社会学評論
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65 巻 , 1 号
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日本社会学会長講演
投稿論文
  • 太田 有子
    2014 年 65 巻 1 号 p. 16-31
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/04
    ジャーナル フリー
    本稿は, 工業化の政治社会的背景を明らかにするため, 陶磁器の生産・流通に関わる資源をめぐる制度形成の過程に関して地域間の比較分析を通じて検証するものである. 「資源ガバナンス」という概念を導入し, 資源のあり方が制度化される過程を明らかにすることを試みた. 陶磁器の生産流通制度成立の経緯や内容に関して分析を行った結果, 陶磁器業に関わる諸資源のあり方は, 各地域の行政権力と様々な社会集団との関係によって規定されていたことが示された. 行政権力による資源への厳戒な統制のもとで諸制度が実施された事例がある一方で, 行政権力と同業者組合の協調による制度形成や, 生産・流通に関わる資源を獲得した卸売業者による制度構築の事例など, 地域間の相違が見られた. 資源ガバナンスの多様な様態の背景として地域の行政権力による支配のあり方が, 陶磁器業をめぐる諸資源のあり方, 陶磁器業従事者の活動や関係に作用し, 陶磁器業の生産・流通に影響していた. 行政権力と社会集団の関係によって, 陶磁器業の発展のあり方は異なっており, 行政権力による保護管理の下で発展した地域がある一方で, 行政機構と商工業者の連携や, 商工業者による民間資本を中心に発展した地域もあり, 工業化の多様な経路とその政治社会的背景が明らかになった.
  • 三谷 はるよ
    2014 年 65 巻 1 号 p. 32-46
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/04
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 「市民活動参加者の脱階層化」命題が成り立つかどうかを検証することである. すなわち, 資源のある人もない人も等しく市民活動に参加するような状況に変化しつつあるのかどうかを検討する. そのために本稿では, 1995年と2010年に実施された全国調査データであるSSM1995とSSP-I2010を用いて, 社会階層と市民活動参加の関連の動向に注目した時点間比較分析を行った.
    分析結果は以下のとおりである. 第1に, 1995年も2010年も変わらずに, 高学歴の人ほど市民活動に参加する傾向があった. 第2に, 1995年では高収入や管理職の人ほど市民活動に参加する傾向があったが, 2010年ではそのような傾向はなかった. 第3に, 1995年では無職の人は市民活動に参加する傾向があったが, 2010年では逆に参加しない傾向があった. 本稿から, 高学歴層による一貫した市民活動への参加によって教育的階層における「階層化」が持続していたこと, 同時に, 中流以上の層や管理職層, 無職層といった従来の市民活動の中心的な担い手の参加の低下によって, 経済的・職業的階層における消極的な意味での「脱階層化」が生じていたことが明らかになった.
  • 昔農 英明
    2014 年 65 巻 1 号 p. 47-61
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/04
    ジャーナル フリー
    本稿は, 治安という意味と生活保障という意味を包含した二重のセキュリティという観点から移民の統合政策の政策方針を論じたものである. 近年のドイツでは, 国家の構成員資格の基準が従来のエスニック同質的な価値規範ではなく, 民主主義, 法治国家の原則, 両性の平等, 政教分離といった理念的な原則を順守することに加えて, 自己統治の実践という社会経済的な原則を守ることになっている. こうした原則は国籍を超越した全人口を対象とするものである. 他方で液状化する近代, あるいは高度近代における経済的・存在論的な不安の高まりの中で, 公的な統治は移民とセキュリティ概念を結びつけ, 防衛的, 警察的な対策を推し進めて移民を排除する方針を掲げている. すなわち福祉国家の再編・統合能力の減退という問題のもと, 公的な統治はその正統性を確保するために, 福祉国家に負荷をかける, 自己統治能力のない移民が過激思想に染まるのを未然に防ぐために, ゼロ・トレランスの観点からこうした移民を排除する. その対策において決定的に重要な役割を果たすのが, 本稿で検討するように治安機関や警察などのセキュリティ対策の専門機関の有する知識・情報・実践である. こうした専門機関の役割により, 移民は道徳的モラルの観点から非難されるだけではなく, 治安管理の対象として取り締まられる. そのため移民統合政策は移民の統合を促進するよりも, その排除を推進する危うさを有している.
  • 深谷 直弘
    2014 年 65 巻 1 号 p. 62-79
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/04
    ジャーナル フリー
    本稿は, 長崎・新興善小学校校舎保存問題を事例として, 建築物・場所をめぐる記憶実践を権力との対抗関係だけに着目するのではなく, 各集団の記憶の対立という視点から, 記憶とモノ, 社会の関係性を検討した. 市の解体決定プロセスと保存をめぐる態度の分析を通じて見えてきたのは, この保存問題は, 保存/解体の対立ではなく, 場所の記憶をめぐる対立であったということである.
