女性心身医学
Online ISSN : 2189-7980
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26 巻, 3 号
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巻頭言
特集 第49回日本女性心身医学会学術集会・第32回日本女性心身医学会研修会
第49回日本女性心身医学会学術集会
第32回日本女性心身医学会研修会
原著
  • 稲吉 玲美
    2022 年 26 巻 3 号 p. 338-347
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】女性の月経随伴症状による心理的苦痛の構造を確認し,ウェルビーイングとの関連について明らかにすることを目的とした.【方法】20~30代の女性500名を対象にアンケート調査を実施した.月経随伴症状による心理的苦痛を測定する尺度として,「コントロール不能感」「不遇感」の2つの下位尺度から成る月経随伴症状負担感尺度を用いた.また,症状があることによって抱く自己嫌悪感を測定するため,「自己への怒り・無力感」「自己滅亡感」の2つの下位尺度から成る尺度を作成した.心理的ウェルビーイングの測定には,心理的well-being尺度(「人格的成長」「人生における目的」「自律性」「自己受容」「環境制御力」「積極的な他者関係」の6因子),自尊感情尺度,主観的幸福度,生活満足度を用いた.月経随伴症状負担感尺度および月経による自己嫌悪尺度の下位尺度それぞれについて,得点によって高群・低群に群分けを行い,心理的ウェルビーイングの測定尺度の得点の群間比較を行った.【結果】心理的ウェルビーイング測定尺度のうち,自尊感情尺度,主観的幸福度,生活満足度の得点については,心理的苦痛の測定尺度における4つの下位尺度すべてで高群が低群よりも低い値を示した.心理的well-being尺度は,6因子すべてにおいて,症状による自己嫌悪尺度の2つの下位尺度で高群が低群よりも低かった.月経随伴症状負担感尺度では,「人生における目的」「自己受容」の得点について,高群が低群よりも低かった.さらに,「不遇感」の高群と低群の間には,「人格的成長」「積極的な他者関係」の得点にも有意差がみられた.【結論】本研究によって,月経随伴症状の存在によって抱く心理的苦痛が高い者はウェルビーイングが低く,特に,自身の過去や現在の受容,未来や成長への希望,他者との信頼関係に関する認識と関連があることが示唆された.

  • 粒来 拓, 後藤 誠, 善方 裕美, 榊原 秀也
    2022 年 26 巻 3 号 p. 348-355
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)は,様々な身体症状・精神症状を呈しQuality of Life(QOL)を損なう.治療に用いられるOC/LEPや向精神薬等の副作用を懸念する患者は多く,挙児希望のある場合では薬剤選択も限定される.一方,漢方療法は受け入れやすい選択肢であり,PMSの中でも易怒性を訴える患者に対し抑肝散加陳皮半夏の有用性を検討した.本研究は横浜市大病院および診療所を含めた多施設共同研究とし,横浜市立大学附属病院研究倫理委員会で審査のうえ実施した.2013年10月~2016年12月の間に文書による同意の得られた46例(35.6±7.0歳)を対象とし,Menstrual Distress Questionnaires(MDQ)(月経随伴症状尺度),自覚症状のVisual Analog Scale(VAS),SF-8(健康関連QOL尺度)を,治療前,月経1周期後,月経3周期後で前後比較した.月経3周期まで継続調査しえた解析対象は20例であった.MDQはすべてのスコアで有意に低下し,特に否定的感情スコアは低下した(治療前3.00±0.70 vs. 1カ月後1.60±0.66, p<0.01 vs. 3カ月後1.45±0.44, p<0.001).SF-8は,精神的健康度が1周期後で有意に増加し(治療前37.2±7.2 vs. 1カ月後46.9±5.9, p<0.001 vs. 3カ月後49.9±5.0, p<0.001),身体的健康度が3周期後で有意に増加した(治療前43.7±6.1 vs. 1カ月後47.1±6.0, p=0.324 vs. 3カ月後48.5±5.7, p=0.048).抑肝散加陳皮半夏は,易怒性を訴えるPMS患者において,精神症状だけでなく心身両面においてQOLの改善が期待されると示唆された.

