日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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ポスターセッション2 10/9(木)13:30~14:45
  • 春日 敏測, 山本 哲生, 渡部 潤一, 矢野 創, 阿部 新助
    p. 52
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    2002年しし座流星ダストの金属元素アバンダンスはソーラーアバンダンスであることがわかった。今回は2001年のしし座流星群について解析をすすめた。さらには流星ダスト中における揮発性物質の存在についても検証する。
  • 岩田 隆浩, 佐々木 健, 並木 則幸, 花田 英夫, 河野 裕介, 浅利 一善, 野田 寛大, 河野 宣之, 高野 忠
    p. 53
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
     SELENEでは、リレー衛星中継器(RSAT)による月裏側の軌道の4ウェイドプラ観測と、相対VLBI用衛星電波源(VRAD)を用いた多周波相対VLBI観測により、月重力場の高精度かつ全球マッピングを行う。本講演では、RSAT、VRAD、及びこれらの観測機器が搭載されるSELENEの小型衛星Rstar/Vstarの開発における、地上試験の成果を報告する。 Rstar/Vstarは、測月観測に特化したスピン衛星であり、主衛星からの分離とスピン印加には新規開発した伸展バネ式の軽量型分離機構を用いる。分離特性が衛星姿勢を決定することから、重力キャンセル装置を用いた地上分離試験による設計の最適化が行われた(ex. 岩田他、2001年度惑星科学会講演会)。これに続いて今回、分離機構の開発モデルをピギーバック衛星μ-Lab Satの分離に用いて、軌道上での分離特性の実証を行い、Rstar/Vstarの軌道上性能予測に反映した。 Rstar/Vstarの姿勢変動要因として、短期成分には、機軸と慣性主軸のずれによるアンテナ位相中心の回転と、分離時チップオフに起因するニューテ_-_ションがある。慣性主軸のずれの量は構造試験モデルを用いた質量特性計測に基づいて設計し、分離時チップオフは先述の分離特性試験から最大値を推定した。一方、姿勢変動の長期成分には、太陽輻射圧と重力場傾斜による姿勢の倒れがある。衛星に搭載される垂直ダイポールアンテナに対する太陽輻射の影響が大きいことから、これをキャンセルするフレア構造を取り付けることとした。このフレア構造はアンテナのビームパターンに制約を与え、重力場カバレッジに影響するため、模擬構体を用いたパターン測定と姿勢解析からアンテナ形状を最適化した。 以上の地上試験結果の設計への反映によって、RSATによる月裏側のフルマッピングによる重力場展開係数の高次項のKaula則に拠らない決定と、VRADによる同低次項の精測が可能であることが確認され、月重力場モデルLP165を改善して月の内部構造の解明に寄与することが期待される。
  • 矢本 史治, 関谷 実
    p. 54
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
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     微惑星形成のモデルには2つの相反するモデルがある。1つはダスト層の重力不安定によるモデルであり、もう1つはダストの相互付着によるモデルである。星雲が層流であれば、ダストが中心面に沈殿するにつれて中心面付近のダスト密度が増加する。ダスト密度が臨界密度を超えると重力的に不安定になりダスト層は分裂して微惑星が形成される。しかしながら、太陽系以外の原始惑星系円盤における中心星へのガス降着の観測から、星雲は全体的に乱流状態にあるという考え方をする人もいる。また、たとえ全体的に乱流状態でなくてもダストの沈殿にともなってシアー不安定により乱流が発生するという考え方もある。これによりダストは中心面に沈殿せず、ダスト密度は臨界密度を超えないので、ダストの相互付着によって微惑星が形成されたと近年は考えられてきた。しかしながら、ダストが微少ダストの集積によって成長していくと考えたとき、ダストの成長できるサイズに上限があることが示された(Sekiya and Takeda 2003)。以上のように、原始惑星系円盤における微惑星形成のメカニズムは、まだ解明されていない。それゆえにどちらのモデルにおいても、より詳細な研究が必要とされる。 われわれは、リチャードソン数が一定のダスト密度分布(Sekiya 1998)における重力不安定の臨界密度を数値計算により求めた。数値計算において以下の仮定がなされる。(1)ダストとガスの速度差を無視する、つまりダストサイズが十分に小さい($\le$ 1mm)ときに限定した1流体近似を用いる。(2)ガスは非圧縮である。(3)ガスの流れは円盤の回転軸に対して軸対称である。 中心面における臨界密度は、中心面からの距離に対して一様な密度分布(Sekiya 1983)のときよりも2.85倍大きくなることがわかった。われわれの結果から、重力不安定による微惑星形成に新しい制約条件が与えられ、その臨界密度を厳密に議論する場合には中心面からの距離についてのダスト密度分布を考慮する必要性が示された。
  • 中村 良介
    p. 55
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
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    現在の太陽系における、数十から数百m サイズの微小天体のサイズ分布は、よくわかっていない。これらの天体のサイズ分布はより大きな小惑星、あるいはより小さい惑星間塵のサイズ分布と合わせて、クレーター形成や小天体破壊メカニズムの理解に重要な役割を果たす。本講演では、SELENE 衛星に搭載される Terrain Camera や「はやぶさ」に搭載されるAsteroid Multiband Imaging Camera のデータから、km 以下のクレーター分布を導出し、そこからimpactor のサイズ分布を決定する方法について議論する
  • 伊藤 洋一, 林 正彦, 田村 元秀, 大朝 由美子, 深川 美里, 真山 聡, 大プロジェクト チーム
    p. 56
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
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    古典的Tタウリ型星は、原始惑星系円盤やアウトフローなどを伴うものが多い。しかしこれらの構造は、明るい中心星のごく近傍にあるため、可視赤外域で検出するためには、高い空間分解能とダイナミックレンジを持った観測が必要である。我々は、すばる望遠鏡の観測所大プロジェクトの一環として、古典的Tタウリ型星であるDO Tauの近赤外コロナグラフ観測を行なった。DO Tauは、中心星が0.5太陽質量で、北東に反射星雲を伴う。また、電波や可視禁制線の観測から、軽い原始惑星系円盤や弱いジェットが付随していることが知られている。観測は2002年11月21日に行ない、補償光学を用いることで0.1"(14AU)の空間分解能を達成した。解析の結果、中心天体の北東に2"(300AU)程度の長さを持った、非常に淡い構造を検出した。形態などから、この構造は中心星のごく近傍にあるアウトフローと考えられる。この構造は、最も近い所で中心星から0.5"(70AU)の位置でも検出できた。講演では、このアウトフローと思われる構造の形状や明るさについて議論するとともに、その成因についても言及する。
  • 跡部 恵子, 井田 茂, 伊藤 孝士
    p. 57
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
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    観測限界から、これまでに発見されている系外惑星は全て巨大ガス惑星と考えられているが、地球型惑星も存在しているだろう。惑星において、生命、特に陸上生命が誕生、進化するためには、ハビタブル・ゾーン(液体の水が存在できる軌道領域)での軌道安定性に加え、惑星表面の気候が安定に保たれる必要があると考えられる。惑星自転軸傾斜角の変動は、気候に多大な影響を与える。一般的に自転軸傾斜角の変動は数度であるが、自転・軌道共鳴によって数十度に達する場合がある(Ward 1974, Laskar et al. 1993)。実際、現在火星の自転軸は共鳴の影響で十数度の変動をしており、このような大変動は惑星の居住可能性に影響を与えるであろう。
     本研究では、系外惑星系のハビタブル・ゾーンにある仮想的地球型惑星の自転軸傾斜角変動について調べた。自転軸の振幅を表す解析式を用いて計算を行った結果、巨大惑星が地球型惑星の軌道をかろうじて安定に保てる場所にある場合、地球型惑星は共鳴の影響を受けやすいことがわかった。つまり、軌道的に安定であっても、自転軸傾斜角の大変動が引き起こされる可能性がある。
     さらに実際の系外惑星系において、仮想的地球型惑星の自転軸変動を評価した。その結果、地球型惑星が、安定軌道、かつ小さな自転軸変動を示す可能性のある系は稀であることを示唆する結果を得た。しかし、惑星の逆行自転や、近接した巨大衛星の存在は自転軸変動を抑える傾向があり、これらが陸上生命発達の鍵を握っているかもしれない。
  • 杉原 孝充
    p. 58
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
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    月地殻の化学組成について、水平、鉛直分布と月進化における地球化学、岩石学的な意味を議論する。
  • 山田 竜平, 横田 康弘, 白石 浩章, 田中 智, 山田 功夫, 高木 義彦, 藤村 彰夫, 水谷 仁
