社会学評論
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62 巻, 4 号
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特集・都市社会研究の新たなパラダイムのために
  • 渡戸 一郎, 谷 富夫
    2012 年 62 巻 4 号 p. 422-427
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
  • 戦後日本社会における広域システム形成の観点から
    山下 祐介
    2012 年 62 巻 4 号 p. 428-441
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    本稿では, 戦後日本社会における都市・村落の社会変動を, 社会移動および世代の観点から議論する. まず, 社会変動と社会移動の関係について確認したうえで, 日本社会の戦後史を地域間移動の観点から整理する. ここからは, 基本的には地域解体の様相が導かれるが, 他方で家族と世代という側面からこの社会史をひもとくと, 適応の側面も現れる. こうした議論のうえで, 戦後数十年の移動の展開結果として現れてきた, 広域システムの形成という観点から, 現在を位置づけてみたい. 社会移動を通じた広域システムの形成が, 今後さらにどのような社会変動へとつながるのかについては検討が必要だが, ここではこうした広域システムがもつリスクと, リスク回避の主体形成のあり方, そこで行われる意思決定過程について考察を行い, 21世紀の日本社会のあり方を, 現時点で可能な範囲で読み解く作業を行った.
  • 玉野 和志
    2012 年 62 巻 4 号 p. 442-458
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    本稿は, 都市社会研究における家族の位置づけとコミュニティ論の課題について明らかにすることを目的としている. シカゴ学派以来の伝統的な都市社会学は, コミュニティにおける具体的な社会過程と社会的ネットワークのあり方に分析の焦点を絞ってきた. しかしながら, さまざまな事情からそのようなコミュニティ論の中に正当に家族を位置づけることができないできた. また, コミュニティ論は定着的な人口のみを対象とし, 移民や都市下層の問題を十分に扱うことができないとされてきた. 他方, 新都市社会学による批判以降, 世界都市論や新国際分業論の興隆に見られるように, グローバル化の進展にともない, 都市研究は大きな転換を迫られている. 資本主義世界経済のもとにある都市社会研究において, 家族やコミュニティ論はどのような観点から扱われるべきなのか. 本稿では, コミュニティをたんにその内部において社会関係が集積している場所と見るのではなく, 資本主義世界経済の中で何らかの位置づけを与えられた都市地域において, 特定の質をもった産業や労働の集積が求められる空間として位置づけることを提案したい. そのことによって家族を, 求められる労働力の再生産を実現する単位として, あらためてコミュニティ論の中に位置づけることができるだけではなく, 家族を形成しないという側面も含めて, 移民や都市下層をコミュニティ論の中心に据えることが可能になると考えられる.
  • 中国地方の都市を事例として
    西村 雄郎
    2012 年 62 巻 4 号 p. 459-475
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    明治期以降, 日本資本主義は地域格差を活かすかたちで空間の再編成を行い, その蓄積を拡大させてきた. このプロセスのなかで日本社会の地域構造は, 後進国型の都市と農村という部門間分業の二重構造から, 先進国型の同質的な単一の生産体系に基づく地域間産業部門分業を反映した「中心-周辺」という統合構造へ, 転換してきた.
    グローバル化にともなう企業内国際分業が進むなか, 「中心-周辺」構造はいっそう強化され, 企業の立地戦略に影響を受けるかたちで「周辺」地域の産業構造や労働市場の再編が進んでいる.
    これを受け, 本稿では, 「1人当たり県民所得と財政投資受益・負担率」を指標として都道府県を6の地域クラスターに分類した. さらに, 社会統計データをもとに各クラスターの特性を明らかにし, 日本社会における「中心-周辺」構造 (=地域間格差) の特徴点を明らかにした.
    このうえで産業別職業データを用いて中国地方5県の市町村を7のクラスターに分類し, 各県の地域構造の特徴を示した. さらに, 地域格差クラスターで「周辺的農業地域」と「半周辺的工業地域」に位置づけられた島根県と広島県を取り上げ, 両県の地域政策の特徴を示すとともに, 島根県出雲市と浜田市, 広島県呉市と東広島市を事例として企業の立地戦略の動向によって地域再編を迫られている地方都市の姿を明らかにした.
