周産期学シンポジウム抄録集
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第20回
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序文
  • 藤村 正哲
    p. 5
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     先端医療をめぐる受益者,医療者,医療システムの課題は古くかつ新しい。この20年余りの間に生殖補助医療技術は急速に進歩し,不妊に悩むカップルの福音となった。しかし同時に,多胎などさまざまな問題を引き起こしているのも事実である。第20回日本周産期学会シンポジウムは2002年1月に「不妊治療と周産期医療」をテーマとして大阪国際会議場で開催された。

     Evidence-based Medicineでは,治療的介入の効果・評価はエンドポイントとして客観的指標を定めて行うことになっている。これを不妊治療に適用しようとしてまず問題になるのが,治療担当者とエンドポイント評価者が切り離されて別々の場面・システムで進行しているということであろう。そこで治療担当者は手っ取り早い効果・評価を妊娠率で判定してしまう。この問題は不妊医療提供の構造的な矛盾であり,にわかに解決するということは難しい。しかし医療の総合化を図って患者中心の医療実現への道は追求しなければならず,本シンポジウムがその微かな一歩となることを希望したい。

     不妊治療法のガイドラインや減数手術などに関する法的規制の早急な整備を行政に求める意見が多かった。政府の提唱する国民運動計画「健やか親子21」は,わが国の子育てを巡る諸問題への取り組みの視点を提示して優れたものであるが,不妊治療に関しては相談体制と提供体制までは触れるが評価体制には言及できておらず,不妊医療には政策的な見通しも立っていないといわざるを得ないのが残念である。地方自治体の一部で不妊医療費を補助する制度が進められているが,短見であろう。受益者や医療提供者をはじめ,関係者に求められている課題が本冊子の随所に提言されているので,今後の行動指針として生かされることを願う。

     おわりに,このシンポジウムを企画いただきました日本周産期学会・常任幹事会の先生方,座長,シンポジストの方々,学会運営にご協力を賜った諸氏に心より感謝申しあげます。

シンポジウム午前の部
  • 星 和彦
    p. 15-22
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     優れた排卵誘発法やマイクロサージャリーに代表される不妊症の治療法は近年飛躍的に進歩しているが,重症の卵管性不妊症や重篤な男性不妊症は難治性不妊症として取り残された時期があった。しかし最近,「体外受精・胚移植法」や「顕微授精法」といったいわゆる生殖補助医療技術(assisted reproductive technology;ART)が次々と開発され,難治性不妊症のカップルに福音を与えてきた。「顕微授精法」なかでも「卵細胞質内精子注入法」とよばれる方法は,きわめて細いガラス針を用いて精子を直接卵子の中に挿入し,強制的に受精を行わせる方法で,理論的には精子が1個みつかれば受精が可能であるという画期的なものである。最近ではこの方法の無精子症への応用も期待されている。

     1983年にわが国で初めて体外受精・胚移植が成功して以来20年が経過しようとしている。この間,体外受精をはじめとするARTの普及はめぎましく,これらの技術で年間1万人以上の新生児が誕生し,100人に1人は体外受精児という時代が到来している。技術的にはめざましい進展を遂げているARTであるが,派生するさまぎまな問題点を先送りしてきた観も否めない。これらについて,文献的考察を含めて述べてみたい。

  • 並木 幹夫
    p. 25-32
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     少子高齢化杜会を迎え,不妊治療に対する期待は今まで以上に高まっている。しかし最近,内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)との関連で男性の妊孕力の低下が憂慮されている。この問題は,カールソンら1)が文献を集計して,過去50年間でヒトの精子濃度が半減したと報告したことに発するが,いまだ議論のあるところであり,国内外でヒトの生殖機能についての調査が行われている。また,種々の環境ホルモンが生殖機能に与える影響についての実験的研究も行われている。