    p. 60
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    2004年打ち上げ予定の月探査衛星LUNAR-Aでは、2本のペネトレーターと呼ばれる槍型の装置を月面に貫入させ、水平動、上下動2成分の短周期月震計や熱流量計といった観測機器を月面に設置し、観測を実施することで、月の内部構造を探ることを目的としている。ペネトレーターが月面に貫入する際、月震計は、強い衝撃を受けるため、その衝撃で特性が観測上許容できるレベルを超えて、変化しないだけの耐衝撃性を有していなければならない。その耐衝撃性が余裕を持って、実現されているか確認するために、ペネトレーターの月面貫入時の1.25倍という条件で貫入衝撃の試験が実施されている。 本研究では2003年6月に実施された貫入衝撃試験前後の月震計の特性調査を行った。この結果より、月面貫入衝撃を受けた月震計が月震観測実施のための特性を保持しているかを評価した。特性調査として、衝撃を与えた水平動、上下動2台の月震計のキャリブレーション波形、固有周波数、減衰定数等を求めた。月震計は、観測対象となる深発月震の卓越周波数が1Hz近傍である事が、アポロでの観測より予測されているので、固有周波数を1.0-1.2Hzに定めている。衝撃試験に供する月震計は事前に特性を取得し、仕様が満たされている事を確認している。衝撃後の月震計は、水平動、上下動ともに、これらの仕様を保持している事が示された。これにより、推定される月面貫入衝撃を上回る衝撃を受けた月震計が、衝撃前の特性を仕様の範囲内で保持している事が示された。 次に、衝撃を受けた月震計の地動に対する応答を調査するために、名古屋大学の犬山地震観測所において、常時微動の観測を実施した。犬山地震観測所は地動ノイズレベルが低く(常時微動は昼間で2.0×1.0 m/sec、夜間で1.5×10 m/sec程度)、微小振動である月震の観測用に感度を高めた月震計の観測に合せて選定した場所である。観測では、比較用として広帯域地震計STS-2と、月震計と同様、固有周波数1Hzの移動観測用地震計L-4を用い、月震計と同成分の地動の観測を行っている。これらの観測結果と、月震計による観測結果を比較することで、推定される月面貫入衝撃を上回る衝撃を受けた月震計が、一般の地球用地震計に対して、どの程度まで一致した応答を示すかを水平動、上下動ともに評価、検討する予定である。
  • 野田 寛大, 岩田 隆浩, 並木 則行, 浅利 一善, 河野 裕介, 花田 英夫, 河野 宣之, 山本 善一
    p. 61
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    2005年の日本の月探査計画SELENEでは2種類の月重力場測定が行われる。一つは衛星に搭載される電波源を相対VLBIにより追跡することにより月周縁部の重力場を推定するVRADミッション、もう一つがリレー衛星を用いた衛星間追跡を行うことによって月周回衛星が月の裏側にいる間もレンジレート計測を行って裏側の重力場を測定するRSATミッションである。本講演では2003年3月に宇宙科学研究所臼田局にて行われたリレー衛星搭載RSAT1および周回衛星搭載RSAT2と地上送受信局の適合性試験の結果について報告する。
  • 荒井 武彦, 山本 幸生, 白井 慶, 岡田 達明, 加藤 學
    p. 62
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    小惑星探査機はやぶさ搭載XRSによりX線天体を観測した。はやぶさはイオンエンジンによる軌道航行を行うため、XRSによるX線天体観測には制約がある。特に、惑星間軌道中ではイオンエンジンオフ時でもエンジンを冷やさないようにヒータを焚く。そのため、温度クリティカルなXRSのスペクトルには熱雑音が入る。本研究では惑星間軌道中の制約された条件下で、XRSの性能を最大限に引き出すためのデータ取得方法、及び解析手法を発表する。
  • 平家 勉, 平原 靖大
    p. 63
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年のISOの観測により、多数のAGB星、YSO等の星周大気に結晶性のシリケイトが観測されている。Sogawa&Kozasa(1999)によれば、アルミナ微粒子上に不均質凝縮したアモルファスシリケイトがアニリングを受けることで結晶化したと謂う。このときの結晶化温度はHallenbeck(1998)によるシリケイト超微粒子のアニリング実験を基にしたものであり、超微粒子同士が合体することによる表面エネルギーの節約が結晶化の原動力と推察されている。しかし、アルミナコアーシリケイトマントル粒子が形成されるならば、アルミナによる触媒効果や表面エネルギーの変化が起こることが予想される。そこで今回、ゲル化法によって500nm大のアルミナ粒子上にエンスタタイト組成のアモルファス珪酸塩を凝縮させ、アニリングを行った。その結果、アルミナのコアが存在すると結晶化温度が大きく上昇することがわかった。発表では、赤外吸収スペクトルの測定と電子顕微鏡観察の結果を提示し、結晶化の反応の詳細について議論する予定である。
  • 平田 成
    p. 64
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    月のクレーターTychoおよびKingについて,そのimpact meltの分布を画像から解析し,クレーター形成のメカニズムについて考察する
  • 古池 敏行, 金子 竹男, 小林 憲正, 宮川 伸, 高野 淑識
    p. 65
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    土星最大の衛星であるタイタンは、濃い大気を有する唯一の衛星として圏外生物学の観点から非常に興味深い太陽系天体である。1980年にボイジャー1号によって大気成分が観測され、その主成分が窒素であり、また副成分としてメタンが存在していることがわかった。大気中には様々な炭化水素やニトリルに加え、tholinとよばれる複雑な有機物からなるミストの存在が知られている。これらの観測結果よりタイタンは生命の起源に到る化学進化を探る上で重要であると考えられている。
    これまで、CH4-N2からなる模擬タイタン大気中での化学反応のシミュレーションが様々な観点から行われてきたが,多くは紫外線をエネルギーとしたものであった。本研究ではCH4 (1%)-N2 (99%) 混合ガスへの陽子線、γ線、紫外線の照射や火花放電を行い,エネルギーの違いにより生成物の違いを調べた。また,タイタンに彗星から水が供給された場合に,アミノ酸などの生体関連有機物が生成する可能性も検証した。
    放電では不飽和炭化水素が主に生成するのに対し,陽子線照射では飽和炭化水素が主生成物であること,紫外線では含窒素有機物が生成しにくいことが示された。このことは,タイタン中での化学進化が紫外線や放電単独では説明しにくいことを示す。また、器壁に付着した有機物を加水分解するとアミノ酸の生成が認められた。
    陽子線照射生成物をキューリーポイント型熱分解GC-MSで分析すると,アルキルアミド化合物,窒素複素環化合物のほかナフタレン・フェナントレンなどの二環式/三環式芳香族化合物も検出された。これらの結果を2005年のCassini-Huygensの結果と比較し,タイタンにおける化学進化のエネルギーの推定を行っていく予定である。
  • 山本 幸生, 荒井 武彦, 白井 慶, 岡田 達明, 加藤 學
    p. 66
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    小惑星探査機はやぶさ搭載蛍光X線分光計(XRS)は比較分析用として標準試料を搭載している。標準試料と小惑星からの蛍光X線を比較することにより、入射X線である太陽X線の依存性を低減することができる[1]。
    はやぶさが小惑星に到着するまでには2年以上の日数を必要とし、その間XRSは定期的に背景X線やX線天体、標準試料からのX線を観測することにより性能の経年変化を調べる。打ち上げ直後の初期運用段階である2003年5月28日から5月30日において、XRSはX線天体Sco-X1の観測を行った[2]。初期運用期間であることから、2日間という比較的長い観測時間が割り当てられた(現在は定常運用のため週3時間程度)。幸運にもこの観測期間中に非常に強いX1クラスの太陽フレアが発生した。この期間中の標準試料からの蛍光X線スペクトルはMg, Al, Siの輝線に加えてCa, Feの輝線が放出されていることを確認した。この輝線は打ち上げ後の較正データとして重要であり、エネルギー分解能や強度、また蛍光X線モデルのパラメータ決定に用いられる。
    本データを用いてエネルギーのゲイン較正、地球周回衛星GOES 10とXRSのデータ比較、蛍光X線モデルと観測データの比較が行われた[3]。太陽フレア発生時のMg, Al, Si, Ca, Feの蛍光X線輝線を用いたエネルギーのゲイン較正は地上試験のそれと比べて1%以内の精度で決定した。GOES 10データとの比較では、エネルギーフラックスの時間変化は非常に似た様相を示し、XRSの観測が妥当な観測結果であることを示した。また蛍光X線モデルとの比較では、特にエネルギー範囲0.5-3 keVの領域でバックグラウンドノイズが顕著である結論となった。このことからMg, Al, SiのX線強度を決定するには、このバックグラウンドノイズとX線スペクトルを分離することが重要な課題として挙げられた。そこで本研究では主にMg, A. SiのX線強度を決定するためにバックグラウンドとX線スペクトルの分離手法について検討し、その結果について報告する。
    [1] Okada, T., Fujiwara, A., Tsunemi, H., and Kitamoto, S. 2000. X-ray fluorescence spectrometer onboard MUSES-C, Adv. Space Res. 25, 345-348.
