車いすは高齢者や障害者が利用する福祉用具であり, 車いすを操作する力が効率よく推進する力に変換されることが望ましい. われわれは, 身体の寸法 (上肢長, 座高) 違いや, 着座位置の違いにより, この操作力が推進力に変換される割合が異なると推定する. そこでこの着座位置の違いを駆動輪軸と肩関節の相対的な位置関係とし, 車いす操作時の肩関節および肘関節のモーメントがどのように駆動輪軸に伝わり, 車いす推進モーメントがどのように変化するか, コンピュータでシミュレーションし, 関節モーメントが車いす推進モーメントに変換される率が最大となる着座位置を検討した. その結果, (1)着座位置の違いにより車いす操作のモーメントが推進モーメントに変換される割合が異なる, (2)肩関節屈曲力によるモーメントが車いす推進モーメントに最も効率よく変換される着座位置が存在する, (3)着座位置が低いほど, 肘関節伸展力によるモーメントが車いす推進モーメントに変換される割合が高いことがわかった. 身体と車いすの寸法から, 効率のよい着座位置を計算により推測できることが示唆された.
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