日本義肢装具学会誌
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巻頭言
日本義肢装具学会飯田賞本賞を受賞して
日本義肢装具学会飯田賞奨励賞を受賞して
日本義肢装具学会飯田賞奨励賞を受賞して
特集 断端成熟の促進
  • 加藤 弘明
    2024 年 40 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    下肢切断後の断端成熟は義足のソケット適合に大きく影響するため,義足リハの中で達成したい必須の項目である.しかしその方法については一定の方法が確立されているとは言い難く,現場では断端成熟がうまくいかず義足装着に進めない症例や,断端成熟不十分で義足を作製したためにいつまでも適合が落ち着かないという症例が発生することもある.日下病院および菰野厚生病院では義肢診療の専門病院として下肢切断者の義足装着・歩行訓練を日常的に行っており,義足訓練の中に断端成熟も盛り込んでいるため,断端成熟について大きな問題が起こる症例は少ない.今回は当院での断端成熟戦略を,考え方や実際の取り組みを交えて紹介する.

  • 桑山 大介
    2024 年 40 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    下肢切断者にとって初めて装着する訓練用仮義足の製作における義足リハビリテーションは重要である.断端成熟に合わせソケットを作り替えることによりリハビリテーションプログラムが滞ることが無いようにする必要がある.そのため適切な断端管理の下に断端成熟の促進が行なわれ,スムーズに義足を装着でき,ストレス無く歩行を獲得することが理想といえる.これには歩行練習を行いながら断端の変化や身体機能の向上に応じて適切な資材を投入して仮義足を製作すること,手術前から退院まで義足装着者に関わる医療従事者が情報共有し,連携することが大切である.断端成熟に対する国内での情報共有も不十分でまとまりもない現状で,仮義足製作過程を交えて義肢装具士の視点で流れと工夫を述べる.

  • 佐野 太一, 戸田 光紀, 大島 隆司, 陳 隆明
    2024 年 40 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    1990年以降にシリコーンライナーが国内でも普及し,新規切断者に対するインターフェースの選択も大きく変化した.近年ではシリコーン以外の材質でできたライナーや,ピン懸垂以外のさまざまな懸垂方法のライナーが発表され,ライナーの選択肢が多くなっている.しかしながら,新規切断者に対するライナーの選択基準についての研究や報告は少ない.そのため,本稿では新規切断者に対するライナー選択について,評価方法から仮義足採型までの期間などを整理し,報告する.

  • 田中 洋平
    2024 年 40 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    切断術後初期は断端の形状が著しく変化する.切断術後初期の腫れた断端が徐々に小さくなる現象のことを断端の成熟と呼ぶ.断端の形状変化が著しい時期に訓練用仮義足を完成させてしまうと,すぐにソケットの適合が不良になり患者は義足の装着が困難となる.そのためリハビリテーション入院期間中にできるだけ断端を成熟させてから訓練用仮義足を完成させるようにする.断端の成熟を促すために,義足装着時以外はスタンプシュリンカーや弾性包帯を活用して断端を適度に圧迫すると同時に,早期の義足装着を目指す.義足のソケットは断端の成熟に合わせてキャストソケット,チェックソケット,ラミネートソケットの3種類を活用する.この時期に推奨される懸垂方法はピンロック懸垂,ランヤード懸垂,カフベルト懸垂である.訓練用仮義足完成後も断端の成熟は進むため,適合に応じたソケットの調整や本義足への移行が必要である.

  • —訓練用下腿義足製作の問題と解決の手がかり—
    橋本 寛
    2024 年 40 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    断端の成熟とは,義足ソケットの頻回な交換や調整を避けるために,術後の浮腫をコントロールし,断端の体積を安定化させることと定義されている.そのために最も合理的な方法は,①術直後から浮腫予防のアプローチを行う,②容易なintermediate prosthesesを用いる,の2点と考えられる.②については様々なプロトコルが報告されているが,①については本邦でのrigid dressingの実施報告は非常に少ない.本学会が関連団体と協力し,エビデンス構築を目指すべきと考えられる.

  • —吉備高原医療リハビリテーションセンターの取り組み—
    濱田 全紀, 堅山 佳美, 本郷 匡一, 德弘 昭博
    2024 年 40 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    吉備高原医療リハビリテーションセンターでの下肢切断の断端成熟を進めるための工夫について紹介する.当院では他院での切断手術後に義足装着訓練のために紹介される患者が多い.転院時にすでに様々な問題を生じている断端を経験するが,断端成熟を進めるための方法は同じである.まず,術創の治癒をはかり,断端の浮腫を軽減する.同時に石膏ギプスによるパイロン義足を作製して歩行訓練を行い,断端成熟の促進をはかっている.義肢装着訓練を行う入院期間中は,看護師が断端ケアの大きな役割を果たしている.様々な問題を抱えている下肢切断患者であっても,一つ一つ問題を解決し時間をかければ義足歩行の可能性は高くなる.

  • 三ツ本 敦子
    2024 年 40 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    下肢切断者の断端変化と術後の断端管理は,義足のリハビリテーションを行うチームにとって最も関心が高い領域の1つである.断端変化は訓練中も退院後も続くため,義足ソケットの適合を行う義肢装具士にとって,その変化の観察は重要である.今回,断端変化と断端管理の2つに着目し,断端変化については下肢切断者の断端変化に関する過去の文献と国立障害者リハビリテーションセンター(当センター)で行った断端変化の調査について紹介する.断端管理については,急性期病院ではない当センターで現在行っている断端管理について説明する.新規切断者の断端管理は,切断術を行った病院とリハビリテーションを行う病院の連携も重要となってくる.