     さて最近注目されている男性不妊に関するもう一つの話題は,精子形成関連遺伝子である。男性不妊症の過半数を占める特発性精子形成障害は,その病因・病態が不明であり,治療成績もあまり芳しくないのが現状である。この問題を根本的に解決するためには遺伝子レベルからの検討が重要であるが,最近男性不妊症のかなりの割合で,染色体異常や微小な染色体の欠失により精子形成が障害されることが明らかになり,その欠失区間に存在すると予測される精子形成に関わる遺伝子の同定が多くの研究者により試みられている。

     本シンポジウムでは,男性不妊治療の現況と,精子形成に関わるY染色体上の遺伝子azoospermia factor(AZF)について概説する。

  • 友田 昭二, 中村 哲生, 竹林 忠洋, 福益 博, 中川 恵理, 植田 充冶
    p. 35-41
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     最近不妊治療による妊娠が増加してきている。図1に1995年より6年間に聖バルナバ病院にて分娩した妊婦のなかで不妊治療後に妊娠した割合の推移を示している。これは生殖医療の発達,特に体外受精に代表されるART(assisted reproductive technology)の発達によると考えられる。従来の方法では妊娠しえなかった両側卵管閉塞症や乏精子症でも妊娠が可能となってきた。しかしその一方では母体の高齢化に伴い(図2)ARTの適応が拡大してきているのも事実である。1995年には30歳以上の初産婦は34.5%, 35歳以上の経産婦は17.6%であったのが2000年にはそれぞれ44.3%, 25.2%に上昇している。

     不妊症治療後の妊娠では合併症が多く認められている。その一つは多胎妊娠である。前述のバルナバ病院におけるデータベースからの検討では自然妊娠では0.6~2.3%に多胎妊娠が認められているが,不妊治療後の妊娠では8.2~29.0%にも多胎妊娠が発症していた。多胎妊娠に伴って切迫流・早産の合併症が当然のことながら多く発症しているが,偶発合併症も不妊治療後の妊娠に多く認められる印象が強い。そこで本研究では不妊治療後の妊娠に合併症が多く存在するのか否かを明らかにするとともに,合併症を妊娠前すなわち不妊治療中に治療することが可能かを併せて検討した。

  • 肥後 貴史, 鮫島 浩, 三部 正人, 山内 憲之, 桂木 真司, 米田 由香里, 川越 靖之, 川口 日出樹, 池ノ上 克
    p. 43-51
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     不妊治療,特にART(Assisted Reproductive Technology)による多胎妊娠の増加とその周産期予後については議論されることが多い1)。しかしわれわれは不妊治療後に妊娠糖尿病(GDM)と診断された患者の胎児にCaudal regression(図1)が生じたことを契機に,不妊治療と妊婦の合併症,特に糖代謝異常について注目して検討を加えた。

     妊娠糖尿病(GDM)は『妊娠中に発症または初めて発見された耐糖能異常』と定義されている2)。これには「妊娠糖尿病」のみならず,「妊娠中に発症した糖尿病」や妊娠前に診断されていなかったいわゆる「見逃されていた糖尿病」が妊娠中に初めて診断された場合も含まれている。「見逃されていた糖尿病」の場合,奇形の合併率も高いと予測され,周産期管理に少なからず影響を及ぼすと考えられる。1980年から1997年にわれわれが行った妊娠前糖尿病と妊娠糖尿病とを合せた(DM/GDM妊娠)臨床研究では,周産期死亡率が平成9年の全国平均より約3倍と高率であり,その約50%に奇形が関与していた3)。血糖管理不良の妊娠前糖尿病や妊娠前からDMであった可能性の高いGDMは,妊娠初期のHbA1cが高値を示した。妊娠14週までのHbA1cの値は,奇形の発生率と相関し,HbA1c 8.6%以上で奇形発生率22.4%と報告されている4)。このようにDM合併妊娠では,妊娠前にDMと診断し,妊娠前から厳格な血糖コントロールを行うことが周産期予後を改善するうえで非常に重要である。