    [2] Arai et al, 2003. Proc. ISAS Lunar Planet. Symp.
    [3] Yamamoto et al, 2003. Proc. ISAS Lunar Planet. Symp.
  • 町田 絵美, 伊藤 洋一, 向井 正
    p. 67
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    Oort Cloudは、長周期彗星の起源として考えられている、太陽から数万AUの位置に球殻状に分布する小天体の集まりである。しかし、その存在はいまだ観測的に証明されていない。Oort Cloud天体を観測することができれば、Oort Cloud形成・太陽系形成などについての理論をより進めることができる。だが数万AUにあるOort Cloud天体は、現在観測されている最も遠い太陽系天体であるKuiper Belt天体の10億倍も暗いと考えられ、観測は不可能である。そこで、離心率が大きく、惑星領域に落ちてきている天体を検出することを考えた。すばる望遠鏡の主焦点カメラSuprime-Camによって、銀河を探る目的のため撮られたアーカイブデータから、Oort Cloud天体の検出を目指す。 半径1km以上でランダムな離心率分布のOort Cloud天体を仮定すると、限界等級30等では14平方度で1つの天体が検出できることがわかった。また、実際にすばる望遠鏡Suprime-Camで撮られた画像を解析し、興味深い天体も得られたので、講演で報告する。
  • 堀内 司, 小林 憲正, 高野 淑識, 丸茂 克美, 山岸 明彦, 石橋 純一郎, 浦辺 徹郎
    p. 68
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    深海底熱水噴出孔環境では高温・高圧という苛酷な条件でありながら特殊な地下生命圏が形成され,盛んな生命活動が行われていることが発見以降の様々な研究により知られるようになった。太平洋伊豆小笠原弧水曜海山の海底カルデラ熱水帯は最高310℃の熱水を噴出する広範囲なチムニー群が存在する。本研究では水曜海山深海熱水系のチムニーおよび噴出熱水についてアミノ酸および有機物をバイオマーカーとして、極限環境下での微生物活動の評価を行った。<BR>2002年度新竜丸航海で得られた噴出熱水試料および2001年度新世丸航海ダイブ12で得られたチムニー試料について、HPLCにより試料中のアミノ酸の同定・定量および光学異性比の測定を行った。また,キューリーポイント型熱分解GC-MSシステム(Japan Analytical Industry / Shimadzu GCMS-QP2010) を用いて、熱分解により同じチムニー試料およびその加水分解残渣から放出される有機物の解析を行った。
  • 金子 竹男, 小林 憲正, 矢守 章
    p. 69
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    炭素質隕石からアミノ酸、核酸塩基を含む生体有機化合物が検出されていることから原始地球への有機物質の多くが地球圏外起源であったとする可能性が示唆されている。しかし、地球外有機物の地球への持ち込み時の安定性が問題である。これまで彗星や隕石による有機物の地球への持ち込み時の反応を調べる為に衝突実験(_から_2km/s)、アミノ酸の加熱分解実験およびシリカを共存させたアミノ酸の昇華実験が行なわれてきた。しかし、より速い速度での衝突実験は余り行なわれていない。我々は世界最速である宇宙研の電磁加速装置「レールガン」を用い高速衝突実験を行なっている。今回はグリシン水溶液および彗星を模擬したメタノール、アンモニア、水の混合物に高速衝突させた生成物について検討した。
    10mM グリシン溶液はステンレス製ホルダーに、また彗星を模擬したアンモニア、メタノール、水の混合物は金メッキしたステンレス製ホルダーに封入し、ドライアイスで冷却後、液体窒素で冷却しながらこれにポリカーボネート製の飛翔体を衝突させた。衝突速度は2.5_-_6.4 km/sであった。生成物の一部を6 M HCl, 110℃で24時間加水分解し、陽イオン交換樹脂で脱塩後、アミノ酸をN-アセチル-L-システインとo-フタルアルデヒドでポストカラム誘導体化する島津LC-6Aアミノ酸分析計で同定・定量した。またアミノ酸の重合物は加水分解前の試料を0.45μmのメンブランフィルターでろ過後、イオンペアクロマトグフィーおよびMALDI_-_TOF MSにより分析した。
    グリシンを用いた実験では、加水分解前にはグリシン重合物のピークは観測されなかったが、ジケトピペラジンの生成が示唆された。衝突速度の違いによる生成物の差は見られなかった。海底熱水系を模擬したフローリアクター実験から、グリシンの重合物およびジケトピペラジンの生成が報告されている。イオンペアHPLCの結果から、衝突による高温・高圧状態では、フローリアクター実験で報告されている通常の重合物と異なる物が生成していると考えられる。MALDI-TOF MSの結果からは、2環アミジンの生成が示唆された。これは耐熱性があり、衝突でも残存し、加水分解することでアミノ酸になることが分かった。1)
    メタノール、アンモニア、水の混合物を用いた衝突実験では、生成物を加水分解することにより、セリン、グリシンなど多種のアミノ酸が生成することが分かった。
    高速衝突でグリシンから海底熱水系模擬実験や昇華実験とは異なる2環状アミジンの生成が示唆され、アミノ酸の一部は重合物を生成することにより衝突による分解を免れることが示唆された。彗星を模擬したメタノール、アンモニア、水の混合物から種々のアミノ酸が生成したことから、彗星の高速衝突によりアミノ酸前駆体が生成する可能性も示された。今後、模擬星間物質を用いた衝突実験を行ない、原始地球への地球圏外起源有機物質の持ち込みについて考察していく予定である。
    1)金子竹男、小林憲正、矢守章、スペース・プラズマ研究会平成14年度、79-82 (2003).
