日本義肢装具学会誌
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35 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
2019年度 日本義肢装具学会飯田賞受賞者
日本義肢装具学会飯田賞本賞を受賞して
日本義肢装具学会飯田賞奨励賞を受賞して
巻頭言
特集 活動・参加・QOLを支える義肢装具
  • 飛松 好子
    2019 年 35 巻 4 号 p. 251-254
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    ADL, QOLはICF (international classification of functioning)(国際生活機能分類)の概念に基づいて考えるとわかりやすい.ADLはICFの「活動」の部分に当たる.その中で運動·移動,セルフケアの部分がADLである.「人が朝起きて寝るまでに行う必要がある活動」のことで,これらを基本的ADL (basic ADL)といい,「手段的ADL」と合わせ「拡大ADL」と呼ぶ.QOLは生活の質と訳される.ICFの構成要素の全てがQOLの要素となる.QOLの構成要素として健康に関連するものを健康関連QOLという.病気や障害に特化したQOLを疾患特異的QOLといいPEQJがそれに当たる.近年,Prosthetic Limb Users Survey of Mobility (PLUS-MTM)が開発された.EQ-5Dによる上肢切断者のQOLの国際比較もなされている.

  • 西山 徹
    2019 年 35 巻 4 号 p. 255-258
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    1990年代以降,リハビリテーションの目標は,ADLの向上からQOLの向上へ転換され,リハビリテーション評価の際には,ADLの評価のみならず,QOLの評価も重要になってきている.しかしながら,大腿切断者の生活を含めた健康状態や心理状態等のQOL評価についての研究·報告は少なく,大腿切断者の全体的な把握は十分ではない.そのため,本稿では,大腿切断者のQOL評価に関して,その評価尺度や,これまでの評価結果,QOLに影響を及ぼしている因子について整理するとともに,今後の課題について述べる.

  • —兵庫県立リハビリテーション中央病院での調査と事例から—
    溝部 二十四, 戸田 光紀, 陳 隆明, 大庭 潤平, 柴田 八衣子, 岡本 真規子, 増田 章人
    2019 年 35 巻 4 号 p. 259-262
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    上肢切断者において義手は有効な道具の1つである.しかし,義手を操作できるだけで上肢切断者のQOLが向上するわけではない.彼らの生活においてのニーズを把握し,義手によって活動や参加をいかに拡大できるかが重要である.一方,上肢切断者あるいは義手使用者のQOLについては,我々の知る限り本邦において報告がない.我々は,兵庫県立リハビリテーション中央病院で義手の訓練を行い,在宅で生活している上肢切断者を対象として,多施設共同研究としてEQ-5Dを用いた健康関連QOLに関するアンケート調査を実施したので,その結果について報告するとともに,義手を活用しQOL向上に寄与している事例を紹介する.

  • 井上 美紀, 徳井 亜加根
    2019 年 35 巻 4 号 p. 263-269
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    頚髄損傷後のリハビリテーションは,日常生活活動と並行して機能回復を促すようなアプローチが求められる.これまで,自助具や環境整備等の報告は多いが,残された機能を用いた代償動作の獲得や自助具の操作に必要な運動学習や動作獲得に上肢装具を用いた報告は少ない.しかし,損傷早期からレベルごとに予測される拘縮を予防することもADL·QOLの向上には重要である.頚髄損傷者においても,上肢装具を適切に用いることは拘縮予防を含む機能回復やADL·QOLの向上に有効であると思われる.本稿では,頚髄損傷者の機能回復とADL·QOLの向上に有効と考えられる上肢装具と,実際に装具を使用した症例について紹介する.

