医療の質・安全学会誌
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16 巻, 3 号
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原著
  • 堀 泰子, 林 智子, 井村 香積, 兼児 敏浩
    2021 年16 巻3 号 p. 291-301
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    目的:新人看護師の医療安全に対する入職時と入職1年後の認識の変化,及びその認識を持つきっかけとなった経験を明らかにすることである. 対象と方法:A県内一般病院に勤務する2年目看護師231名を対象に,入職時と入職1年後の医療安全に対する認識の変化,及びその認識を持つきっかけとなった経験について,自由記述を求める質問紙調査を実施し,54名から得た結果を質的に分析した. 結果・考察:入職時の認識として【医療事故に対する楽観的な考え】【安全意識の欠落】【医療安全よりも業務が優先という考え】【一人一人の医療者が意識すべき大切なこと】【医療安全に対する漠然とした考え】【医療事故に対する悲観的な考え】,入職1年後の認識として【医療安全に対する意識の高まり】【自分が事故を起こす可能性の受け止め】【一人一人の責任であると同時にチームで取り組むべき大切なこと】【事故防止のための具体的行動を意識】【継続する医療事故への不安】が明らかになった.そして,入職時と入職1年後の認識を比べると,医療安全に対する『低い関心』から『高い関心』,『個人』から『チーム』,『漠然』から『判然』へと変化していた.また,医療安全を考えるきっかけとなった経験は,直接・間接を問わず,日常的な薬剤関連・患者の行動・勤務関連の経験であった.さらに,これらの経験を繰り返すことや自身の行動を振り返ることで認識が変化していた.
  • −一般病院の看護師を対象とした調査より−
    髙田 規久子, 成 順月, 薬袋 淳子
    2021 年16 巻3 号 p. 302-311
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    目的:看護師を対象に患者からの暴力被害と支援状況及び支援の満足度との関連を明らかにする. 方法:協力が得られた一般病院4施設の看護師を対象に,暴力被害と支援状況,暴力対策の組織体制,支援の満足度に関する質問調査を行った.記述統計で被害実態と支援状況を調べ,支援の満足有無を従属変数とし,受けた支援,組織体制を独立変数とし,被害状況で調整した多重ロジスティック回帰分析を行い,満足度に関連する支援と組織体制を調べた. 結果:回答者728人中387人(53.5%)に被害経験があった.被害による心の変化では,患者への嫌悪感が48.6%,仕事意欲低下が41.9%と上位であった.受けた支援は同僚の支援が36.7%で最も多く,次に看護師長の面談(19.1%)であった.多変量解析では,満足ありのオッズは同僚の支援(OR=6.34;95%CI:3.23-12.4),看護師長面談(2.95:1.48-5.91)あり群で有意に高く,職員の安全確保(0.25:0.11-0.58),暴力被害の報告基準(0.23:0.07-0.75)の組織体制なし群で有意に低かった. 結論:看護師の半数以上が暴力を受け,支援を受けたのはその半数にも満たない実態が明らかとなった.暴力被害から看護師を守るためには,同僚や看護師長などの人的サポート,職員の安全確保や被害報告の基準設定などの組織体制が重要であることが示唆された.
  • −看護師間における行動分析学的教育プログラムの有効性の検証−
    住友 順子, 飛田 伊都子, 魚住 真生, 辰巳 陽一, 小川 正子, 中山 昌美
    2021 年16 巻3 号 p. 312-321
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    目的:チームトレーニングプログラムであるTeamSTEPPSRのツールであるチェックバックの遵守率を向上させるために行動分析学的な介入プログラムを考案し,その有効性を評価することを目的とした. デザインと対象:ランダム化比較デザインを採用し,実験群にはbaseline,介入,follow-upで構成する実験計画を用いた.A大学病院の1つの病棟を対象病棟とし,主任を除く全看護師21名の中から無作為に抽出した12名を対象者とし,実験群と対照群の2群に分けた. 介入:実験群には介入プログラムを実施し,介入プログラムはbaseline,phase 1,phase 2,phase 3,follow-upの5期で構成した.phase 1では,不完全なチェックバックによる事故事例と正しいチェックバック方法について言語的に教示した.phase 2 では,チェックバック遵守率増減についての言語的フィードバックを行い,phase 3 では,チェックバック遵守率のスコアフィードバックを行った.baselineとfollow-upは無介入とし,対照群には無介入を継続した. 結果:対照群のチェックバック平均遵守率は,3.2%から24.3%で推移したが,実験群は,baselineでは0.0%から38.5%,phase 1では42.8%から57.6%,phase 2では47.7%から69.1%,phase 3では77.6%から95.0%,follow-upでは80.8%から87.9%で推移した. 結論:実験群のチェックバックの平均遵守率が対照群に比べ高率を示したことから,チェックバックの遵守率を向上させることを目指した行動分析学的な介入プログラムの有効性が示された.