     一般妊婦の多くは妊娠して初めて病院を受診するため,潜在する合併症が妊娠後に初めてわかることが多い。しかし不妊治療は妊娠することを目的に病院を訪れているので,その間に潜在的合併症を診断し治療を行うチャンスがある。

     今回はまず当院でのDM/GDM妊娠の現状について後方視的研究を行い,次に“不妊症患者における糖尿病スクリーニングと妊娠経過・予後”に関する前方視的研究を行った。

  • ~不妊センターと周産期センターの連携~
    渋谷 伸一, 村越 毅, 東條 義弥, 成瀬 寛夫, 鳥居 裕一, 大木 茂, 西尾 公男, 犬飼 和久, 西垣 新, 岡田 久
    p. 53-61
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     当院には平成10年に静岡県より指定された,総合周産期母子医療センター(以下周産期センター)産科(以下産科),新生児科(neonatal intensive care unit ;以下NICU)があり,主に静岡県西部地区の各周産期医療施設と連携して周産期医療の一翼を担っている。また,当院では1989年より体外受精・胚移植(in vitro fertilization and embryo transfer;以下IVF-ET)を開始し,不妊内分泌科として不妊治療を進めてきた。さらに平成12年より不妊内分泌センター(以下不妊センター)として設備・人員を充実させている。このように当院では周産期センターと不妊センターを同一施設内に抱えている全国的に数少ない施設の一つである。

     周産期センターは当院通院中の産科的治療を必要とする妊婦の治療や当院で出生した早産児や異常新生児などの集中治療に加え,近隣産科施設からの母体搬送・新生児搬送を受け入れている。しかし,産科およびNICUの病床数には限度があり,特に多胎の増加は早産・未熱児を増加させ,NICUの慢性的なベッド不足を生じさせてしまう。より有効なNICUベッドの活用のためには不妊側で多胎を発生させないことはもとより,産科側の適切な多胎の妊娠・分娩管理が重要となってくる。

     不妊治療による多胎の増加は,以前より当科でも検討され,第11回日本周産期学会において,不妊治療による多胎の抑制の重要性を報告した1)

     その背景として,IVF-ET開始翌年の1990年にはIVF-ETにより38例が妊娠した。そのうち多胎は14例であり,その中の4例が要胎であった。要胎4例のうち2例が当院で妊娠を継続し,分娩となった。その年の多胎分娩数は24例であり,品胎以上の妊娠は5例21%であった。この結果を踏まえて,センターとなる以前の周産期グループと不妊グループで協議し,その後移植胚数を原則的に3個以下とした。これにより1991年以降の多胎妊娠は減少したが,IVF-ETでの妊娠数・妊娠率も減少した。その後,IVF-ETを含めた補助生殖医療(assisted reproductive technology:以下ART)の進歩により徐々に妊娠率は向上した。

     さらに,妊娠率の向上に伴って多胎も増加し,1998年にはIVF-ETによる品胎が3例発生したため,胚移植数を2個に制限した。このときは胚移植数の制限による妊娠率の減少はなく,多胎率も変化はみられなかったが,2個胚移植では品胎の発生はなく,NICUへの負担を軽減できた。

     本稿では,当院不妊センターと周産期センターの連携による多胎妊娠,特に品胎妊娠の予防とNICUの負担軽減の取り組みを紹介するとともに,その内容を検討したので報告する。

  • 吉村 泰典, 楠田 聡
    p. 64-65
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     望んでも2年以上妊娠できない不妊症の夫婦は一般に約10%存在し決して稀ではない。そして,不妊症の夫婦が自分の子どもをもつためには不妊治療が不可欠であり,不妊治療のもつ杜会的意義は大きいといえる。そのため,排卵誘発,人工授精,体外受精・胚移植(IVF-ET),顕微授精(ICSI)等の多くの生殖補助医療技術(ART)が開発されてきた。その結果,挙児を願う夫婦にとって大きな福音となったが,同時にARTに伴う多胎児の増加が周産期医療およびその家族に大きな負担となってきた。

