岡山市における人口の社会増加の大部分は, 岡山県内の市町村からの流入超過であった。本稿の課題は, (1) 流入者の出身地の人口規模は, その人が岡山市の社会階層上の地位達成にどのような効果を与えているか, (2) 流入者は, 岡山市の社会階層におけるどの地位を占めるかを, 解明することである。岡山市に住む60歳未満の既婚女性を対象に調査を実施し, 次の3つの知見を得た! (1) 出身地の人口規模が大きいほど, 流入者は学歴と夫の職業威信スコアで高かった。そして, 出身地の人口規模は, 流入者の夫の職業に直接的な効果を及ぼしていたけれども, 本人の学歴に対する効果はそうではなかった。 (2) 人口規模の最も大きい中・大都市出身の流入者は, 学歴という階層変数で岡山市の上層階層を形成するのに対し, 人口規模の最も小さい町村出身の流入者は, 夫の職業という階層変数でその下層階層を構成する傾向があった。ただし, 岡山市よりも人口規模の小さい小都市出身の流入者は, 岡山市出身者と, いずれの階層変数でも違いはなかった。これは, 小都市で10代の一番長い期間をすごした人々のうち, 教育・職業アスピレーションで特に高かった人々が岡山市へ流入したからであると, 説明できる。 (3) 大都市での調査結果から帰納された, 都市流入と社会移動に関する仮説が, 日本の県庁都市でも部分的に妥当することを, 以上の結果は示している。
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