日本義肢装具学会誌
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37 巻, 3 号
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巻頭言
特集 先天性四肢形成不全児及び小児切断に対する義肢(支援)
  • 芳賀 信彦
    2021 年 37 巻 3 号 p. 176-180
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    先天性四肢形成不全はまれな疾患であり,表現型に応じて治療法が選択される.下肢の縦軸欠損では,再建手術による患肢温存か,切断術後の義足装着を選択する.上肢形成不全で切断術を行うことはきわめて少なく,橈骨形成不全に対しては再建術が,手根部より近位の横軸欠損では義手治療が選択肢となる.小児の後天性切断の治療は,先天性の横軸欠損に準じ,多くの場合義肢装着の適応となる.いずれの病態でも,医師(リハビリテーション科,小児科,整形外科など),義肢装具士,理学療法士,作業療法士等が連携して診療にあたる必要があり,適宜カンファレンスを行うなどして,職種間での情報を共有し,認識を統一する.

  • —国立障害者リハビリテーションセンターにおける取り組み—
    中村 隆, 矢野 綾子, 野月 夕香理, 山﨑 伸也
    2021 年 37 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    国立障害者リハビリテーションセンターにおける先天性四肢形成不全児・者の義手に対する取り組みについて紹介する.当センターの特徴は,リハビリテーション診療の専門外来の設置,多専門職によるチームアプローチ体制の確立,義手の試用評価である.また,小児義手の地域格差の問題を解消すべく,国内外の情報収集と情報共有基盤の構築,研修会等の開催による普及活動を行っている.

  • —兵庫県立総合リハビリテーションセンターの取り組み—
    溝部 二十四, 柴田 八衣子, 岡本 真規子, 松前 めぐみ, 植山 美里, 谷 泰人, 陳 隆明, 戸田 光紀, 濱本 雄次, 増田 章人
    2021 年 37 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    先天性上肢欠損児のリハビリテーションの特徴は,子どもは「成長」するということである.小児に対する筋電義手訓練は成長に合わせて段階的に行い,生活支援も各々の心身の成長に合わせて行うことが重要である.これらは長期間継続して行うことが必要である.家庭のみならず,保育園や幼稚園,小学校生活への筋電義手導入は,活動・参加を拡大し,その後の義手の定着に大きな影響をもたらす.本稿では,就学前の保育園や幼稚園期の児の自立支援,さらに小学校でのカリキュラムに沿った生活支援について述べる.また,当センターが積極的に取り組んでいる,児の保護者同士の情報共有,また子ども同士の交流の場である「おやこ広場」について紹介する.

  • 藤原 清香, 野口 智子, 柴田 晃希, 越前谷 務, 大西 謙吾, 西坂 智佳, 真野 浩志, 芳賀 信彦
    2021 年 37 巻 3 号 p. 194-199
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    東京大学医学部附属病院リハビリテーション科では,2013年に先天性四肢形成不全および欠損の患者および後天性四肢切断の患者にも対応する専門外来「四肢形成不全外来」を設置し,臨床診療や研究・教育を行っている.障害の特殊性や多様性からも海外のAmputee Clinicのように,専門性が高く求められる当外来では,医療従事者に限らず多職種が参加するチーム医療を行っている.本稿では,海外における小児義肢の臨床やその実態,社会サービスなど,これまで当院で行ってきた四肢形成不全症や義肢に関する調査や研究等,様々な取り組みについても紹介する.

  • 大野 祐介, 梅澤 慎吾
    2021 年 37 巻 3 号 p. 200-205
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    当センターで経験した4症例を通して小児の成長に合わせた義足の製作やリハビリテーションの介入について報告する.主に①どのようなタイミングでどのようなパーツを選択するか,また,ソケット仕様の検討に関すること,②可能性を広げるために必要な成長過程に応じたニーズの把握に関すること,③家族・学校・コミュニティとの連携を通した学校生活がより快適になるようなサポートに関することの3点に焦点を当て,成人義足使用者とは異なる義肢装具士・理学療法士によるアプローチの必要性について考察する.

  • 戸田 光紀, 陳 隆明, 柴田 八衣子, 溝部 二十四
    2021 年 37 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    先天性上肢欠損児において,筋電義手は両手動作の獲得を可能とし活動,参加の機会を広げる有効な手段である.しかし本邦において小児に対する筋電義手はいまだ普及しているとは言い難い現状がある.兵庫県立総合リハビリテーションセンターでは2002年より小児に対し筋電義手訓練を常時提供できる体制を構築し,現在まで継続的に訓練を提供してきた.本稿では小児筋電義手の歴史と当センターの訓練方法および実績,取り組みを紹介する.また,新型コロナウイルス感染症が小児筋電義手診療に与えた影響を含め,課題について述べる.