    現物保存を訴えた保存運動側は, 「校舎」が被爆者のかつての治療の場であったことから, 現物保存するよう訴えた. 他方, 再現展示 (メモリアル・ホールとしての保存) を訴えた新興善小学校関係住民は, 「校舎」をあくまで「母校」として捉えていた. そのため, 被爆者の治療の場であった頃の記憶は「校舎」には見出していなかった. むしろ「母校」の中で受け継ぐべき原爆の記憶は小学校内の行事である献花・慰霊祭や平和学習にあった. つまり, 同じ小学校校舎を, 救護所としてみるか, それとも, 母校としてみるのかによって, 両派の保存の態度が違いとなって現れたのである.
    本稿で明らかになったことは, 被爆建造物の保存において, 同じ建物・場所であっても, 複数の記憶が交錯しているがゆえに, 各場所の記憶同士の対立や矛盾があるということ, モノそれ自体がもつ原爆体験を想起させる力は, 保存を主張する側の文脈に沿って, 都合よく創られるものではないということである.
  • 原田 謙, 杉澤 秀博
    2014 年 65 巻 1 号 p. 80-96
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/04
    ジャーナル フリー
    本稿は, パーソナル・ネットワークに対する都市効果を, 階層的に異なる水準で測定された変数を扱うマルチレベル分析を用いて明らかにすることを目的とした. 具体的には, 個人レベルの属性の影響を統制したうえで, 地域レベルの都市度が, 親しい親族・隣人・友人数およびその空間的分布に及ぼす文脈効果を検討した. データは, 東京都, 神奈川県, 埼玉県, 千葉県内の30自治体に居住する25歳以上の男女4,676人から得た.
    分析の結果, 第1に, 親族総数の地域差は居住者の個人属性の影響を統制すると消失した. しかし都市度は親族関係の空間的分布に影響を及ぼしていた.都市度が高いほど近距離親族数は減少していたのである. 大都市の親族関係は, 規範的ではなく選択的であり, 空間的に分散したネットワークである点が示唆された. 第2に, 都市度が高いほど隣人数は減少していた. 第3に, 友人総数の地域差は居住者の個人属性の影響を統制すると消失した. しかし都市度は友人関係の空間的分布に影響を及ぼしていた. 都市度が高いほど, 中距離友人数が増大していたのである. 都市度は, 都市圏全体に広がる友人資源へのアクセス可能性を高めている点が示唆された.
  • 平井 勇介
    2014 年 65 巻 1 号 p. 97-115
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/04
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 森林環境保全や生活保全のために地権者自らが所有権を一時的に制限しようとした, 地権者組織の論理を明らかにすることである.
    本稿の事例地は, 都市近郊に位置し, 開発圧力が非常に高い場所である. 一般的に, そのような地域で計画された自然再生事業や自然環境保全活動に対して, 地権者の協力を得ることは難しいと想定される. しかしながら, 事例地の地権者組織は, 一時的ではあれ自らの所有権を制限する, 事業への条件つき賛成案を提案したのだ.
    この地権者組織の所有権制限の論理とは, 簡略に述べれば地域社会の「秩序再構築」であった. 事例地では, 1990年代に生じたダイオキシン問題によって, 地権者間に経済的・心理的な格差がうまれていた. なぜなら, ダイオキシン問題の原因となった産業廃棄物業者などへ土地を貸借/売却した地権者や平地林を売らずに守り続けた地権者などが, 地域社会に併存していたためである. 地権者組織は, この地権者間の格差を是正するという案だからこそ, それぞれの地権者の所有権を制限する, 自然再生事業への条件つき賛成案を組織の総意とできたのである.
    こうした事例から本稿では, 森林環境保全や生活保全のために所有者自らがその権利を一時的に制限しようとした論理として, 地域社会の「秩序再構築」が挙げられることを明らかにした.
  • 柴田 悠
    2014 年 65 巻 1 号 p. 116-133
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/04
    ジャーナル フリー
    日本では, 1998年以降, 貧困や孤立といった社会的状況によって自殺に追い込まれる人々が増えた. 憲法第13条において「国民の生命の権利を最大限尊重すべき」とされている日本政府には, 社会政策によってそのような状況を改善し, 不本意な自殺を予防する責務がある. では, どのような社会政策が自殺の予防に有効なのか.
    本稿では, 公的な職業訓練・就職支援・雇用助成を実施する「積極的労働市場政策 (ALMP)」に着目した. ALMPは, 「孤立した貧困者」を他者 (支援スタッフや訓練参加者) や労働市場へと繋ぎとめ, 社会経済的に包摂する機能をもつ. 自殺にもっとも追い込まれやすいのが「孤立した貧困者」であるならば, 日本においてALMPは彼らの自殺を予防できるのだろうか. あるいは逆に, 彼らを自殺へとますます追い込んでしまうのだろうか. そこで本稿は, この問いに対して実証的に答えることを目的とした.
    先行研究よりも広範なデータと比較的精緻な推定モデルで分析した結果, 自殺率の増減の一部は, 失業率上昇率の増減 (貧困者の増減) と, 離婚率の増減と新規結婚率の減増 (孤立者の増減), ALMP支出の減増 (孤立した貧困者の放置/包摂) によって説明できた. またそれらの要因は, 日本での1991~2006年の自殺率変動 (前年値からの変化) のおよそ10~32%を説明した. 他方でALMP以外の社会政策は, 有意な自殺予防効果を示さなかった.
第12回日本社会学会奨励賞【著書の部】受賞者「自著を語る」
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