医療の質・安全学会誌
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18 巻, 2 号
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原著
  • 神田 友江, 大塚 崇史, 田中 万喜幸, 佐脇 彩夏, 西村 未紗, 木村 美智男, 吉村 知哲
    2023 年18 巻2 号 p. 121-128
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー
    目的:術前中止薬のスクリーニングに薬剤師が関わることの有用性は多く報告されているが,具体的にどのような点で有用であるかは示されていない.本研究では,大垣市民病院の入退院支援センター(PFM)における術前の休薬指示への介入率と手術延期による経済的損失から薬剤師の有用性を検証した.

    方法:PFMで薬剤師面談を行った外科の患者(907名)を対象とし,介入内容,要因別における休薬指示への介入率,手術延期による経済的損失について後方視的に調査した.

    結果:術前中止薬214剤のうち48件(22.4%)の休薬指示への介入が実施され,その採択率は29/48件(60.4 %)であった.薬効別の介入率(介入件数/対象薬剤数)は,プロスタグランジンI2誘導体等のその他抗血小板作用薬が16/41件(39.0%,P=0.007),選択的エストロゲン受容体調整薬(Selective estrogen receptor modulator: SERM)が6/9件(66.7%,P=0.005)であった.その他の要因における介入率はいずれも差がなかった.薬剤師による介入がなかった場合の手術延期による経済的損失は2,226,260点と試算された.

    考察:術前中止薬のスクリーニングに薬剤師が介入することにより,入院後の手術延期を防止するとともに病院の経済的損失を回避していることが示された.特に,その他抗血小板作用薬やSERMは,術前中止薬であるという認識が薄いため薬剤師の介入率が高いことが明らかとなった.
  • 山田 紀昭, 竹内 元気, 掛谷 英紀, 伊藤 誠
    2023 年18 巻2 号 p. 129-139
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー
    インシデントレポートの分析は,件数の集計や特出した事例の個別分析が主流である.通常,インシデントレポートには,事例の内容を示したテキスト文章があるが,これらのテキスト文書の分析方法は確立していない.本研究では,テキスト分析の深化を通じた現場の分析者の支援を目指し,自己組織化マップを用いて,インシデント要因の可視化に取り組んだものである.
    この研究は,A病院の2020年4月1日~2021年3月31日に提出されたインシデントレポート総数4505件を研究対象とした.本論文では,事例の具体的内容を入力したテキスト文書を用いて,自己組織化マップの手法を適用した.
    生成された自己組織化マップは,「薬剤(処方)」「薬剤(内服・点滴)」「胃管自己抜去」「点滴自己抜去」「採血・検査」「同意書の不備」「ユニフォームに薬が入っていた関連」の7つに分けられた.他方,通常のインシデント分析で頻出する「転倒・転落」が抽出されなかった.このように,従来の分析では得られない傾向を見出すことができた.こうした傾向が得られたのは,自己組織化マップが,頻出単語をベクトル化するという分析の特徴から,類型パターンと非類型パターンを分類することに起因すると考えられる.
    本研究の結果から,自己組織化マップを用いたインシデント要因の可視化は,医療の複雑な状況と膨大な情報を整理し客観的に示すことに貢献できることが示唆された.
  • 前原 宏美
    2023 年18 巻2 号 p. 140-147
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー
    目的:看護師の他者意識の示し方や共感の指向性が彼らのコミュニケーションスキルに及ぼす影響について明らかし,看護師と患者の人間関係構築のために必要なコミュニケーションスキルを検討する.
    対象と方法:A県総合病院勤務のクリニカルラダーⅡ以上の看護師を対象にENDCOREs,他者意識尺度,MESからなる質問紙調査を実施した.ENDCOREsの下位尺度を従属変数,他者意識尺度およびMESの下位尺度を独立変数とする重回帰分析を実施した.
    結果:他者意識尺度の〔内的他者意識〕はENDCOREsの全ての下位尺度に,MESの〔視点取得〕は【自己統制】,【解読力】,【他者受容】,【関係調整】それぞれ有意な正の標準偏回帰係数を示した.一方,〔被影響性〕は【表現力】と【解読力】に有意な負の標準偏回帰係数を示した.
    結論:看護師がスキルフルにコミュニケーションできるためには,〔内的他者意識〕と〔視点取得〕の姿勢を心掛け,〔被影響性〕を抑えることが重要であることが明らかとなり,看護師と患者の人間関係構築のために必要なスキルであることが示唆された.
  • 新谷 拓也, 北村 温美, 兼児 敏浩, 武田 理宏, 門脇 裕子, 奥田 真弘, 中村 京太, 中島 和江
    2023 年18 巻2 号 p. 148-157
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/01/31
    ジャーナル フリー
    目的:免疫抑制・化学療法によるB型肝炎再活性化予防のため,治療前スクリーニングが推奨されているが,その実施率は高くないことが国内外で報告されている.スクリーニングを促すための安全対策は施設毎に様々である.国立大学病院での取り組み状況と課題を共有し,各施設の安全対策に活かすことを目的に調査を行った.
    方法:2020年11月に国立大学附属病院全42施設を対象に,免疫抑制・化学療法に伴うB型肝炎再活性化の予防対策に関して,具体的な取り組み,対象薬,課題等についてアンケート調査を行った.
    結果:回答のあった41施設のうち35施設(85%)が安全対策を実施しており,「医師への教育」「薬剤師の処方監査」が24施設(69%),「処方時のアラートシステム構築」が17施設(49%)で実施されていた.アラートシステムの対象薬にステロイドを含んでいる施設は4施設のみであった.抗体検査等の有効期間は,未設定,または半年から5年と施設間で大きく異なっていた.システム構築の課題として,技術的な困難さのほか,ガイドライン上の対象薬が適用される疾患,投与量,期間が多様であるためシステムでの一律の制御が困難であること,アラートへの反応性の低下が懸念されることなどが挙げられた.
    結論:B型肝炎再活性化予防対策として,医師教育と薬剤師監査が広く実施されていた.アラートシステム構築の際にはアラートの基準や表示方法等について十分な検討が必要である.
学術集会報告
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