社会学評論
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57 巻, 2 号
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  • 大畑 裕嗣, 木下 康仁
    2006 年 57 巻 2 号 p. 220-222
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
  • 深化, 展開, そして構想力
    野宮 大志郎
    2006 年 57 巻 2 号 p. 223-239
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    社会運動論と社会理論との関係はどのようなものか, 運動論が社会諸理論にいかなる影響を及ぼしうるか.本稿はこの問いに答えるために, 社会運動論と合理的選択理論, 運動論と国家論・革命論また社会科学論, そして運動論とグローバリゼーション論との交渉過程を検討する.検討の結果, 社会運動論は社会理論を深化させ, その展開に寄与し, また社会理論の主体的な構想を促す力となると論じる。この検討結果は, 社会運動論と社会理論という2つの学問領域の問で相互に独立な関係と包含関係の2つが設定可能であること, 換言すれば社会理論と社会運動論は相互に独立的・外在的である場合と, 社会運動現象や運動論そのものが社会理論の構成要素の一部または全体となる場合があることを示唆する.本稿の最後に, 運動論と社会理論との関係の歴史的変遷に対する解釈を提示する.
  • 中断された「公共性」論議と運動史的文脈をつなぎ直すために
    道場 親信
    2006 年 57 巻 2 号 p. 240-258
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    本稿では, 社会運動史の視点から1960-70年代の「市民運動」「住民運動」がもっている歴史的な意味を再検証するとともに, それが近年の「市民社会」論に対して不可欠の問題提起を含んでいることを明らかにする.その際, 近年の社会運動研究の一部に存在する, 運動史の誤った「段階論」的理解を批判的に取り上げるとともに, 同時代の論議の場に差し戻して検証することで, その “誤り” が, 「公共性」「市民社会」を論じるあり方にもバイアスを与えていることを論じていきたい.その上で, これらの誤解の背後には, 社会運動理解の文脈の歴史的な断絶, 論議の中断が存在することを論じる.1960-70年代の社会運動がもっていた運動主体をめぐる論議の蓄積は, 今日の社会運動, また「市民社会」や「公共性」のあり方をめぐる論議の中で正当な評価を得ているとは必ずしも言い難い.この点につき本稿では, 当時の議論の水準を, とりわけ「住民運動」と呼ばれる運動の展開に即して再確認するとともに, 「地域エゴイズム」というキーワードを手がかりに, 運動文脈の適切な理解を妨げる認識論的な問題が当時と今日を貫いて存在していることを明らかにしたい.
  • 政策形成における社会運動のインパクトと「協働」政策の課題
    牛山 久仁彦
    2006 年 57 巻 2 号 p. 259-274
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    社会運動は, 社会をどのような方向に動かすのかを賭けて, さまざまな集団が行う集合行為である.社会運動にはさまざまな主体や課題が存在し, それぞれが自らの運動に「公共性」があることを主張して政府や他の集団と競い合う.政府が従来独占してきた「公共性」は, 「新しい社会運動」の登場に象徴的なように, 大きく揺らいでおり, それが財政危機や過度の規制による「政府の失敗」によって加速している.「市民的公共性」の概念提示に代表されるように, もはや「公共性」は政府と社会運動のどちらのものかを競い合うものとなっているのである.一方, 「公共性」を実現するために政府が実施する施策として考えられてきた公共政策も, 同様の課題に直面している.公共政策の担い手が多様化し, NPOなどの市民活動が, 政府と共に公共政策のあり方を検討する役割を期待されている.近年, 日本の行政, とくに自治体行政において課題となっている「協働」は, その意味で重要性を高めているが, 一方でそれらが体制内化され, 行政の都合で行われているという批判も少なくない.そこで, あらためてそれらの活動を「新しい社会運動」論の視点から再構築することが求められる.「協働」を社会学の議論の中で用いられてきた「対抗的分業」の視点から問い直し, 政府と民衆が厳しい緊張関係の中で「歴史を作り出す行為」として「協働」を再構築する必要があることを本稿は論じたものである.
