日本義肢装具学会誌
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34 巻, 2 号
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巻頭言
特集 Fun and Happiness for All. ~義肢装具・支援機器で豊かな生活を~
  • 岩堀 滋
    2018 年 34 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    先天性の右前腕欠損で生まれ,幼児の頃から装飾用義手を身につけてきたが,友人の助言で3年ほど前,「筋電義手」の存在を初めて知った.障害者をめぐる新たな問題と技術の進歩の観点から取材を始め,3Dプリンター製も自作した.義手は義足に比べて報道などで取り上げられる機会が少ないために問題提起の意味があった.自作の筋電義手は結局使いこなせず,兵庫県立リハビリテーション中央病院に訓練入院し,退院後の今も日々の生活で装着して訓練している.実際に入手しようとなると,自治体による費用支給を得られないと,高額な筋電義手は入手が難しい.国産化の動きもあり,普及を進めたいが,それには障害当事者も有用性を主張するなど,もっと動きを見せる必要があるのではないか.

  • 三ツ本 敦子
    2018 年 34 巻 2 号 p. 102-106
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    国立障害者リハビリテーションセンター(以下,国リハ)と筋電電動義手の関わりは,1970年代に行われた動力義肢の実用化研究にさかのぼる.その後,臨床では労災保険や障害者総合支援法((旧)身体障害者福祉法)を利用する上肢切断者に対し,筋電電動義手の試用評価と提供を行ってきた.近年,対象者の年齢層は広がり,就学前の先天性四肢形成不全児らも対象に評価を行っている.国リハは,“筋電電動義手の操作経験の機会を与え,筋電電動義手を含む色々な義手の中から本当に必要な義手を選択する”という考えに基づき,訓練を希望する対象者を多職種のチームでサポートしている.本稿では,国リハの義手の普及への取り組みである「研究」,「臨床」,「情報発信」の3つの特徴について紹介する.

  • —兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおける筋電義手の取り組みと今後の課題—
    溝部 二十四
    2018 年 34 巻 2 号 p. 107-109
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    兵庫県立総合リハビリテーションセンターでは,2011(平成23)年に「ロボット·リハビリテーションセンター」を開設した.今回,このロボット·リハビリテーションセンターの1本の柱である筋電義手に関して,兵庫リハセンターの20年におよぶ取り組みを紹介するとともに,その経験で培われた知識,技術の習得に至った経緯について紹介する.そして,今後の課題と展望として,成人分野ではさらなる義手の選択肢の拡大,すなわち開発と提供が挙げられ,小児分野では練習システムの確立で,さらに人材育成が挙げられる.

  • —医師の立場から—
    田中 洋平
    2018 年 34 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    前腕筋電義手は機能性と装飾性を兼ね備えた完成度の高い義手であるため,多くの前腕切断者に支給が検討されても良い義手である.上腕筋電義手は実用化されているが,その重量や,国内で入手可能な電動肘パーツがないといった課題が残されている.肩筋電義手は多くの課題を抱えており,必要なパーツの整備とともに今後一層の技術革新が求められる.i-limbやミケランジェロといった高機能かつ高額な多関節電動ハンドの適応で,優先順位が高いのは両側上肢切断者である.3Dプリンターで製作した電動義手は,新たな価値観を持つ義手である.動かせるだけでなく,使える筋電義手にするためにはリハビリテーション(作業療法)が必要である.

  • 吉川 雅博
    2018 年 34 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    これまで様々な義手が開発されてきたが,価格,機能性,入手性などに課題があり,すべての義手ユーザのニーズを満たせているとはいえない.そのため,私たちは3Dプリンタをはじめとするデジタルファブリケーションツールを用いてこれらの課題にアプローチし,電動義手FinchやRehandなどの義手の開発を行っている.本稿ではデジタルファブリケーションツールについて概観した上で,これらの義手について紹介し,義手開発におけるデジタルファブリケーションツールのメリットについて述べる.

