日本義肢装具学会誌
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35 巻, 3 号
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巻頭言
特集 車椅子・シーティング技術のこれから
  • 木之瀬 隆
    2019 年 35 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    シーティング技術の目的は,発達障害児·者や障害者,高齢者が椅子·車椅子,または座位保持装置を適切に活用し活動と参加への支援,発達の促進と二次障害の予防,介護者の負担を軽減することである.2017年には,厚生労働省保険局医療課から公表された診療報酬の疑義解釈資料より,疾患別リハビリテーション料に「シーティング」が入り算定が可能になった.ここでは,診療報酬のシーティング解説から基本座位姿勢,シーティング評価,シーティング·チームの在り方,教育の課題について述べ,これからのシーティング技術の展開について解説する.

  • 藤巻 涼司
    2019 年 35 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    患者の身体機能や日常生活活動能力の維持のために,早期からの離床やリハビリテーション介入が望まれている.標準型車椅子は安価であり,多くの医療·介護現場で離床する際に使用されているが,患者に合わせた調整能力は低いために車椅子上で滑り座位などの不良姿勢となりやすい.車椅子上での不良座位姿勢は患者において様々な生理学的機能低下や,褥瘡発生のリスクとなり得るため,患者の身体機能などを適切に評価して,シーティングを行う必要がある.そこで本稿では,標準型車椅子を高齢入院患者に使用する上で行っている評価やアプローチ,取り組みなどを紹介する.

  • 中村 純人
    2019 年 35 巻 3 号 p. 180-186
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    福祉用具である車椅子に関し,我が国では介護保険,労災保険,身体障害者福祉法,児童福祉法などによるレンタルや支給制度が整えられている.車椅子が必要となる疾患としては,脳血管障害,脳性麻痺,神経筋疾患,脊髄損傷などが代表的なものであり,障害部位や範囲,合併症などにより,車椅子の形状や付属品等は決定される.本稿では,各疾患の特徴,車椅子製作の実際,そして製作にあたっての注意点などを解説する.車椅子を処方する際には,疾患や障害の範囲と程度のみでなく,周辺環境等も重要であるため,多職種での十分な検討が望ましい.

  • 繁成 剛
    2019 年 35 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    最新の座位保持装置としてCAD/CAMによる身体支持部のクッション成型技術,バックサポートの張り調整技術そしてダイナミック·シーティングの考え方が注目され,一部は普及しつつある.最近は座位保持が困難な障害児に対して,休息や作業に最適な姿勢を提供し,成長や脊柱変形の進行などに対応できる調整機能を備えているだけでなく,対象児の異常な筋緊張や姿勢変化に柔軟に対応し,最適な姿勢を保持できる機能が求められている.このような最新の技術や機能を導入した座位保持装置は高価格になるが,それらを普及させるためには現行の補装具制度の中でどのように対応するか,あるいは現状のニーズにあった制度に改変していくかが今後の課題である.

  • 星野 元訓
    2019 年 35 巻 3 号 p. 192-198
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    以前の医療·リハビリテーションにおいて立位保持や歩行に比べて,座位保持の注目度は低く,障害が重度の場合は寝たきりの生活を強いる結果となっていた.小児に対する姿勢保持機器や褥瘡予防クッションの発展,寝たきり対策の政策としての車椅子上座位の推奨,座位関連機器の支給体制が整備されていくにつれて,関連機器を最適化することで座位姿勢を改善するシーティングが重要視されるようになった.シーティングでは多面的対応が求められる中で,チーム医療対応の専門診であるシーティングクリニックが開診されていった.シーティングクリニックについて諸外国や本邦における成り立ちや当センターを中心とした運営内容とともに,現状の課題や今後の展望について概説する.

  • 北川 新二
    2019 年 35 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    昨今,車椅子·シーティング装置はモジュール化されたいろいろなバリエーションのタイプのものが商品化されてきている.海外製の姿勢保持機能を有した車椅子·シーティング装置もいろいろ輸入販売されてきている.そのため車椅子フレーム(構造フレーム)部は以前より納期が短縮してきていることから車椅子·シーティング装置上での利用者の姿勢にさらに重点をおくことが可能になっている.医師,セラピスト,リハエンジニア,義肢装具士,シーティングエンジニアなどチームとして利用者の身体機能,使用環境等を十分に把握·共有し,利用者,家族,介助者,教師などのニーズに合ったものを的確に選択し目的に沿う座位姿勢をつくることが重要になる.