  • 加藤 學, 岡田 達明, 白井 慶, 山本 幸生, 荒井 武彦, 菊地 宣陽, 小川 和律, XRS チーム
    p. 70
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    月周回探査衛星計画「セレーネ」は、月の極周回軌道から月面全域のグローバルな探査を10数種類の観測機器を用いて行う。本機器、蛍光X線分光計(XRS)は、極域を除く全域の主要元素組成を空間分解能約20kmで定量的に決定する。月地殻の構成岩石とその水平分布を観測的に得ることによって、月の初期進化過程を探るための情報を得るのが最大の目標である。  本機器は、空間分解能と元素組成決定精度の向上を目指す。セレーネ周回衛星は月面に対して相対速度約1.5km/sで移動するため、短時間で統計的に有意な光子計数を稼ぐ必要がある。そのため、エネルギー分解能向上と有効検出面積の拡大が必須である。そこで、X線CCDをアレイ化し、CCDを放射冷却によって低温に保持することによって厳しいスペック要求を満足させる。さらに極薄ベリリウム窓の使用によって低エネルギー域の窓材による減衰効果を低減した。  現在、本機器はフライトモデルの設計・製作を実施し、衛星や他の観測機器とのインターフェース噛み合わせ試験を実施中である。電気設計やソフトウェアのインターフェースを確認し、また電磁干渉評価を衛星全体で実施する。本試験の終了後には、フライト仕様への最終組立てや詳細性能評価を月周回軌道を模擬可能なチェンバを用いて、熱真空槽中で実施する予定である。  本報告では、本機器の基本仕様や機能について概要を紹介し、さらに今後の試験計画、打上後の観測計画について述べる。
  • 関根 康人, 紫藤 貴文, 杉田 精司, 門野 敏彦, 松井 孝典, 山本 孝, 岩澤 康裕
    p. 71
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    原始太陽系星雲および原始ガス惑星系円盤における触媒反応について、鉄とニッケル触媒の性質の違いが及ぼす影響を実験的に調べた。また、現在のガス惑星やその衛星大気中のメタンの起源として、触媒反応の可能性を考察する。
  • 樋口 有理可, 小久保 英一郎, 向井 正
    p. 72
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    惑星形成過程の後期、微惑星は先に成長した惑星の強い重力散乱を受ける。これらの微惑星がとる道は、「惑星へ衝突」、「惑星系外へ脱出」、「the Scattered Diskなどとして系内に残る」などが考えられる。これらの割合は、さまざまなパラメータに依存する。惑星の重力散乱を受けた微惑星の軌道進化を数値計算で調べ、さまざまなパラメータへの依存性をみた。微惑星のとる道の割合から、惑星成長率と非惑星率を定量的に評価する。非惑星率から、オールト雲など、小天体系の形成率のパラメータ依存性を議論する。
  • 北里 宏平, 矢野 創, 矢守 章, 黒澤 正紀, 藤原 顕
    p. 73
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    ガラス包有物は結晶質の鉱物中に含まれる通常数μ-数10μ程度の大きさの微小な不純物成分で、地球上の固体物質から他天体起源の隕石物質中にまで普遍的に存在する。本研究ではまず、酸素同位体組成などから同一の母天体起源とされるHowardite-Eucrite-Diogenite(HED隕石)中に含まれるガラス包有物の組織と組成の記載を行なった。主成分組成分析にはEPMAを用い、微量元素組成分析にはLAM-ICP-MSを使用した。その分析結果、今回使用した試料、Dhofar007(ハンレイ岩ユークライト)、Johnstown、Tatahouine(ダイオジェナイト)中のガラス包有物は著しくシリカ成分に富み、不適合元素に比較的乏しいことが明らかとされた。このような著しくシリカ成分に富んだガラス包有物は、地球のマントル物質や火星隕石、月サンプル中にも見つけられているが、マグネシウムに富むフェーズで、しかも水のない環境でどのようにして酸性のメルトが形成されるのかという問題については現在も議論中である。また、今回のガラス包有物は二次包有物であり、トロイライトやクロマイトなどの娘結晶を析出していた。
    これらの結果は、ガラス包有物の元となるメルトが極度に低い部分溶融度での部分溶融ではなく、衝突作用によると考えられる斜方輝石の非調和溶融によって形成されたことを示唆しているかもしれない。そこで本研究では、HED母天体での衝突変成作用を模擬して、単結晶試料エンスタタイトの衝撃圧縮実験を行なった。実験では、試料をSUSのホルダーでパッキングして、ポリカーボネイトのプロジェクタイルを6.7km/secの速度でホルダーに衝突させた。その結果得られたエンスタタイトの顕微鏡観察から、高シリカガラス包有物形成の衝突起源性について考察を行なう。
オーラルセッション5 10/10(金)9:15~10:30
  • 北里 宏平, 安部 正真, 中村 昭子, 齋藤 潤, 藤原 顕
    p. 74
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    地球に落下する多くの隕石は小惑星起源であると考えられているが、地上からの小惑星分光観測と実験室での隕石サンプルの反射スペクトル特性は単純に一致しないことがわかっている。それは、地球への落下頻度の最も高い普通コンドライトの反射スペクトル特性が、小惑星には圧倒的に少数派のQタイプに近く、最も多数派のSタイプ小惑星に対応する隕石がほとんど発見されていないことなどからも示唆される。これは微小隕石や太陽風などによる宇宙風化作用により、小惑星の表面物質が変化しているためであると現在考えられている。この宇宙風化作用は、Apolloサンプルの月レゴリスの研究から、レゴリスの粒子表面近くにナノメートルサイズの還元的な鉄粒子のコーティングが形成され、その結果アルベドの低下やスペクトルの赤化、吸収帯の平坦化などの影響を与えるということが知られている。
    これまで観測と実験室のデータの比較から小惑星表面物質の推定を行なうために、小惑星レゴリス表面の散乱光角度依存性などの実験が多く行なわれ、詳細な情報が得られてきているが、近年探査機による観測から、さらに小惑星表面の多くの情報を知ることが期待されている。本研究では、レゴリスの粒子サイズが反射スペクトルに与える影響について定量的に議論するために、隕石を岩石破片の状態から細かく粉砕させていく過程の反射スペクトルを測定した。測定は、あまり地球での風化を受けていないL6コンドライトY75102を使用し、300nmから2600nmの紫外-可視-近赤外の波長領域で行なった。また、コンドライトの主要造岩鉱物であるカンラン石と輝石の可視・近赤外波長域の吸収帯から、粒子をサイズ分別する際に起こると予想される鉱物種の選択的分別効果についても考察を行なう。
  • 野中 秀紀, 石黒 正晃, 安部 正真, 十亀 昭人, 西浦 慎悟, 北里 宏平, 濱根 寿彦, 長谷川 直
    p. 87
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    小惑星4Vestaは火成作用を受けた表面組成、その非一様性、HED隕石の母天体と考えられていることなどから非常に特徴的な小惑星であるといえる。1807年の発見以来多くの測光、分光観測が行なわれてきた。
    今回、2003年2月20日から5月21日までに、木曽観測所105cmシュミット望遠鏡とKONICを用いた赤外領域での測光観測、10cm屈折望遠鏡とECASフィルタをつけたMUTOH CV-16 CCDカメラを用いた可視領域での測光観測、県立ぐんま天文台65cm望遠鏡と小型低分散分光器を用いた可視・近赤外分光観測を行なった。
    局所的な違いとともに宇宙風化作用についての考察を報告する。
  • 廣井 孝弘
    p. 79
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    P型小惑星は、D型小惑星と共に、炭素質隕石よりもより原始的なものとして、隕石中には見つからないものと思われてきた。最近、タギシュレーク隕石が落下し、それがD型またはT型小惑星起源らしいとわかった(Hiroi et al. 2001, Hiroi and Hasegawa 2003)。著者らの10年前の研究(Hiroi et al. 1993)から、C/G/B/F型小惑星の多くは熱変性を受けたCI/CMコンドライトに似ていると考えられ、P型小惑星は反射スペクトル特性および太陽からの動径方向分布から見てC/G/B/F型小惑星とD/T型小惑星との間にあるので、P型小惑星が熱変性を受けたCI/CMコンドライトとタギシュレーク隕石との中間的な物質でできていると考えるのは自然である。そのような隕石の存在は報告されていないが、日米の膨大な南極隕石の中に埋もれている可能性や、タギシュレーク隕石のように今後降ってくる可能性もあるはずである。
    参考文献
    T. Hiroi and S. Hasegawa (2003) Revisiting the search for the parent body of the Tagish Lake meteorite: Case of a T/D asteroid 308 Polyxo. Antarct. Meteorite Res. 16, 176-184.
    T. Hiroi, C. M. Pieters, M. E. Zolensky, and M. E. Lipschutz (1993) Evidence of thermal metamorphism on the C, G, B, and F asteroids. Science 261, 1016-1018.
    T. Hiroi, M. E. Zolensky, and C. M. Pieters (2001) The Tagish Lake meteorite: A possible sample from a D-type asteroid. Science 293, 2234-2236.
