社会学評論
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64 巻, 4 号
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特集・近代社会の転換期のなかの家族
  • 江原 由美子, 宮坂 靖子, 山田 昌弘
    2013 年 64 巻 4 号 p. 530-532
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
  • アジアとヨーロッパ
    落合 恵美子
    2013 年 64 巻 4 号 p. 533-552
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    日本の近代家族研究の蓄積は世界の家族変動研究にどのような貢献ができるのか, アジアとヨーロッパを例に検討する. まず, 人口転換とジェンダーへの注目を理論的基礎として, 近代の家族変動と社会変動をとらえる枠組みを提出する. 第1次人口転換と主婦化が近代家族を単位とする「第1の近代」を作り, 第2次人口転換と脱主婦化が個人化と家族の多様化を特徴とする「第2の近代」を開始させたとする枠組みである. この枠組みをアジア社会に適用するため, 日本以外の東アジア諸国は圧縮近代, 日本は半圧縮近代ととらえることを提案する. 圧縮ないし半圧縮近代においては, 「個人主義なき個人化」すなわち, 家族が互いに支え合う社会において, 家族というリスクを回避するための「家族主義的個人化」が起こる. また, 人口学的条件等の違いの結果を文化的優劣と誤解して, 間違った政策判断をする危険がある. とりわけ自己オリエンタリズムによって「第1の近代」の近代家族や性別分業を自らの社会の伝統と思い込む「近代の伝統化」が起こりやすい. 日本よりも圧縮の強い他のアジア社会では, 伝統と近代とグローバル化が絡み合って家族のグローバル化が急速に進行する. 他方, ヨーロッパの「第2の近代」は, 世界的視野で見ると, 世界システムにおける地位の低下に対応する現象と考えられる. 多くの社会が行き着く経済成長の鈍化した高齢社会に対応した社会システムを構築する試みが「第2の近代」なのである.
  • 江原 由美子
    2013 年 64 巻 4 号 p. 553-571
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿の主題は, 現代フェミニズムと家族との関連性を考察することである. まず, 第1に, 現代フェミニズムの家族に関する主要な論点を明らかにする. それは「家族の否定」ではなく, 「性別分業家族」批判であった. 「性別分業家族」においては, 女性の過重な家庭内役割のゆえに, 女性の経済的自立が困難だったからである. 次に, 現代フェミニズムの家族批判の根底にある公私分離規範に関する論点を, 「家族領域」を社会から切り離す公私分離規範批判と, 女性の「身体の自由」権を認めない公私分離規範批判の, 2点で把握し, それらがいずれも, いわゆる「近代家族」への批判につながることを示す. この観点から「近代家族」類型を位置づけると, 「近代家族」とは, 女性の人権を認めない前近代的要素を含んでいる家族類型と位置づけることができる. 最後に, 現代フェミニズムの公私分離規範批判から導かれた論点に関連する家族変動要因を, ハビトゥスの水準と, 社会制度的水準において把握し, 「ジェンダー秩序論」の視点から, 「これからの家族」を考える.
  • 筒井 淳也
    2013 年 64 巻 4 号 p. 572-588
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿では, ポスト工業化社会における排他的親密性の現状と行く末について, おもに経験的研究の成果に依拠しつつ論じている. 戦後の工業化と経済発展に伴う男性稼ぎ手夫婦の段階を経て, 現在女性の再労働力化が進んでいる. おもな先進社会のなかでも各国ごとにバラつきがあるとはいえ, 女性の所得水準が全体的に上昇していくなかで見られるのは, カップル関係の衰退ではなく維持である. しかしその内実には, 同棲の広がりに代表される深刻な変化が生じている. この変化について, 関係性は外部の社会的要因から自由になっていくのか, 持続的関係は衰退するのか, 排他性は弱まっていくのかという3点について, おもに同棲についての欧米社会における実証研究を手がかりとしつつ検討を行った. さらに, 男女の経済状態が均等化するなかで, 人々が自発的に関係構築をするための生活条件が整備されていくと, 関係性やそれから得られる満足は自発的選択の結果として理解されていくのか, という問いを立て, 必ずしも自己責任論が徹底されるとは限らないこと, しかし親密な関係性を首尾よく構築できないことに対して公的な補償が充てられることは考えにくいことを論じた. 他方で日本社会はこういった生活条件が整備されつつある段階であり, 関係性の実践が男女で非対称的な経済的条件にいまだに強く拘束されている段階である, といえる.
