日本義肢装具学会誌
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31 巻, 3 号
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巻頭言
特集 義肢装具に関連するガイドラインとその現状
  • 佐藤 康仁, 森實 敏夫
    2015 年 31 巻 3 号 p. 144-148
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    EBMの概念は,医療·医学の様々な分野に普及して応用されている.診療ガイドラインの作成方法についても同様であり,EBMの手法が大きく取り入れられている.診療ガイドライン作成の流れは,①」作成目的の明確化,②作成主体の決定,③作成組織の編成,④スコープの作成,⑤システマティックレビューの実施,⑥推奨の作成,⑦ガイドライン草案の作成,⑧外部評価の実施,⑨公開,⑩普及·導入·評価,⑪改訂となる.診療ガイドラインの作成においては,作成の過程において偏りが入らないように最大限の努力が払われているのが特徴である.本稿は,Mindsが推奨するガイドライン作成方法とMindsが提供するガイドライン作成支援についてまとめた.
  • 藤原 俊之
    2015 年 31 巻 3 号 p. 149-151
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    脳卒中後の内反尖足による歩行障害に対して,短下肢装具は歩行速度の改善ならびに歩行の安定に有効である.また上肢装具は痙縮の軽減に効果があり,電気刺激とともに上肢装具を用いることにより,上肢運動機能,痙縮の改善が認められる.ロボット,電気刺激などと装具との併用療法等は有効である可能性があり,今後のエビデンスの蓄積が期待される.
  • 川手 信行, 水間 正澄
    2015 年 31 巻 3 号 p. 152-156
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    診療ガイドラインは,EBMをもとにした最新の臨床報告をおのおのの専門家によって分析調査し,疾病·外傷の予防·診断·治療·予後などに関してわかりやすくまとめた診療指針である.整形外科分野の疾患·外傷に対する診療ガイドラインの中の装具療法に関連した部分を紹介した.整形外科分野の疾患·外傷の治療法の1つとして装具療法は古くから行われてきた.しかし,整形外科の主流が手術療法になってきており,装具療法は保存的治療の1つとして扱われる場合が多い.装具療法のエビデンスの高い臨床研究は少なく,整形外科分野の診療ガイドラインでの記載量も少ない.装具療法についてのエビデンスの高い臨床研究を増やしていくことは今後の課題であると思われた.
  • 瀬下 崇
    2015 年 31 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    2014年に脳性麻痺のリハビリテーションガイドラインが改訂された.ガイドラインを作成する上で,臨床に即した内容とすること,エビデンスにもとづき偏りがないことを心がけたが,予算的な人的な制約の中で,現実的にできる範囲で行わざるを得なかった.また,歩行速度など数値化されるテーマに内容は集中しがちで,臨床に役立つという意味でも限界があった.しかし,現在わかっていることをまとめるという意味でガイドラインは重要であり,つぎに作成する際に留意してほしい点を交えて報告を行う.
  • 菊池 守, 上村 哲司
    2015 年 31 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    下肢救済やフットケアの分野においては,糖尿病や閉塞性動脈硬化症などの基礎疾患を持つ患者群を扱う.このような患者群の中でも足病変の発生予防,すでに発生した病変の治療,そして潰瘍が治癒した後や部分切断された後の再発予防など,義肢装具が必要な状況は様々であり,それぞれにおいて適応となる義肢装具も異なる.本稿では国内外の足病変の診療·予防に関するガイドラインとその内容を概説した.特に糖尿病性神経障害がある足や血行不全,切断の既往などがある足に対しては,どのガイドラインでも専門家による適切な靴のフィッティングや足底装具,靴型装具の必要性が訴えられており,今後のさらなる義肢装具士の介入が必要と思われる.
  • 月城 慶一
    2015 年 31 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    我が国で義足の製作適合は,社会保障制度の枠組みの中で医療ないし福祉の一環とした制度の中で行われている.医学ならびに手工業技術,工業技術の観点で理想的な義足の製作適合を行う必要があることはいうまでもない.さらには,限りある財源の中で費用対効果を最大とするためには,公正な基準をもつ必要もあるといえよう.それは,利用者である義肢ユーザーの理解と納得を得るためにも重要である.そのようなガイドラインの1例として,投稿論文の記述に基づき,さらに臨床現場からのコンセンサスを重要視して編纂された英国のProsthetic Best Practice Guidelines(=ベストな義肢適合のためのガイドライン)を要約し紹介する.
