日本義肢装具学会誌
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29 巻, 1 号
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巻頭言
特集 長下肢装具の可能性
  • 牧野 健一郎
    2013 年 29 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    長下肢装具は重度下肢機能障害の患者に使われる,立つことや歩くことを補助することが目的の装具といえる.痙性麻痺,弛緩性麻痺,下肢の変形などに処方されることが多く,膝と足関節をコントロールするが,最大の働きは立脚時の膝の保持といえる.大きな装具であり強度も必要なことから重くなりがちであったが,素材やデザインの工夫で軽量かつ適合に優れる装具が実用化されている.また,足部のロッカー機能を引き出そうとする試みも行われており,より生理的な歩行に近づける装具が研究されている.最近は下肢をアシストするウェアラブルな歩行補助装置も実用化され,それ自身が力源をもち下肢を動かす点がこれまでと大きく異なり,正常パターンでの歩行により近づくようになるかもしれない.
  • 松田 靖史
    2013 年 29 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    副木/添え木から進化した長下肢装具は,変形予防と固定,立位の支援のために使用されてきた.しかし,近年の医療の進歩とユーザーの社会参加という時代の波により多くの要求が長下肢装具には突きつけられている.歩行支援,ADL とのシンクロ,高い意匠性などである.それに応じて長下肢装具は,形状,継手,材料など個々に進歩してきたが,近年においてはその進歩が鈍っているように感じられる.現在の長下肢装具に使われる金属材料と樹脂材料や機能部品をひも解き,現在の最新材料で試作した長下肢装具を紹介し,人間が装用する際に求められる項目を分析することで未来に通じる長下肢装具への提言を行う.
  • 和田 太, 蜂須賀 研二, 荒井 光男
    2013 年 29 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    カーボン製長下肢装具は,軽量で耐久性に優れ,フィット感があり外観も良い.さらに,従来の両側支柱付き長下肢装具に比べ,歩行効率に優れ,装着者の負担を減らすことができる.ポリオ罹患者は,弛緩性麻痺による下肢筋力低下があるので軽量で十分な支持が必要であり,しかも実用的に装具を用いるので,カーボン製長下肢装具の良い適応となる.しかし,カーボン製長下肢装具の製作には,製作や修正に技術を要し,コストや価格に大きな課題がある.
  • 増田 知子
    2013 年 29 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者に対し,長下肢装具を使用して運動療法を行う目的と実際の進め方,神経機構を基にした歩行トレーニングの考え方について述べた.歩行能力の向上に従い,長下肢装具から短下肢装具へのカットダウンが検討される.変化が大きく明確な基準が存在しないこの過程を円滑に進めるためには,より細かく段階を刻み,双方向への変更が可能な「セパレートカフ式長下肢装具」の活用が有効であり,使用例を交えて紹介した.セラピストは,治療戦略において装具を効果的に使用できるよう,装具自体に施す工夫に加え,その使い方に関しても,探究し習熟する必要がある.
  • 森中 義広, 日野 工, 酒井 潤也, 黒田 和美, 森中 彬文
    2013 年 29 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺の長下肢装具は,体重支持の強固な装具と歩行しやすい柔軟な装具が理想であるが,その両立は不可能である.独自開発理論に基づく本プラスチック長下肢装具(P. KAFO)の特徴は,立脚期の荷重で捻れ,遊脚期に復元する,いわゆる「捻れる長下肢装具」(プラスチックの可撓性で装具全体が制動的に支持する装具)である.この捻れる長下肢装具は,患者歩行病態や体重によって装具のデザイン(下腿に窓を開ける,足・膝継手,上・下位支柱部の幅調節,プラスチック板の厚みの変更など)を変更し,おのおののケースにあった強い装具,または柔軟な装具と調節して製作する.片麻痺歩行病態が多種多様である限り,装具の特性もあらゆる歩行病態に対応できることが望まれる.さらに麻痺した下肢には,装具による機械的矯正だけではなく,歩行ファシリテーション(促通)ができる治療用下肢装具の特性が重要であると考える.我々は「物」の開発も重要だが,むしろその物をいかに使いこなし,最大効率の治療的歩行運動学習を行うか(片麻痺歩行の治し方)に言及した文脈で報告する.