  • 千秋 博紀, 松井 孝典
    p. 78
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    太陽系の惑星、小惑星は微惑星の合体衝突によって形成された。本研究では、惑星、小惑星の材料である微惑星の初期熱進化を数値シミュレーションの手法によって明らかにする。この数値モデルでは、短寿命放射性核種の崩壊熱と、表面を覆うレゴリスによる保温効果、また、レゴリスが熱や圧力によって焼結する効果も考慮している。
  • 猿楽 祐樹, 石黒 正晃, Kwon Suk Minn, Chun Moo Young, 中田 好一, 西浦 慎悟, 臼井 文彦, 西原 説 ...
    p. 88
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、現在行っている彗星ダストトレイルの可視サーベイ観測において、81P/Wild2彗星にダストトレイルを発見した。81P/Wild2彗星は、NASAの彗星探査機「スターダスト」の探査ターゲット天体である。スターダストは2004年1月にこの彗星にフライバイし、彗星ダストを採取する予定となっている。今回の観測から、ダストトレイルの粒子のサイズは1mm程度と推測している。スターダストがダストトレイルを通過する時、そのような大きいトレイル粒子の衝突が予想される。本研究では、その衝突頻度を見積もった。その結果を報告する。
オーラルセッション6 10/10(金)10:45~12:15
  • 藤原 顕, はやぶさ サイエンスチーム
    p. 81
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    2003年5月9日に打ち上げられた工学試験探査機「はやぶさ」は初期運用期間を経て現在呈上運用に入っている.その間,6月には電気推進機に点火,試運転後,連続運転に入った。また各種観測機器による機上キャリブレーションテストを行った.今後のはやぶさの予定と,持ち帰られる小惑星試料の分析のための準備状況について述べる.
  • 安部 正真, 高木 靖彦, 阿部 新助, 北里 宏平, 廣井 孝弘, 上田 裕司, バイラス フェイス, クラーク ベス, 藤原 顕
    p. 82
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    2003年5月9日に打ち上げられた小惑星探査機はやぶさには近赤外線分光器(NIRS)が搭載されている。これまでの数ヶ月の初期運用中にNIRSの動作チェックも実施された。本講演ではNIRSの動作チェックの内容と結果について報告する。
  • 齋藤 潤, 秋山 演亮, 石黒 正晃, 十亀 昭人, 出村 裕英, 中村 昭子, 中村 良介, 橋本 樹明, 林 彩, 平田 成, 道上 達 ...
    p. 83
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
     「はやぶさ」は2003年5月9日に打ち上げられた小惑星探査ミッションで、S型小惑星1998SF36をそのターゲット天体としている。現在ミッションは打ち上げ後の初期運用フェーズを終え、定常運用へと移行している。 このミッションは工学ミッションとして(1)電気推進の運用:(2)自律航法;(3)微小低重力下でのサンプリング;(4)カプセルの再突入と回収、の4つの大きな課題を担っている。 サイエンス観測としては、本講演で延べるAMICA(Asteroid Multiband Imaging CAmera)の他に赤外分光計、蛍光X線スペクトロメータ、LIDARが理学観測に用いられることになっている。 AMICAは光学航法カメラ(Optical Navigation Camera: ONC)の望遠カメラ(ONC-T)にフィルタと偏光子を装着したもので、衛星システム上では望遠光学航法カメラ(ONC-T)を理学観測機器として捉えるときに限り、特にAMICAというシステム呼称が用いられている。 このカメラは8バンドのフィルタホイールを搭載しているが、1バンドを航法用のwideバンドフィルタに用いるため分光フィルタは7バンドを装備している。これらは小惑星の分光観測システムであるECAS(EightColor Asteroid Survey)で使用されるフィルタセットに準拠させている。また偏光子は視野の一部を占めるよう、CCDの直上に配置している。これは光学ガラスに一定の方向に整列した細長い銀粒子を埋めこんだもので、これをCCD面の1辺に4方向の偏光面角(0、 45、 90、 135度)を持つように切り出した小片を配置したものである。 本講演では、これら総合試験・性能評価で最終的に得られた結果、また初期運用で得られたデータの紹介など、AMICAの現況と今後実施する小惑星観測について紹介する。
  • 佐々木 晶, 柳沢 正久, 吉光 徹雄, 久保田 孝, ミネルバ グループ
    p. 84
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    In recent years, missions for exploring small planetary bodies such as asteroids and comets have received great attentions across the world. In upcoming asteroid or comet missions, It is increasingly important for planetary science to make science-equipped rovers hang around the surface of small planetary bodies whose surface gravity is very small.The Institute of Space and Astronautical Science (ISAS) of Japan launched an engineering test spacecraft, HAYABUSA to a near Earth asteroid 1998SF36 in May 2003. The authors have proposed a small robotic lander for MUSES-C mission. This robot is called "MINERVA" (MIcro/Nano Experimental Robot Vehicle for Asteroid), which has mobility system by hopping. Under the microgravity environment on the surface of small planetary bodies, traditional wheeled rovers are not expected to move effectively due to the low friction and inevitable detachment from the surface. Therefore the authors have proposed a hopping rover for the mobility in the microgravity environment. This rover includes a torquer inside and has no apparent moving parts outside. Turning the rover by rotating the torquer, the reaction force against the surface makes the rover hop with significant horizontal speed, which can overcome the difficulties of mobility around the small bodies. This paper describes the microgravity experiments of the proposed rover which is driven by an DC motor torquer. Experimental results are compared with the computational simulations.
  • 岡田 達明, 白井 慶, 山本 幸生, 荒井 武彦, 菊地 宣陽, 小川 和律, 加藤 學, XRS チーム
    p. 85
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    小惑星探査機「はやぶさ」に搭載した蛍光X線スペクトロメータ(XRS)の初期運用の結果と現状、今後の観測運用計画についての概要を紹介する。  XRSは、大気の無い惑星表面上の主要元素組成(Mg,Al,Si,S,Ca,Fe等)を定量的に決定するために、太陽X線の照射によって励起される元素に固有なエネルギーをもつX線(蛍光X線)を観測する装置である。XRSは「はやぶさ」に搭載され、地球近傍小惑星でS型のItokawa(1998SF36) を高度数キロメートルから常時観測する。S型小惑星の構成元素を精度よく決定し、どの種類の隕石と関連が深く、またどの程度の表面進化・熱的分化の過程を経ているかを調べる情報にする。  「はやぶさ」は小惑星到着まで約2年かかるため、その間を利用して初期動作確認や熱モデル評価、センサとして採用した電荷結合素子(CCD)の放射線劣化状態を適宜調べる。打上に際しては問題なく、想定通りの振舞いを示した。さらに、センサ較正や科学観測として、活動銀河核や超新星残骸、宇宙背景X線の観測を行う。現在までに複数天体の観測を行ったが、Arai et al. (2003)で報告する。また、太陽活動モニタ用に標準試料を搭載しており、太陽X線による蛍光X線測定の宇宙実証とその解析法の評価・検討を行うが、Yamamoto et al. (2003)で紹介する。搭載コンピュータSH-OBCの宇宙実証も同時に重要な役割であり、現在までに約20日間にわたり正常に動作している。
