日本義肢装具学会誌
Online ISSN : 1884-0566
Print ISSN : 0910-4720
ISSN-L : 0910-4720
37 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
日本義肢装具学会飯田賞本賞を受賞して
日本義肢装具学会飯田賞奨励賞を受賞して
特集 スポーツ外傷・障害に対するリハビリテーションと装具療法
  • 米谷 泰一, 辻井 聡, 濱田 雅之
    2021 年 37 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    一般整形外科の「日常生活レベルへの回復」と異なり,スポーツ選手においては,元のレベルは最低限,「さらに上のレベルへのスポーツ復帰」が治療目的であり,機能修復·機能改善の早期獲得と,再発予防の2つが求められる.障害治療では,動作制限を最小とした関節制動装具や,全身アライメントの改善に患部外装具を用いる.外傷直後は,疼痛軽減と,損傷部位への負担軽減·治癒促進のために,関節固定や制動の強い装具を用いつつ,復帰にむけて障害治療と同様の装具を用いる.治療段階ごとの患部評価と,スポーツ動作再獲得への全身評価から装具を検討する一方で,使用時間·頻度·運動強度·競技種目·レベル·競技ルールにも合わせた修正が必須となる.時間的·金銭的制約がある現実の中,アスリートの喜ぶ顔と遭遇した時の達成感は格別であり,そうした経験が全ての人への還元につながると信じている.

  • 石田 知也, 井野 拓実, 越野 裕太, 寒川 美奈, 遠山 晴一
    2021 年 37 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    スポーツ外傷·障害の予防やリハビリテーションを検討する上で,受傷メカニズムとリスク要因を理解することは重要である.屍体膝やコンピュータモデルを用いたバイオメカニクス研究は,様々な負荷条件を設定したシミュレーションが可能であり,受傷メカニズムの解明について重要な知見が得られる.一方,体表マーカー法に代表される三次元動作解析は,スポーツ動作の全身的なバイオメカニクスの評価が可能であり,リスク要因や,関節負荷に影響する身体運動学的特徴を検討する上で有用である.本稿では,膝前十字靱帯損傷,足関節外側捻挫,膝蓋大腿関節痛症候群について,現在考えられている受傷バイオメカニクスとリスク要因を紹介する.

  • 井上 泰博, 小柳 磨毅, 椎木 孝幸, 今高 康詞, 田中 彩乃, 麻田 昌彦, 砂野 徳志, 中川 滋人
    2021 年 37 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    過大な力学的負荷により発生する肩関節脱臼後には,肩関節の不安定性が遺残することが多い.脱臼後の理学療法は観血的治療あるいは保存療法にかかわらず,一定期間は前下関節上腕靭帯-関節唇複合体への負荷を回避し,肩関節に不安定性を残さないように心がけることが最も重要である.装具療法は,治癒過程にある軟部組織への外部からの過大な負荷を,少しでも軽減させる効果が期待される.しかしながら,これまで再脱臼を予防する手段として本邦で使用されてきた装具は,ラグビー選手の再脱臼率を低下させるには至っていない.われわれが開発したElastomeric shoulder braceは,上腕骨頭の制動,タックル姿勢の制御,再脱臼の予防に効果を認めたことから,コリジョンスポーツ選手に対し,有効な手段となることが期待される.

  • 北口 拓也, 竹下 真弥, 明崎 幸仁, 福井 浩之, 橋本 寛
    2021 年 37 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    膝靭帯再建術後の治療は移植腱の再構築に配慮しながら,機能面の向上や再損傷予防を行うことが重要である.膝前十字靭帯再建術後の治療においては,非接触型損傷が多いという特徴から,再損傷予防としてはリハビリテーションによる動作の修正が重要となる.一方膝後十字靭帯は日常的に脛骨の後方剪断力のリスクに曝されることから,装具による移植腱へのストレス回避の対応が術後早期より必要となる.術後のリハビリテーションや装具療法は損傷靭帯の種類によりその禁忌や内容,適応が異なるため,靭帯ごとの病態や解剖,移植腱の再構築における注意点について十分な知識を有し適切な治療を選択する必要がある.

  • 大窪 伸太郎
    2021 年 37 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    スポーツ外傷および障害の治療において,装具療法は重要な治療法の1つであり,その種類は多岐にわたる.自身もこれまでにそれらの予防およびパフォーマンス発揮を目的としたスポーツ選手に対してインソール製作経験を積み重ねてきた.本稿ではスポーツ障害に対するインソールの設計に関して,過去の研究レビューに自身の経験を加えて解説する.