  • —地域の高齢下肢切断者と義足について—
    梅澤 慎吾
    2018 年 34 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    地域包括ケアシステムは,高齢者や障がい者が地域生活を継続できることを目的に掲げている.その方針と義足分野の接点として“義足装着経験のない高齢下肢切断者”を取り上げた.理由は,近年行った地域の調査結果と義足装着の客観的成果を基にしている.介護保険マネジメントにおける補装具利用は,取り巻くスタッフの考え方や,義肢装具士の介入,リハビリテーションなど,解決しなければならない課題が存在する.国策による制度改定は,介護業界で高齢者の自立支援を推す雰囲気を醸成する.そして解決策としての補装具もまた,その価値を試される.

  • 千々和 直樹
    2018 年 34 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    平成30年度から補装具費支給制度における借受けが導入される.座位保持椅子,歩行器や意思伝達装置などが対象とされている.借受けは,成長に伴って短期間での補装具の交換が必要とされる障害児や障害の進行により短期間の利用が想定されるもの,仮合わせ前の試用が主な支給対象となる.しかし,効果的な運用を実現するためには,貸与に適した補装具の充実と,その取扱方法や適合方法に関しての環境整備が必要不可欠である.また,地域包括ケアシステムにおいて,地域に依存しないサービスの均質化も望まれる.弊社では,補装具のモジュール化に取り組んでおり,本稿ではその事例とモジュール化の利点·難点,今後の展開について記述する.

  • —高知家の取り組み—
    下元 佳子
    2018 年 34 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    障害や高齢で介護が必要な状態においては適切な補装具·福祉用具の使用は,自立支援はもちろんであるが,介護負担軽減のためにも欠かせない.少子高齢化が急速に進み介護人材不足が深刻な現状を考えると福祉用具を使用した介護の普及は必須である.まだまだ人力に頼っているケアが主である我が国においては,普及のためには施設や病院,行政など地域ぐるみでケアを見直す必要がある.人口減少率が高い高知県では県をあげて抱え上げないケアの普及に取り組み,課題である人材確保対策,そして二次障害の予防を行っている.今回は,このような高知県での取り組みと現状を報告させていただく.

教育講演
  • —その集学的アプローチについて—
    Sandra RAMDIAL, Lisa ARTERO
    2018 年 34 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    義肢リハビリテーションのための集学的なチームアプローチは,クライアントの総合治療計画を評価·提供する包括的な方法を与える.目標設定,義肢教育,器具の選択を含むリハビリテーションの過程や,日常活動のパフォーマンスを向上させる技能の実践などにクライアントやその家族を参加させることが重要である.治療計画は,クライアントの活動のニーズや関心の変化に伴い,クライアントの生涯にわたって修正される.地域社会のパートナーは,クライアントが適応技能を実践できるような支援環境を育成する活動に参加することを奨励されている.

  • —筋電義肢とアクティビティに合わせた義肢—
    Sandra RAMDIAL, Lisa ARTERO
    2018 年 34 巻 2 号 p. 138-141
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    臨床経験からわかるように,クライアントとその家族の目標に焦点を置く集学的アプローチを用いた義肢リハビリテーションを幼児の早い段階で開始することは有用である.訓練と教育により,クライアントは義肢を最適に使用する方法を学ぶことができる.一部の子どもは,義肢を1つ以上または端末装置を利用することによって,日常活動やスポーツ,レクリエーション活動に参加することができるようになる.遊びは子どもの発達にとって重要であり,子どものパフォーマンスを向上させるための適応方法や義肢を用いた遊びは臨床の場,家庭,地域社会においても奨励されている.
原著
  • 吉野 智佳子, 下村 義弘
    2018 年 34 巻 2 号 p. 142-149
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    作業療法士学生4名に体験用前腕能動義手での操作練習として立方体の連続移動を1週ごとに5分間実施し,三角筋前部線維と前鋸筋の筋音図測定によって運動学習の評価への試みを行い,従来用いられている筋電図も同時に測定した.今回の分析は4名の参加者がそれぞれの効率の良い動作の仕方を試行錯誤し,疲労に備えた筋コントロールを行っていたことを示した.さらに,筋音図の測定結果は筋負荷量が最大随意収縮の中程度であったことが推察された.パフォーマンスが向上していく中で,筋電図の中央パワー周波数の減少から徐波化がみられ,筋疲労が学習中に起こっており,三角筋前部と前鋸筋の活動割合が被験者によって異なっていた.

