社会学評論
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65 巻, 3 号
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企画論文・世界社会学会議(ISA)を終えて
  • 経過・意義と今後の課題
    長谷川 公一
    2014 年65 巻3 号 p. 308-316
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    第18回世界社会学会議は, 2014年7月13日から19日まで, 横浜市のパシフィコ横浜を会場に開催され, 無事終了した. 国際社会学会の世界社会学会議 (World Congress of Sociology) は4年に1度開催される社会学界最大の学術イベントである. 本稿では, 組織委員会委員長というホスト国側の責任者の立場からこの会議の経過と意義を振り返り, 本大会の成果を今後に引き継ぐための課題を提起したい.
    1960年代以来, 長い間先送りされてきた世界社会学会議の開催がなぜ2014年大会の招致というかたちで実現したのか, その背景は何だったのか. 開催都市に横浜を選んだのはなぜか. 組織委員会をどのように構成したのか. 世界社会学会議横浜大会は, これまでの世界社会学会議と比べてどのような特徴をもつのか. 組織委員会として, 組織委員長として, どのような課題に直面し, 腐心したのか. 横浜大会の成果と意義は何か. 横浜大会はどのような意味で「成功」といえるのか. 横浜大会の成果を, 研究者個々人が, また日本社会学会がどのように継承していくべきかを考察する. 日本の社会学の国際化・国際発信の重要なワンステップではあるが, 横浜大会は決してゴールではない. 日本社会学会は, 日本の社会学の国際的な発信を, 引き続き組織的にバックアップしていくべきである.
  • その歴史から考える
    矢澤 修次郎
    2014 年65 巻3 号 p. 317-326
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本稿は, 国際社会学会, 日本社会学会, 両学会の関係の歴史をたどることによって, 第18回世界社会学会議成功の意味を考え, その意味を発展させるためには, 日本社会学会, 日本の社会学者, 国際社会学会は, 何をなすべきかを明らかにしようとしたものである.
    著者によれば, 第18回世界社会学会議成功の意味は, 1. 会議の歴史上最多の参加者を記録したこと, 2. ヨーロッパクラブと言われていた国際社会学会の特徴を修正したこと, 3. 世界社会学会議のグローカル化に成功したこと, 4. 日本の「社会学の国際化」を推進したこと, 5. 世界社会学会議の自己評価を達成した, ことである. 最後に本稿は, 国際社会学会, 日本社会学会, 日本の社会学者の今後取り組むべき課題を指摘する.
  • リサーチ・コミティから見る国際化
    野宮 大志郎
    2014 年65 巻3 号 p. 327-335
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    研究の国際化に伴い, ISAの大会に参加する日本人は急速に増加している. ISAのリサーチ・コミティを, 今後どのように各自の研究に活かせばよいか. その方策を探るのが本稿の目的である. ISAのリサーチ・コミティを研究者組織として見た場合, いくつかの際立った特徴がある. 本稿では, それらの特徴を他の研究組織の特徴と比較しながら, 明示化する. その後, リサーチ・コミティを舞台として国際共同研究を進めるためには, どのような個人戦略や注意が必要になるか, 共同研究に伴うリスクを交えながら論じる.
  • 中国社会学者との新たな対話に向けて
    首藤 明和, 西原 和久
    2014 年65 巻3 号 p. 336-343
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    世界社会学会議の折に, チャイナ・デイが中国社会学会, 中国社会科学院, 日本社会学会, 日中社会学会の共催で2014年7月15日に開催された. 論題は中国の改革と社会転換. サブテーマは中国の改革とソーシャル・ガバナンス, 社会転換と構造変動・社会移動であった. 東アジア社会学に関する基調講演 (矢澤修次郎) の後, 12名の中国社会学者が中国におけるガバナンス, 不平等, 人口, 都市化, 女性, 世代間格差, 移動などを論じた. この集会で討論者 (首藤明和) が総括したように, 広く論じられている「公的」論点は社会学的に分析され, 聴衆は何が中国社会学の重要論題で, 何が課題かはよく理解できた. だが, 多様性, 民族, 宗教などの論争的論題は十分には論じられなかった. これらも, 中国の社会 (学) にとって重要であろう.
    とはいえ, 集会自体は成功したと評価できる. なぜなら, 国際学会に際して日中の社会学者が協働し, 研究の共同空間を創造できたからだ. グローバルレベルと東アジアというローカル・リージョナルレベルとの結合は, 国家を超えた交流, 協力に寄与する. もし日本の多数の社会学者が報告し, 議論したならば, さらに対話は進んだだろう. 一国内の知の枠組み――それはしばしば他者の疎外や排除に転化する――を超えることが社会学に要請されている. もちろん, この要請は現実には容易に達成できない. それゆえ, この現実自体も社会学で問われるべき課題だろう.
