社会学評論
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64 巻 , 2 号
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投稿論文
  • 安井 大輔, DEBNAR Milos, 太郎丸 博
    2013 年 64 巻 2 号 p. 152-168
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, Saskia Sassenの『グローバル・シティ』から産業・職業・賃金の不平等に関する理論を取り上げ, その仮説の都道府県における妥当性を検証することである. グローバル・シティ仮説によれば, 東京では経済のグローバル化によりIT・金融・専門サービス産業が増加し中間層にあたる第2次産業は縮小し, 専門管理職の上層サービス職と販売サービス職の下層サービス職が増加する. この職業構造により賃金の不平等が拡大される. この仮説は東京が他地域よりも脱工業化が進み上層と下層のサービス職比率が高く賃金の不平等が大きいことを含意する. そこでこの含意が東京と他の道府県にどれほど当てはまるのか, 国勢調査と賃金構造基本統計調査のデータを用いて計量分析を行った.
    結果, (1) 東京はIT・金融・専門サービス産業比率は高いものの第2次産業比率も高い. (2) 第2次産業比率が低くIT・金融・専門サービス産業の比率が高い都道府県は上下層のサービス職比率が高い. (3) 下層サービス職比率が高い都道府県は不平等が大きいものの上層サービス職比率が高い都道府県は不平等が小さい. 上下層のサービス職比率や賃金の不平等に対するグローバル・シティ自体の影響は小さく限定的だった.
    各仮説の検討から一部の相関は有意だが仮説に反する結果も多く, 結果としてグローバル・シティのほうが賃金の不平等が大きいという仮説は支持されなかった.
  • 池本 淳一
    2013 年 64 巻 2 号 p. 169-186
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    武術学校とはスポーツ化した「競技武術」の専門課程をもつ中国における私立の体育系学校であり, 1980年代までの間に大学やナショナルチームを中心に発展してきた. 本稿は武術学校における再生産戦略とアイデンティティ構築に着目し, 競技武術の民間普及をもたらした社会的背景と, 実践者にとっての競技武術の意味を明らかにする. 具体的には以下の点を明らかにした.
    第1に, 武術学校への転入学は農村の教育問題や都市の住居問題を解決するために, 農民や農民工の親によって決定された再生産戦略の一部であったこと. 第2に, 武術を学歴取得や就職のための技能として受入れ, 親の用意した再生産戦略を自分自身の戦略として受け継いだ生徒のみが, 中学部以上に進学していくこと.
    第3に, 卒業生の多くは武術教師や警備員として都市で就職していくこと. 他方で豊富な身体資本を蓄積した生徒はステート・アマに, 豊富な文化資本を蓄積した生徒は体育大学・教育大学の武術科の大学生となること.
    第4に, 卒業後, 武術は本人の出世と親子での都市移住を達成させるための経済資本となること. くわえて武術に打ち込むことで, 武術がナショナルかつ私的なアイデンティティを生み出す「身体化された文化資本」となること.
    最後に競技武術の民間化をもたらした社会的背景, 武術文化が生み出す公的で私的な文化的アイデンティティ形成の可能性と危険性, 武術のローカリゼーションに関する諸問題を指摘した.
  • 伊達 平和
    2013 年 64 巻 2 号 p. 187-204
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    本稿では, 東アジア・東南アジア社会の「圧縮された近代」に伴う急速な家族の変容と, 価値観の変容を背景として, 家父長制意識の多様性とその意識に対する高学歴の影響を計量的に分析した. まず, 瀬地山角の東アジアにおける家父長制研究より, 家父長制意識を父権尊重意識と性別役割分業意識の2つの軸で捉え, I家父長主義, II父権型平等, III自由・平等主義, IV分業型自由の4つの型に整理した. 次に, 日本, 韓国, 台湾, 中国, ベトナム, タイの6地域のデータから, その2つの意識の平均値を比較した. さらに, 年齢などの変数を統制したうえで, 二項ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った.
