目的:医療機関の新規患者の獲得や患者の継続受診は安定的な病院経営のための最重要課題であるため,病院推奨意向は病院経営にとって重要である.そこで本研究は,独立行政法人国立病院機構が2015年~2019年に実施した外来患者満足度調査の結果データを用いて,病院推奨意向に影響を与える要因をステップワイズ法(変数増減法)による重回帰分析により検討した.
方法:解析対象病院数は109病院(延べ537病院)であった.病院推奨意向に影響を及ぼす要因として「初受診時の不安」,「病院の印象」,「医師の技術や知識」,「治療・処置」,「診察室の環境」が抽出された.具体的な病院推奨意向向上の方策を探索するために,さらに重回帰分析により検討した.
結果:病院推奨意向に影響を与える要因として,以下の項目が挙げられた: "初診時に不安を感じた(初診時の不安) ", "この病院に悪い印象を持った(病院の印象) ", "医師の技術・知識に不安を感じた(医師の技術・知識) ", "今日受けた治療・処置に満足していない(治療・処置) ", "診察室の環境に不満がある(診察室の環境) ".一方, "今日受けた点滴・注射・投薬・処方に満足していない(点滴・注射・投薬) ", "待ち時間に不満がある(待ち時間) "は,病院推奨意向に影響する大きな要因ではなかった.
結論:病院推奨意向を向上させるためには,患者自身が疾病の治療効果を実感するための医師の医療知識・技術だけでなく,患者に寄り添ったコミュニケーション能力の向上およびプライバシーを配慮した患者目線の診察環境の整備が必要であることが明らかとなった.
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