  • 小宮 顕, 岡本 百合子, 仲村 和芳, 岩田 幸恵, 寺田 二郎, 岡崎 純子, 鳥海 裕子, 市川 智彦, 相馬 孝博
    2021 年16 巻3 号 p. 322-329
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    目的:尿道カテーテル留置に伴う尿道損傷は,報告件数が多いインシデントである.当院では同手技に伴うインシデントが多発したため,改善目的に院内教育を行った.本研究では,インシデント発生の背景要因と院内教育の効果について後ろ向きに検討した. 方法:2014年から2018年までの尿道カテーテル留置に伴うインシデントを集計し,その発生背景について検討した.2016年度中に教育訓練を行い,既存の手順書を周知した.2014年から2018年までのカテーテル使用本数と事例報告数を調査し,教育前後の事例発生率の推移を検討した. 結果:尿道カテーテル留置に伴うインシデントは39例で,そのうち尿道損傷が26例(66.7%)であった.尿道損傷の発生要因(重複有)は,確認不足20例,手技が未熟21例など,手順の遵守不足や教育訓練の不足が考えられた.またカテーテル留置目的別に見ると,侵襲的医療行為に伴うものが20/26例(76.9%)と多かった.尿道損傷の報告数(カテーテル使用本数当たりの割合)は,2014年が4例(0.064%),2015年が8例(0.089%),2016年が5例(0.056%),2017年が5例(0.054%),2018年が4例(0.041%)であった.院内教育を実施したのは2016年であり,減少傾向を認めた. 結論:尿道カテーテル留置に伴うインシデントは,手順書の遵守不足や教育訓練の不足が背景にあり,手術や検査の際に多く報告された.院内教育施行後のインシデント発生割合は減少傾向と考えられた.
報告
  • −当院12年5か月の血液培養オーダー状況から−
    久次米 公誠, 中井 達郎, 池谷 範子, 田中 都, 大沢 幸嗣, 佐藤 明子, 濁川 博子, 小野 正恵
    2021 年16 巻3 号 p. 330-336
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    当院12年5か月の血液培養オーダー状況を検討した.さらに,初期研修医66名の血液培養1セット率(SBCRs:solitary blood culture rates)を医療の質の臨床指標として検討した.2007年11月に94%あったSBCRsは2016年第3四半期から10%未満を維持している.2013年度から2018年度に当院で採用された初期研修医6学年66名それぞれの1年目年間SBCRsを2年目4月に通知し,1年目年間SBCRsの中央値4.9(0-9.1)%から2年目年間SBCRsの中央値0(0-4.9)%に有意差(p<0.0001)を持って低下するのを観察した.初期研修医にSBCRsを通知することは,SBCRsを低く保つ効果があると推測される.これは,「品質特性」である初期研修医の医療の質を「代用特性」として測定可能なSBCRsに置き換えて,達成するべきレベルと現状レベルとのギャップを縮めることで,日常の診療行為を達成するべきレベルに近づけ改善したと言える.SBCRsは医療の質の臨床指標として利用できる可能性がある.
  • 柴田 ゆうか, 松尾 裕彰, 伊藤 英樹
    2021 年16 巻3 号 p. 337-342
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    薬剤師による最適な薬物療法支援が薬剤師職能として求められている.日本病院薬剤師会は薬剤師の処方介入事例を収集しているがmedication reviewの手順が施設ごとに異なるうえ,その収集は任意報告であるため介入の実態は明らかでない.そこで,広島大学病院において薬剤師のmedication reviewの標準化により,薬剤師から医師への処方提案による処方変更を処方介入として全例報告する試みを行った.ハイリスク薬などをモニタリングする標準化ツールの作成,薬剤師教育,報告業務の効率化などの取り組みを経て,2014年から2018年にかけて処方介入が2,934件から4,692件へとなった.処方介入には薬剤の不適切使用回避のみならず,治療効果向上に関する介入が約1/3含まれていた.薬剤師のmedication reviewによる処方介入は,質の高い薬物療法へ貢献することが示唆された.