  • 専業主婦規範の日中比較
    宮坂 靖子
    2013 年 64 巻 4 号 p. 589-603
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 第1に, 1990年代以降, 中国の都市中間層で増加している専業主婦の実態を把握し, 中国の専業主婦規範の特徴を明らかにすることである. そして, 日本と中国の専業主婦規範の差異がどのようなメカニズムを通して形成されているのかを考察する. 考察には, 2014年10~11月にかけて, 遼寧省大連市内において9名の専業主婦に対して実施したインタビュー調査のデータを用いる.
    本稿で明らかになったことの第1は, 中国の都市中間層で生じている専業主婦化は「専業母」化であり, 調査対象者たちは子育て期は子育てに専念するが, 子育て後に再就職することを望んでいた. 第2に, 調査対象者たちは, 子育て期に「専業母」になることを肯定していたが, ただし母親が単独で育児を担当するのではなく, 親族からの育児サポート, 市場の家政サービスを活用しながら, 母親役割を遂行していた.
    このような「専業母」規範は日本の3歳児神話と大きく異なっており, 日中の「専業母」規範の差異は, 育児や家事などのケア行為のどの部分を誰が遂行し, その分節化された行為にどのような意味を付与するかによりもたらされる. 「市場化をともなった情緒化」と「市場化なき情緒化」のいずれのメカニズムを選択するかはその1つの分岐点となる. 「専業母」化という同じ現象であっても, どのような育児行為を愛情の表出とみなすかという情緒規範は文化的・社会的により異なる.
  • 1970年代以降の子育て・高齢者介護
    藤崎 宏子
    2013 年 64 巻 4 号 p. 604-624
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    1970年代以降の福祉国家再編の過程で, 家族を中心とする私的な関係性のなかで対応されてきたケアが社会問題として位置づけられ, 独自の政策的対応を必要とするようになった. しかしながらこの過程は, 単線的に, そしてスムーズに進んだわけではない. とりわけ家族主義的な規範が根強い日本社会では, ケアを「家族」に繋ぎとめようとする抵抗勢力がかたちを変えつつ存在し続けている. 本稿では, 70年代以降のケア政策の動向を追うことにより, 各年代の政策が前提とする, あるいは期待する家族モデルがどのように変容してきたかを明らかにすることを目的とした. 取り上げる政策範疇は子育てと高齢者介護における「労働」「費用」への支援策とし, 主要な分析資料は各種政策文書に求めた. 分析の結果, 70~80年代には子育て支援・高齢者介護政策ともに, 性別役割分業型家族を前提としたケア政策が採られたが, 90年代以降にはそのモデルは分岐していく. 子育て支援策においては, 男女の雇用環境の変化とこれにともなう家族の変容が認識されつつも, なお「男性稼ぎ手家族」を完全に放棄できない現状がある. 高齢者介護政策では, 高齢者の居住形態や介護態勢の多様化を受けて, 少なくとも制度設計上は「個人単位」が前提とされるようになった. ただし, 両領域ともに政策の家族モデルと社会的現実との齟齬は大きく, 多くの課題が残されている.
  • 安里 和晃
    2013 年 64 巻 4 号 p. 625-648
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    ケアの求心力は人の国際移動を大きく促進した. 1つは香港, シンガポール, 台湾に存在する70万人をはじめとする家事労働者にみられ, 家事の補填のために雇用される途上国の女性である. 労働市場における非競合性, 雇用主にとっての「利便性」もあり経済成長や高齢化を背景として家事市場は拡大した. 外国からの豊富な労働供給を背景に市場は安定したが, 家事労働をめぐる階層化, 性役割分業の固定化を伴った. 次第に高齢化を背景とするケア需要が増大した. 各種補助金や税控除, 老親扶養法など「家族化政策」と連動し家事市場はさらに拡大したが, ケアの社会化は困難となった. 家族主義の問題点は家族形成を前提とするが, 日本, 韓国, 台湾など先進国における高齢者, 障害者などによるケア確保が一義的な国際結婚が増大した. 少子化や家族危機の言説と絡まり, 国際結婚は社会統合・多文化政策のきっかけとなった. 良き家族の一員としての統合は, 伝統回帰型かジェンダー平等型かという点で課題を抱えるが日本を除き政権にかかわらず推進されている. しかし, これらの移動は家事労働者の労働者性の担保, 婚姻過程の経済取引化などは結婚移民の脆弱性の原因となっている. 送り出しに伴う家族構成員の移動と欠如, 受け入れ側の家事労働者の家族接合, いずれにせよ従来とは異なるケアの供給体制であり, 近代家族自体が相対化されるものである.
