日本義肢装具学会誌
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36 巻, 4 号
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2020年度 日本義肢装具学会飯田賞受賞者
巻頭言
特集 義足電子制御膝継手
  • 田中 洋平
    2020 年 36 巻 4 号 p. 240-243
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    電子制御膝継手は内蔵された複数のセンサーからの情報を統合し,歩行周期全体に渡って膝継手の動きを制御することで膝折れとそれに伴う転倒のリスクを軽減する.これにより義足歩行の安全性は大きく向上した.電子制御膝継手は義足側に安心して体重をかけられるため健側下肢の負担を減らし,変形性関節症のリスクを軽減する.最近では低活動者向けの電子制御膝継手も開発されており,その対象者は広がった.大腿義足だけでなく股義足ユーザーも電子制御膝継手の対象である.より多くの大腿切断者,さらには股離断者が電子制御膝継手の恩恵を享受し,安全かつ活動的に生活できるようになることを望む.

  • 梅澤 慎吾
    2020 年 36 巻 4 号 p. 244-250
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    歩行相の全てを電子制御で行う膝継手が国内に流通して約20年の歳月が経った.この期間に選択肢は増えた.進化もした.制度も変わった.そして取り扱う我々の考え方もアップデートした.果たして様々な要素がどのように変わったのか.代表的な部品に関する使用上の要点や情報提供の実態など,事実や経験を交えて電子制御膝継手を改めて考える.

  • 野坂 利也
    2020 年 36 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    電子制御の膝継手は,1)立脚相制御機構は4節リンクや荷重ブレーキなどを用い,遊脚相制御は空圧シリンダーの電子制御を用いたもの,2)立脚相制御はダイナミックスタビライジング機構のもので,遊脚相制御は空圧シリンダーの電子制御を用いたもの,3)油圧シリンダーを立脚相制御モードにしておき,遊脚相になった時に遊脚相モードに変更するもの,4)立脚相,遊脚相共に電子制御するものなどがある.これらの膝継手に対する調整方法は,専用のコントローラーを用いて調整するもの,i-Pad, PCなどに専用ソフトをインストールし,Bluetoothなどを用いて調整するものなどがあり,それぞれ概説する.

  • 遠藤 謙
    2020 年 36 巻 4 号 p. 258-261
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    近年の様々な技術革新に伴い,義肢装具も多くの技術開発が行われた.特に膝継手に関しては,従来のバネやダンパのような受動要素を用いた膝継手から,コンピュータ制御によりダンパを能動的にコントロールするものも商品化され,さらにロボット技術を用いた膝継手も多く研究開発されている.本稿では,主に電子制御膝継手の研究の動向や大腿義足ユーザの運動に期待できる改善点などを紹介し,最後に障害者が参加する大会サイバスロンについて述べ,この技術の展望を述べる.

  • 八幡 済彦, 和田 真生
    2020 年 36 巻 4 号 p. 262-264
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    世界初の立脚相と遊脚相の歩行の全てを電子制御する膝継手として1997年に誕生したC-Leg® は,立脚相のリアルタイムな制御によって従来の機械式膝継手より危険を回避する.Genium 3B1は,オットーボック社の最高技術を結集した電子制御膝継手である.本膝継手は,基本状態が常に立脚相モードの適度に高い油圧抵抗がかかった状態で,遊脚相モードに移行する条件を満たした場合にのみ油圧抵抗が低くなるデフォルトスタンス(Default Stance)であり,膝折れリスクが極めて低い安全なものである.本膝継手は,オットーボック社製膝継手で最も安全なものであると考えている.義足を十分に使いこなせない症例であっても安全に歩行可能で,高活動例では最高の能力を発揮させられる膝継手である.

  • 大泉 寛紀, 橋本 寛, 佐々木 崇, 志田 幹雄
    2020 年 36 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    近年,医療技術の進歩に伴い革新的な医療ロボットが開発されている.同様に義肢装具分野でも最先端のテクノロジーを駆使した義足パーツが開発されている.Össur社の電子制御膝継手であるリオニーおよびリオニーXCには人工知能と様々なセンサーが搭載されており,様々な状況に応じて抵抗値を自動で調節している.それにより義足ユーザーは安定性と活動性の両方を手にすることができる.2019年に完成用部品に認可されたリオニーXCにはさらにユニークな機能として,ランニングモード,サイクリングモード,階段上りモードが追加されている.それらを使いこなすことにより義足ユーザーは大きなメリットを享受できる.

  • 鈴木 昭宏
    2020 年 36 巻 4 号 p. 270-272
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    現在,microprocessor-control-prosthetic knees=電子制御膝継手(以下,MPK)の開発は日々進化してきている.様々なメーカーが独自に開発の切り口を設定し,製品の機能的な特徴をしっかりと出しながらその機能を進化させ続けている.今回,イギリス·Blatchford社製品の代表的MPKであるOrion3について,その開発経緯と,製品の特長などをお伝えしたいと思う.

  • 藤原 健司
    2020 年 36 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    2015年にナブテスコ(株)は四節リンク機構と油圧電子制御を組み合わせた世界初の膝継手ALLUXTM(アルクス)を製品化した.当膝継手の特徴は優れた安全性と多彩な機能である.その優れた安全性には,制御機器で使用される安全装置の仕組みを応用している.また多彩な機能では複数のモード切り替えによって実現している.2016年には厚生労働省が定める完成用部品に指定され,筆者は試着や調整のサポートを行っている.そしてその活動の中で膝継手を安全に使用するには,その仕組みと使用方法の理解が重要であると感じている.そこで本稿では筆者の経験を踏まえ,当膝継手の仕組みと使用方法について紹介する.

