日本義肢装具学会誌
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最新号
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2024年度 日本義肢装具学会飯田賞受賞者
巻頭言
特集 40巻記念企画 疾患に対する装具の歴史的変遷
  • 横井 剛
    2024 年40 巻4 号 p. 240
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー
  • 芳賀 信彦
    2024 年40 巻4 号 p. 241-244
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    特有の装具が治療に用いられる小児の運動器疾患として,発育性股関節形成不全,ペルテス病,先天性内反足,特発性側弯症を取り上げ,歴史的変遷を概説する.レントゲンによるX線の発見以降に提唱されたペルテス病を除き,古くから臨床所見に基づく治療体系の中で装具治療が進歩した.X線の発見以降は画像所見に基づく病態の理解が進み,現代の装具治療の考え方が発展してきた.一方でいずれの疾患でも手術治療が進歩し,装具治療の役割や,治療体系に占める位置づけが変化してきている.今後も工学と連携し,患児にとって負担が少なく,かつ効果が高い装具の開発が望まれる.

  • —短下肢装具に着目して—
    浅見 豊子
    2024 年40 巻4 号 p. 245-248
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    装具療法は脳卒中片麻痺の治療において重要な役割を果たしている.世界で最初の装具は紀元前2750年から紀元前2625年の人骨の大腿骨骨折部に当てられていた副木とされ,日本で初めて装具が目にされたのは,西洋医学が取り入れられ始めた江戸中期頃であるとされている.プラスチック製短下肢装具は,1967年のSimonsらの報告以来,多数のデザインが開発され,短下肢装具の主流となった.今後は,最先端技術としては,3Dプリンター,3DスキャナーとCAD-CAM,バイオニクス,新規光硬化材料などの活用がある.しかし,プラスチック材は自然に分解されない材料であり,リサイクル,リユースの取り組みも不可欠である.

  • 花山 耕三
    2024 年40 巻4 号 p. 249-253
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    関節リウマチの薬物治療はここ20年で大きく進歩し現在では早期診断,早期治療により重篤な関節障害を呈する例は減少している.しかし,現在でも装具療法は依然として必要な治療であると考えられる.RAは多関節の障害であり,過去に多くの装具が存在する.また,義肢装具士が製作するもののみならず,既製品として販売されているもの,作業療法士等が製作するものなど多様である.装具の処方は,治療の進歩による疾患コントロールの他に,素材の変化の影響が大きい.装具の目的やコンセプトは20世紀半ばに提示されたものと大きな変わりはないが,時代を経るにつれ,選択肢が広がり,また外観についてもよりよいものになってきている.

  • 尾﨑 文, 越智 光宏, 内田 孝信, 古澤 一成, 佐伯 覚
    2024 年40 巻4 号 p. 254-259
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    脊髄損傷の歴史は紀元前までさかのぼる.急性期治療や合併症の管理が確立していなかった頃は生存率が低く,リハビリテーション医療にたどり着くことはきわめて困難であった.医療の発展,装具使用下での早期からの離床,適切な排尿管理や褥瘡予防などの教育が進んだことに伴い,合併症が減少し,生存率は向上した.対麻痺では歩行再建の希望が強く,下肢装具やロボットを利用した訓練でモチベーション向上をもたらしてきた.現在は社会制度や資源の活用で,頸髄損傷者もある程度自立した生活や社会復帰が可能になり,QOLの向上につながっている.再生医療も実用化されつつある今,リハビリテーション医療と装具の役割の歴史的変遷を振り返る.

  • 緒方 直史
    2024 年40 巻4 号 p. 260-265
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    膝疾患に用いられる膝装具は,主に大腿部から下腿部におよぶものであるが足部はなく,膝関節の動きを制動し,膝に対する負荷を軽減するもので,変形性膝関節症や膝関節外傷後などの靱帯損傷でのスポーツの継続や再損傷の予防に用いられる.膝装具の目的として,①内反膝や外反膝,屈曲・伸展拘縮などの変形の矯正,②反張膝,膝蓋骨脱臼などの変形の予防,関節炎,③靱帯損傷急性期や術後,膝関節部骨折などの病跡組織の保護,④側方・前後・回旋不安定性の支持などの失われた機能の代償,が挙げられる.素材の進化により軽量化と高強度を両立することができるようになり,スポーツ復帰や予防にも用いられるようになった.本稿では,膝疾患に伴う装具の歴史的変遷についてご紹介したい.

