日本義肢装具学会誌
Online ISSN : 1884-0566
Print ISSN : 0910-4720
ISSN-L : 0910-4720
31 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
特集 こどものリハビリテーションと装具
  • 栗原 まな
    2015 年 31 巻 4 号 p. 205-208
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    こどものリハビリテーション(リハ)を行うにあたっては,こどもの脳に可塑性があること,発達途上の脳に損傷の影響が大きいこと,成長と発達があること,家族の協力が欠かせないことなどの特徴を理解しておくことが大切である.リハを進めるにあたっては,評価に基づいた治療計画を作成し,全身管理を十分に行ったうえで,機能訓練,地域連携,就学支援,家族支援を行うが,それに際してはチームアプローチが有効である.こどものリハは脳性麻痺などの生まれつきの障害に対するものが中心であるが,脳外傷,急性脳炎・脳症,低酸素性脳症,脳血管障害などの後天性脳損傷のリハも重要な課題である.今回は運動系の障害に焦点をあて,こどものリハの特徴について述べた.

  • 瀬下 崇
    2015 年 31 巻 4 号 p. 209-214
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    脳性麻痺のリハビリテーション(リハ)を行っていく上で,装具は欠かせない.リハの進行状況によって使いやすい装具が変化していくので,そのステージごとに適切な装具を選択する必要がある.さらに近年,A型ボツリヌス毒素をリハに併用することが多くなってきているが,A型ボツリヌス毒素で筋緊張を緩和した上で,ストレッチ効果を意図して夜間矯正装具を併用するなど治療戦略が変化してきている.脳性麻痺のリハにおける装具治療とA型ボツリヌス毒素など関連した治療について概説する.

  • 藤原 清香, 芳賀 信彦
    2015 年 31 巻 4 号 p. 215-221
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    小児の骨関節疾患におけるリハビリテーション治療として装具療法と理学療法が行われることが多い.なかでもペルテス病,骨形成不全症,先天性多発性関節拘縮症,血友病は治療過程におけるその役割も大きく,また疾患の重症度や治療のプロセスだけでなく,患児の成長や活動度,発達の過程に適した対応が必要とされる.本稿では各疾患の概要と,そのおおまかな治療の流れを紹介し,リハビリテーションのゴール設定と,これに則した装具と理学療法について述べる.

  • 松井 彩乃
    2015 年 31 巻 4 号 p. 222-230
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    こどもの下肢装具の治療可能性について,臨床経験を基に論じた.歩容異常への対策の立案(Plan),装具処方(Do),装具装着下での歩容評価(Check),修正(Act)を繰り返すPDCAサイクルにより装具処方の汎化を試みた.装具製作に際しては,骨格アライメント,特に距踵関節の安定化,距腿関節運動の正常化,前足部アライメントの正常化が重要であった.こどもの装具治療では,乳幼児期の歩行開始前から筋緊張異常が確認されれば,踵接地を促す早期介入が有効である.その理由は,骨格アライメントの矯正位保持により多関節筋が適切に使用され経過観察例よりも歩容に良い影響を与えるためと考えられる.

  • 直井 富美子
    2015 年 31 巻 4 号 p. 231-233
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    子どものリハビリテーションでは,心身の発達・発育を常に考えなければならない.そのためには正常発達を深く理解することが必要であり,それをもとに子どもたちを支援することが重要である.そして理学療法を通して,その子の潜在的な能力をできるだけ引き出し,日常生活につなげていくことを考えなければならない.目標の機能を発揮するためには補装具の検討・選択も大切である.

  • 佐々木 清子
    2015 年 31 巻 4 号 p. 234-237
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    当センターの作業療法では,障害をもつ子どもたちに対し,変形や拘縮の進行を予防し,日常生活活動や余暇活動を援助するために装具を作製している.装具は,それぞれの子どもの視覚運動機能や目と手の協調性を支援できるものでなければならない.作業療法士が作製する装具には,車椅子や椅子,腹臥位や側臥位マット,体幹装具,肘・手関節・指装具がある.それらは,個々の子どもの姿勢の問題を解決し,家族の日常の介護を支援する.作製にあたって,費用・材料・重さ・装着感に配慮し,使用後は,子どもの身体機能や成長に合わせた適合状況を再点検する必要がある.こうした工夫が,より子どもの身体機能を改善し家族の介護を手助けすることになる.

