1968年10月13日に東京湾において, ウラニンを用いた染料拡散の実験を行った。この報告は, 写真濃度計を用いて, 染料雲の濃度測定を行い, その結果から, 染料の拡散について述べたものである。従来の染料拡散による海洋中の拡散の研究は, 染料濃度を, 染料雲面積に反比例すると考え, かつ染料濃度は染料雲内で均一と考えた計算が中心であった。
ここでは濃度計による測定結果から得られた濃度分布から染料雲の染料濃度の決定を試みた。その結果写真濃度は染料濃度とlog
y (mV) =
alog
c+
bの関係にあることを明らかにし, これを利用して, 染料の拡散係数を直接写真上から求めてみた。またこれと比較するため, 染料雲中の染料濃度は均一であるとの仮定の下に拡散係数をもとめた。
この両者の値は前者の方法で求めた値がやや大きく
KXで10
4~10
6,
KYで10
3~10
4程度で, 後者の方法では
KXで10
3~10
5,
KYで10
1~10
3となった。理論的には前者の方法がすぐれているが, それでもなお若干の仮定を含むことや, 染料雲の拡散が均一に行なわれず, 幾つかの染料の塊りとなって拡散していくこと等の原因で得られた資料は, 必ずしも満足すべきものではなく, 今後は乱れのスケールの問題をも合わせていくことが必要となろう。
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