背景:医事関係訴訟の発生率(以下,発生率)は,医療機関の種類により異なる可能性がある.しかし,医療機関の種類別の発生率は地域レベルでも報告されておらず,現在公表されているデータからは医療機関における患者安全や訴訟対策を十分に検討することは困難である.
方法:全国及び千葉県における医療機関の種類別の発生率を調査した.
結果:2004-2008年の病院,診療所及び歯科診療所を含めた医療機関100施設あたりの発生率は,全国0.54件及び千葉県0.33件であった.千葉県の医療機関100施設あたりの発生率は,病院1.4-6.6件,診療所0.054-0.46件及び歯科診療所0.065-0.55件であった.千葉県の延べ推計患者1000万人あたりの発生率は,病院0.94-4.5件,診療所0.37-3.2件及び歯科診療所0.81-8.1件であった.
考察:本研究から発生率には地域差があり,全国と比較して千葉県の発生率が低いのは弁護士不足が原因である可能性が考えられた.また,一般的に患者あたりの重大な医療事故のリスクは病院の方が高いにも関わらず,千葉県では医療機関の種類に関わらず患者あたりの発生率は同程度であった.これらは,千葉県の診療所では重大な医療事故以外の問題が訴訟の原因となるケースが多く,弁護士に依存しない薬剤関係のトラブル対応方法の周知徹底等の診療所における追加訴訟回避対策が必要であることを示している.最後に本研究では和解で解決した事件の詳細な情報は得られなかったが,患者安全と訴訟対策の推進のためには,それら情報の収集・利用のための環境整備が必要である.
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