原著
  • 飯田 修平, 川北 大, 藤田 拓哉, 小瀧 敬久, 池田 喜久子, 青木 主税
    2019 年 35 巻 3 号 p. 205-211
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    回復期の脳卒中片麻痺患者に対してロボット型膝装具(RKO)を用いた練習の効果をランダム化比較試験にて検討した.対象者28名をRKO使用群と対照群に割付した.介入期間は10日間とし,評価は介入前,介入後,介入後1カ月の3回実施した.評価は歩行速度,歩行率,重複歩距離,歩幅の左右対称性割合,歩行周期中の片脚支持時間割合とその左右対称性,BBS, FIMとした.解析はベースライン比較,群内比較,群間比較を実施した.RKO使用群において,10日間の介入後の麻痺側片脚支持時間割合とその左右対称性の向上,介入後1カ月では麻痺側片脚支持時間割合の向上がみられた.RKO使用群では練習量が増加し,結果に影響を与えたと考えられた.

  • 中村 隆, 三ツ本 敦子, 沖田 祐介, 丸山 貴之, 前野 正登, 飛松 好子
    2019 年 35 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    下の断面画像から軟部組織の断面積を算出して比較した.全ての片側切断者において断端は健側に比べて断面積は小さく,対健側比の平均値は80.0±6.0%であった.筋断面積の対健側比は切断者の年齢や切断歴と相関した.筋の中でも大殿筋と大腿四頭筋の萎縮が大きい一方,内転筋群の萎縮は小さく,逆に長内転筋は断端の方が断面積は大きかった.また,義足歩行をする片側切断者と義足歩行をしない両側大腿切断者の断端の筋の構成比を比較すると,両側大腿切断者の方が大殿筋の萎縮が大きいが,内転筋群の萎縮は差がなかった.

  • —装具の種類および身体機能・バランス能力との関係—
    佐々木 紀葉, 佐竹 將宏, 伊東 知晃, 木元 祐介, 岩澤 里美, 照井 佳乃, 上村 佐知子
    2019 年 35 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,脳卒中片麻痺者の短下肢装具(AFO)の装着方法を調査し,AFOの種類,身体機能およびバランス能力との関係を明らかにすることであった.対象は,AFOの着脱が自立している脳卒中片麻痺者26名(男性18名,女性8名)で,平均年齢は59.3±12.0歳であった.AFOの装着動作を分析した結果,装具を床に立てて装着する方法(立型)と足を組んで装着する方法(組型),その他に分類することができた.立型と組型では装具の種類に有意な違いがみられ,立型は組型よりも感覚と体幹屈曲機能が有意に高く,組型は立型よりも膝伸展筋力と座位バランスが有意に高い値を示した.脳卒中片麻痺者のAFOの装着方法には,装具の種類と身体機能およびバランス能力の違いが影響することが示唆された.

短報
  • —血友病リハビリ検診会での調査より—
    吉田 渡, 小町 利治, 唐木 瞳, 藤谷 順子
    2019 年 35 巻 3 号 p. 225-228
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    中高年を迎えた血友病患者の関節の痛みと装具の使用状況を把握し,今後どのような援助が必要になるか検討することを目的に,血友病リハビリ検診会に参加した27名を対象に調査を行った.そのうち21名でいずれかの関節に血友病性関節症の指摘を受けていた.痛みの自覚は,足関節,肘関節,膝関節の順に多く,手関節の痛みの訴えは少なかった.装具の使用状況は,4名が痛みの自覚はないが装具を使用していた.9名で関節の痛みを自覚して装具を使用していた.肘関節装具および足関節装具で使用中断例が多くみられた.今後は,装具使用の中断に至った理由の詳細を調査し,継続的に使用が可能な装具デザインの検討を行っていく必要があると考える.

講座 義肢・装具関連のリスクマネージメント
  • 萱野 由希江
    2019 年 35 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 2019/07/01
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    少子高齢化の進展に伴い,医療·介護の需要が高まることが予測されている.介護は,利用者の心身の状況に応じて日常生活活動だけでなく尊厳をもったその人らしい生活を支援するものである.そうした介護現場において装具は,利用者の環境の一部であり,利用者の生活に影響を与える.介護現場におけるヒヤリ·ハットや事故は,利用者·環境·介護者等複数の要因が関与しており,それら要因は時間により変化している.本稿では,介護現場におけるリスクマネジメントの基本的な視点や取り組み,介護現場におけるリスクマネジメント活動の動向,装具に係る事例について述べる.

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