原著
  • 北川 由佳, 店場 晃
    2020 年 36 巻 4 号 p. 279-282
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    短下肢装具(以下,AFO)を使用している患者で痙縮による装着困難や長時間の装着で発赤,疼痛を生じる症例に対し,当科では二重式AFOを作製しているが,問題がどの程度解決しているかを明らかにするため17例について調査した.最も多い疾患は脳性麻痺の13例でいずれも痙縮を認めた.粗大運動能力は歩行が制限なく可能な者は3例,介助歩行が可能な者が4例,常に車いすで移動する者が10例であった.二重式AFOの初回作製時年齢は3∼24歳で,二重式AFOに変更して全例で装着状態が改善し,15例で装着に要する時間が短縮した.装着に不慣れな介助者が適切な肢位で装着しやすい二重式AFOは特に痙縮の強い症例では有用と思われた.

技術報告
  • 椿原 彰夫, 富山 弘基, 橋本 泰典, 花山 耕三, 佐藤 智史, 金丸 詩門, 西谷 春彦, 山本 五弥子, 安永 雅
    2020 年 36 巻 4 号 p. 283-288
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中による重度片麻痺患者に対して,膝継手の制動力を自由に設定できる装着型歩行訓練用ロボットを開発するため,産学連携による共同研究を企画した.短下肢装具の足継手用に開発された磁性(magneto-rheological : MR)流体ブレーキを膝継手に搭載し,膝関節伸展補助バネを併用するという考想のもとで,Robotic MR-KAFOの試作機を完成した.膝継手の制動力は,瞬時に歩行周期の時期に合わせて8段階に可変であり,膝継手と足継手の角度変化をはじめとする歩行解析を同時に行えるシステムを組み込んだ.制動力の設定と歩行解析システムは,Bluetoothを用いて本試作機とタブレットPCとの間で交信できるように考案した.本試作機を健常者に装着し,テスト歩行を行わせたが,立脚期に制動力をかけることで,膝折れを予防することができた.踵離地∼足尖離地の間のみ制動力を0と設定することで,足尖離地における膝継手の屈曲角度は20度前後まで可能となった.今後は,片麻痺患者に使用し,有用性を確認する必要がある.

症例報告
  • 栗田 慎也, 久米 亮一, 尾花 正義
    2020 年 36 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中片麻痺に尖足拘縮を合併した患者の歩行能力改善のため踵補高付短下肢装具(踵補高AFO)を使用することがあるが,歩行能力に関する長期的な報告はない.今回,尖足拘縮を生じた生活期脳卒中患者に踵補高AFOを作製し,理学療法を行い,1年間の経過とその効果について報告する.症例は,60歳代男性で心原性脳塞栓症を発症後9年が経過している.左片麻痺に尖足拘縮を合併し,歩行は装具を使用せずに監視を要していた.歩行能力改善を目的に踵補高AFOを作製し,理学療法を行った.尖足はわずかに改善し,踵補高AFOを用い踵接地が可能となり屋内·屋外ともに自立し1年間維持された.理学療法は短期集中で3回行い,その都度歩行速度の改善を認めたが持続しなかった.生活期脳卒中片麻痺に尖足拘縮を合併した患者に踵補高AFOを用いると,歩容と歩行自立度の改善に有効であった.

  • 平林 卓己, 松場 萌恵, Badur un NISA, 野瀬 範久
    2020 年 36 巻 4 号 p. 293-297
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/01/31
    ジャーナル フリー

    坐骨支持免荷装具は,荷重制限を要する大腿骨骨折患者に用いることで早期から歩行練習を可能にするが,適応には比較的高い身体機能が必要である.本症例は大腿骨顆上骨折を受傷した男性であり,受傷側は幼少期のポリオウイルス感染によって下肢筋力低下,変形,脚長差を呈していた.受傷側下肢筋力は,大殿筋は正常,大腿四頭筋は完全麻痺,その他の筋は不全麻痺であった.術後に坐骨支持免荷装具とロフストランド杖を処方して早期から歩行練習を開始した結果,早期に実用的な歩行能力を獲得し早期職場復帰が可能となった.また,坐骨支持免荷装具を使用した状態での身体活動量は退院後1カ月で約70%,2カ月で約90%まで改善した.麻痺肢の大腿骨骨折であっても大殿筋の筋力が維持されている場合は坐骨支持免荷装具によって社会復帰を促進する可能性がある.

調査・研究報告
  • 遠藤 聡, 藤原 清香, 真野 浩志, 西坂 智佳, 野口 智子, 奈良 篤史, 柴田 晃希, 越前谷 務, 芳賀 信彦
    2020 年 36 巻 4 号 p. 298-304
    発行日: 2020/10/01
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

    上肢欠損·形成不全者の義手継続使用率を維持する要因は,明らかになっていない点が多い.今回我々は,2013〜2017年に義手を製作した片側前腕以遠の先天性横軸形成不全児22名を後方視的に調査した.義手の継続使用率は86%であり,特に中断者が多いとされる2歳以上で処方した患児でも90%であった.義手の継続使用率が高かった要因として,義手製作前から完成後も継続した多職種連携,ピアサポートの実施が示唆された.その多職種連携には,作業療法の早期開始や,多職種での身体評価や発達評価,患児のニーズに合わせた適切な義手の選定と訓練などが含まれていた.義手の中断要因としては,経済的負担,時間的負担があがった.これらの解決が今後の課題と考える.

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