  • 「平成の大合併」の地方政治を例に
    丸山 真央
    2012 年 62 巻 4 号 p. 476-488
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    2000年代以降, 都市研究で「国家のリスケーリング」論が影響力をもつようになっている. これは, グローバルやリージョナルな経済・政治統合が進むなかで国家諸機構の機能や影響力がその地理的スケール上の編成を変化させることに注目し, 都市やそのガバナンスの変化との関連を明らかにするものである. 「都市」は, 従来の都市研究でしばしば所与の空間的単位とみなされてきたが, 「地理的スケール上の編成の変化 (リスケーリング)」という発想を採り入れることで, それが資本や国家のスケール的編成と相互規定的に生産される地理的スケールのひとつであり, それゆえ今日, 「都市」というスケールをどう定義するかということそれ自体が「スケールの政治」の争点になっていることが明らかになる. 本稿では, この視角による都市研究の基本的な問題構制と成果を整理し, グローバル化とネオリベラリズムのもとでの都市ガバナンスの変化を捉えるのに有益であることを示す. そのうえで「平成の大合併」をめぐる地方都市の事例の簡単な分析を行う. 基礎自治体の合併は, 既存の「地域/都市」スケールのガバナンスを担う政治行政機構を再編して, 新たな「地域/都市」スケールでガバナンスを組織しなおす「国家のリスケーリング」のひとつだが, 事例分析から, 日本でこれがどのような政治経済的な力学で進められたのかを明らかにする. あわせてこの視角による都市研究の課題を引き出し整理する.
  • 再不安定化する都市部落
    妻木 進吾
    2012 年 62 巻 4 号 p. 489-503
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 大阪市の被差別部落A地区で実施した調査に基づき, この地域の再不安定化プロセスとその要因について検討することを通して, 貧困や社会的排除現象の解明と対応策の構想に, 地域という変数が欠かせないことを示すことである.
    貧困と社会的排除が極端に集中していたA地区の状況は, 長期にわたる公的な社会的包摂事業によって大きく改善した. しかし, 事業終結後, アファーマティブ・アクションとしての公務員就労ルートが廃止され, その時期が日本社会の雇用不安定化の時期と重なっていたこともあり, 若者の就業状態はふたたび不安定化した. 安定層の地区外流出と不安定層の流入という貧困のポンプ現象がこうした傾向に拍車をかけた.
    貧困層の集積は, それ自体がさらなる機会の制約となる. 被差別部落では, かねてから貧困が地域的に集積していたことによる履歴効果, そして当事者運動が引き出した公的事業の意図せざる帰結として, 個的な生活向上・維持戦略の定着を阻む生活文化が存在し, 達成モデルも限定されてきた. 地区内の「なんとかやり過ごす」ネットワークは事業終結と担い手の流出によりその機能を弱体化させている. 貧困・社会的排除は地域的に集積し, 地域的に集積したそれらはマクロな社会変動や政策, さらには階層・階級文化などには回収されない固有の機制として, 貧困のさらなる集積や深化をもたらしていく.
  • 名古屋市中区栄東地区のフィリピンコミュニティは何を変えたか
    高畑 幸
    2012 年 62 巻 4 号 p. 504-520
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    本稿は, グローバリゼーションに伴い新たに創出された地域性としての異種混交化 (町村2006) が進む地域において, そこで生まれる新しい社会問題や社会的緊張の緩和に移民女性たちが果たしてきた役割を明らかにすることを目的とする.
    名古屋市中区の繁華街・栄東地区は, 1980年代初頭からフィリピン人女性の就労が多かった場所である. ここでは, 1997年からフィリピン人の組織化が進み, 2000年には複数の組織が合同で事務所を借りて「フィリピン人移住者センター (Filipino Migrants Center: FMC)」を開設した.
    ここは, 繁華街における外国人コミュニティの中で, 日本社会の一番近くにある「窓」として機能する. そして彼女らはインナーシティの地域活性化への人的資源ともなってきた. その背景には, 移民女性に特徴的な「弱者性」が定住を促進したこと, また日本の政策・施策も「外国人の定住と多文化共生の地域づくり」の担い手を必要としてきたことがある.
    すなわち, 栄東地区においては, 剥奪的状況に置かれた移民女性と地元住民・行政との結合的関係がまず作られ, 彼らの「共生事業=窓」を通じて関係が保たれた. そして, 地域で移民男性が関わる問題が発生すると, その窓を利用して彼らと地域住民との対話が図られ, 地域が抱える新たな社会問題や社会的緊張への解決が試みられてきたと言えよう.
