本研究の目的は,背もたれを後傾位から起こす際の臀部ずれ力の変動と体幹が背もたれ面上を相対的に上方に滑り始めるタイミングを検討することであった.健常成人16人(25.4±7.0歳)を対象とし,臀部ずれ力と体幹が上方へ滑り始める際の背もたれ角度を測定した.実験条件は,臀部を背もたれから3cm, 6cm, 9cm前方へ移動した3条件とした.全条件において臀部ずれ力は体幹が上方へ滑り始める直前に最大となり,その際の背もたれ角は3条件とも傾斜範囲の中間である鉛直位から後傾約26度であった.臀部ずれ力を増大させ得る臀部の位置が異なっている座位であっても,体幹が上方へ滑る角度が同等であれば,臀部ずれ力の変動も同等になることが示唆された.
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