  • 梶谷 英文
    2015 年 31 巻 4 号 p. 238-241
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    動的脊柱装具は,2007年に開発された装具である.プロトタイプから始まり,I〜IV型,夜間用,後弯用と現在も進化をしている.また,全国的にも広がっており,50社以上の義肢装具製作所の方々が研修のため弊社のプレーリーファクトリーを訪れた.2015年よりDSB基礎講習会が開催され,16病院が参加された.参加した義肢装具士には,大阪発達総合医療センターの審査に合格すれば,DSB製作技術取得証が発行されている.今後は様々なニーズに応えながらADL・QOLを向上させられる使いやすい装具の開発が必要であると考える.

  • 松本 伸正
    2015 年 31 巻 4 号 p. 242-247
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    今日,数多くの座位保持装置が国内外メーカー各社から提案されているが,一人ひとりのユーザーに最適な座位保持装置を選択し製作するには豊富な経験や様々な技術が必要である.ユーザーの座位保持能力や身体の状態などにより,ヘッドサポート・バックサポート・シートのタイプや形状を選択するが,ユーザーに適した座位の環境を提供することが,QOL向上につながることから,最も座位が安定する姿勢を探ること(ポジショニング)と,座位保持装置支持部と身体との適合(フィッティング)を適切に行うことが重要である.

原著
  • —短下肢装具と長下肢装具を比較した即時効果の検討—
    山本 征孝, 藤本 康浩, 森 義統, 椿野 稔
    2015 年 31 巻 4 号 p. 248-254
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    カットダウン可能な時期における急性期脳卒中片麻痺患者を対象に,長下肢装具(以下,KAFO)と短下肢装具(以下,AFO)のそれぞれを用いたリハビリテーションの治療効果の調査を行った.対象は急性期脳卒中片麻痺患者で,AFOを使用した歩行が可能な者14名とした.AFOを使用する群とKAFOを使用する群に対象を分け,練習前後で非麻痺側・麻痺側下肢最大荷重量,歩幅,歩行速度,歩行率を比較した.その結果,KAFO群では麻痺側下肢最大荷重量,歩行速度,歩幅が練習後において有意な差が認められた.KAFOを使用した立位・歩行練習はカットダウン可能な時期を経過した場合においても歩行能力や麻痺側下肢の支持性を即時的に改善することが示唆された.

  • 岩﨑 満男, 山本 澄子
    2015 年 31 巻 4 号 p. 255-261
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,アダプター式ハンドバイクの駆動において,効率的な駆動方法を検討することおよび駆動動作における利き手と非利き手の影響を知ることを目的とした.ハンドバイクの左右のクランクに直接貼付された汎用ひずみゲージを用いて,クランク推進に必要な接線方向の駆動トルクとクランク横(内・外側)方向の非駆動トルクを計測し,同時に腕クランク運動における肩・肘関節の関節角度を3次元動作分析装置にて計測した.駆動動作はクランクの同期運動パターンでクランク回転30rpmを維持して健常者12名に対して運動負荷を3条件に変化させて実施した.結果より,高負荷の条件でプレスダウン相での肘関節最大伸展直後で非駆動トルクの増大が見られた.また,利き手と非利き手の左右差がもっとも大きくなるのはプッシュダウン相であり,特に高負荷の条件で駆動トルクが利き手優位の結果であった.プッシュダウン相では上腕三頭筋の活動が必要であることから,この相で利き手と非利き手の違いが影響したと考えられる.