  • 五十嵐 泰正
    2012 年 62 巻 4 号 p. 521-535
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    多様性が価値として称揚される現代の都市においては, しばしば文化実践の当事者の疎外を伴いながらも, 周縁的な差異までも資源として動員されることが多くなった. しかし, 都市内部の多様性と都市間の多様性は二律背反の場合が多い現実の中で, 多文化都市における来街者を意識したまちづくりは, ある特定の地区に特定の文化的資源の選択的な集積を促し, 文化的次元でのゾーニングを志向しがちである. このような整理を踏まえたうえで, 本稿の後半では, そうしたゾーニングが困難な多文化的な商業地である東京都台東区上野2丁目地区における防犯パトロール活動に注目する. 執拗な客引き行為などを取り締まり, 良好な地域イメージを守ろうとするこの地区のパトロールには, 従来批判されてきたセキュリティの論理とコミュニティへの意識の接合を見出すことができる. しかし本稿では, パトロールをもっとも熱心に推進しているのが, 空間的ゾーニングに加えて時間的なゾーニング (住み分け) も難しい飲食店主層であることを明らかにしたうえで, セキュリティの論理ぐらいしかコミュニティ形成のきっかけとなりえない異質性と流動性がきわめて高い――すなわち高度に都市的な――地区では, 地域防犯への志向性こそが, 多様な人々の間にコミュニケーションのチャンネルを開く最大公約数的な契機であり, ゾーニング的な発想に基づいた排除的な多文化主義を克服しうる側面ももっていることを指摘した.
投稿論文
  • 子どもについての知識をめぐる行為の連鎖
    戸江 哲理
    2012 年 62 巻 4 号 p. 536-553
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    本稿は, ある会話的な手続きの解明を目指している. またこの作業を通じて, 親という立場がコミュニケーションにおいて実現されるプロセスを例証したい. この会話的な手続きは, 子ども (乳幼児) をめぐって親と親ではない者の発言によって遂行される, 行為の連鎖である. この行為の連鎖は, 呼応する2つの行為 (と付随的な行為) から構成されている. 連鎖第1成分を親ではない者が, 連鎖第2成分を親が遂行する. 連鎖第1成分の発言は親に対して, 子どもが現在この場で取った行動を子どもの普段の様子に位置づけるように促す. 本稿はこれを<説明促し>と呼ぶ. 説明促しは, その話者が当該子どもについてよく知らないことを発言のなかに刻印することで認識可能となる. そしてこの知識の欠如は, 説明促しが当該子どもの行動が生じた後の位置で, 描写というかたちを取って組み立てられることで刻印される. これに対して連鎖第2成分の発言を差し出す親は, 自分のほうが子どもについて詳しいという含意をもつ応答をする. この応答には, 詳しいという証拠があるタイプとないタイプがある. 子どもの普段の様子が語られる応答は前者である. また応答が後者である場合, 連鎖第1成分の話者は, 前者のような応答を求めてもっと直接的な手段で子どもの普段の様子についての情報を要求することができる. このような説明促し連鎖を通じて, 親は子どもにかんする<応答可能性=責任>を果たしているといえる.
  • 在日フィリピン人女性支援NGOを事例として
    髙谷 幸
    2012 年 62 巻 4 号 p. 554-570
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2013/11/22
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 在日フィリピン人女性のDV被害者支援を行ってきたNGOを, 家族とは異なるオルタナティブな親密圏として位置づけ, 家族との関係からその実践を分析することである.
    近年, 近代家族とは異なるかたちの, 生の基盤となる関係性, 「具体的な他者の配慮/関心にもとづく」親密圏をめぐる議論が活発になされている. それらは, 近代家族にたいする批判を踏まえつつも, そこで育まれる関係性や役割を積極的に再考するものといえる. しかし一方で, これらの議論では, 家族とそれ以外の親密圏がいかなる関係にあるかは論じられてこなかった.
    これに対し, 本稿が取り上げたNGOでは, 暴力的な「家族からの自由」を, フィリピン人女性と子どもたちに保障すると同時に, 母子世帯というケア関係を核とした「家族への自由」を保障する活動を行っていた. またワークショップによる経験の共有を通じて, 家族の期待と責任を相対化し, そこでの葛藤を「ニーズ」として解釈する活動を行っていた.
    つまりこの<親密圏>は, 家族にとって代わるというよりも, 家族が負担してきたケア責任を分有し, また家族規範を相対化し, 他の信頼しうる<親密圏>をつくり出す実践として捉えることができる. その戦略は, それ自体が<親密圏>として, 女性や子どもたちに複数の親密圏への帰属を可能にし, それによって家族への自由が保障されることを目指すものである.
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