日本義肢装具学会誌
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36 巻 , 3 号
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巻頭言
特集 スマートシティにおける高齢者/障がい者ケア(義肢装具)を考える
  • —LPWAと5Gを活用した山岳登山者見守りシステム—
    不破 泰
    2020 年 36 巻 3 号 p. 162-167
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    山岳登山ブームの中,遭難者の増加が問題になっている.本稿では,このことを受け開発している山岳登山者見守りシステムを紹介する.LPWAと5Gという2つの通信システムをハイブリッドで利用し,遭難の発生を自動的に判定して安全·迅速に救助することを目的としている.このシステムは,健常者はもちろん,高齢者や義肢装具利用者にはさらに重要な意味を持ち,登山を諦めていたより多くの人たちが,安全に登山を楽しめるようになることもめざしている.実際に駒ヶ根市役所の協力を得て中央アルプスで実証実験を行い,システムが想定通りに動作することと,システムの高い有用性を示すことができた.

  • —地域活動の経験を踏まえて—
    橋本 清勇
    2020 年 36 巻 3 号 p. 168-172
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,日本における住環境に対する評価の特徴を踏まえながら,住宅および住環境に対する施策を概観しながら,これまで多面的な法律や制度が制定されてきたことを明らかにする.さらに,筆者の地域活動への参加経験から,住環境に対する評価が向上していない要因として,住環境整備に携わる「人」の問題に着目し,住環境整備において,統計データに現れない人の行動やコミュニティの様子を述べながら,今後進歩するであろう情報技術利用による課題解決の可能性について考察している.

  • 西本 寛
    2020 年 36 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    近年,台風や豪雨などの気象現象や大きな地震などの自然現象がもととなる大きな災害が続いている.国を挙げた防災·減災システムの構築も進んでいる.一方,これらのシステムが発信する情報をもとに我々一人ひとりがより安全に防災·減災を実現するまでの,より地域の特性に密着した情報展開については,より多くの工夫が必要であると考える.本稿では,高齢者や障がい者,義肢装具利用者にも配慮した,地域社会における防災情報システムの構築のために必要な要件について検討するとともに,その検討内容をもとにした小型の端末装置の試作を行った内容について報告する.全国瞬時警報システムや緊急速報メールを用いて一斉に配信される災害情報の受信に特化した場合と比較すると,より地域の置かれる状況に密着した防災情報を各家庭の住民に提供する可能性があることがわかった.今後,より多くの地域社会において有事の際に役に立つ防災情報システムを構築するためには,まだまだ多くの検討や考察が必要であり,少しでも防災·減災を実現するために継続的な議論や活動が必要であると考える.

  • —介護施設の食堂における入居者特定と食事量把握—
    片岡 眞一郎, 高橋 健司, 芳賀 沙織
    2020 年 36 巻 3 号 p. 180-185
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    介護人材の需給ギャップという課題に対して,テクノロジーを活用することで生産性を高められるケースも出てきました.総務省5G総合実証の取り組みとして,5G通信を活用し「介護施設の食堂における入居者特定と食事量把握」の実証実験を行ったが,顔認証システムにおいては,通信速度および認識率の両面から5Gの優位性が見られ,コスト面での調整が測れれば実用化も見えてきています.食事量の把握に関しては,5Gの通信速度に優位性は見られるものの,オペレーションに照らし合わせると認識までの秒数や食事量把握の精度など課題もあります.今後の技術革新によって実装に近づいていくでしょう.

シンポジウム
  • 横山 修
    2020 年 36 巻 3 号 p. 186-188
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    完全対麻痺者の歩行を可能にする外骨格型歩行支援ロボットReWalkTM を使用する機会を得た.16例の完全対麻痺者が屋内または屋外歩行を獲得した.6例に筋収縮の改善を認めた.また排便障害で31.2%,しびれで31.2%,疼痛で25%,痙縮で37.5%に改善を認め,歩行以外にも効果を認めた.エネルギー消費量でも,1症例からReWalkTM は長下肢装具と比較して歩行速度は速く,距離当たりのエネルギー消費量が少なく,エネルギー効率がいい歩行訓練ができる.再生医療に向けてReWalkTM は筋力の改善を促進し,効率のいい歩行訓練を提供できる可能性がある.