     日本産科婦人科学会での調査によると,1999年に日本で出生した新生児1,177,669人のうち,11,929人がARTによる出生であった(表1)。したがって,全出生児の約1%がARTの恩恵を受けており,ARTが日本の社会にすでに定着したことを示す。一方,多胎児の増加も著しく,日本でIVF-ETが開始される前に比べて,双胎,三胎はそれぞれ約1.5, 4.6倍に増加し,双胎の約30%,三胎の80%は不妊治療によると報告されている。四胎以上は移植胚数が制限されて絶対数は減少しているが,四胎以上のほとんどは不妊治療の結果である。多胎児は当然早産のリスクが高く,双胎で40%, 三胎で85%の頻度となっている。その結果,新生児死亡率,後障害の発生率は高くなる。双胎の早期新生児死亡率は,単胎児に比べて約7倍,3胎では16倍となる。同様に障害児の発生率も高くなる。さらに,早産児が同時に多く発生するため,全国的なNICUの病床不足の一つの原因となっている。また,多胎児を抱える家族の負担も大きく,多胎児がNICUを退院すると,家族にとっては育児の人手の不足,経費の増大の問題が発生する。さらに,障害児の発生頻度も高いことから,障害児のケアにも多大な労力を必要とする。

     このように不妊治療には単なる医学的な副作用のみならず社会的な負荷を伴うこととなる。本シンポジウム前日には英国の小児科医のブライアン先生が市民公開講座として「不妊治療の光と影」と題する講演をされ,不妊症治療がもたらす多胎児の問題が家族に多くの苦悩をもたらしている現状を述べられた。そこで,本シンポジウムの前半の部では,わが国の不妊治療の現状と問題点を第一線の専門家の先生から解説していただき,続いて各地域の周産期センターでの不妊治療に関連した取り組みについて報告していただくこととした。そして,今後の日本での不妊治療と周産期医療のあり方について討論することとした。

シンポジウム午後の部
  • 水谷 隆洋
    p. 69-76
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     大阪府においては,昭和52年に新生児救急医療に対して新生児診療相互援助システム(NMCS)が,それから10年後の昭和62年に産科救急医療に対して産婦人科相互援助システム(OGCS)が発足し,周産期救急医療を機能的かつ円滑に進める体制がスタートした。しかしながら近年,多胎,ことに品胎以上の多胎が急激に増加してきた。この増加は,NMCS,OGCS発足当時には予想しえなかったことで,多胎妊娠は早産をはじめとして,ハイリスク妊娠であるため周産期医療システムに新たな問題を投げかけている。母体搬送は,NICU空床状況によって受け入れの可否が決定されることが多く,一度に3床以上の空床をもつNICU施設はほとんどないため,品胎以上の多胎の母体搬送が発生した場合,受け入れ先を探すことが非常に困難となる。また逆に,ひとたび品胎以上の多胎児が早産で出生すると長期間NICU病床を占拠するため,他の母体搬送の受け入れができなくなるなど,他の産科救急への影響も出ている。このように,品胎以上の多胎の増加は,周産期センターや周産期医療システムにさまざまな問題をもたらしている。

  • 丸山 英樹, 茨 聡, 浅野 仁, 丸山 有子, 加藤 英二, 小林 康祐, 池江 隆正, 松井 貴子, 岡田 俊則, 前出 喜信, 小室 ...
    p. 79-89
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     近年の不妊治療の進歩により,多胎妊娠が増加してきている。それに伴い新生児集中治療室(NICU)への未熟な多胎児の入院が増加している。多胎児のNICUへの入院は,一度に複数のベッドを占有するため,NICUのベッド運用上深刻な問題である。医師,看護婦のマンパワーに加え,保育器,人工呼吸器,モニターなどの医療機器,さらにNICUベッドの確保が必要となる。そこで今回われわれは,多胎児のNICUへの入院状況と不妊治療との関係,多胎児のNICUベッド運用に及ぼす影響を検討したので報告する。

