日本義肢装具学会誌
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最新号
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巻頭言
特集 義肢・装具,支援機器のエビデンス構築へ向けて
  • —日本フットケア・足病医学会の取り組み—
    寺師 浩人
    2023 年 39 巻 2 号 p. 92-94
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    日本フットケア・足病医学会では,2022年9月に「重症化予防のための足病診療ガイドライン」を作成しました.その中で「足病」をはじめて定義しました.それは,「起立・歩行に影響する下肢・足の形態的,機能的障害(循環障害,神経障害)や感染とそれに付随する足病変に加え,日常生活を脅かす非健康的な管理されていない下肢・足」です.同学会では,理事長直下に「下肢創傷処置の保険収載に向けたアドホック委員会」を立ち上げ,2022年にはこれを発展的解消し新たに「靴・免荷装具のアドホック委員会」とし,日本義肢装具学会と連携を図っていく予定です.

  • 橋本 寛
    2023 年 39 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    義足のアウトカム評価には時間・距離因子を用いて評価する方法や動作の自立度を用いるもの,質問紙を用いるものなどがある.ウェアラブル計測器を使用し定量的な情報をもとに評価を行う手法では,歩数などを用いて活動度やエネルギー消費を評価する方法が報告されている.その他に組み込み型ロードセルを用いて歩行中のモーメントを計測し義足アライメントを評価する手法もある.これらの手法は診察室など限定的な空間を離れた現実社会でのデータを得ることができ,有用な評価方法である.これらの定量的評価に定性的な評価を合わせることで総合的な評価が期待される.

  • —ロコモ度の推定とエクササイズゲーム—
    栗田 雄一
    2023 年 39 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    日本をはじめ世界中で医療・介護を担う人材の確保が難しくなっている.この問題を解決するために,高精度,低コスト,かつユーザへの負担を最小限に抑えた構成で運動情報を取得できる運動センシング技術と,運動情報に基づくスキル予測技術,さらに個人スキルに基づく効果的な介入を行えるリアルタイム情報提示システムが求められている.我々は,負担の少ない運動能力把握技術ならびに能力に応じたトレーニング難易度調整に関する技術を開発し,効率的で効果的なスマートコーチングに応用することを目的とした研究開発を行っている.本稿では,我々が行っているロコモ度の推定とスクワットトレーニングが可能なエクササイズゲームについて概説する.

海外招待講演
短報
  • 三ツ本 敦子, 丸山 貴之, 中村 隆
    2023 年 39 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    大腿義足ソケットの適合を高めるためには,断端軟部組織を適度に圧迫し,固定することが必要である.その圧迫の程度は,断端軟部組織の硬さが1つの指標となっているが,その硬さの評価は主観的に行われているのが現状であり,指標の定量的なエビデンスが無い.今回,我々は大腿軟部組織の定量化を試み,健常者群の大腿軟部組織の硬さと大腿切断者群の断端と健側の軟部組織の硬さを計測し,比較を行った.その結果,健常者群における大腿部の軟部組織の硬さは,利き脚,非利き脚間で有意な差は見られなかったが,大腿切断者群の断端は,健側に比べ弾性モデル係数が有意に小さく,軟らかい傾向にあることが明らかとなった.また,断端軟部組織の硬さは,遠位より近位の弾性モデル係数が有意に小さく,軟らかい傾向があった.

技術報告
症例報告
  • 山重 太希, 塚田 勇気, 難波 大輔, 佐藤 剛司, 佐藤 豊, 秋塲 周
    2023 年 39 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    両側大腿切断と右片麻痺,高次脳機能障害を重複した壮年男性の症例を経験し,症例の状態に応じた工夫をしたことで入浴以外の日常生活動作(ADL)が自立し,介助での義足歩行が可能になったため報告する.非麻痺側手で操作可能な股関節の可動域制限に対応できるチルト・リクライニング式電動車椅子を選択すること,麻痺側方向への移乗を後進移乗とすること,更衣用の台をポータブルトイレの後方に設置すること,などを工夫した.その結果,移動や移乗が獲得でき,生活範囲が拡大し排泄が自立した.両側大腿義足は四辺形ソケット,シリコンライナーとベルクロで懸垂し,固定膝,カーボン製足部を処方した.ADL練習と歩行練習を並行して進めることで本人の尊厳を高めつつ,家族への頻回な介助指導を行ったことは心身機能の改善やADL,歩行能力の向上に重要であったと考える.