  • 中西 貴子, 堀川 直希, 吉島 秀和, 堀川 奈津子, 坂口 信貴, 堀川 公平
    2022 年 26 巻 3 号 p. 356-362
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    周産期メンタルヘルスケアにおいては,精神科疾患発症ハイリスク妊産婦を検出してリスク評価し,多機関が連携する必要がある.のぞえ総合心療病院(当院)は,精神科救急病院として,周産期症例を受け入れてきた.周産期に精神症状が出現した症例は,緊急対応を必要とする場合が多い一方で,本人や家族が精神科受診を拒否したり,母児分離となることを不安に感じて入院受け入れに時間を要したりして,診療に苦慮することが少なくない.周産期に初診した妊産婦の実態を調査し,精神科病院における診療課題について検討した.2017年1月から2019年12月までに当院を受診した妊産婦は85例で,そのうち当院初診の48例を対象とした.初回妊娠が22例(45.8%)であった.29例(60.4%)で他院精神科通院歴があったが,妊婦健診を受けている産科で既往歴を伝えていない症例が少なくなかった.初診の時期は産後が34例(70.8%)で,産後3カ月から6カ月に多かった.24例(50%)が入院し,いずれも産後症例で,平均在院日数は52.5日であった.転帰としては21例(43.8%)が自己中断し,そのうち18例が6カ月以内に通院を中止していた.本調査から,精神科救急病院における周産期初診例は,産科での健診終了後の時期に受診する症例が多いこと,産科では精神科通院歴が把握しにくいこと,通院を早期に自己中断する症例の多いことが分かった.当院では,多職種で構成する周産期グループを作り,妊産婦や家族をサポートし,産科や行政機関との情報共有を行ってきた.精神科救急病院としては,精神症状出現時にすみやかに受診につながり,適切な通院治療となるような体制整備が必要である.

研究報告
  • 伊田 瞳, 安達 太郎, 森田 麻里子, 河本 輝敬, 渡部 良雄, 新家 俊郎, 相良 博典
    2022 年 26 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    エジンバラ産後うつ病自己評価票(Edinburgh Postnatal Depression Scale, EPDS)は産後うつ病のスクリーニングとして本邦で広く用いられるが,ほとんどが日中の医療機関受診時に評価され,産後うつ症状やEPDSの日内変動についての報告は少ない.一方で,Twitterをはじめとしたソーシャルネットワーキングサイト(以下SNSとする)は母親の情報交換,経験や感情を共有するためのプラットフォームとして近年大きく需要が高まっている.我々は特定のハッシュタグを用いEPDSの点数を併記した上睡眠についてのTwitterへの自由投稿を促すオンライン上のイベントを開催し,うつ症状を有する産後女性の睡眠における特性を評価した.今回同研究のサブ解析によりEPDS点数の日内変動の可能性が示唆されたため報告する.2020年1月11日午後8時よりオンライン上であらかじめ著者らが指定したハッシュタグ「#0歳児ママ睡眠ツイオフ」を用い,産後の睡眠についてTwitterで投稿するよう呼びかけた.同時にウェブ上で回答できるEPDSのURLを付記し,投稿に併記するよう呼びかけた.開催から24時間で2,326ツイートの投稿を認め,うち2,195ツイートの投稿にEPDSが付記されていた.投稿されたEPDS点数の中央値は9±0.6点であり,投稿の57%にあたる1,241ツイートがEPDSのカットオフ値である9点以上を有していた.また,午前4時をピークとして明け方にEPDSスコアの中央値が上昇に転じる現象が認められた.我々の調査において,先行文献に比してEPDS点数が総じて高値であり時間帯によって変動が認められた.産後うつ症状が日内変動をきたす可能性や,実臨床でのEPDS点数が実際の点数より低く報告される可能性について注意していく必要を示唆する.

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