医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
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14 巻, 4 号
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原著
  • 平賀 秀明, 秋本 義雄, 吉尾 隆
    2019 年14 巻4 号 p. 447-454
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    最高裁判所は,医事関係訴訟における第一審の地方裁判所及び簡易裁判所での判決,原告の主張が承認された判決及び和解の件数に関する統計資料を公表している.しかし,この資料は訴訟による最終解決前の中間結果を示しているに過ぎない.さらに,患者以外にも医療機関が原告として提訴することがあるため,この資料からは患者の主張が判決でどの程度認められたのかは不明である.そこで本研究では医事関係訴訟の最終解決の結果を調査し,地方裁判所の決定が最終的にどの様に変化したのかを明らかにすることを目的として,千葉地方裁判所に提訴された訴訟を調査した.
    2004~2008年に提訴された訴訟118件の最終解決の結果は,判決39件(33.1%)及び和解68件(57.6%)であり,この和解の割合は第一審の千葉地方裁判所の結果に比べて5.9%高かった.最終解決の判決のうち患者の主張が認められた判決の割合は28.2%であり,原告の主張が認められた割合に比べて5.1%低かった.
    本研究から医事関係訴訟の最終解決の実態は,地方裁判所に比べて多くの和解と患者に不利な判決があることが客観的に示された.これらの知見は訴訟を回避するための医療紛争解決システムの重要性を強調している.医事関係訴訟の増加は,医療崩壊に結び付く可能性がある.提訴回避,訴訟負担軽減及び医療の質の向上のためには,医事紛争の関係者は医事関係訴訟の正確な実態を理解し,提訴前の裁判外和解を積極的に試みることが必要である.
  • 平賀 秀明, 秋本 義雄, 松尾 和廣, 吉尾 隆
    2019 年14 巻4 号 p. 455-466
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    背景:医事関係訴訟の発生率(以下,発生率)は,医療機関の種類により異なる可能性がある.しかし,医療機関の種類別の発生率は地域レベルでも報告されておらず,現在公表されているデータからは医療機関における患者安全や訴訟対策を十分に検討することは困難である.
    方法:全国及び千葉県における医療機関の種類別の発生率を調査した.
    結果:2004-2008年の病院,診療所及び歯科診療所を含めた医療機関100施設あたりの発生率は,全国0.54件及び千葉県0.33件であった.千葉県の医療機関100施設あたりの発生率は,病院1.4-6.6件,診療所0.054-0.46件及び歯科診療所0.065-0.55件であった.千葉県の延べ推計患者1000万人あたりの発生率は,病院0.94-4.5件,診療所0.37-3.2件及び歯科診療所0.81-8.1件であった.
    考察:本研究から発生率には地域差があり,全国と比較して千葉県の発生率が低いのは弁護士不足が原因である可能性が考えられた.また,一般的に患者あたりの重大な医療事故のリスクは病院の方が高いにも関わらず,千葉県では医療機関の種類に関わらず患者あたりの発生率は同程度であった.これらは,千葉県の診療所では重大な医療事故以外の問題が訴訟の原因となるケースが多く,弁護士に依存しない薬剤関係のトラブル対応方法の周知徹底等の診療所における追加訴訟回避対策が必要であることを示している.最後に本研究では和解で解決した事件の詳細な情報は得られなかったが,患者安全と訴訟対策の推進のためには,それら情報の収集・利用のための環境整備が必要である.
  • 笠松 奈津子, 樫村 暢一
    2019 年14 巻4 号 p. 467-472
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー
    目的:転倒転落の予防を目的に睡眠剤の見直しを行い,不眠時指示薬を標準化したため,その有用性を報告する.
    方法:2016年10月より入院患者の不眠時指示薬を院内統一とした.第一選択はメラトニン受容体作動薬のラメルテオン(ロゼレム(R))8mg,効果が不十分な場合は第二選択として非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロン(ルネスタ(R))2mgとした.
    結果:院内統一睡眠剤の処方率は2016年10月の開始当初は39.3%であったが,徐々に増加し,1年経過した2017年9月には74.9%となった.変更前の2016年度上期と変更後の2017年度上期を比較すると,転倒転落総件数が22%減少し,睡眠剤関連転倒転落件数は28%減少した.同期間の転倒転落率は2.09‰から1.56‰に有意に減少した(P=0.004).また,睡眠剤別転倒転落率は,ブロチゾラム0.31%,フルニトラゼパム0.3%,ゾルピデム0.28%,エスゾピクロン0.26%,ラメルテン0.19%であった.ラメルテオン,エスゾピクロンは他の睡眠剤に比べ転倒転落率が低い傾向であった.
    結論:転倒転落要因は多様であり,原因が睡眠剤の影響かどうかを明確に判定することは困難であるが,睡眠剤の標準化は転倒転落予防のバンドルの一つとなり得ることが示唆された.
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