  • —地方発の歩行訓練リハビリテーションロボット—
    木村 竜太, 島田 洋一
    2020 年 36 巻 3 号 p. 189-190
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    医工連携事業で取り組んでいるリハビリテーションロボット開発について紹介する.これまで機能的電気刺激(FES)と装具,それぞれの利点を組み合わせたハイブリッド装具の開発を行ってきた.それを基に訓練機器として片麻痺者を対象としたAkita Trainerを開発した.コンパクトかつFESの併用,ならびに独自の健側フィードバックシステムを有する歩行訓練リハビリテーションロボットである.脊髄損傷に応用可能な両側型を開発中であり,臨床応用が進む再生医療との併用リハビリテーション効果の検証を行うべく開発を続けている.

  • 飛松 好子
    2020 年 36 巻 3 号 p. 191-193
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    近年のIT (information technology)機器やAIスピーカー(artificial intelligenceアシスタント機能付きスピーカー),AIの発展は医療,リハビリテーションに大きな影響を及ぼしている.家庭におけるこれらの装置の設定が退院時の環境設定に必要となり,リハビリテーション技術もまたこのような機器を取り入れた生活を前提としてゴール設定することが必要となってきている.義肢装具の製作にも3Dデジタル技術が取り入れられつつある.IT機器同様,3Dデジタル技術はリハビリテーションの世界に浸透して行くであろう.それに合わせた人材の育成も求められている.

  • 児玉 義弘
    2020 年 36 巻 3 号 p. 194-197
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    義肢装具分野への3Dデジタル技術導入の背景として,働き方改革による長時間労働の制限や作業環境の改善,若手技術者の確保や技術伝承など製作側の課題と,圧迫骨折など石膏ギブスによる採型が難しいケースや即納などの利用者対応の課題が挙げられる.義肢装具を製作し利用者に提供する事業者として,利用者の負担軽減を図ることは勿論,安定的に事業を継続していくための労働環境の改善や生産性の向上などの業務改革が求められる.3Dデジタル技術は,これらの課題を解決する1つの手段といえる.フランスでは20年前から3D-CAD/CAMが導入され普及が進んでいる.さらには3Dプリンターの実用化に向けた研究も進められている.また中国やロシアなどでもその導入が始まっており,今後,3Dデジタル技術の義肢装具分野への導入は世界的に広がっていくものと考える.

  • 奥野 雅大
    2020 年 36 巻 3 号 p. 198-199
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    デジタル技術の義肢装具分野での活用は欧米では主流になりつつある.本邦においては体幹装具とインソール分野でデジタル技術の導入が進んできているものの,欧米に後れを取っている.導入の障壁の1つになっているのが制度の問題で,従来のギプス採型を3Dスキャナー採型に置き換えた場合に,診療報酬にスキャニングの採型指導料の規定がない.そのため,3Dスキャナーによる採型であれば短時間で終了し,患者負担の軽減が可能であるにもかかわらず,臨床での利用に踏み切れない.従来法,デジタル技術を用いた方法ともにメリット·デメリットがあり,デジタル技術の特性を知り使い分けることが重要である.

  • 坂井 一浩
    2020 年 36 巻 3 号 p. 200-201
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    義肢装具領域における3Dデジタル技術の幕開けは,CAD/CAMが導入された1980年代初頭であろう.以降,同技術は切断端のスキャニングや義肢ソケットの製作などに用いられ,また,2000年初頭より3Dプリンターによる義肢の外装や義手等の製作事例が報告されている.義肢装具士のコア業務は,医師の処方および治療プログラムの理解に基づいた義肢·装具の個別の適合であり,技術的な手段は,新たな材料やテクノロジーの導入により変わりうる.革新的で有用な技術を義肢·装具利用者へ還元するうえでは,義肢装具の支給に関連する制度の柔軟な対応が求められる.

原著
  • 関川 伸哉, 昆 恵介
    2020 年 36 巻 3 号 p. 202-207
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,車椅子座位時の不良姿勢が身体に及ぼす影響について主に自律神経活動の指標から分析を行った.10名(男女各5名)の健常者を対象に異なる座位姿勢での計測を行った.評価パラメータには,心拍,心拍変動,アミラーゼ活性値,フリッカー値,NRS, 座面接触面積,座圧を用いた.座位姿勢の違いによる座面接触面積と左右座圧の最大値およびNRS結果から,臨床上考える車椅子座位時の不良姿勢は再現されていた.また,その際の臀部へのリスクおよび痛みに対する精神的負担を定量的に明らかにすることができた.しかし,自律神経活動への影響は,不良姿勢の際に交感神経活動が高まる傾向がみられたが,その他のパラメータからは,明らかな違いはみられなかった.