  • NPOと社会運動の相補性をめぐって
    安立 清史
    2006 年 57 巻 2 号 p. 275-291
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    米国のシニアムーブメントは, 1960~70年代にかけて社会運動として大きな成功を成し遂げた.その理由は, 社会運動, 労働組合や政治団体, そしてNPO等の連携による運動の相補性と相乗性があったからである.とくにAARPという民間非営利組織 (NPO) が重要な役割を果たした.AARPは, 会員数3,600万人を擁する米国最大のNPOであるが, 高齢者へのグループ医療保険の提供によって成功し, シニアムーブメントと連携しながら「年齢を理由とした強制退職制度」を「年齢差別 (エイジズム) 」として撤廃させることに成功した.AARPは, 高齢者への持続的継続的なサービスを生産し, それが会員数を増大させ, 高齢者の代表組織としての正統性を獲得し, さらに潤沢で独立性の高い財政基盤がロビイストや専門職を多数雇用することを可能とさせ, 高齢者政策への影響力の増大と目標の達成をもたらした.しかしNPOは, 直接的な政治への関与を制限されており, 社会運動との連携は相互に有効であった.このような社会運動とNPOとの連携と相補が成立する条件は, 米国だけのものではない.急激な高齢化とそれに起因する社会問題はグローバル化している.非営利組織の制度が整備されつつある国々では, どこでもこのような高齢者の当事者組織が, NPOや社会運動の形で出現してもおかしくない.その場合に, 新しいアクターとしてのNPOに着目した社会学的研究が必要となるであろう.
  • 「男女共同参画」をめぐる状況を通しての一考察
    牟田 和恵
    2006 年 57 巻 2 号 p. 292-310
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    本稿は, 日本におけるフェミニズムの第2波以降の運動の歴史を振り返りつつ, 「男女共同参画」をめぐって近年生じている諸問題を考察し, その作業を通じて, 女性運動, フェミニズムの可能性と「社会運動」の現代的意味を探る.
    ウーマンリブ運動と国際婦人年以降の運動は, 理念・方法において互いに乖離し葛藤に満ちたものであったにもかかわらず, 現在の理解では「第2波」と一括されがちだが, その背景にはフェミニズムの政治性の変容があった.男女共同参画社会基本法以降に生じているジェンダーフリー・バッシングは, 一面では, そうしたフェミニズムの政治性, 端的に言えば, 脱政治化が招来したものであったと言える.
    フェミニズムの運動は, マイノリティと権力の関係を考える上での試金石でもある.その歴史は, 単線的な進化論図式で運動を捉えることの誤りを教え, 単一の「社会運動」, 一方向の「解放」はありえないことを示す.フェミニズムが多元的・多層的で矛盾と葛藤に満ちたものであるということそのものが, フェミニズムの「新しい社会運動」としての可能性を示している.
  • 不登校, ひきこもり, ニートをめぐる民間活動
    荻野 達史
    2006 年 57 巻 2 号 p. 311-329
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    「社会運動の今日的可能性」を探るために, 後期近代における「個人化」の趨勢に注意を向けた場合, 2つの問いが導かれる. (1) 個人化の状況は, 理論的にみて, いかなる社会的運動を要請しているのか (2) 経験的には, その要請に見合う運動が展開されているのか本稿はこれらの問いに答える試みである.
    第1の問いに対しては, 個人化に関する議論に, Honneth (1992=2003) の承認論を合わせて検討することで, Cornell (1998=2001) のいう「イマシナリーな領域」への取り組みが求められることを導き出す.すなわち, 自己アイデンティティの構築に重い負荷をかける個人化状況は, ときに著しく損壊した自己信頼の再構築と, 志向性としての「自己」を「再想像」するための時空間を創出する取り組みを要請するこの課題は, Giddens (1991=2005) のライフ・ポリティクスの議論でも十分に意識化されていないため, 本稿では “メタライフポリティクス” として定位した.
    第2の問いに対しては, 1980~90 年代以降に注目を集めるようになった「不登校」「ひきこもり」「ニート」といった「新たな社会問題群」に取り組んできた民間活動に照準した.とくにそれらの活動が構築してきた「居場所」の果たしている機能とそのための方法論を検討し, 理論的課題との整合性を確認した.また, 同時に運動研究史上の位置づけを明確にした
  • 社会運動を接地させる地域社会のメディア環境
    松浦 さと子
    2006 年 57 巻 2 号 p. 330-347
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    商業性や政治権力からメディアのガバナンスを取り戻そうとするメディアの民主化運動は, 欧米のみならずアジア各国にも及んでいる.