原著
  • —血流量と筋電図を用いて—
    中山 淳, 小川 和徳, 岡 久雄
    2021 年 37 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    人工筋型動的スプリントの手関節カフの素材と形状の違いが指尖部血流量および筋活動量にどの程度影響を及ぼすのか,比較検討することを目的とした.被検者は男性4例8手,平均年齢は26.2歳であった.脈派測定には,半導体レーザー式組織血流計を用いた.筋電測定はTRIASを用い脱力位にてスプリント実動中と非装着時における手関節掌屈·背屈方向それぞれの60°位にて計測した.結果,5分経過時には背屈方向で,メッシュ型およびウレタン型とも有意に低下していた(p<0.05).掌屈方向では矯正開始後3分,もしくは5分経過時にはメッシュ型で有意に低下していた(p<0.05).EMGに関しては,掌背屈運動ともにメッシュ型で有意に筋活動が高い結果となった(p<0.05).手関節カフの素材と形状の点から考慮すると,人工筋型スプリントを装着する際は2重構造であるウレタン型の手関節カフが推奨される.しかし,ウレタン型であってもDTSaMの構造上背屈方向の血流量は低下しやすい傾向にあるため注意が必要であるといえる.

  • —PS·1改良モデルの開発と評価—
    関川 伸哉
    2021 年 37 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    我々は,2015年に高齢者福祉施設特化型車椅子PS·1を完成させた.その後,複数の高齢者福祉施設でPS·1を用いた臨床介入を行った.PS·1の使用によりADLをはじめとした生活改善を得ることできた一方,PS·1は,開発当初から高さ調整の方法を含め量産に適さない機構であり構造上の大幅な見直しが必要であった.そこで本研究では,PS·1の臨床介入により見えてきた課題の整理を行い量産可能なPS·1改良モデルの開発を行うことを目的とした.結果,改良モデルではPS·1の課題を解決することができたが,デザイン性の大幅な改善が新たな課題となった.

症例報告
  • 中村 隆, 今井 大樹, 濱 祐美, 近藤 怜子
    2021 年 37 巻 1 号 p. 56-58
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    両側股関節離断者はきわめて稀であり,義足の適応を含めリハビリテーションに関する報告はきわめて少ない.症例は24歳,男性.交通事故による両側股関節離断.大振り歩行による義足歩行を獲得したのち,交互義足歩行訓練を試みた.両股義足にはストライドコントロール付き股継手(徳林社製,TH-01C)を改良した遊動股継手と,イールディング機能付き膝継手(オットーボック社製,3R31)を導入した.対麻痺の脊髄損傷者の歩行訓練手法を適用し,左右の重心移動により義足の振り出しが可能になり,交互義足歩行を達成した.また,継手の固定解除機構を工夫し,義足の装脱着と起立,歩行,着座といった一連の訓練動作が自立した.

調査・研究報告
  • 白銀 暁, 我澤 賢之
    2021 年 37 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    公的支給制度による補装具の提供において,地域間での格差の存在が指摘されているが,その詳細は十分明らかにされていない.本研究は,将来に予定する本格的な分析に向けて,まず2017年度の福祉行政報告例を対象に,行政区画(都道府県),地域区分,自治体規模,財政状況の4つの観点から分析を行って傾向を明らかにした.結果,地域や自治体規模等による,それら補装具の支給に差があることが示唆された.一方,人口による影響の排除方法や要因の分析の限界が課題として把握された.今後は,本傾向が年度に関わらず存在するものか確認し,定常的に存在する差に関してはその要因を調査して,より均質な補装具の支給に向けた具体的な取り組みに結び付けたい.

  • —当院のデータより—
    栗田 慎也, 髙橋 あき, 髙橋 忠志, 久米 亮一, 山崎 健治, 尾花 正義
    2021 年 37 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中発症早期より長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis : 以下,KAFO)を使用する報告は増えているが,KAFOの使用や作製に伴う有害事象の報告はない.そこで,急性期病院である当院で,脳卒中発症早期患者に対するKAFOの使用や作製に伴う有害事象を後方視的に調査し,それに対する対策を行った.対象は2017年8月から2019年7月までの間に報告された有害事象データとした.この調査期間内の有害事象は376件あり,そのうちKAFOに関するものは25件(6.6%)であった.有害事象の多くは備品KAFOで生じており,最も多かった内容は医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer : 以下,MDRPU) 6件であった.急性期病院での備品KAFOの使用には,MDRPUの発生予防対策や創傷に対する知識獲得が重要と考える.

講座 下肢救済における装具の役割と課題
  • 田中 里佳
    2021 年 37 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 2021/01/01
    公開日: 2022/01/15
    ジャーナル フリー

    健康寿命を延伸するためには,健康な足を守る必要がある.フットケアとは足のアセスメントを行い,歩行を妨げる要因である足病を早期に発見し,ケアを行うことで重症化の予防に努めることである.現在世界では30秒に1本の足が切断されていて,その多くが糖尿病患者である.糖尿病患者の多くは足病を合併しており,約25%は足潰瘍を発症し,適切な治療を行わないと下肢切断を余儀なくされる.適切なフットケアを実践することで,足潰瘍の発症や下肢切断を防ぐことが可能であり,本項では糖尿病足病変に対するフットケア,診断そして治療について解説する.

feedback
Top