  • ISA2014横浜大会からの思考
    陳 立行
    2014 年65 巻3 号 p. 344-350
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本稿は, 初めて日本で開催した第18回世界社会学会議は, 多様な価値に溢れている21世紀の世界に向かって, 東アジア社会学の構築にとって先頭に立つととらえ, それがもつグローバル社会学への挑戦における課題と意義について考えている.
    筆者は, 戦後, 歴史, 文化, 宗教, 政治体制が欧米社会と大きく異なる東アジアの国々の近代化への過程に, とくに1990年代から, 情報機器の社会生活への普及によりモダニティの過程を経ず, いきなりポストモダン社会に突入する社会変容に対して, 欧米社会学では限界が現れていると指摘した. これは, これまで現代のジレンマに陥っている東アジア社会学の理論的創新の機運となると論じ, 第18回世界社会学会議の意義を考えた.
  • 若手研究者の視点から
    寺地 幹人
    2014 年65 巻3 号 p. 351-359
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本稿は, 2014年7月に横浜で開催された第18回世界社会学会議のサイドイベントであるEast Asian Junior Sociologists Forum (EAJSF) の企画・運営の様子を報告し, この事例をもとに, 若手研究者が国際的な学術イベントの企画・運営を担う際のポイントを論じている.
    EAJSFにおいては, 企画・運営委員が少人数で, かつ専門分野などの点で同質性や関係の近さがあったことの利点が, 結果的に大きかった. しかし, 仮にある程度のメンバー内の同質性や近さを前提にしなければ今回のような企画・運営が難しいとすれば, 次の2つが課題として考えられる. 第1に, どのような同質性や近さが相対的に, 国際的な学術イベントの企画・運営に馴染みがよいのか, 特徴を探ること. 第2に, 活動をより詳細な業務レベルで検証し, 相対的に同質性を前提とせずとも可能な活動を整理することで, 企画・運営の関わり方のバリエーションを提示し, 関心のある人が適切な関わり方で分業できるようにすること.
    この2つに対応することを通じて, 国際的な学術イベントの企画・運営のノウハウをさらに学会が蓄積し, 関心のある若手研究者が関わる機会を開くことが, 世界社会学会議日本開催後の課題の一つと考えられる.
投稿論文
  • アレグザンダー「市民圏」論の検討をもとに
    兼子 諭
    2014 年65 巻3 号 p. 360-373
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本稿は, アレグザンダーの「市民圏」論の検討によって, 公共圏論の理論的な刷新を図ることを目的とする.
    公共圏論に大きな影響を及ぼすハーバーマスは, 公共圏を公論形成の領域と規定する点ではマクロ的な観点を保持する. だが, 直接的な対話による了解を志向する討議を公共圏におけるコミュニケーションのモデルとすることから, 民主的社会における市民の意思形成とマクロレベルでの政治プロセスの接続という点で理論的困難を抱えている.
    これに対してアレグザンダーは「市民圏」概念を提唱する. 彼は, 市民圏におけるコミュニケーションを, 討議から, 感情的な共感に訴えることでオーディエンスからの承認を求めるパフォーマンスに代替することを主張する. 彼に従えば, 基本的なコミュニケーションをパフォーマンスとして捉えることこそが, 民主的社会における公共圏のより適切な理論化につながる.
    理論的課題は多く, 公共圏におけるコミュニケーションがスペクタクルとして上演されることを肯定するだけという評価もあるかもしれない. だが, アレグザンダーの市民圏論が, 現代の民主的社会と公共圏の関係に対する新たな洞察を可能にすると, 筆者は主張したい.
  • 学力に関する自己認知の媒介効果の検討
    鳶島 修治
    2014 年65 巻3 号 p. 374-389
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 学業面の主観的能力を表す「学力に関する自己認知」 (以下, 学力自己認知) という媒介変数の役割に着目した検討をとおして, 現代日本における教育達成の男女間格差・階層間格差の因果的メカニズムの解明に貢献することである. この目的を達するため, 学力自己認知の指標として学業的自己概念と学業的自己効力感を使用し, 「高校生の教育期待に対する性別と出身階層の影響を学力自己認知が媒介する」という仮説の検証を行った. PISA2003の日本調査データを用いて固定効果モデルによる分析を行った結果, (1) 男子は女子よりも教育期待が高く, 出身階層が高いほど教育期待は高いこと, (2) 数学の学力を統制したうえでも男子は女子に比べて数学の自己概念・自己効力感が高いこと, (3) 出身階層が高いほど数学自己効力感は高いこと, (4) 数学自己効力感は教育期待に対して数学の学力とは独立した正の効果をもつことが示された. (5) また, Sobel testによる間接効果の検定を行ったところ, 数学自己効力感を媒介した性別と出身階層の間接効果はいずれも有意であり, 「教育期待に対する性別と出身階層の影響を学力自己認知が媒介する」という仮説は数学自己効力感に関して支持された. 現代日本における教育達成の男女間格差・階層間格差の生成メカニズムを考えるうえでは, 学力自己認知 (特に学業的自己効力感) という媒介変数の役割に注目する必要がある.