  • 矢野 創, 安部 正真, 藤原 顕, 小天体探査フォーラム (MEF)
    p. 86
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    小惑星サンプルリターンに挑戦するはやぶさ探査機に続き、我が国が行うべき次期小天体探査ミッションは過去3年間、様々な立場で検討が行われてきた。本講演では始原天体探査ロードマップに基づき、それら複数案に関して、現時点までに検討された構想、科学目的、ミッションデザイン、開発項目などを紹介し、近く発足を予定している新ワーキンググループにおける議論の礎を提供する。
オーラルセッション7 10/10(金)13:15~14:45
  • 関谷 実, 武田 英徳
    p. 75
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    原始惑星系円盤内で微惑星が形成される過程として2通りの仮説がある。
    (1)原始惑星系円盤中の塵が非重力的な力により衝突付着して微惑星になる。
    (2)原始惑星系円盤中の塵の層が、自己重力により不安定性を起こして多数の塊に分裂して微惑星ができる。
    最近は特に海外では前者が有力視されている。これは、乱流のために、自己重力が効くほどダストが中心面付近に沈殿濃集できないと考えられているためである。我々は原始惑星系円盤内で大きな塵の塊に向かって小さな塵の塊が入射するとどうなるかを考えた。結果は以下の通り。
    (a) 小さな塵の塊は、大きな塵の塊に1度だけ衝突する。衝突速度は50m/s程度。
    (b) 衝突の際に小さな塵の塊は粉々(monomers)に砕ける。
    (c) それぞれの粉(monomer)は大きな塵の周りの気体の流れに引きずられるために、二度と大きな塵に衝突しない。
    以上の過程を考えると、非重力的な力による集積は困難であるように思われる。消去法ではあるが、微惑星は自己重力不安定により出来たのではないかと考えられる。
  • 石津 尚喜, 関谷 実
    p. 76
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    微惑星の形成には2つの異なる過程が考えられている。一つは、塵が非重力的な力により衝突合体することによる集積。もう一つは、円盤中心面に沈殿した塵の層が自己重力不安定性により分裂することによる形成である。以前有力であった重力不安定説を最近は疑問視する人が多い。これは、塵の層で生じるshear不安定により乱流状態になり、自己重力不安定を起こすほど塵が沈殿できないことが指摘されたからである。ところが、最近、Sekiya and Takeda (2003) は塵の非重力的な合体がガス流により妨げられることを示した。そこで、ダスト層はshear不安定のために重力分裂の臨界密度に到達できないのかもう一度検討することにする。このshear不安定は公転速度がダスト/ガス比に依ることに起因する。ガスは圧力勾配がかかるためケプラー速度よりもゆっくりと公転しようとするが、塵はケプラー速度で公転しようとする。塵とガスの間には抵抗が働くため、質量の大きなほうに引きずられる。このため塵の中心面への沈殿に伴い円盤鉛直方向にshearが生じることになる。このshearにより塵の層が流体力学的に不安定となり塵は巻き上げられ沈殿が妨げられると予想されている。原始惑星系円盤の進化の過程でどうなるかを見るために、2種類の密度分布を非摂動状態として用いて比較した。ダストが沈殿成長すると、ダスト層内の密度分布は一定になると予想されている。この場合はダスト層とガス層の遷移層に強いshearが生じるために不安定になることがわかった。この不安定性により生じる乱流によって、ダストはRichardson数一定の分布に近づくと予想される。そこで、この分布について不安定性を調べたところ、安定であることが分かった。したがって弱い乱流による微調整を繰り返すことによりRichardson数一定の分布を取りながらダスト層は徐々に薄くなり、重力分裂の臨界密度に達してダスト層が重力分裂することが予想される。
  • 田中 秀和, 姫野 洋平, 井田 茂
    p. 90
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    原始惑星系円盤のSED(Spectral Energy Distribution)観測において、強い赤外超過を示す円盤は、107年以下の年齢のものに限られている。これより、原始惑星系円盤の寿命は 107年程度であろうと考えられている。この短い円盤寿命は、惑星形成理論、特に木星型惑星形成に対して強い制約条件となっている。
    我々は、原始惑星系円盤でのダスト成長と沈殿の数値計算を行ない、得られたダスト成長により原始惑星系円盤のSEDがどのように進化するかを調べた。本研究では、ダスト成長の効果をみるため、ガス円盤は進化しないものとした。さらに、このSED進化の、円盤質量、ガスダスト比、ダスト合体確率などの量に対する依存性を調べた。
    我々の得た主な結果は以下のようにまとめられる。

    1. 従来いわれていたように、成長したダストは、円盤赤道面へと沈澱し薄いダスト層を形成する。ダスト層形成後は上層に浮遊する小さいダストが円盤のSEDを決める。
    2. SED観測に見られる、107年での光度減少は、(円盤外側部分での)ダスト成長によって説明可能である。従って、ガス円盤自体の寿命は 107年より長くても良い。
    3. 円盤半径が大きいほど、光度減少は遅れる。「高年齢の円盤の方が円盤半径が大きい」という Kitamura et al.(2002, ApJ 581)の結果は、この効果で説明できるかもしれない。
  • 谷川 享行, 渡邊 誠一郎
    p. 91
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年、発見が相次いでいる系外惑星は我々の太陽系とは掛け離れた惑星軌道を持つものも多く、惑星系の惑星配置は非常に多様であることが明らかになってきた。この惑星配置の多様性の起源を理解する上で、形成途中の惑星の様子を知ることができれば大きな手掛かりとなるであろう。現在計画中の ALMA(アタカマミリ波サブミリ波干渉計) では、その高い空間分解能によって原始惑星が原始惑星系円盤中で形成しつつある様子を空間的に分解することが可能となる。この来るべき ALMA による観測に向けて、形成されつつある惑星を持つ原始惑星系円盤がどのように見えるかを、我々が従来より行ってきた巨大ガス惑星形成の流体シミュレーションから得られたガス降着率を用いて調べたので、その結果を報告する。
  • 林 和樹, 中本 泰史, 五十嵐 丈二
    p. 92
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年、Tタウリ型星周囲の原始惑星系円盤を中間から近赤外の波長域で高分解能観測することが可能になって来ている。これらの波長の光は大部分が中心領域からの散乱光であるが、他波長の観測結果との比較から散乱の非等方性を見積もり、ダストが成長して大きなサイズになっていることが示唆されている(McCabe et al. 2003等)。一方、理論的研究においては、2次元軸対称構造に対する輻射平衡計算が行われ、密度構造とSED・温度分布との関係が求められている(Kikuchi et al. 2002)が、これは等方散乱を仮定して計算が成されている。そこで、本研究では局所2次元モデルにおいて非等方散乱を考慮した信頼性の高い輻射平衡計算を行い、ダストの等方散乱モデルと非等方散乱モデルを比較することで、非等方散乱の効果を調べた。その結果、散乱光の輻射強度に有意な差があることが分かった。また、方向について2次元の計算を行ったことにより、原始惑星系円盤の観測角度・円盤上の空間座標と輻射強度の関係を得た。この結果と空間分解観測を比較することにより、原始惑星系円盤の観測角度・ダストサイズを同時に推定することを試みる。
  • 湊 哲則, 城野 信一, 山本 哲生
    p. 59
