生率を検討したが,SSIの発生率は非劣勢を示した.この結果から抗菌薬の投与期間短縮が可能なことが示唆されたが,今後はより詳細な検討が望まれる.
小児水頭症で治療に結びつかず成人となった「埋もれた水頭症」(BH)を検討した.【結果】男性6名,女性4名.平均年齢54歳.病型は先天性6名(うちLOVA 1例),感染後2名,腫瘍1名,正常圧水頭症1名.死亡例1例.外科的治療はETV1例,VPシャント2例.【考察】BHは障害程度により日常生活への支援が必要なことも多く,家族・支援者の高齢化に伴い早急な社会支援が必要となる可能性があり,外科的介入時に病状の説明・同意が困難な症例もある.制度の改革を含めた社会支援の拡充を期待したい.
在胎34週0日の早産児.脳室内出血で発症した.頭部単純CTとMRIにて脳静脈洞内血栓が認められ,MR angiographyおよびMR venographyにて脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法は見合わせた.発症42日後のMRIにて脳静脈洞は再開通したが,静脈性梗塞と水頭症を認め,脳室腹腔短絡術を施行した.発達遅延を認めている.早産児の遅発性脳室内出血では,脳静脈洞血栓症を念頭に置きMRI等の精査を行う必要がある.早産児脳静脈洞血栓症に対する抗凝固療法の有用性は,今後多数例での検証が望まれる.
15歳男児.ラグビーで右側頭部を打撲した.初診時,神経診察と単純X線撮影に異常なく帰宅したが,頭痛と嘔気が増悪し再診.CTにて右頭頂骨に内板が剝離・陥没し外板を貫通しない骨折,および右硬膜外血腫を認めた.経過観察で軽快し,同血腫は消失した.このまれな骨折の機序として,粘弾性のある頭蓋骨に物体が瞬間的に衝突すると,外板が陥凹し,板間を介し内板が押し出され,引っ張り応力により破断すると推察されている.この骨折は軽症頭部外傷でも生じ,単純X線撮影のみでの診断は困難である.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら