社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
70 巻, 2 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
投稿論文
  • ――日本企業への新卒就職を中心に――
    園田 薫
    2019 年70 巻2 号 p. 91-108
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/11/13
    ジャーナル フリー
    日本企業で働く外国人が数年で離職してしまうのは,今なお残る日本的な雇用慣行に原因があると指摘されてきた.そうした既存研究では,外国人のキャリア選択を十分に検討していないだけでなく,日本企業で働く〈企業〉の選択と日本という場所で働く〈国家〉の選択が混同して扱われていた.そこで本稿では〈企業選択〉と〈国家選択〉という分析概念を用い,外国人が日本企業での就労を決定した主観的なキャリア選択の過程に着目することで,外国人の離職が生じる構造的要因について検討し,外国人の雇用をめぐる日本企業の現状と展望を産業社会学的に考察する.
    日本の大企業で働く新卒外国人へのインタビュー調査から,特に留学生において国家選択が企業選択に先立ち,日本企業で働く直接的な原因になっていることが明らかになった.そのなかにはさまざまな制約で日本以外の国で働く選択ができず,また日本企業以外で働く選択肢も失ったと感じ,「次善の策」として日本企業へ就職したと考えるものが多い.以上の結果は,日本企業と外国人の軋轢を生むのは日本企業の雇用慣行への不満や魅力の少なさではなく,必ずしも日本企業に関心のない外国人がキャリア選択の過程で日本企業への就職を選択しているためであるということを示唆する.外国人と日本企業の相互理解を深めつつ,意図せずとも日本の労働市場に留まる傾向がある留学生の企業とのマッチングを制度的に支えることが重要だと考えられる.
  • ――あるトランス女性の学校経験の語りを通して――
    土肥 いつき
    2019 年70 巻2 号 p. 109-127
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/11/13
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,日常生活場面におけるトランスジェンダー(以下,TG)の性別変更をめぐる実践の過程を明らかにすることである.
    これまでのTG 研究は,TG に焦点化し,性別違和や自己認識などを明らかにしてきた.それに対して本稿は,TG の性別変更はTG の実践と他者の承認によって成立すると考え,後に法的に性別変更したTG の学校経験の語りを通して,外見や振る舞いを変えたときの教室内の所属グループや他者からの性別の扱いの変化を分析した.
    その結果,以下のことが明らかになった.第1 に,TG がおこなう外見や振る舞いを変える実践は,性別の位置どり(教室内の他の女子/男子との距離)を変える行為であるということ.第2 に,性別の位置どりの変化に対する他者の承認のもと,TG による性別の境界線の越境や再設定により,他者からの性別の扱いが変化すること.第3 に,教室内に働く出生時に割り当てられた性別へと水路づける強制力が,性別カテゴリー内の位置どりの自由度だけでなく,性別カテゴリーと出生時に割り当てられた性別の結びつきや性別カテゴリー間の境界線の自由度にも影響を与えていたこと.
    以上のことから,日常生活場面における性別変更は,TG が他者との相対的な性別の位置どりを変えるとともに,性別カテゴリーの境界線の越境や再設定を他者から承認されることを反復するという相互作用の中で成立する行為であることが明らかになった.
  • ――「人口方程式」の編成と政策論への導入――
    山田 唐波里
    2019 年70 巻2 号 p. 128-145
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/11/13
    ジャーナル フリー
    本稿の課題は,現代の日本社会において人口政策を規定している規範を取り上げ,その編成過程を政治権力との関連のなかで検討することである.特に,ミシェル・フーコーの「統治性研究」を参考に,これまでの研究では扱われてこなかった近代的人口論に基づく人口政策規範に注目した.
    現代の人口政策論では,人口と諸要素間の均衡が破られた際に人口問題が生じるとされており,均衡の維持/回復を目指すことが人口政策を導く規範となっている.本稿ではこの規範を〈均衡化〉と呼ぶことにした.
    〈均衡化〉は,1918 年の米騒動を契機として隆盛した過剰人口をめぐる議論のなかで編成された.人口と食糧の不均衡によって米騒動が生じたと考えられたからである.しかし,そうした人口と食糧の関係を主題化したマルサス的な人口論に対抗する形で,人口に関連する他の諸要素を主題化した人口論が登場してくる.このいわゆる「大正昭和初期の人口論争」を通じて,最終的にそれぞれの人口論を総合する形で「人口方程式」が定式化された.
    さらに,この人口方程式の均衡という枠組みは,論壇における抽象的な議論で終わることはなく,政策論の理論的基盤に据えられることになる.米騒動に代表される秩序問題への対応として,政策論の領域に,暴力による抑圧や監視による規律化とは異なる,人口の水準に作用することで人びとのふるまいを導く統治性に基づいた戦略が導入されたことを意味している.
研究動向
書評
feedback
Top