    その実践は, インターネット等の電子メディアの普及とも並行し, 市民ジャーナリズムがかつてミニコミでは得ることができなかった影響力を拡大している.
    運動当事者は電子メディアを活用し, マスメディアのエディター・エイドに過度に依存することなく, 独自に活動の現場でデータベースを形成し, 議論や交渉の資源としてそれらの情報を有効に蓄積している.しかし, 社会運動が制度化された法人の形態をとるようになると, それに伴い経済的な持続可能性や公開性が要請され, 委託や助成での行政や企業との協働関係と同時に, そこに依存しないマネジメントが必要になる.そのためにまず顔の見えるコミュニティに根ざした支持が要請されるのではないか.
    メディアの民主化が, メディアへの市民の主体的参加だとするならば, それを持続する装置としての市民メディア活動こそがメディアの民主化運動だと言える.その持続装置のために少額でも多様で多数のコミュニティの人々からの経済的支援とさまざまな協力, 支持が必要である.
    神戸で開催されたFMわぃわぃ10周年記念の一連のシンポジウムから, 大資本に頼らず地域社会に依拠した経済循環を持つメディアの自立性の確保こそが日本におけるメディアの民主化運動となっている状況を報告する.そして, コミュニティの日常的な多様性確保のための情報回路の維持について論考する.
  • 新潟県 (旧) 巻町における2つの住民投票への対応の差異を通じて
    渡辺 登
    2006 年 57 巻 2 号 p. 348-368
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    グローバリゼーションの進展とそれに対応する新自由主義的改革=「構造改革」の一環としての行財政改革を目的とした「平成の大合併」によって, 地域社会でのさまざまな共同性, 協働性が溶解しつつある現状と向き合う中で, 一体私たちは何を語り得るのか.本稿では, 原発建設の是非を問う全国で初の住民主導による住民投票を実施して原発建設計画を白紙撤回に導き, 今回の「平成の大合併」では行政主導の住民投票で新潟市への編入合併を選択した新潟県 (旧) 巻町を事例とし, 原発建設計画への住民投票運動において中心的な役割を果たした住民グループの主要メンバーへのインタビューを通じて得られた彼ら・彼女らの「語り」に着目することで, 以上への回答を試みた. (旧) 巻町の事例への検討を通じて, 地域におけるさまざまな人々の問題解決のための営為を彼ら・彼女らの語りから, 解釈し, 再構成し, 地域で紡ぎだされつつある, あるいはそのためにせめぎ合うさまざまな力の交錯の物語を丹念に描き出すことが重要であることはもちろんであるが, 特に確認すべきは, それぞれの人々の多様な捉え方, 位置づけかたを, 彼らの日常的営みからの活動に寄り添いつつ, その語りをコンテキストに沿いつつ再構成し, 関連づけ, 意味づけを行う作業を, 絶えず私たちの自明の前提を問い直しながら行うことが不可欠であるということである.
  • 〈多文化〉をめぐる社会変容の分析に向けて
    上藤 文湖
    2006 年 57 巻 2 号 p. 369-384
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    ドイツでは移民法成立に向け, 数年にわたり外国人の社会への統合が論じられるなか, たびたび〈多文化社会〉が論争となってきた.多文化社会を現実として肯定し外国人の統合を推進するのか, これを幻想として否定するのか.論争はこうした二重性をもっている.1980年以降ベルリンでは, 国家レベルに先行して文化的多様化が進行し, 外国人の包摂への取り組みとドイツ社会の変革を志向する政策が進んでいった.そして1989年以前には, 〈多文化社会〉はその現実が争われ, 東西ドイツの分断という政治的状況が, 現実としての〈多文化社会〉に対する肯定と否定双方を生んでいった.しかし東西ドイツが統合し大量の難民を受け入れた1990年以降, 現実として多文化が受容されはじめる.そして1998年の〈多文化社会〉論争では, 〈指導文化〉とされるドイツ文化と多文化の関係が論じられたが, 文化的多様性に対する一定の承認のもと, 文化的多様性の認知としての〈多文化社会〉から, どのような成員がどのような共通の基盤のもとで社会を形成するのかを問う〈多文化社会〉へと, その議論が変化したのである.ベルリンにおける〈多文化社会〉をめぐる議論は, 外国人によって社会が問われ変化していくことを示している.都市における〈多文化社会〉をめぐる葛藤は, 都市という空間の中で外国人と社会との関係が構築されていくプロセスの中に位置づけられる.