短報
  • —脳卒中片麻痺者に対する装着効果について—
    米津 亮, 鈴木 淳也, 山縣 学, 斎藤 聡佳, 成澤 雅紀, 神尾 昭宏, 藤田 暢一, 田邉 憲二, 大東 哲也, 藤本 康浩, 宮谷 ...
    2020 年 36 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    Gait Solution短下肢装具は,より正常なHeel Rocker機能を支援できるが,蹴り出しに課題を有する.本研究では,Gait Solution短下肢装具の足底部を改良し,脳卒中片麻痺者3名を対象に蹴り出しに及ぼす影響を検討した.対象者には,足底部に改良を加えたもの(改良型)と従来の足底部(従来型)および前足部をカットアウトした(切除型)Gait Solution短下肢装具を装着させ,蹴り出し時の足関節底屈モーメントや下肢筋活動等を記録した.その結果,すべての対象者が,改良型において,他の条件より蹴り出し時の足関節底屈モーメントが増加した.また,改良型は立脚終期の腓腹筋の筋活動が他の条件よりも高値を示した.これらの知見から,足底部を構造改良したGait Solution短下肢装具により,蹴り出しが改善できることが示唆された.

  • 清水 新悟, 昆 恵介, 早川 康之, 田村 知之
    2020 年 36 巻 3 号 p. 213-215
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    後足部の回内外の動きは,ショパール関節,リスフラン関節の2つの関節により,前足部の回内外の動きに影響を及ぼす.今回,我々は後足部のアライメント変化における前足部の圧力変化を明確にすることを目的とした.方法は,後足部の踵部角を計測し,足圧計を用いて,歩行時の第1中足骨頭,第5中足骨頭,踵部内側,踵部外側の4カ所を計測し,裸足,後足部回内誘導時,後足部回外誘導時で比較を行った.結果,全例が後足部回内5度であり,後足部回内位では,後足部回内誘導にて踵骨内側と第5中足骨頭の圧力が増加し,後足部回外誘導にて踵骨外側と第1中足骨頭の圧力が増加した.後足部回内位に対する後足部の誘導は前足部の誘導が逆方向に行く可能性があり,注意が必要である.

調査報告
  • 遠藤 正英, 平岡 千尋
    2020 年 36 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中片麻痺患者の肩関節亜脱臼に対し,複数の肩装具を装着した際の整復の効果の違いを明らかにすることとした.対象は当院入院中の初発の脳卒中患者のうち麻痺側肩関節に亜脱臼がみられる29名とした.対象の肩峰間骨頭距離(AHI)を非麻痺側肩関節,麻痺側肩関節,そして麻痺側肩関節に各種肩装具を装着した時のそれぞれで測定し比較した.麻痺側肩関節各種装具装着時のAHIは麻痺側肩関節装具非装着時のAHIに比べて有意に短縮していたが,非麻痺側肩関節のAHIに比べて有意に大きかった.また各種肩装具間のAHIに有意な差はみられなかった.脳卒中片麻痺患者に対して肩装具を使用することは効果的であるが,正常の肩関節と同等になるほどの整復の効果は保持しておらず,肩装具を装着するだけでは不十分であることが示唆された.各種肩装具の種類の違いにおいても差はみられていないことからも,日常生活などを考慮して装具を選択する必要があると考えられた.

講座 バリアフリー
  • 秋山 哲男
    2020 年 36 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    本論は1970年台から公共交通のバリアフリーが始まり2020年で半世紀を迎える.1970年台の道路は段差だらけで,鉄道,バス,タクシーも殆どリフト等もなく利用できなかった.我が国は1981年に制度·政策面がスタートしてから,わずか40年でかなりのところまで整備されてきた.ただし道路のバリアフリーの通達は1973年に建設省から出された.本論では,まず,これらの制度を3つの時代区分,第I期はバリアフリー準備·学習と法律制定期(1981∼2002年),第II期は施策の拡充期(2003∼2015年),第III期はオリンピック·パラリンピックによるバリアフリー活性化期(2016∼2020年),と区分し整理した.そしてオリンピック·パラリンピックの準備が宣言されてから(2016年以後)の整備の具体的事例について整理し紹介する.最後に,我が国のバリアフリーの成果と課題を総括する.

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