  • 坂井 一浩
    2024 年40 巻4 号 p. 266-270
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    日本においては,人口動態の変化,経済成長の鈍化,社会保障費の上昇により保健医療制度の持続性が懸念されている.価値の高いサービスをより低コストで提供するうえで必要な,医療技術の費用対効果の測定や症例データベースの構築,データの活用などにおいて,医療現場主導の取り組みが求められている.ウェアラブルデバイスなどを用いた義肢装具の効果判定によって得られたエビデンスは,単に義肢装具の費用対効果を示すための材料になるだけでなく,義肢装具技術の向上,根拠に基づいた実践,ガイドラインの作成,保険適用の検討など,様々な場面において活用が可能である.また,医療費削減に寄与するために,義肢装具のノウハウを未病者の予防や患者の重症化予防に活用することや,これまで及んでいなかった分野へ応用・展開していくことが必要と思われる.

学会の歴史
写真で振り返る日本義肢装具学会学術大会
原著
  • —義足作製の標準化を目指して—
    今井 寛, 大西 武史, 沢田 光思郎
    2024 年40 巻4 号 p. 286-289
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,下腿義足の適合を判定するための動的アライメントに注目したソフトウェアの開発を行い,精度や実際の使用について報告することである.本研究では,適合判定時における患者の歩行を動画形式で撮影し,そのデータをソフトウェアで解析を行い下腿傾斜角および変化量を算出する.過去の論文で導出された下腿傾斜角および変化量の適合判定基準を用いて可否の割合を求めた.またソフトウェアを用いた評価方法における検者内誤差と検者間誤差を評価した.評価の結果,本ソフトウェアで計測した59例中55例(93.2%)が適合と判定された.検者内誤差,検者間誤差は各指標ともに0.6°から1.0°の間であった.今回,作製したソフトウェアを使用することで,適合判定者の技量に影響されず,短時間で適切なアライメントの義足を提供する一助となる可能性がある.

調査・研究報告
  • 山中 元樹, 齋藤 恒一, 畠中 泰彦
    2024 年40 巻4 号 p. 290-296
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,歩行支援機器を装着することで脳卒中片麻痺患者の歩行速度や関節モーメントへの影響を明らかにすることである.歩行支援機器は健常者を対象に,装着することで立脚中期の股関節内部の伸展モーメントが増大するとされているものもある.片麻痺患者の歩行における効果を運動力学的に解析した.片麻痺患者10名を対象に装着あり,なしの歩行を計測した.歩行支援機器の装着で,歩行速度と麻痺側ストライド長,ステップ長が増大し,立脚中期の股関節内部の最大伸展モーメントは増大した.歩行速度やストライド,股関節伸展モーメントが制限されやすい片麻痺患者において,歩行支援機器の装着効果として新たに臨床的意義を見出せたと考えられる.

講座 これから義足で走るために必要なこと
  • 遠藤 謙
    2024 年40 巻4 号 p. 297-302
    発行日: 2024/10/01
    公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    義足ユーザがスポーツ用義足,ブレードを用いてスポーツを楽しむためには,社会福祉システム,テクノロジー,個別対応,情報メディア,ビジネスモデル,研究活動などさまざまな領域で複合的に課題が点在しており,解決のためにはあらゆる業界のステークホルダーたちが協力することが不可欠である.本稿では,それぞれの課題について解説し,解決のためのアプローチの1事例として,Blade forプロジェクトの紹介を行う.Blade forはトップアスリートがより速く走るためのBlade for the Oneと,その技術を民主化し,より多くの義足ユーザが楽しく走れる環境作りを目指すBlade for Allの2つによって成り立っている.

「能動義手適合検査表 日本版」完成報告
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