  • 社会の構造転換が日本家族に与えたインパクト
    山田 昌弘
    2013 年 64 巻 4 号 p. 649-662
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    近代家族は, 近代社会において人々を, 経済的, 心理的に社会的に包摂する装置として形成された. 日本を例に取ってみると, 戦後から1980年代ごろまでは, ほとんどの人がこの近代家族を形成することが可能であった. しかし, 近代家族が頂点となった80年ごろ, 言説の中で, 近代家族規範の抑圧性に注目が集まり, 近代家族からの解放を目指す動きが起きた.
    1980年ごろから先進国で始まる経済のグローバル化に象徴される経済構造の転換は近代家族の経済基盤を壊し, 個人化の加速が近代家族規範の有効性を低下させる. その結果, 近代家族を形成・維持できない人々が増大する. 欧米先進国の一部では, 家族の中に閉じ込められていた諸要素 (家計, ケア, 親密性, セクシュアリティなど) が分解して, 独自のメカニズムで動くようになる.
    日本でも, 1990年代半ばから経済の構造転換や個人化の影響を受け, 未婚率, 離婚率の上昇が顕著である. その結果, 日本では, 近代家族を形成・維持できる人々と, それからこぼれ出る人々に分裂していると判断できる. しかし, 近代家族形成以外に, 経済的自立やケア, 社会的承認のモデルがないため, 近代家族への意識上の回帰現象がみられる.
    この近代家族に属している人といない人への分裂傾向は, 家族社会学だけでなく, 他の社会学の実証分野にも大きな影響を及ぼすであろう.
投稿論文
  • インフォームド・コンセント運用の1例として
    川島 理恵
    2013 年 64 巻 4 号 p. 663-678
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    救急医療における意思決定過程は, 代理としての家族が意思決定に参加し, 刻々と変わる状況下でなにかを決めなければならない. そこで医師と家族がよりどころとするのは, 会話という手段にほかならない. 本稿では, 患者家族が救急初期診療中に医師から説明を受ける場面を, 会話分析によって分析し, その相互行為上の仕組み, いわばインフォームド・コンセントが裏づけられていくプロセスを明らかにする. それにより医師-患者関係におけるインフォームド・コンセントの的確な運用に関する議論に寄与することを目指す.
    分析の結果, おもに3つの相互行為的な仕組みが主軸となり意思決定過程が組み立てられていた. (1)まず医師の状況説明が物語りとして組み立てられることで, 徐々に悪いニュースが明らかとなり, 家族が患者の死を予測できる構造になっていた. (2)また医師は, 視覚や触覚で得られる情報を参照することで不確実な状態を, 刻々と確実なものに変化させていた. (3)さらに状況説明とは逆接的な提案が繰り返された後, 最終的な局面では, 医師の提案が, 家族の反応にきわめて敏感に組み立てられていた. このように家族が受け入れやすいかたちで説明・提案を行うことは, 医師の示す治療方針, ひいては医師の権力自体を正当化する手だてとなっていた.
  • アメリカの消費社会化に関する系譜学的分析
    青山 賢治
    2013 年 64 巻 4 号 p. 679-694
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
    本稿は, 消費社会化が起こるための必要条件にかんする分析である. 消費社会化は, 余剰生産力と需要の関係において問題とされるが, それは十分条件ではない. アメリカの場合, 生産力の余剰に先行して, 空間の余剰があったことが記号論的空間の成立をもたらしたと考えられる. 本稿は, アメリカの西部フロンティアにかかわる空間編成を系譜学的に分析し, そこから記号論化された消費社会の成立を問題にする.
    19世紀初頭, 未踏で表象不可能な空間であった西部は, 博物誌, 地誌学の調査によって表象の空間へ移される. 1830年代, 表象 (不) 可能性の境界上で, 歪んだイメージを介したフロンティアが語られる. 19世紀半ば, 移住者向けガイドブックに, 博物誌, 新聞, 広告, 誇張話などが並置された記号論的領域が登場する.
    大陸横断鉄道以後, フロンティアは空間的外縁ではなく, 双極的時間の運動として現れる. レール沿線における未開と近代技術の接触から, フロンティアの不確定な前進=消滅が起こる. この不確定性が消滅したところでは, 都市と農村の形成が同時代的に実現される. 他方, 古いイメージと新しいメディア技術という双極性から, オールド・ウェストという「西部的なもの」の舞台や映画が成立する. カタログという商品=広告は, 都市と農村という空間的隔たりを, 最新モードのうちに結びつけ, 欲望を記号論的空間のなかで分節することで, 消費社会化をもたらす.
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