  • 概念の分析に基づく方法論的検討
    内藤 準
    2014 年65 巻3 号 p. 390-408
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    「機会の平等」は現代社会の最重要な規範的原理の1つであり, 階層研究では「完全移動」 (親子の地位の独立) として解釈されてきた. しかし近年この考え方に対しては「親子の地位の関連は平等な機会のもとで本人たちが形成した選好に基づく選択の結果でありうる」という強力な理論的批判が提示されている (個人選択説). そこで本稿では, 階層研究における機会の平等概念の理論的分析をおこない, 完全移動や結果の平等との関係を再検討する. そして, 完全移動を機会の平等の指標とする伝統的なアイデアを個人選択説の批判から救い出すことを試みる.
    先行研究の検討とシンプルな理論モデルを用いた分析から以下のことが明らかになる. 第1に, 階層の再生産に関するいくつかの社会のタイプのうち, 機会が平等な社会は, 本人の地位が親の地位によってではなく本人に責任のある個人的要因によって規定されることを条件とする. 第2に, 機会の平等は完全移動を含意するが, 完全移動は「個人の責任」を考慮しないため機会の平等を含意せず, 両者はこの点で異なる. 第3に, 機会の平等を完全移動とする従来の考え方は個人選択説の批判を避けられない. だが分析対象である「社会階層」を適切に定義する分析枠組みをおけば, 選好形成に関する個人選択説の仮定が成立しなくなり批判は解除される. 最後に, 本稿の知見がもたらす今後の研究への方法論的含意と規範理論的課題への社会学的アプローチを示す.
  • U. ベックの市民労働を事例として
    伊藤 美登里
    2014 年65 巻3 号 p. 409-425
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    U.ベックは, ローカル次元において連帯と承認を作り出す仕組みとして市民労働という政策理念を提案した. この理念が現実社会との関連でいかに変容したか, 他方で社会においてはいかなる変化がもたらされているか, これらを考察することが本稿の目的である.
    研究の結果次のようなことが判明した. 市民労働の政策理念は, 政策的実践に移される過程で, ある部分が市民参加に, 別の部分が市民労働という名のワークフェア政策としてのモデル事業に採用され, 分裂していった. 現在の市民労働と市民参加は, ベックの市民労働の構成要素をそれぞれ部分的に継承しつつ, 中間集団や福祉国家の機能を部分的に代替している. 政策的実践としての市民労働と市民参加の存在は, 「家事労働」「市民参加」「ケア活動」といった概念の境界を流動化したが, 「職業労働」概念の境界は相対的に強固なままである.
    ベックの市民労働には, 元来, 社会変革の意図が含まれていた. すなわち, この政策理念は, 職業労働と市民参加と家事労働やケア活動の境界を流動化し, それらの活動すべてを包括するような方向, すなわち労働概念の意味変容へ向かうことを意図して提案された試みであった. しかし, 現状においては, そもそもの批判対象であった職業労働の構造を強化する政策にこの市民労働の名称が使われている. 他方, 市民参加においては, 部分的にではあるが, 市民労働の政策理念が生かされ一定の成果をあげている.
  • 支援活動における空間の複数性・対比性の活用
    川北 稔
    2014 年65 巻3 号 p. 426-442
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    ひきこもり支援活動は, 社会参加から撤退した多様な若者に対し, 新たな参加を支援する活動や拠点を提供してきた. だが従来の研究は居場所内部でのアイデンティティの共有や体験の蓄積に焦点化する一方で, 支援が一定の場所や空間において行われること自体の意義は十分に議論されていない. 若者による活動空間の喪失から新たな空間獲得への中継地として, 支援空間はどのように展開され, 体験されているのか.
    支援団体におけるフィールドワークから, 支援者による空間の展開の経緯を追うとともに支援に参加する若者の語りを検討することで, 以下の点が明らかになった. 支援団体は, 多様な支援拠点を家族支援, 居場所提供, 就労支援等の目的で準備してきた. それらの支援空間は若者の段階的移行を支えるため, 空間の間の分離や統合などの配慮を伴いながら配置されている. 空間内部の体験活動や人間関係の多様性は, 必ずしも支援の意図と対応しない選択的な関与を可能とし, 若者の側の価値観の変容や役割獲得のチャンスに結びついている. また複数の支援拠点の存在は, 長期化する支援においてトラブルを経た再度の参加をも保証する. こうした複数の空間での体験を対比することで, 若者は自己理解や, 将来展望のための基準を獲得することが可能となる. 支援空間の多様性・対比性を通じた社会参加の過程は, 既存の生活の文脈を喪失した生活困窮者の社会的包摂に応用可能な視点といえよう.
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