本邦産婦人科における心身症診療・研究の発展を日本産婦人科心身医学研究会の歴史とともに回顧し、さらに将来を展望した。心身医学の発展は、神経症(ノイローゼ)や精神病の領域に入るような患者が押し寄せ、また研究面でも神経症の心身相関が研究された時期(第一期)、胃潰瘍、気管支喘息、筋収縮性頭痛など、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与している疾患、いわゆる心身症が研究・診療の主要な対象になった時期(第二期)を経て、現在では、患者は常に身体的要素、心理的要素、社会的要素の総合的な結果としての健康問題(疾病)をもって医師の前に現れるのであり、このような患者を全人的に扱うアートの中核になるのが心身医学であるという考え方が主流となりつつある。さらに、女性の心身相関には男性にない特殊性がある。かって、ボーボワールは「ひとは女性に生まれるのではない、女性になるのだ」と言い切って衝撃を与えたが、「女に生まれる」という生物学的な規制も依然重要で、女性の社会進出に伴い、生物学的な規制と社会的な認知との狭間でより多くのストレスを感じる状況が生まれている。女性の心身相関問題を解決するには、産婦人科医のみならず、他科の医師、コメディカル・心理などの関連領域の専門家を含めた、新しい組織が必要である。
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