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    惑星形成過程において、微惑星は惑星とその原材料であるダストを繋ぐ重要な天体である。微惑星が形成されるためには、ダスト微粒子やその集合体(ダストアグリゲイト)が原始惑星系円盤内で衝突により成長していく必要があると考えられている。ダスト微粒子やダストアグリゲイトが衝突付着できる臨界速度は、微惑星形成過程を理解する上で鍵となる物理量である。 近年の実験(Blum 2000 etc)および理論研究(Dominik & Tielens 1997)により、次にことが明らかにされた。1) 1μm程度の大きさのシリケイト微粒子は、表面引力のため数m/s以下の衝突速度なら付着する。2) 微粒子の衝突で形成されるアグリゲイトはPorousな構造をとる。3) 100個程度の微粒子で 構成されたアグリゲイトは、微粒子単体の場合より大きな付着可能速度(3倍程度)を持つ。では、アグリゲイトが成長し大きくなり、構成微粒子数が多くなると、付着可能速度および合体エネルギーはどうなるのだろうか?本研究は、2次元数値シミュレーションによって、Porousなダストアグリゲイトの衝突付着に対する構成粒子数依存性を調べた。計算コードはDEM(Discrete element method)をベースに作成した。この方法はすべての微粒子の運動方程式を粒子間接触力を基に解く。微粒子間接触力は、個々の微粒子を表面引力を持つ弾性球と扱いその接触理論(Dominik & Tielens 1997)を用いてモデル化した。シリケイトおよび氷微粒子で構成されたアグリゲイト(10~10000個の微粒子で構成)の衝突をシミュレーションした結果、以下が得られた。a) アグリゲイトのサイズが大きい(構成微粒子数が多い)ほど衝突合体可能な臨界速度は大きくなる。b) 付着可能な衝突前の運動エネルギーの最大値は、アグリゲイトを構成する粒子数の1.5乗および2つの微粒子間を切断するのに必要なエネルギーに比例する。c) a)のb)理由は、衝突圧縮波が通過した領域では、アグリゲイトの構造が破壊され、微粒子が衝突や滑りなどの運動を繰り返しながらエネルギーを散逸し、十分のエネルギーが散逸されると微粒間が結合するためである。講演では、上記の結果の詳細な報告とともに、微惑星形成過程の議論を行う。
オーラルセッション8 10/10(金)15:00~16:15
  • 伊東 真史, 田中 秀和
    p. 89
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では輻射によるエネルギー輸送の効果を入れて、惑星と光学的に薄い原始惑星系ガス円盤との重力相互作用について調べた。惑星はその両側に、リンドブラッドレゾナンスで励起される密度波をたてる。外側の密度波は惑星に負のトルクを、内側の密度波は正のトルクを与える。その2つのトルクの和が惑星にかかる正味のトルクとなる。本研究では最初の段階として片側からのトルクを計算する。過去における研究では等温の状態方程式が仮定されていた。今回はエネルギー方程式を入れて線形計算することで密度波に対するエネルギー輸送の効果を考える。原始惑星系円盤内では輻射によってエネルギーが輸送され、輻射輸送はダストのオパシティーが支配している。ダストの成長や微惑星の形成が進むとダストのオパシティーは十分に小さくなると考えられる。よって、光学的に薄い円盤を仮定することにする。光学的に薄い円盤ではダストの量が増すと輻射輸送の効率があがる。我々はダストの量をパラメーターとして片側からのトルクを計算した。輻射輸送の効果により片側からのトルクの大きさは等温の場合に比べ10%しか変わらないことが分かった。しかし惑星の近傍が片側のトルクに大きく寄与していることも分かった。このことは正味のトルクが等温の場合に比べ、大きく変わる可能性があることを示している。
  • 生駒 大洋
    p. 93
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    巨大ガス惑星の大質量エンベロープの起源は原始惑星系円盤ガスである。微惑星の衝突・合体によって成長した固体の原始惑星(以後、「固体核」と呼ぶ)が地球質量の1/10程度になると、円盤ガスを大気としてまとう。この大気の質量は、現在のエンベロープの質量に比べて桁違いに小さい。微惑星の集積がさらに続き、固体核がある臨界質量に到達すると、大気は重力的に収縮を始める。その収縮に伴って、円盤ガスが惑星の重力圏内に流れ込み、大質量のエンベロープが形成される。これまでの研究では、大気の組成が太陽組成(主成分は水素とヘリウム)であると仮定されてきた。太陽組成の仮定の下で求められた臨界質量は、おおよそ地球質量の10倍である。このサイズの固体核を円盤ガス消失以前に作るには、厳しい条件が必要である。しかし、原始の大気は重元素(主に炭素と酸素)が主成分であったと考えられる。その重元素の源は微惑星の揮発性成分である。微惑星は、固体核に到達する前に大気中で蒸発・剥離などを経験する。固体核が臨界質量に到達する以前は、ガスの集積率に比べて微惑星の集積率が圧倒的に高いので、微惑星の揮発性成分の寄与は非常に大きいと期待できる。そこで本研究では、円盤ガスと微惑星の揮発性成分との混合大気の構造を数値計算し、様々な混合比について臨界質量の値を調べた。さらに、円盤ガス捕獲のタイムスケールも見積もった。その結果、(1)臨界質量は重元素量が増加するとともに急激に減少し、(2)もし微惑星の成分が大気質量の 50 % 以上を占めれば、2-3地球質量以下の固体核でも円盤ガス消失以前に巨大ガス惑星になることがわかった。本研究の結果より、巨大ガス惑星形成の必要条件が緩和される。
  • 岩崎 一典, 榎森 啓元, 中澤 清
    p. 94
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    惑星形成理論における重要な問題の一つに木星型惑星のガス捕獲時間の問題がある。これは、標準的な原始惑星系円盤から作られる固体核(原始惑星)の質量が小さすぎるために固体核のガス捕獲の時間が観測から推定されるガス円盤の寿命よりも長くなってしまうという問題である。この問題の解決策として、原始惑星同士の衝突合体によって質量を増加させるという方法が考えられる。しかし、ガス円盤には、原始惑星と重力相互作用することによって、その軌道離心率を下げる効果があることが知られているので、ガス円盤の存在下では、原始惑星同士の軌道交差が妨げられ衝突合体が起こらない可能性がある。よって、原始惑星系が、どのような条件(ガス円盤の残存量、初期の軌道配置等)のもとで軌道不安定(交差)を起こすのかを調べることは、原始惑星からガス惑星への成長過程を知るうえで極めて重要である。
    本研究では、ガス円盤の存在下での原始惑星系の軌道安定性を調べた。原始惑星系としては、等質量(3倍の地球質量)の原始惑星を5個、円軌道で同一平面上に等間隔に配置した系を考えた。まず始めに、ガス円盤が存在しない場合について、原始惑星系軌道の初期配置間隔をパラメータとして、数値軌道計算を行った。原始惑星系をどのような間隔に配置した場合でも、ある一定時間後に必ず軌道不安定(交差)を起こし、その時間は、配置間隔に対して指数関数的に増加することが明らかにされた。このことは、地球型惑星領域(原始惑星の質量が0.1地球質量程度)における軌道不安定性については、既にChambersらによって指摘されているが、木星型惑星領域では比例係数等が異なっていることが確認された。また、ガス円盤の存在を考慮に入れない時は、惑星集積理論によって示唆される典型的な配置間隔を持った原始惑星系では、ガス円盤の寿命内に十分軌道不安定を起こしうることが解った。
    次に、ガス円盤が存在する場合について、原始惑星系の配置間隔とガス円盤の面密度をパラメータとして計算を行った。ガス円盤が原始惑星に与える重力相互作用は、原始惑星のランダム速度(円軌道からのずれの速度)の1次に比例する抵抗力として軌道計算に組み込んだ。その結果、原始惑星の配置間隔が小さい時には、ガス円盤がない時と同様の時間で軌道不安定を起こすが、配置間隔がある閾値(臨界配置間隔)より大きくなると、系は急激に安定化され、実質的には軌道不安定を起こさないことが解った。また、存在するガス円盤の面密度が小さくすると、臨界配置間隔は大きくなる(即ち、系はより不安定になる)ことが見出された。さらに、臨界配置間隔の大きさをガス円盤の面密度の関数として与える式を導出した。
    上記の結果を、木星型惑星領域において典型的な配置間隔を持った原始惑星系に適用すると、標準的な太陽系形成モデル(林モデル)におけるガス円盤の面密度では、原始惑星系は軌道不安定を起こさず、軌道不安定を起こすためには、面密度が標準モデルの1000分の1程度まで減衰する必要があることが解った。さらに、木星や土星等の巨大ガス惑星の形成には、標準モデル(林モデル)と同程度の面密度を持つガス円盤が必要になることを考えると、原始惑星同士の軌道不安定(交差)及び衝突合体によるガス捕獲時間の短縮は極めて難しいことが明らかにされた。
  • 井田 茂, ダグラス リン
    p. 95
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    これまでに系外惑星は100個以上発見され、その質量や軌道分布が統計的意味を持つようになってきている。惑星形成理論モデルと組み合わせることにより、その観測された分布から系外惑星の形成過程の情報を引き出せるようになってきている。これはHR図から恒星進化の様子を読みとれるということと同じである。 本研究では、系外惑星の質量・軌道半径分布を理論的に推定し、観測と比べる。ここでは、系外巨大ガス惑星が固体コア集積後の原始惑星系円盤ガス流入でできたという立場にたち、コアの集積率、コアの孤立質量、円盤ガス流入率、円盤ガス流入の限界、惑星-円盤重力相互作用による巨大惑星の移動を、N体シミュレーションなど理論計算 (e.g., Kokubo & Ida 2002; Ikoma et al. 2000; Lin & Papalouzou 2000)の結果をもとに、それぞれモデル化した。そして、観測 (e.g.,Beckwith & Sarget 1996) から推定される円盤質量の頻度分布、円盤散逸時間のもと、惑星成長のモンテ・カルロ計算を行ない、系外惑星の質量・軌道半径分布を推定した。 われわれの理論モデルは、中質量(10-100地球質量)の系外惑星が0.1-3AUの軌道半径において欠乏することを示す。これをわれわれは ``Planet Desert''と呼ぶ。これまでの系外惑星の観測はこの ``Planet Desert''の存在を示し始めている。このことは、系外巨大ガス惑星が、キャメロン・モデル的なガス円盤の分裂でできたのではなく、京都モデル的なコア集積+円盤ガス流入で形成されたことを示唆する。さらに、われわれのモデル``Planet Desert''の境界線が、コア集積開始質量、円盤の散逸時間やコア集積時間、巨大惑星の移動時間の兼ね合いで決まることを示す。今後のさらなる系外惑星の観測により、これらの惑星形成の各プロセスに強い制約条件を与えることができる。