  • 島崎 綾子, 平澤 裕美, 対馬 義人, 星野 修平, 田城 孝雄
    2021 年16 巻3 号 p. 343-350
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    目的:画像診断報告書未読の危険因子を明らかとし,その対策に生かす. 方法:平成30年4月から1年間に発行された報告書60,930件を対象とし,報告書作成までの時間,参照までの時間,未読率(14日以内),診療時間内外などについて,病院全体,診療科別,モダリティー別に後ろ向きに調査した. 結果:作成までの時間の中央値は2時間41分であり,54.0%が3時間以内であった.参照までの時間は中央値1日で,未読率は12.8%であったが,中央値は0〜3日,未読率は2.0〜61.9%と,診療科間で大きな差があった.報告書総数とは関連がなかった.未読率が最も高いのはMRI(18.8%)で,FDG-PET/CTが最も低く(5.5%;p<0.05),救急科など一部の診療科を除き診療時間内検査の方が高かった. 結論:参照までの時間や未読率には診療科によって大きな差があり,またモダリティーによる差も明らかであ った.これらの結果は,未読問題に対する効果的な対策には個別的対応が必要であることを示唆する.
  • 櫻井 美由紀, 阿南 節子, 野中 俊英, 青儀 健二郎
    2021 年16 巻3 号 p. 351-355
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    目的:医療従事者を,抗がん薬曝露による健康被害から守ることは医療安全行動の一つである.2016年に, 我々は抗がん薬曝露対策が看護師の組織コミットメント向上に影響することを調査し報告した.今回,2016年2月から2018年3月に実施されたNHOネットワーク共同研究「多施設共同抗がん薬曝露実態調査と医療従事者の安全確保のための「Hazardous Drugsの安全な取り扱い」の概念構築」に参加した32施設において,抗がん薬曝露対策の実施が医師,看護師,薬剤師の組織コミットメントに与える影響を調査した. 方法:抗がん薬曝露対策に取り組むという医療安全行動が,医師,看護師,薬剤師の組織コミットメントに正の影響を与えるという仮説を立て,本研究の参加者にアンケート調査を実施した. 結果:アンケート調査の回答を解析した結果,看護師と薬剤師では本仮説は支持された. 結論:抗がん薬曝露対策への取り組みは,看護師と薬剤師の組織コミットメントに正の影響を与えることが示された.
  • −WHO患者安全カリキュラムガイドの視点から−
    山口 由美子, 大石 雅子, 飛田 伊都子, 折田 義正
    2021 年16 巻3 号 p. 356-364
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    本研究は,看護師学校養成所3年課程(3年制)における医療安全教育の現状把握を目的に,関東・近畿にある222校を対象に質問紙調査を行った.調査項目は,基本属性や医療安全教育の現状,WHO患者安全カリキュラムガイドに基づく教育の方法と評価方法について回答を求めた.56校から回答が得られ(回答率25.2%),教育の難しさとして,教員数や経験の不足が挙げられた.80%以上の施設で同ガイドに基づく教育が行われていたが,「項目7:質改善手法による医療の改善」は少数であった.教育方法は,講義形式が多く,ロールプレイなどは少なかった.記述回答では現場のリアリティを伝える難しさがある一方,不安の助長に対する弊害が指摘された.3年制の医療安全教育の充実には,専門科目領域や実習病院との分担・連携,医療機関の協力,教員の意識向上が必要と考えられる.
  • 熊田 恵介, 境 浩康, 清水 雅仁, 馬場 尚志, 村上 啓雄, 名知 祥, 小倉 真治
    2021 年16 巻3 号 p. 365-371
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    岐阜大学医学部附属病院では複数の職員が新型コロナウイルス感染患者となり急遽これらを受け入れ対応することとなった.当該患者の受け入れ,院内感染対策の徹底,全外来診療の中止,濃厚接触者調査,マスコミ対応に対し災害に準じ指揮命令系統を確立し,適宜BCPに基づき対応した.準備・計画段階から危機感を組織全体として共有すること,次々と発生する緊急対応事案の発生を踏まえ拡張性・柔軟性を考慮した組織構築,BCP策定,業務量とのバランスを考慮した業務の集約化ならびに応援体制の確立が重要である.医療機関の規模ならびに背景により違いはあるもコロナ感染は全医療機関の問題として捉え,危機意識の共有のもとさらなる充実が求められる.
