社会学評論
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55 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 積極的労働市場政策の内在的ジレンマをめぐって
    樋口 明彦
    2004 年 55 巻 1 号 p. 2-18
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    本稿では, ヨーロッパの社会政策において注目されている社会的排除アプローチを考察して, このアプローチが現代社会における新たな不平等の理解にとって有効であることを論じる.
    最初に, 社会的排除に関する先行研究を検討して, 貧困から社会的排除に至る社会科学上のパラダイム変化, および社会的包摂という新たな政策的フレームワークの導入という2点を指摘する.同時に, 社会的排除アプローチに対する根本的な批判に応じて, 社会的包摂の内在的ジレンマを吟味する.
    次に, 現在EU諸国が最優先している積極的労働市場政策が抱える内在的ジレンマに焦点を当て, その問題点を検討する.その問題点とは, 失業者に有償労働を強いる政策が彼らをいっそう脆弱にするという逆説的状況を指す.そのうえで, 地域コミュニティにおける社会的ネットワークの構築と文化的アイデンティティへの支援が, そのような経済的側面における破壊的影響力の緩衝材として機能している様子を示す.さらに加えて, 権利要求運動としてのシティズンシップが, あらゆる人々に対する社会的包摂にとって必要であることを指摘する.
    最後に, 複層的メカニズムとしての社会的包摂こそが, グローバリゼーションが進展して, 人々が日常生活のなかで多様なリスクを抱える不安定な社会において, もっとも有効なフレームワークであることを結論づける.
  • エスニシティのナショナルな条件
    南川 文里
    2004 年 55 巻 1 号 p. 19-32
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    本稿は, アメリカ合衆国におけるエスニシティと人種を, そのナショナルな文脈を考慮することで関係的な概念として再定義するものである.ポスト公民権期のアメリカでは, 文化多元主義と多文化主義という2つの潮流のもと, 対抗的なエスニシティ論と人種論が展開されてきた.その過程で, 社会構築物としての「人種」が, 不平等な社会構造を再生産する過程を社会学的に分析する人種編成論が登場したが, エスニシティと人種の概念的な関係を条件づけるナショナリズムの存在について十分議論してこなかった.
    そこで, 本稿は, アメリカの両義的なナショナリズム (市民ナショナリズム/人種ナショナリズム) が, エスニック集団の形成にどのように作用するかを考察し, 「人種エスニック編成」という枠組を提示した.人種エスニック編成における集団化とは, アメリカの市民ナショナリズムを土台として, (1) エスニック化 (「ホームランド」との結びつきにもとづく水平的な差異化), (2) 人種化 (人種ナショナリズムのルールにもとづく垂直的な序列化) という2つの過程によって条件づけられていることを示した.
  • 川辺川ダム水没地地域社会を事例として
    植田 今日子
    2004 年 55 巻 1 号 p. 33-50
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    近年の公共事業見直しのうごきと自然環境への意識の高まりから, 川辺川ダム (熊本県) はその必要性を厳しく問われる公共事業である.頭地地区を含めた五木村, 相良村 (一部) はこれまで36年間, 大挙離村や地域社会内部での対立を経験しながら水没予定地域としてありつづけてきた.五木村は現在ダムの「早期着工」を訴える立場にある.なぜ周囲で声高に事業の必要性が問われる中, 自らをさんざん苦しめてきたダムの早期着手を訴えなければならないのだろうか.本稿では, 水没予定地である五木村頭地地区でのフィールドワークをもとに, ダム計画に対して3つの異なる立場をとってきた五木村の水没3団体が, いかにして自らの団体を他団体と差異化しつつ, 「早期着工」という総意を成立させているのかを明らかにすることで, 「早期着工」表明の論理に近づくことを目的とした.
    これまで, 公共事業によって損害を被るはずの人びとが事業の早期着手を訴えるということは, 自己利益の最大化として功利主義的に捉えられることが多かった.しかし「早期着工」の意思表明には, 公共事業が生活の場における諸関係にもたらしてしまう意味を克服しようとする遂行的意味があった.それは, 世帯ごとの意思決定を配慮・尊重するがゆえに, むらがむらとして成立しないという状況において実践された, むらの生成という言遂行的な意志表明であった.
  • ホッブズの支配論のパースペクティブ
    池田 太臣
    2004 年 55 巻 1 号 p. 51-67
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    支配は, 政治学および社会学において, 中心的なテーマのひとつであった.けれども近年, この支配についての関心は衰退し, その概念の有効性も疑われつつあるように思われる.この'支配概念の有効性の衰退'ともいえる現象は, 一体, いかなる理由によるものであろうか.
    この問いに答えるためには, なによりもまず, 支配研究の源流にさかのぼる必要があると思われる.というのも, 支配概念の導入の初発の関心を明らかにすることではじめて, その概念の社会科学上の存在意義を解明することができるからである.
    今述べた “支配の社会学の初期設定” を探るために, 本稿では, トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』を取り上げる.なぜなら, この書におけるホッブズの議論こそが, 支配の社会学の嚆矢であると考えることができるからである.
    上記の関心にしたがって, 本稿では, まずホッブズの議論の特徴として2つの点を指摘する.これらが, “支配の社会学の初期設定” である.さらに, このような設定を可能にしたホッブズの思想的前提を, 人間観と社会観との2つの観点から明らかにする.この指摘によって, ホッブズの議論の限界と可能性が明らかになると同時に, ホッブズ以降の支配論ないし支配の社会学の歴史を整理するための足かがりが得られる.そして最後に, 議論の簡単なまとめと今後の研究の展望について触れることにしたい.
  • 小熊 英二
    2004 年 55 巻 1 号 p. 69-70
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
  • 武田 尚子
    2004 年 55 巻 1 号 p. 71-72
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
  • 早川洋行著『ジンメルの社会学理論-現代的解読の試み』
    那須 壽
    2004 年 55 巻 1 号 p. 73-75
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 秀樹
    2004 年 55 巻 1 号 p. 75-76
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
  • 2004 年 55 巻 1 号 p. 78
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
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