技術報告
  • 村山 稔, 有賀 健太郎, 加藤 大翔, 篠原 忠善, 野崎 佑真, 長谷川 暉, 長谷川 真衣
    2024 年 40 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    我々は,先行研究において健常者に対してTストラップ付きシューホーン型短下肢装具が,静止立位の足関節の水平面上の動きである内転に矯正効果が有ることを確認した.しかし,Tストラップが必要になる底屈筋の筋緊張が亢進している症例においては,足関節の可動域制限を生じさせないためにも,背屈遊動の継手付き短下肢装具の使用が望ましい.そこで本研究では,背屈遊動かつ底屈制限のタマラック足継手付きプラスチック短下肢装具に,Tストラップを内蔵させた短下肢装具を試作し,健常者を対象として足関節内がえしの矯正効果を確認した.歩行計測の結果により,今回試作した短下肢装具はTストラップがない状態に比べて,Tストラップを装着した方が初期接地を除く立脚期においては足関節の内がえし角度が減少し,矯正効果が得られることがわかった.

  • 大谷 道明, 後藤 和之, 松本 晋哉, 下川 純二
    2024 年 40 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中片麻痺患者において,発症早期よりリハビリテーションが開始される.重度片麻痺患者においては,長下肢装具を用いた歩行練習が実施されるが,従来の長下肢装具膝継手は,膝の伸展可動域に対して角度調整ができない,または角度調整に工具が必要であるなど,関節可動域制限を呈する片麻痺患者の下肢には,装着時に痛みを伴い,装着に時間を要するケースが多い.以上のことから,我々は工具無しで角度調整と固定を可能にした膝継手を開発したので報告する.

調査・研究報告
  • 島袋 公史, 大村 優慈, 立津 統, 砂田 宏典, 浅見 豊子
    2024 年 40 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    理学療法において適切な義肢装具の選択および提案はガイドラインで推奨され,重要な要素であると考える.しかし,重要度は高い認識があるものの,義肢装具に関する卒前教育が不十分という報告がある.本研究では,理学療法学科学生が長期臨床実習で得た義肢装具の経験と実習前に修得しておく必要があると感じた知識について明らかにすることを目的とした.対象は,理学療法学科学生75名で,個人の電子端末から質問に回答した.内容は,実習施設の内訳,義肢装具経験の有無,経験した義肢装具,説明を受けた内容,経験した内容,実習前に必要と思う知識を調査した.今回の調査では,約80%の学生が実習中に義肢装具を経験した結果となった.義肢装具装着,装具歩行評価を中心とした関わりが多い結果となり,学生は経験を通して基礎分野の知識を顧みる傾向にあることが示唆された.今後,実習前の学生への情報提供や対策として取り入れる必要性があると考える.

  • 佐藤 健斗, 大野 崚, 出良 一歩, 田村 知之
    2024 年 40 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,距骨下関節の過回内に対して足底装具を用いた際の膝関節における衝撃吸収能力に与える即時的効果を明らかにすることを目的とした.静止立位時のアーチ高率およびQ角,課題動作とした平地歩行時における膝関節伸展筋の筋活動,および膝関節の衝撃吸収能力を足底装具による介入の有無で比較した.その結果,足底装具を使用することによりアーチ高率およびQ角には改善がみられ,筋活動も高まる傾向がみられたが,衝撃吸収能力には即時的効果は示されなかった.

  • 今井 大樹, 中村 隆, 三田 友記, 三ツ本 敦子, 中村 康二, 矢野 綾子, 山﨑 伸也, 阿久根 徹, 大熊 雄祐
    2024 年 40 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    わが国において多肢切断の疫学調査はほとんど無い.今回われわれは多肢切断者の疫学的特徴を明らかにすることを目的に,国立障害者リハビリテーションセンターで運用しているデータベースを用いた調査を行った.1979〜2019年の41年間に当センターで義肢の製作対象となった140名の多肢切断者を分析した結果,両側上肢切断は労災による男性の切断が主であった.両側下肢切断は交通事故や糖尿病・血管原性疾患を主因とし,片側上下肢切断および3肢切断に比べて女性の割合が多かった.片側上下肢切断と3肢切断は全例が交通事故を主とする外傷を原因とし,性別に特徴は見られなかった.4肢切断は電撃性紫斑病などの疾病を主因とし,他の切断部位と比べて最も女性の割合が多く最も平均年齢が高かった.切断年を年代ごとに分けた推移では,4肢切断の増加,多肢切断者の高齢化,疾病による切断の増加傾向が見られた.

  • 矢野 綾子, 中村 隆, 中川 雅樹, 山﨑 伸也, 阿久根 徹
    2024 年 40 巻 1 号 p. 71-80
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    2012〜2020年に国立障害者リハビリテーションセンターで実施した,3歳未満の先天性上肢形成不全児23名に対する義手の訓練で用いたおもちゃについて調査した.訓練の実施回数は合計293回,使用したおもちゃは合計130種(市販品105種,自作品15種,改造品10種)であった.使用頻度が高いおもちゃは,シンプルで多様な遊び方ができる・異なる発達段階の児が使用できるなどの特徴があり,ボールやままごと,スーパーボールが含まれた.男児ではミニカーやプラレール,女児ではブロックも多く使用した.おもちゃの選択には,義手の訓練に適した機能をもつとともに,児の発達に合わせた使い方ができることが重要と考える.

講座 これから義足で走るために必要なこと
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