  • 萩原 章由, 溝部 朋文, 前野 豊, 山本 澄子
    2013 年 29 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    底屈制動機構付き KAFO の特徴と臨床での利用方法について紹介した.底屈制動機構付き KAFO は初期接地から荷重応答期のヒールロッカーの際に,足関節の底屈の動きに制動力を加えることで,歩行時の体重移動をスムースにできる可能性がある.Perry の提唱する歩行時のパッセンジャーユニットとロコモーターユニットの相互関係を構築できるように,脳卒中片麻痺の下肢の支持性が低い段階から底屈制動機構付き KAFO を歩行練習で利用していく.底屈制動機構付き KAFO の特徴は,膝継手の自由度を制限しながら,麻痺側の足関節と股関節の協調した動きを引き出しながら体重移動を通して歩行練習できる可能性がある点である.
  • 緒方 友登, 中元 洋子, 中西 貴江, 和田 太, 荒井 光男, 蜂須賀 研二
    2013 年 29 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    長下肢装具は,歩行時の膝折れを防ぐためによく使用されるが下肢のクリアランスを保つための代償動作の問題が発生する.この問題を解決するために,近年,立脚期に膝継手をロック,遊脚期に遊動とする立脚制御機構(Stance-Control System, SCS)の開発がすすめられている.SCS を用いると,より対称的な歩行が実現できるため,歩行効率の向上が期待されている.SCKAFO には主に機械式,電子制御のものが多いが,その大きさ,重さ,価格などに問題がある.当院では軽量で安価な簡易立脚期制御機構(Simple Stance-Control System, SSCS)のプロトタイプを開発中で,健常成人において,スムーズで対称的な歩行が実現でき,日常生活動作中も誤作動がないことを確認している.今後は,実用化に向けて個別の患者への調整機能の追加や耐久性の向上をはかる予定である.
  • 前島 伸一郎, 大沢 愛子, 西尾 大祐, 平野 恵健, 木川 浩志, 武田 英孝
    2013 年 29 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    医用工学の進歩に伴い,医療・福祉の領域においてもロボット技術が応用されている.なかでも,筋力が低下した高齢者や運動機能障害を有する人の自立支援や,介護支援などへの適用が期待されている装置がロボットスーツ Hybrid Assistive Limb (HAL)® である.HAL は生体電位信号を活用し,人間・機械・情報系の融合複合体技術を駆使したサイボーグ型ロボットである.脳卒中片麻痺に対するHALの効果について,現時点においてはほとんど検証されておらず,装着に手間がかかり,介助が増え,疲れやすい等の欠点も否めないが,将来性は高く,今後,装具あるいは訓練器具として,リハビリテーションへの利用が期待される.
調査報告
講座 職場の健康管理
  • 堀江 正知
    2013 年 29 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/04/15
    ジャーナル フリー
    労働衛生の目的は,仕事と労働者の適応を促し,職業性疾病や作業関連疾患の発生や増悪を予防することである.労働安全衛生法は,法人の義務として,作業環境測定や健康診断の結果に基づき職場や作業を改善し労働者の就業適性を確保するよう規定している.小規模事業場には,産業医や衛生管理者の選任や衛生委員会の実施の義務がなく,事業主が自ら外部機関を利用しながら労働衛生やリスクアセスメントを推進することが望ましい.義肢の石膏は硫酸カルシウムの非金属鉱物であり,固定された動力源で粉砕や混合等を行う作業には発生源対策が求められる.5S(整理,整頓,清掃,清潔,躾)や危険予知(KY)の活動は,安全衛生の基本であり生産面にも有効である.
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