  • 矢野 綾子, 山﨑 伸也, 樋口 幸治, 中村 康二, 木村 麻美, 中村 隆, 上出 杏里, 阿久根 徹
    2023 年 39 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    義手なしで日常生活動作が自立している3歳の先天性片側上腕形成不全児に対し上腕義手を処方し,訓練を実施した.訓練初期には義手の装着を拒否していたが,自転車用義手の試作を契機に義手の受け入れに改善がみられ,3年にわたる訓練の後,福祉制度による能動義手と作業用義手(体操用)の支給に至った.義手に対するニーズを把握し,家族の協力を得て操作獲得のための反復練習を行ったことが良い結果へつながった.一方,小児上腕義手用部品の選択肢が少ないという課題が明らかになった.先天性上腕形成不全例に対し義手の訓練を提供することは,前腕以遠の症例と同様に,身体の発達を促し,義肢を用いた日常生活動作を獲得するために重要である.

  • 今井 陽平, 浦崎 博道, 池田 憲彦, 岡﨑 哲也
    2023 年 39 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    先天性の両足部変形を有する左被殻出血後の重度右片麻痺かつ高度肥満の症例を経験した.症例は38歳男性で19病日に当院入院し,両側の内反尖凹足変形に対応した踵の補高や内側アーチサポートなどの修正を加えた半長靴を用いて右長下肢装具と左靴型装具を作製した.装具着用によって立位の安定,荷重時の疼痛の改善および介助負担の軽減を認め,装具なしでは実施困難であった起立やステップ,歩行など抗重力位での課題指向型訓練の反復が可能となった.154病日には左松葉杖での屋内歩行が自立し,入浴と階段以外の基本的ADLが自立した.その後,198病日に障害者支援施設へ入所し,独居へ向けた生活訓練を継続した.重複障害への対応を求められる機会は増加しており,個々の症例に最適の装具療法を行って予後の改善を図る必要がある.

  • 今井 寛, 大西 武史, 大野 篤史
    2023 年 39 巻 2 号 p. 144-146
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    簡易動作解析装置を用いて歩容が改善した大腿義足患者の1例を経験したので報告する.症例:47歳,男性.義足使用後3年,本義足の修理で来所した.股関節の可動域制限を認め,義足立脚期は踵荷重であり両松葉杖が必要であった.簡易動作解析装置(Waltwin®)を用いて重心移動を確認したところ,義足側踵接地後,重心は中足部までしか移動していなかった.また義足での立脚時間は29.9%であった.本装置を用い歩行練習を行った.練習開始後1カ月,義足での立脚時間は39.4%に改善し,重心移動も前足部まで移動できた.簡易動作解析装置は歩行を簡便かつ客観的に評価し,リアルタイムに重心位置を確認しながら患者に指導ができることから,義足患者においても,歩行を改善するために有用なツールとなる可能性がある.

講座 補装具支援と工学的基礎
  • —有限要素解析を行うための基礎知識—
    花房 昭彦
    2023 年 39 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー

    義肢装具の製作においてCADシステムの導入が進められるようになり,CADシステムに組み込まれた有限要素解析も手軽に実施可能な環境が整ってきた.その解析に使用されている線形静解析に関して,留意すべき事項とその理由について解析理論を基に概説した.線形静解析では,歪によらず材料特性一定,変形前後での要素の大きさや傾きの変化を考慮しないという限界がある.また分割した要素の形状や大きさによって解析結果が異なること,切り欠きなど応力集中の発生する特異点においては正確な応力が計算できないことを示した.このため応力の相対的な大小比較評価に使用するのが望ましい.また筆者らの進めている短下肢装具と人体モデルを用いた動的有限要素解析の例についても紹介した.

印象記
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