  • 北川 裕也, 鈴木 千波, 田中 悠季, 若松 遼介, 佐藤 加菜, 髙畠 弘樹, 中野 裕介, 小原 秀治, 小原 郁司, 樋浦 一哉
    2021 年16 巻3 号 p. 372-378
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    調剤過誤の防止に努めることは,薬剤師にとって重要な責務である.しかし十分な確認の後,交付した薬剤であっても患者より薬剤過誤に関する問い合わせがある.この場合,交付後であり薬剤過誤の正否の確認の術が乏しい現状にある.そこで,調剤薬監査画像記録システムの導入を行った.また,調剤過誤事案の現状と記録システムが及ぼす薬剤師への心理的影響についても調査した.過誤の訴えは133件あり,内102件は正しく調剤されていることが確認できた.心理面では薬剤監査を撮影範囲内で行わなければいけないことによる緊張感や煩わしさが導入後に増加したが,調剤過誤の訴えに対する対応に安心感が増加した.今回構築した記録システムは事実に基づいた対応を可能とし,薬剤の適正使用に寄与できると考えている.
  • 小久保 吉恭, 杢代 馨香, 山崎 隆志
    2021 年16 巻3 号 p. 379-384
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    1年間に報告されたインシデントレポート3,469件を分析した.職種別では,看護師2767件,医師357件で全体の90%を占めていた.職員一人当たりの報告件数は,看護師3.6件,医師全体では1.5件であったが,診療科別では,麻酔科8.5件,整形外科6.2件,心臓血管外科5.7件,循環器科2.7件で, 1~2件の診療科が11科,1件未満が9科,報告がなかった診療科が11科あった.医師からの報告では合併症(39.6%),医原性疾患(7.0%)など治療に直接関係する報告の比率が高かったのに対し,看護師からは,転倒(16.5%),チューブトラブル(16.3%)など患者側の要因も関与すると考えられる報告の比率が高かった.患者身体影響度別では,看護師では何らかの介入を要する中等症以上の報告が18.6%であったのに対して,医師では中等症以上の比率が52.8%であった.診療科別では,麻酔科では軽傷例の比率が高かったが,外科,心臓血管外科では重傷例の比率が高かった.
学術集会報告
  • 中島 和江, 田村 利枝, 北村 温美, 西澤 延宏, 有澤 礼子, 望月 美記代
    2021 年16 巻3 号 p. 385-394
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/09/07
    ジャーナル フリー
    Patient Flow Management(以下PFM)とは,予定入院患者に対し,入院前の外来時点で,身体・精神・社会面のリスク因子や課題に関する情報収集を行い,多職種で先行的に介入を行うことで,入院医療の安全性と質を高めるとともに,円滑な在宅ケアへの移行を促すものである.病院経営上も,在院日数の短縮や稼働率増加などによるメリットが期待されるものであるが,「令和元年度医療安全・質向上のための相互チェック」での調査によると,多岐にわたる項目の情報収集を,特定の職種や人員で担っている病院も多く見られた.そこで本セッションは,先進的にPFMを構築し,対象患者を拡大してきた3病院から,効率的かつ効果的なPFM運用のためのキーコンセプトを学び,全国で共有することを目的として企画された. 3病院のご発表から,効率的で効果的なPFM推進のためのキーコンセプトが複数示されたが,特にタスクシフティングと権限委譲により各職種の専門性を発揮させる仕組みをうまく構築することで,全ての職員にとって効率的でやりがいのあるシステムとなることが重要と考えられた.そのためには,標準化や自動化等により業務整理を行うこと,リスクを層別化し必要性に応じた介入密度とすること,介入の効果を実感できるようフィードバックの機会を設けること等が有用と考えられた.今後は,経営アウトカムだけでなく,退院後の生活の質までも含めた,PFMの効果を質的に評価することも大きな課題である.
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