原著
  • 廣川 琢也, 松元 秀次, 上間 智博, 池田 恵子, 宮良 広大, 下堂薗 恵, 川平 和美
    2015 年 31 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    鹿児島県の理学療法士が所属するリハビリテーション250施設を対象に下肢装具処方の現状と問題点を明らかにする目的でアンケート調査を行った.有効回答数および回収率は152施設(60.8%)であった.回答が得られた施設は,リハビリテーション施設基準にて脳血管や運動器がIの施設が約半数であった.しかし,下肢装具処方の状況では,ブレースクリニックの実施率は21%と低く,装具選択の判断に関わる人数は2名以下が62%であった.また,常備している仮装具の数や種類が少なく,装具処方時に十分な検討が行えていないという意見が多くみられた.適切な装具処方には,ブレースクリニックの実施や常備の仮装具の充実など装具処方に必要な環境を整えることが重要である.
短報
  • 遠藤 正英, 橋本 将志, 足立 勇人, 児玉 春生, 猪野 嘉一
    2015 年 31 巻 3 号 p. 180-183
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者において,肩関節亜脱臼はよくみられる合併症の1つである.亜脱臼に対して,肘関節伸展型肩装具でカフ部での強い緊縛に頼らず,整復ができ,自己装着が可能な肩装具を開発し,その効果を検証した.本装具を亜脱臼患者に装着した際の肩峰骨頭間距離を計測した結果,装具非装着時とRSB装着時に有意な差が認められた(p<0.01).Brunnstrom recovery stageは上肢II手指IVで,著明な高次脳機能障害を認めない患者に本装具を使用し,装着訓練を行い1回の自己装着評価を行ったところ,2〜3分での自己装着が可能となった.以上のことから,本装具は亜脱臼整復可能な肘関節伸展型肩装具であり,自己装着も可能なことが示唆された.
症例報告
  • —モジュラーソケットシステムの臨床経験—
    福住 武陽, 北口 拓也, 立花 慶太, 小林 信吾, 橋本 寛, 夏梅 隆至, 平林 伸治
    2015 年 31 巻 3 号 p. 184-187
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    維持透析を合併した下腿切断者4例に対しモジュラーソケットシステム(MSS)の臨床経験を得た.創治癒遅延により3例がソケット作製までに長期間を要したが,ギプスソケット作製後はMSS作製を含め,全例2カ月以内での退院が可能であった.退院時には全例屋内歩行が自立し,屋外歩行は4例中3例が自立した.またMSS作製以降,ソケットの適合は良好であり,MSSのデメリットであるソケットの微調整を必要とする症例はなく,ギプスソケットを含めた本システムは維持透析を合併する下腿切断症例に対しても有効であった.
調査報告
  • 井戸 淳也, 加藤 弘明, 山根 好夫, 神田 一憲
    2015 年 31 巻 3 号 p. 188-190
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    今日の切断者リハビリテーションは,早期介入が重要となっている.今回,即日の完成が可能な「モジュラーソケットシステム(以下,MSS)」を導入し,旧来の方法とMSSを導入した症例について義足歩行獲得までの期間の比較を行った.その結果,MSS導入群は旧来群に比べ,義足歩行獲得までの期間を約20日短縮できた.この要因は,MSSの利点,すなわち,採型直後にその場で義足作製が可能で,歩行訓練を早期から開始できたことである.またこれが,廃用による筋力低下の予防や,切断者のモチベーションの維持にもつながった.MSSでは義足の作製期間を短縮することで早期に義足歩行が獲得できたことより,下腿切断者に対する本システム導入は有用であると考える.
講座 末梢血管原性切断の義肢作製
  • 牧野 健一郎
    2015 年 31 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2015/07/01
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    透析患者は運動耐容能が低く栄養状態も不良で,二次性副甲状腺機能亢進症·骨粗鬆症·腎性貧血·透析アミロイドーシスなど透析に付随する合併症がいくつもあり,透析治療による時間的制約や治療施設が限られるためリハビリテーションに難渋することが多い.また,切断を受けた透析患者は全身の血管病変のため生命予後が不良でもある.透析患者の切断端は透析治療に伴う容量変化が大きく皮膚も弱いためソケットの適合に工夫が必要で,身体能力の低さや生命予後などを鑑み,義足歩行能力と治療期間とのバランスがとれた治療目標を設定し,無理のない義足処方が重要である.
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