  • 平田 淳也, 井上 桂子, 鈴木 哲
    2018 年 34 巻 2 号 p. 150-153
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,バランスチェアがVisual Display Terminals (VDT)作業時の頸部の筋活動に与える影響を調査した.健常成人9名(平均27.8±5.2歳)を対象とした.標準的な椅子と膝当て付き前傾座面椅子の2条件下での脱力座位姿勢で,Personal Computerによるtyping課題を実施し,安静時の脊柱彎曲角と作業時の頸部筋の筋活動量を測定した.バランスチェア使用時に腰椎彎曲角は,有意に後彎が減少し,頸部の筋活動量も有意に低かった.VDT作業時にバランスチェアを使用することで,姿勢改善がみられ,頸部の筋活動量を減らせることが示唆された.

  • 瀬戸 達也, 菱川 法和, 藤井 博昭, 山田 将成, 西村 英亮
    2018 年 34 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    行練習アシスト(GEAR)は,脳卒中片麻痺患者の歩行再建を目的とした歩行練習支援ロボットである.本研究では,GEARを用いた歩行練習(GEAR練習)を実施した回復期脳卒中片麻痺患者の属性と歩行能力からGEARの適応を検証した.対象は脳卒中片麻痺患者21名とした.GEAR練習終了時に,歩行能力が見守りに達した群(達成群)15名と見守りに達しなかった群(非達成群)6名の2群に割り付けた.両群間における患者属性の比較では,発症後日数,SIAS腹筋,FIM記憶に有意差を認めた(p=0.03〜0.04).有意差を認めた患者属性を用いて,GEAR練習終了時の歩行能力を従属変数とした判別分析の結果,SIAS腹筋が最も影響を及ぼしていた.GEARの適応を検証することは,回復期脳卒中片麻痺患者における歩行の予後予測をする上で,有用な情報になりうると考えた.

技術報告
  • 那須 誠, 大森 浩己, 中村 宣郎, 中村 俊郎
    2018 年 34 巻 2 号 p. 160-162
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    上肢欠損者は左右対称の動作を行う健常者用のトレーニング機器を使用することが困難なため,患側の筋力を強化することや左右のバランス能力を向上させることが難しいのが現状である.パラリンピック水泳競技では義肢等を装着せずにタイムを競うため,義肢を使用してトレーニングを行う選手はほとんどいない.今回我々は先天性右前腕欠損のパラリンピック水泳選手に対して患側の筋力強化とバランス能力向上を目的としたトレーニング用前腕義手を製作し,記録的にも身体的にも良好な結果を得ることができたので考察を交え報告する.

講座 福祉用具の開発と支給制度
  • 秋山 仁
    2018 年 34 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー

    義肢,装具等,身体障害のある方が日常生活や社会生活を送る上で欠かすことのできない重要な用具である補装具を支給する制度は,障害者総合支援法で補装具費支給制度として規定されている.同制度は市町村の自治事務であり,市町村が申請に基づき,必要性を個別に判断し支給決定を行う.同制度では,公費により購入費等の支給が行われる補装具が身体障害者の身体に適合したものになるよう,要件を満たす医師による意見書の添付,専門的技術機関である身体障害者更生相談所等による判定,本人に適合しているかどうかの適合判定等が行われている.本稿では,法で規定する補装具の定義,制度の概要,制度運用上の留意点について概説する.

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