  • 前田 和也, 勝平 純司, 金子 純一朗, 小川 幸宏, 石坂 正大, 安井 匡, 本田 雅典, 大津 あゆみ, 大平 和弥, 小野 恵里奈 ...
    2015 年 31 巻 4 号 p. 262-267
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    高齢者や人工膝関節全置換術(以下,TKA)術後患者は,加齢による脊柱後弯・骨盤後傾の姿勢変化を生じることが知られている.この姿勢変化は,歩行能力やバランス能力を低下させ,転倒の危険性を高める可能性がある.この問題を解決するために,我々は,抗力を具備した継手により連結した体幹装具Trunk Solution(以下,TS)を開発した.TSは骨盤前傾を促し,腹筋群の筋活動を増大させる効果を有する.本研究の目的は,TSが高齢者とTKA術後患者の歩行能力・バランス能力に与える影響をパフォーマンステストにより明らかにすることである.結果として,TS装着前と比較してTSを外した直後に高齢者,TKA術後患者ともに5m歩行時間が有意に短縮し,高齢者の一部で片脚立位保持時間が有意に増加した.TSの使用により,高齢者やTKA術後患者の歩行能力やバランス能力が向上することで,転倒予防につながることが示唆された.

短報
  • —アンケート調査より—
    今村 健二, 平山 史朗, 島袋 公史, 加治屋 司, 髙田 稔, 渡邉 英夫
    2015 年 31 巻 4 号 p. 268-271
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    シューホーンAFOは,脳卒中発症後,使用頻度が高い短下肢装具(AFO)の1つである.そのため処方頻度が高いが,デザインが病院で異なる可能性があるのではないかと考えた.デザインの違いは機能にも影響する.デザインと機能,併せて適応の考え方,選定理由などの傾向を知ることは有意義だと考え,全国的に調査した.調査対象は脳卒中を発症後,初回の装具処方に関わる機会が多い全国の回復期リハビリテーション病棟を有する病院とし,341施設にアンケートを送付した.回答を得た110施設の集計・検討では,典型的なシューホーンAFO以外に,シューホーン型AFOのショートタイプや継手付きプラスチックAFOが混在していた.また,シューホーンAFOを現在は使っていないと回答した施設が32施設もあった.デザインや機能に関しては,多くのvariationが認められた.処方の考え方,選定理由については,病態からの判断,適応の選定,処方時期,初期背屈角度などの考慮が多くなされており,患者に最適のシューホーンAFOを処方していることがわかった.

調査報告
  • —当院での装具回診の効果—
    遠藤 正英, 東 世智, 橋本 将志, 平田 創士, 猪野 嘉一
    2015 年 31 巻 4 号 p. 272-274
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    早期からリハビリテーションを行うには装具の早期処方が重要となる.しかし,装具の知識がある者は多くないため,早期処方が行われないことが考えられる.そのため,多職種が集まり多角的な視点で装具の検討を行う装具回診の実施が必要と思われる.平成24年12月1日~平成26年3月31日に当院回復期病棟へ入棟し,装具回診に参加した脳卒中麻痺患者70名を対象に,発症日,当院入院日,装具回診初回参加日,装具完成日の調査を行った.その結果,発症日から当院入院日が33.9日,当院入院日から装具回診初回参加日が11.6日,装具回診初回参加日から装具完成日が9.5日だった.つまり,装具の早期処方を行うために装具回診を行うことが必要と考えられた.

講座 末梢血管原性切断の義肢作製
  • —外科的血行再建と血管内治療—
    渋谷 卓
    2015 年 31 巻 4 号 p. 275-282
    発行日: 2015/10/01
    公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    急性下肢虚血は可及的速やかな血行再建が必要である.組織の不可逆性変化が確認されれば切断の判断が必要になる.慢性下肢虚血の多くは閉塞性動脈硬化症である.疾病構造は複雑化しており,合併症に糖尿病や透析症例が増加している.慢性下肢虚血は間歇性破行と重症虚血肢に分けられ,血行再建介入のタイミングが全く異なる.間歇性破行は保存的治療を行い,症状が残存する場合に血行再建が考慮される.重症虚血肢は一刻も早い血行再建が必要である.画像診断や検査値で異常が指摘されても,症状を伴わない症例には血行再建介入は行われない.

feedback
Top