  • 横山 美江
    p. 91-97
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     緒言

     わが国の出産率は,1974年の第2次ベビーブームを境として年々低下傾向を示している。このうち,多胎児の出産率は不妊治療の影響を受け,逆に上昇傾向がみられ,多胎出産は1951年から1968年までほぼ横這い傾向にあるが,その後上昇している1)。この横這い傾向を示した1951年から1968年を基準にすると1994年では双子で1.3倍,三つ子で4.7倍,四つ子で13倍も増加している1)

     実際,体外受精による多胎妊娠率は高く,体外受精実施後の出産のうち28.2%(おおよそ3, 4組のカップルに1組)に多胎児が生まれているとの報告もある2)。このように,不妊治療を受けた夫婦への母子保健指導・育児支援は多胎出産を無視できない状況にあり,本報では多胎児家庭の抱える問題点を中心に,不妊治療後の育児について検討する。

  • 末原 則幸, 加部 一彦
    p. 98
    発行日: 2002年
    公開日: 2024/07/29
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     「不妊治療と周産期医療」午後の部では,主として不妊治療による妊娠,さらにその結果出生した児がどのような転帰をとっているか,周産期医療にどのような影響を及ぼしているかの報告があった。なかでも,多胎児の長期的な予後とそれを支えている母親,家族の実態についての報告は,我々に大きなインパクトをもたらした。多胎児の予後とそれを育てている家族の実態は我々が予想している以上に厳しいものであった。一般には不妊治療によって生まれた児であるからといって児の予後が悪くなることはないが,多胎では,周産期医療資源や家族に及ばす影響は大きいことがわかった。平成8年の日本産科婦人科学会の会告以来,4つ子以上の多胎は減少したが,双胎や3つ子は依然増加している。

     そして総合討論の中で,周産期医療側から不妊治療従事者への多くの要望があった。

     1)多胎,特に3つ子以上の多胎は極力減らしてはしい。できれば単胎妊娠を目指す不妊治療を期待したい。

     2)多胎妊娠では早産や母体合併症が多いことや,早産した場合のNICUでの実状,さらにはそれらの児のその後の合併症・後障害など,多胎児の転帰をよく知ってほしい。

     3)多胎児の育児をする母親や家族の大変さを知って欲しい。

     4)不妊治療前の説明が安易ではないか。不妊治療を開始する前に,多胎妊娠の可能性やその後の妊娠・出産・育児などに関する正しい情報を提供すべきである。

     5)不妊治療前に母体合併症の有無をチェックすべきである。

     などの,指摘や要望があった。

     今回のシンポジウム参加者に不妊治療関係者が少ないことも指摘され,不妊治療関係者が妊娠したその後について無関心であるとの指摘もあった。不妊治療関係者からは,多胎を少なくする数々の研究の成果や努力が報告され,また妊娠した児の予後調査などを行っていることも報告されたが,周産期医療関係者を納得させるに至らなかった。

     今後,多胎児の妊娠出産経過やNICUに入院した児の実状やその後の転帰,さらにそれらの児を育てている家族の実態などの情報を,不妊治療関係者にどのように伝えるかが大切である。また,挙児を希望する夫婦に不妊治療前に,これらの情報を踏まえた適切なカウンセリングを行うこと,願わくば不妊治療に従事しないカウンセラーによるカウンセリングが必要だとの意見もあった。

     不妊治療では妊娠率を高めるのではなくtake home healthy babyを目指すべきであるというコメントが印象的であった。そのために今後,不妊と周産期関係者がもっと話し合う必要がある。それは学会レベルだけでなく,地域で会合をもって相互の理解を深め,不妊治療を受けようとする夫婦とその結果生まれ,育つ子供達が幸せになれるようにするには関係者がなにをすればよいかを議論していく必要性を痛感した。

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