  • —創造力でオリジナルスプリントをつくる—
    林 正春
    2019 年 35 巻 4 号 p. 270-275
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    生物学的製剤(以下,Bio)の登場により関節リウマチ(以下,RA)の治療は大きく発展し,RAで特徴的症状の「朝のこわばり」「炎症」「骨破壊」「変形」「疼痛」が抑制され,「臨床的寛解」「構造的寛解」「機能的寛解」が望めるようになり,患者のADL·QOLが高いレベルで保たれるようになっている.しかし,臨床的寛解や構造的寛解であっても,オーバーユース由来の炎症や疼痛が局所的に出現する場合やBioの効果で臨床的寛解が望めてもすでに骨破壊や変形で機能障害が存在し,ADL·QOLの低下が改善されない患者,Bio等の恩恵を受けられず,今でもADL·QOLの支援が必要な患者が多く存在していることを意識する必要がある.RAの作業療法(以下,OT)において,ADL·QOLの維持向上を目標とした治療技法のひとつにスプリント作製がある.スプリントは,局所的な関節や軟部組織の「疼痛軽減·予防·矯正·固定·改善」,「術後の機能促進」を目的とする治療用仮装具または簡易装具と位置づけされ,医師の指示のもと,主に作業療法士が医学的根拠に基づき,さらに創造力を加え,患者を目の前にして短時間で評価·トレース·作製し,導入後のメンテナンスまでを含むスプリント療法として確立されている.しかし,エビデンスが不明確な点,治療効果が未知数,作製できる環境,作製技術の差と伝承,対価等はスプリント療法の発展の停滞要因になっていると考える.そのような中,治療環境と病態の変化とともに,RAにおけるスプリントに求められる目的も変化し,様々な関節病変や変形への対応と患者個々のADL·QOLを考え,その支えとなるスプリントを作製することが必要となっている.本項では,スプリントが,関節病変や変形の治療器具としてだけではなく,ADL·QOLを支える器具としても効果を発揮することを伝えたい.

  • 吉田 清志, 梶浦 一郎, 鈴木 恒彦, 御勢 真一, 大川 敦子
    2019 年 35 巻 4 号 p. 276-279
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    脳性麻痺における脊柱側弯変形は日常生活動作に著しい障害をもたらす.従来は特発性側弯症に用いられる装具による治療が行われていたが,障害を有する患者に対して継続して装着することが困難であった.我々は独自に神経疾患の脊柱側弯変形に対して動的脊柱装具(Dynamic Spinal Brace : DSB)開発し,数多くの患者に治療を行ってきた.本装具は従来の側弯矯正のみを目的としておらず,脊柱側弯変形に伴う日常生活動作の障害を改善することも目的としている.DSBの日常生活動作への影響を介護者へのアンケートや,座圧や咬合力測定により検証したので報告する.

  • 遠藤 孔太郎, 田中 洋平, 古橋 麻紀子, 小池 亮太, 浦田 一彦
    2019 年 35 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    上肢切断者のリハビリテーションにおいては,活動や参加の支援を通してQOL (Quality of Life)の向上を図る必要がある.本稿では,COPM·AMPSの結果をもとにした訓練により義手の習熟度が向上し,社会参加につながった症例を紹介した.AMPS能力測定値の変化から,義手を使用することでADL遂行の質が向上することが示唆された.患者の機能や必要な作業をふまえ,適切な義手の種類を選択し,効率的な使用方法の習得を支援することが社会参加の促進につながると考える.

  • 手塚 勇輔, 陳 隆明
    2019 年 35 巻 4 号 p. 285-289
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    下肢切断者のQOL向上には,切断者個々の残存機能を最大限に活用し,そのニーズやライフスタイルに応じた義足の処方,リハビリテーションを行い,切断によって低下した活動·参加の改善を支援することが必要である.最近では,高機能義肢パーツといったハード部分の目覚ましい進歩に着目が集まっているが,下肢切断者の義足歩行獲得率は依然として低い現状が存在する.その大きな要因の1つとして,切断者の多様なニーズに応えうる専門的な知識や指導技術を有する人材が乏しいことが挙げられる.切断者の到達可能なゴール設定を高めるには,義肢パーツの特性を生かした有効なリハビリテーション戦略の確立と実践,そのための人材育成など,ソフト部分の充実が重要な課題である.

原著
  • 大塚 滋, 鈴木 暁之, 野坂 利也
    2019 年 35 巻 4 号 p. 290-296
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    義足膝継手の遊脚期の屈伸動作は膝継手の遊脚相制御装置の機能に大きく依存し,各個人の歩調や歩幅といった歩行パターンに対応するように設計されている.現在市販されている製品では歩行速度への高い追従性を備えた流体制御式の膝継手が処方されるが,装置の機構が複雑で高価となる傾向がある.本研究は,様々な歩行速度への追従性が改善された,構造が単純で安価な遊脚相制御装置を有する義足膝継手を開発実用化することを目的とし,膝継手の試作と歩行分析による評価を行った.その評価から試作した膝継手は流体制御式の膝継手と比較して股関節の動作,モーメントが歩行速度によらず安定していることがわかった.また計測を行った歩行速度の範囲で流体制御式と同等の追従性があることがわかった.