  • 高橋 啓介, 渡邊 誠一郎
    p. 96
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    現在までの太陽系形成論において、海王星を現在の場所で造るには現在の太陽年齢よりも時間がかかってしまうという問題がある。
    また、最近の観測によって海王星以遠の小天体の分布が海王星と3:2の平均運動共鳴の位置に集中していることが確認された。
    これら理論上の問題と観測事実を説明する為に、海王星が形成段階において3:2共鳴に微惑星を捕えながら
    外側に移動したというシナリオが考えられているが、海王星がどのようにして外側に移動したかについては
    明らかになっていない。
    本研究では、微惑星との重力相互作用による海王星の移動を考え、alpha-hermite 積分法を用いて数値計算を行い、海王星が得る角運動量を計算した。
    その結果、木星の存在を考慮することによって、海王星が外側に移動できることが明らかになった。
    今後、海王星移動にかかわるいくつかのパラメータ(軌道傾斜角等)について
    調べる予定であるので、その結果について報告する。
オーラルセッション9 10/10(金)16:30~17:30
  • 渡辺 周吾, 阿部 豊
    p. 97
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
      系外惑星の環境進化を考える上で生物が生存可能な惑星というのはひとつの指標となる。生物が生存可能であるための条件として地表に水が安定に存在できること、そして地表温度及び大気温度が適切な温度で安定していることがある。Tajika and Matsui(1990)(1)は炭素循環によって太陽進化に伴う放射増に対して地表温度の安定性が生じることを示した。またKasting et al.(1993)(2)は太陽の増光を考えた上で水が安定に存在できる惑星軌道半径を求めた。
      大気温度は入射エネルギー流量と大気中の温室効果とによって決まる。重要な温室効果気体である二酸化炭素の大気存在量は地表に固定される量と脱ガスによって供給される量との釣り合いによって決まる。これによって脱ガス量が多ければ温室効果は強まり、少なければ温室効果は弱まる。ところで脱ガス量及びその変遷は惑星の内部熱史によって決まる。そして熱史は惑星半径によって異なったものになる。これは惑星半径が大気温度の進化に影響を及ぼすことを示している。しかし大気温度の惑星半径依存性について言及した研究は少ない。
      そこで地表の液体の水が凍らないでいられる時間を求めることによって水が安定に存在できる条件を調べる。今回温室効果気体として考えている大気中の二酸化炭素は脱ガス量が低下することにより徐々に減っていく。そして脱ガス量の低下が地表温度に及ぼす影響は太陽の増光よりも大きいため地表温度は徐々に低下する。凍らないための具体的な基準温度として現在の地球の全球平均気温である15Cと比較のために5C及び標準温度25Cについて考える。これらの基準温度より温度が低下するまでの時間を『寿命』と呼ぶことにして、これを求める。簡単のために大気温度と地表温度とが等しいとした。熱史及び脱ガス量、炭素固定量、温室効果を簡単なモデルを用いてあらわし、数値的に解くことによって惑星半径と寿命の関係を求める。また惑星軌道半径と寿命の関係についても求める。
      以上の結果、寿命は惑星半径に線形に依存することがわかった。また入射エネルギー流量に対しては線形より強い依存性があることがわかった。これらの結果を用いると45億年間水が安定に存在できる惑星半径は火星程度の大きさ以上でなければならなかった。また火星半径で考えた場合、軌道半径は1.12AU以内でないといけなかった。今回用いたモデルは不確定性が大きい。例えば南北の温度分布や二酸化炭素分圧以外の温室効果も考えていない。 これらは今後の課題として残された。
    (1)Tajika, E. and Matsui, T.(1990):The evolution of the terrestrial environments. In "Origin of the Earth"(Newsoms, M. E. and Jones. H. eds.), Oxford Univ. Press, pp.347-370
    (2)Kasting, J. F., Whitmire, D. P., Reynolds, R. T.(1993):Habitable Zones around Main Sequence Stars, Icarus, 101, 108-128, 1993
  • 石井 徹之, 佐々木 晶
    p. 98
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    火星地表では、バレーネットワークやアウトフローチャンネルなど水が流れた痕跡が発見されており、過去数十億年前に気候が温暖湿潤であった可能性が示唆されている。Malin and Edgett [2000] は、火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーによる高解像度画像より、火星の中・高緯度の極向き傾斜地に、流体の漏出によって形成されたと推測される、比較的新しい (< 1 Myr) 小規模の地形ガリー (Gully) を発見した。ガリーは最近の火星地表付近に液体の水が存在する可能性を示し、生命の誕生に深いつながりのある液体の水の存在は、火星の生命探査に大きな希望を与えるものである。ガリー形成メカニズムに関して様々な説が提案されている。地形形成の媒体は水であるという説が主流であり、火星地表付近における水の安定化について多くの議論がなされてきた。しかし、現在の火星の年平均気温はおよそ 210 K であり、大きく水の三重点を下まわることに加えて、ガリーが日射量の少ない寒冷な極向きの斜面に形成されることは、水が安定化する領域とガリーが形成される領域を大きくかけ離れたものとする。さらに、600 Paと水の三重点より低い現在の火星大気圧は、液体の水の地表付近での安定をより困難なものとする。火星大気はほとんどが CO2 から構成されており、 CO2 は火星地表に豊富に存在する。Musselwhite et al. [2001] が液体の CO2 をガリーの形成媒体として提案したように、火星において流体 = 水ではないことが十分に想像される。本研究では、斜面における地表面熱収支を計算することにより、ガリーの形成が確認されている、およそ 30° 以上の中・高緯度の極向きの斜面には、南北両半球において凝結した固体 CO2 が一定期間存在することを導いた。これは、ガリーの形成と CO2 の凝結に何らかの関係があることを示唆するものである。この結果を基に、斜面に凝結した CO2 を形成媒体とする新たなる形成メカニズムの可能性を検討する。
  • 白木 隆裕, 日高 宏, 渡部 直樹, 香内 晃
    p. 77
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    ホルムアルデヒド(H2CO)分子は星間塵氷マントルに閉じこめられた形で,様々な分子雲中に存在しており,その存在量は一酸化炭素や二酸化炭素に匹敵する.ホルムアルデヒドは氷中COの水素原子付加反応による進化過程(CO→H2CO→CH3OH)で中間体として生成されることが,これまでの我々の実験で明らかになっている.しかしながらこれまでの実験では親分子をCOにして,一連の反応を一度に測定していたため,上記進化過程の後半:H2CO→CH3OHの反応素過程に関する情報を直接得ることが出来なかった.今回は親分子をH2COとし,H2CO→CH3OHの反応を定量的に調べた.講演では反応速度の氷温度依存性を中心に議論する.
  • 橋爪 光
    p. 80
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/06/02
    会議録・要旨集 フリー
    始原的な固体惑星物質に大量に含まれる有機物の形成過程、特に、低温ガス空間で起こった初期素過程について考察を行う。それを読み解く鍵として炭素および窒素同位体組成に注目する。最近太陽の持つ炭素・窒素の同位体組成が明らかになりつつある。現在の太陽のこれら元素の同位体組成は原始太陽、あるいは太陽系星雲ガスと同じであると考えられる。その結果によると隕石有機物の炭素・窒素は太陽組成に比べてそれぞれ10%ないしは24%以上重たい同位体に富んでいることが明らかになった。これは有機物形成過程において13Cおよび15Nを凝縮(有機物)相に濃縮させる過程が卓越したことを物語っている。講演では(1)考察の基本となる太陽型同位体比組成がどのようにして求まったかを簡単に紹介した後、(2)有機炭素・窒素合成過程についての考察を進める予定。
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