医療の質・安全学会誌
Online ISSN : 1882-3254
Print ISSN : 1881-3658
ISSN-L : 1881-3658
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 田中 明日花, 赤瀬 智子
    2024 年19 巻2 号 p. 127-144
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
    目的:周麻酔期看護師としての医療安全対策を見出すために,周術期の薬剤管理における『意識』と『行動』を明らかにする.
    方法:神奈川県内に所属する周麻酔期看護師を対象としインタビューを実施した.逐語録から,コード,サブカテゴリー,カテゴリーに分類した.
    結果:対象者は7名であった.コード239個,サブカテゴリーが80個,カテゴリーが13個抽出された.周麻酔期看護師は,術中の麻酔管理で薬剤を取り扱う場合,「意識」については,手術室は『病棟のような安心する薬剤管理のチェック機構が少ないと認識する』中で,『看護師の時よりも心理的負担・責任感が強くなると認識(しようとする)』し『ジェネラリスト看護師の時以上に確認作業を行い』『麻酔科医と協働しよう』としていることが示された.『自身の傾向・特徴を捉えアピールしよう』とし『麻酔管理に必要な薬剤について積極的に学ぼうとする』ことや『過去の経験を活かし,推測しながら管理しようとする』ことを図り『専門性をもって対応しよう』としていることが明らかとなった.また一方で,「慣れ」が生じないようにするために『経験に頼らないように』取り組んでいることも明示された.「行動」については,『ジェネラリスト看護師の経験を活かす』ことを基軸に『さまざまな確認方法を用いる』ことと『物品に工夫を行う』ことで『専門性を活かした判断・意思表示を行っている』ことが示された.
    考察:麻酔期看護師は限りあるリソースの中で,各々の所属する施設で専門的な知識や技術を持ち合わせながら,日々大きな責任感や役割に耐え,高度な実践を展開している.今後は報告しやすい文化を醸成しながら,薬剤管理における人間工学に基づくシステムを構築していく必要性がある.今まで以上にチーム医療やノンテクニカルが求められるといえる.また一方で「慣れ」に甘んじることなく,高度実践家として日々自律した役割を果たせるよう精進する姿勢が必要である.
  • 髙橋 克之, 松野 純男, 栗栖 千幸, 北小路 学, 大鳥 徹, 安酸 建二
    2024 年19 巻2 号 p. 145-155
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
    目的:医療機関の新規患者の獲得や患者の継続受診は安定的な病院経営のための最重要課題であるため,病院推奨意向は病院経営にとって重要である.そこで本研究は,独立行政法人国立病院機構が2015年~2019年に実施した外来患者満足度調査の結果データを用いて,病院推奨意向に影響を与える要因をステップワイズ法(変数増減法)による重回帰分析により検討した.
    方法:解析対象病院数は109病院(延べ537病院)であった.病院推奨意向に影響を及ぼす要因として「初受診時の不安」,「病院の印象」,「医師の技術や知識」,「治療・処置」,「診察室の環境」が抽出された.具体的な病院推奨意向向上の方策を探索するために,さらに重回帰分析により検討した.
    結果:病院推奨意向に影響を与える要因として,以下の項目が挙げられた: "初診時に不安を感じた(初診時の不安) ", "この病院に悪い印象を持った(病院の印象) ", "医師の技術・知識に不安を感じた(医師の技術・知識) ", "今日受けた治療・処置に満足していない(治療・処置) ", "診察室の環境に不満がある(診察室の環境) ".一方, "今日受けた点滴・注射・投薬・処方に満足していない(点滴・注射・投薬) ", "待ち時間に不満がある(待ち時間) "は,病院推奨意向に影響する大きな要因ではなかった.
    結論:病院推奨意向を向上させるためには,患者自身が疾病の治療効果を実感するための医師の医療知識・技術だけでなく,患者に寄り添ったコミュニケーション能力の向上およびプライバシーを配慮した患者目線の診察環境の整備が必要であることが明らかとなった.
報告
  • 木下 千紗都, 大貫 あけみ, 河副 みゆき, 藤谷 萌, 澤田 愛, 生見 祥子
    2024 年19 巻2 号 p. 156-164
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究は,個人防護具(PPE)を着用しながらCOVID-19患者に接する看護職の身体的負担の実態を明らかにすることを目的とした.COVID-19患者専門病棟に所属する看護職員を対象に,グリーンゾーン,レッドゾーンにおける血圧,脈拍,呼吸困難感の変化を調査した.
    レッドゾーンの入室時間2~3時間で-37~+44mmHgの収縮期血圧の変動が見られた.看護業務別では,業務に関係なくグリーンゾーン-レッドゾーン間で-41~+44mmHgの収縮期血圧の変動が見られた.また年代別では40歳代,50歳代においては-41~-35mmHgの収縮期血圧下降が見られた.血圧や脈拍の変動に関わらず,PPE装着下での業務が何らかの身体的負担を引き起こす可能性がある.また,PPE着用下のレッドゾーン業務は入室2~3時間が最大許容範囲と考える.
    労働者の安全と健康の確保のために,機能別などの業務改善が必要である.
  • 上間 あおい, 北村 温美, 武田 理宏, 田中 壽, 中村 京太, 中島 和江
    2024 年19 巻2 号 p. 165-173
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
    国立大学病院長会議は,画像診断レポートの確認や対応の遅れを回避するため,注意を要する症例に,読影時にフラグを付与し依頼医に通知する等の安全対策を各会員校で整備する必要性を提言している.令和3年度に国立大学病院等(51施設)を対象として調査したところ,33施設が重要所見フラグを導入していた.フラグの対象を「24時間以内に対応が必要な重要所見(緊急)」と「月単位で対応が必要な重要所見(準緊急)」,及び「当該所見が検査依頼目的に含まれる(依頼医が予期)」,「含まれない(予期していない)」の別に分類すると,緊急所見に対し,依頼目的に含まれる場合は18,含まれない場合は31施設が,準緊急所見に対し,依頼目的に含まれる場合は9,含まれない場合は31施設がフラグを付与していた.また,これらの組み合わせは5通りであった.通知機能としてのフラグの有用性,フラグの効果的な活用方法等を継続的に検討,評価していく必要がある.
解説
feedback
Top