  • —表面筋電図を用いた筋活動分析—
    佐々木 秀一, 見目 智紀, 中澤 俊之, 髙相 晶士, 福田 倫也, 高平 尚伸, 淺井 憲義
    2019 年 35 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は鏡視下肩腱板修復術の早期例に対して,表面筋電図を用いてPSB装着前後の肩関節周囲筋の筋活動を分析しPSBの有用性について検討した.対象は術後に,一定の固定期間を経て自動運動が開始となった9例9肩であった.運動課題はテーブル上での肩関節屈曲運動に対して,PSB装着なしと装着ありの2条件とした.測定筋は僧帽筋上部線維,三角筋前部線維,棘下筋,上腕二頭筋とした.解析は各筋の積分値の平均値を算出し統計処理を行った.PSB装着により僧帽筋上部線維と上腕二頭筋の筋活動が有意に減少し,運動時疼痛が軽減した.PSBを使用したリハビリテーションは,肩腱板修復術後早期の上肢機能練習機器として有用である可能性がある.

短報
  • 小原 謙一, 永田 裕恒, 高橋 尚, 末廣 忠延, 大坂 裕, 藤田 大介
    2019 年 35 巻 4 号 p. 302-308
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,背もたれを後傾位から起こす際の臀部ずれ力の変動と体幹が背もたれ面上を相対的に上方に滑り始めるタイミングを検討することであった.健常成人16人(25.4±7.0歳)を対象とし,臀部ずれ力と体幹が上方へ滑り始める際の背もたれ角度を測定した.実験条件は,臀部を背もたれから3cm, 6cm, 9cm前方へ移動した3条件とした.全条件において臀部ずれ力は体幹が上方へ滑り始める直前に最大となり,その際の背もたれ角は3条件とも傾斜範囲の中間である鉛直位から後傾約26度であった.臀部ずれ力を増大させ得る臀部の位置が異なっている座位であっても,体幹が上方へ滑る角度が同等であれば,臀部ずれ力の変動も同等になることが示唆された.

技術報告
症例報告
  • 田中 洋平, 永橋 侑
    2019 年 35 巻 4 号 p. 313-315
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    下腿切断術後,断端の末端周囲に大きな滑液包炎を生じた一例を経験したのでその経過について報告する.症例は糖尿病を合併した48歳男性である.足部ガス壊疽を発症したため下腿切断術が行われた.仮義足処方後の外来通院中に,断端の脛骨端周囲に大きな腫瘤を生じた.各種検査の結果,腫瘤は偶発滑液包炎と診断された.滑液包炎は,穿刺吸引し,最終的に義足のソケットを再作製,修正することで治癒した.切断術後初期は断端の成熟に伴い,断端の形状が変化しやすい.滑液包炎ができた主な原因は断端とソケットとの適合不良と考えられた.義足は断端とソケットとの良好な適合のもと,装着することが重要である.

講座 義肢・装具関連のリスクマネージメント
  • 西野 誠一
    2019 年 35 巻 4 号 p. 316-322
    発行日: 2019/10/01
    公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    リスクマネジメントとは,「リスクを組織的に管理(マネジメント)し,損失などの回避または低減をはかるプロセスをいい,主にリスクアセスメントとリスク対応とから成る(JIS Q 31000「リスクマネジメント—原則及び指針」による).さらに,リスクアセスメントはリスク特定,リスク分析,リスク評価から成り,リスクマネジメントは,各種の危険による不測の損害を最小の費用で効果的に処理するための経営管理手法である」とされる.「働き方改革」が叫ばれる中,従業者の安全から製商品の品質管理,そして顧客の安心·安全を図るべく企業として様々取り組むことは多く,1つ間違えれば生命に関わることに成りかねないこともある.そこで今回は当社で行っている取り組みを述べる.

印象記
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