    分析の結果, これら6地域の家父長制意識の相対的な布置関係が明確に示された. 中国と台湾は家父長主義, 韓国は父権型平等, 日本は自由・平等主義, タイとベトナムは分業型自由に分類された. さらに, 家父長制意識に対する高学歴の影響が, 各国において異なること示され, 家父長制意識の近代化における変化の多様性が明らかになった. また, 「圧縮された近代」における圧縮の度合いが人々の家父長制意識に影響を与えることも明らかになった.
  • 清原 悠
    2013 年 64 巻 2 号 p. 205-223
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 1966年から81年にかけて展開した横浜新貨物線反対運動を事例に, 住民運動がいかなる地域環境において立ち上がってくるかを, 人口動態, 保守/革新の両者の地縁組織のあり方, 居住環境の整備のされ方から検討することである. そのなかで明らかにしたことは, 住民運動という概念は運動の当事者によって自らの運動を名指すべく使われた語彙であり, 他の社会運動概念と異なり分析概念ではなく当事者概念であったという点である. 住民運動という概念の最も早い使用は60年代の横浜であり, 当時の横浜は人口流入が激しく, 住民たちは政治的志向において保守から革新まで含んでおり, このなかで運動を構成していくためには, 保守/革新からは距離をおいた運動表象が必要であったのである. また, 住民運動概念は革新側が新住民を自らの政治的資源として動員するべく使用し始めたのであるが, 革新自治体であった横浜市と対立した横浜新貨物線反対運動がそれを内在的に批判し, 換骨奪胎して革新勢力から自立した運動を展開するものとして転用したものであった. そして, 革新側から自立した運動を展開できたか否かは地域環境の整備のあり方に関係があり, 大規模団地造営がなされた地区においては, そこに目を付けた革新勢力によって事前に革新勢力の地域ネットワークが構成されており, このような地区が後に反対運動から離脱することになった点を明らかにした.
  • 中西 眞知子
    2013 年 64 巻 2 号 p. 224-239
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    再帰性 (reflexivity) については社会学では多様な議論が展開されてきた. 再帰性論を社会学の主要テーマにしたのは, アンソニー・ギデンズであった. 彼は, 再帰的近代化論において, 自己再帰性や制度的再帰性など認知的再帰性を論じた. それを批判的に継承し, 独自の再帰性論を提示したのがスコット・ラッシュである. 本稿ではラッシュの再帰性論を基軸に, 再帰性の変化と新たな展開を明らかにする.
    ラッシュは, ウルリッヒ・ベックやギデンズの再帰性を, 認知的, 制度的な再帰性で, 単純な近代化に結びつくと批判する. 脱組織化した社会において, 非認知的で模倣的な象徴やイメージに媒介された美的再帰性や, 実践の解釈を反映した共有の意味や慣習に媒介された解釈学的再帰性を提唱する. またグローバル情報社会では, 他者との相互反映性において知を行動に結びつける現象学的再帰性の働きに注目する. ラッシュによれば, 社会の変化を反映して再帰性は, 啓蒙思想を源とする合理的な認知的再帰性や制度的再帰性から, 芸術の近代化を源として美意識や共感を重視する美的再帰性や解釈学的再帰性へ, さらにグローバル情報社会で相互反映性において知と行動を結びつける現象学的再帰性へと変化する.
    情報化や市場化の進展によって再帰性は変化し, 新しい再帰性も生まれつつある. そのなかで筆者は, ラッシュやジョン・アーリらの再帰性論から導かれる新しい市場再帰性に注目した.