原著
  • 大窪 伸太郎, 仲谷 政剛, 野々川 舞, 田川 武弘
    2021 年 37 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    圧力分散効果は,インソールにおいて非常に重要な要求機能の1つである.しかし,従来の評価指標は,圧力の分布を測定しているものにすぎなかった.そこで,より効果的に圧力分散効果を評価する指標を考案し,妥当性を検証した.被験者は健常な成人男性8名と成人女性3名の計11名である.硬度が異なる樹脂フォーム材5種類における静止立位時の圧力分布を測定し,従来評価指標(ピーク圧,接触面積)と今回提案する新規圧力分散評価指標(PDP)をそれぞれ算出し,圧力分散に関する主観評価との相関係数を比較した.その結果,新規評価手法の方が従来評価手法より主観評価との関係が強く,従来指標よりも圧力分散効果を定量的に評価し得る可能性が高いことが明らかとなった.

  • —短下肢装具に固定する着脱可能な内反尖足矯正ストラップ—
    笠井 健治, 小川 雄司, 熊田 寛史, 河合 俊宏, 清宮 清美, 石井 裕穂, 藤倉 雅, 森 一大, 亀田 和弘, 窪田 浩平
    2021 年 37 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    我々は既存の短下肢装具に併用して内反尖足を矯正することを目的とした新しい装具ストラップ「踵骨安定化ストラップ」を開発した.本製品の有効性を検証する目的で立位検査と歩行時の足底圧計測を慢性期脳卒中片麻痺患者15名で実施した.本製品を使用した条件では立位重心動揺面積の減少とクロステスト成績の改善が得られ,立位バランスの改善を認めた.また,歩行検査では足底圧分画圧力値からは内反尖足の改善,足底圧中心軌跡からは立脚期の側方安定性の改善が示唆された.今後は長期使用時の耐久性などの検討を加えた後に本製品を実用化する予定である.

症例報告
  • 對間 泰雄, 横山 修, 丸田 耕平
    2021 年 37 巻 3 号 p. 225-228
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    不登校の状態から,先天性上肢欠損症による挫折感を抱くようになった思春期の男児に対して,筋電義手の処方,訓練した結果,不登校が改善されていった.筋電義手の訓練を受けながら,少しずつ学校へ通学するようになり,筋電義手の長期貸し出し後は,学校で使用するようになった.学校職員とも情報交換し,筋電義手の使用場面が増えていった.自宅でも筋電義手を利用し,その後は特例補装具として認められた.先天性上肢欠損児は,成長に伴い欠損による挫折感などを抱くことがある.筋電義手は両手動作や外観といった身体面だけでなく,精神面にも働きかけた可能性がある.学校での定着には,筋電義手の訓練を担う医療機関と学校の教員等との情報交換が有用であり,今後は学校教育関係者への啓発が必要であると考える.

  • 栗田 慎也, 佐藤 雅哉, 千田 洸平, 山崎 健治, 尾花 正義
    2021 年 37 巻 3 号 p. 229-232
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中患者のトイレ動作はADLの中で中難度の項目であり,運動麻痺や高次脳機能障害を呈した発症早期の患者では多くが介助を必要とし,その重症度が高いほど,介助量は増加する傾向にある.さらに,脳卒中発症3カ月以内で過活動膀胱の頻度は約36%であり,尿意や頻尿による心理的負荷が歩行能力の改善を妨げる可能性が報告されている.今回,脳出血を発症し,重度運動麻痺と高次脳機能障害を生じた若年男性患者に対し,歩行能力の改善目的に作製した長下肢装具を使用することで,立位での排尿動作が獲得でき,理学療法・作業療法中の頻尿への介助が軽減され,十分な歩行練習が可能となった症例を経験したので報告する.

調査・研究報告
  • 横井 剛, 高岡 徹
    2021 年 37 巻 3 号 p. 233-236
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    生活期脳卒中患者における短下肢装具の再作製の現状を明らかにすることを目的として,横浜市において平成29年10月〜平成30年9月に障害者総合支援法で短下肢装具の再作製を行った脳卒中片麻痺患者319名を対象として,装具の種類の変更と再作製までの期間について後方視的に調査を実施した.再作製までの期間の中央値(範囲)は49(15〜300)カ月であった.また10年以上経過して再作製となったのは33本(10.3%)であった.再作製により装具の種類が変更になったのは,全体では57本(17.9%)であった.生活期でも比較的高い割合で短下肢装具の変更が行われていること,そして装具のフォローアップが十分に実施されていないことが示唆された.

講座 下肢救済における装具の役割と課題
  • 河辺 信秀, 渡部 祥輝
    2021 年 37 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    足病患者におけるフットウェアの選択においては,運動力学的要因を評価することが重要となる.特に糖尿病足病変では,小切断,関節可動域制限,足部変形,歩行が足底圧の上昇に影響を及ぼすため,これらのメカニズムを正しく理解する必要がある.運動力学的要因を評価し情報を加えることで,フットウェアの適切な選択につながると考えられる.この点の評価と情報提供が足病患者のフットウェアにおける理学療法士の重要な役割であると考えている.また,創傷治療や予防を目的としたフットウェアは,ガイドラインで基本的な内容が推奨されているため,本稿ではこれらを紹介する.さらに,フットウェアと並行して行われるoff-loadingを目的とした理学療法についても解説する.

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