  • M.ブーバーの我-汝関係概念を媒介として
    飯田 卓
    2006 年 57 巻 2 号 p. 385-401
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は第1に, 社会学において十分に考察されてきたとは考え難い対象化, あるいは類型化という概念に焦点を絞ってA.シュッツの我々関係概念を再構成し, 伝統的な社会学理論が暗黙裡に観察対象に帰属させてきた, ないしは観察対象自体が有すると想定してきた主観-客観図式の一面性を呈示することにある.その際, ことに対象化概念の検討において, シュッツと同様に我々の領域を主題化し多くの見識を共有するM.ブーバーの我-汝関係概念が有効な手引きになる.
    第2に, 我々の領域という議論の射程にある2つの着想を呈示する目的がある.1つは, 社会的対象の構成と対象の社会的構成との区別を背景に, 人格生成と世界構成の相関がそこで開示される社会化に関する洞察である.今1つは, 社会科学の哲学的基礎づけの基調である.およそ社会科学は, 自明性を所与の前提として事象内容をともなった経験的命題を導こうとする.だがこのような事実学は, 前科学的生において中心的位置を占める前述定的位相を主題化しえず, したがってこの位相を考察の対象外として等閑視せざるをえない.
    果たして本稿では, 意識の志向的分析に定位することによって析出される生活世界の本質構造が, 事実学には原理的に接近不可能な「世界を構成する人間の諸可能性」を開示するだけではなく, まさしくそうした日常知と学知との「適合性を確保する形式的な準拠枠」たり得ることが確認されるだろう.
  • 短期居住意識の形成を中心に
    李 珊
    2006 年 57 巻 2 号 p. 402-418
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, これまで都市社会学のテーマである居住意識において注目されなかった短期居住意識に着目し, それと都市空間との関連について, 中国の大都市の空間再編を対象に検討することを目的とする.そのための課題は, 個人レベルの属性変数と地域レベルの満足度変数を統制し, 定住志向, 移住志向, 短期居住志向に対する居住地の効果を検討することである.データは, 遼寧省大連市の都心と郊外にある, 新旧4つの地域の住民を対象に行った質問紙調査 (N=745) より得た.ロジスティック回帰分析の結果, 先行研究における居住意識に対する住民の個人属性要因と地域満足度の効果仮説が検証されたほか, 地域のもつ空間的文脈の効果も明らかにされた.すなわち, (1) 加齢に従い, 住民の定住志向が強まり, 短期居住志向が弱まる. (2) 学歴や収入が低いほど住民の定住志向が強く, 学歴や収入が高いほど移住志向が強い. (3) 地域満足度が高いほど住民の定住志向が強く, 満足度が低いほど移住志向と短期居住志向が強い. (4) 新興都心住宅地に住む住民の短期居住志向が強く, 郊外地住民の定住志向が強い, といった傾向がみられた.結論として, 中国大都市の空間的再編が, 新興都心地への短期居住と郊外地への定住という居住意識の分化を生み出したのである.
  • 土橋 臣吾
    2006 年 57 巻 2 号 p. 419-435
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
  • 日本における数理社会学の展開
    数土 直紀
    2006 年 57 巻 2 号 p. 436-453
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    本稿ではまず, 日本における数理社会学研究の最近の動向を, 進化ゲーム理論やシミュレーションなどの台頭, および世代継承の観点から議論するさらに, 国際化と啓蒙活動の盾発化を中心に, この時期の数理社会学会の活動を概観し, そうした動向・活動の中から出てきた新しい流れを, テーマおよび方法の違いに気をつけながら, 可能な限り紹介する
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