  • 大林 真也
    2013 年 64 巻 2 号 p. 240-256
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 流動的な集団において利他的行動が成立するメカニズムを解明することである. 特に利他的行動のなかでも, 集団の全員がある1人を援助するというイベントを繰り返す個人中心の網状一般交換を扱う. 先行研究では, この利他的行動は集団および地域レベルでの, 関係の閉鎖性や長期性が必要とされていたが, 現実に流動的な社会ではこれらの条件を満たさなくても成立する例が存在する. そのため, この事例を調査して, それを数理モデル化する方法を用いてメカニズムの解明を行う. 扱う事例はコミュニティ・ユニオンにおける合同争議である. コミュニティ・ユニオンとは, 加入・脱退が比較的自由に行える流動的な個人加盟型ユニオンの総称であり, 企業別労働組合で救済されない正規雇用者や加入できない非正規雇用者の駆け込み寺として機能している. また合同争議は, 係争当事者を他の成員が支援するため, 上記の一般交換とみなせる. 合同争議についてのゲーム理論モデルによる解析の結果, 集団と地域レベルの流動性があっても利他的戦略が部分ゲーム完全ナッシュ均衡になることが示された. 協力を導くメカニズムは, 流動性のなかでも離脱だけでなく参入も同時に存在すること, 利他的戦略は一方的に利他的ではなく懲罰を備えていることなどである. これらの要因によって間接互恵的な期待が生成される. また, 協力が必要とされる期間やゲームが長期的すぎると協力を阻害することも示された.
  • 堀 智久
    2013 年 64 巻 2 号 p. 257-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 日本臨床心理学会の学会改革運動の歴史的展開を追い, そのなかでクリニカルサイコロジスト (clinical psychologist) が, いかにして自らの専門性のもつ抑圧性を認識しながらも, その否定し難さと向き合ってきたのかを明らかにすることである.
    1970年代以降, 日本臨床心理学会は, 臨床心理学および臨床心理業務の総点検を行う. 彼らは, 心理テストや心理治療のもつ抑圧性を告発し, また自らの専門性を全否定することから, 専門職としての関わりを超えて, 「共に悩み, 共に考え合える」関わりを模索する.
    だが, 1970年代を通して徹底されるに至る専門性の解体の志向は, 日常的に専門性に依拠し職務を遂行するクリニカルサイコロジストにとって, 自身の立場を危うくもする. 専門性の否定だけでは, 日常の臨床心理業務は成り立たないからである. 1980年代以降, 日本臨床心理学会では, 日常の臨床行為に立脚し, 現場で活用できる知識や技術, 方法論等を模索する専門性を再評価する動きが見られる. その具体的な現れが, 事例=実践相互研修会の開催である. 一方で, 1980年代後半には, 医療現場の会員から資格の必要性が主張される. とりわけ, 厚生省による医療心理職の国家資格化に協力するか否かをめぐっては, 学会内でも激しく意見が対立する.
    本稿では, こうした日本臨床心理学会の学会改革運動の歴史的変容から, 1970年代および1980年代における運動の質の相違を浮き彫りにする.
  • 朴 沙羅
    2013 年 64 巻 2 号 p. 275-293
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    近年, 敗戦直後の連合軍占領期 (1945年9月から52年4月) における人口移動が解明されるにつれて, 在日コリアンの一部が太平洋戦争後に日本へ移住してきたことも次第に明らかにされてきた. その移動は通常, 「密航」や「不法入国」と呼ばれ, 管理され阻止される対象となった. しかし, 「密航」という言葉のあからさまな「違法性」のためか, 「密航」を定義する法律がどのように執行されるようになったかは, 未だ問題にされていない.
    本稿が問題とするのはこの点である. 出入国管理法が存在せず, 朝鮮半島からの「密航者」や日本国内の「朝鮮人」の国籍が不透明だった時期に, なぜ彼らの日本入国を「不法」と呼び得たのか. 「密航」はどのように問題化され「密航者」がどのように発見されていったのか. これらを探究することは, 誰かが「違法」な「外国人」だとカテゴリー化される過程を明らかにし, 「密航」をめぐる政治・制度・相互行為のそれぞれにおいて, 「合法」と「違法」, 「日本人」と「外国人」の境界が引かれていく過程を明らかにすることでもある.
    したがって, 本稿は, 朝鮮人の「密航」を「不法入国」と定義した法律, その法律を必要とした政治的状況, その法律が運用された相互行為場面のそれぞれに分析の焦点を当て, それによって, 植民地放棄の過程において「日本人」と「外国人」の境界がどのように定義されたかを明らかにしようと試みる.
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