日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
25 巻, 2 号
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特別講演I
  • 宮本 顕二
    原稿種別: 特別講演
    2015 年 25 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    日本は世界の最長寿国です.しかし,私たちの周りを見ると,やれ胃瘻だ,中心静脈栄養だ,人工呼吸器だと,結局苦しみの中で亡くなっている患者が少なくありません.その理由は,延命至上主義の結果,高齢で終末期の患者に対しても,最後まで治療を続けるからです.一方,私たちが訪れた欧米豪では,高齢で食べられなくなったら,胃瘻や中心静脈栄養などの人工栄養は一切行わず,食べるだけ,飲むだけで自然に死を迎えさせています.無理に食べさせず,延命措置もしないため,いわゆる寝たきり老人はいません.誤嚥性肺炎も問題になりません.患者だけでなく,自分も含めて,どのような最期を迎えたいかを,今こそ,真剣に考える時です.
特別寄稿
  • ――患者組織の観点から――
    遠山 和子
    原稿種別: 特別寄稿
    2015 年 25 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    2003年秋,個々に活動していた患者団体が日本呼吸器学会(JRS)の呼びかけで患者円卓会議を開催,全国規模で連合して協力し合うことを確認,翌年,JRSと6患者団体とで日本呼吸器疾患患者団体連合会(J-PORD)を組織し,活動を開始した.
    そして,この10年間,様々な活動が行われてきた.
    2005年と2010年に,在宅療養患者を対象に実態調査を行い,「在宅呼吸ケア白書」を作成し患者の要望を明らかにした.
    大きな成果として,慢性呼吸器疾患対策推進議員連盟が立ち上がったことが挙げられる.
    学会という専門的な立場から助言を得て,協働するようになり,診療報酬関係の要望も,行政から「科学的根拠に基づく提案・要望」として受け止められるようになった.
    この間,様々な活動が為されてきたが,未だ道半ばであり,さらに発展させていかなくてはならない.今後とも,患者がかかえている諸問題・要望を積極的に発信し,より良い医療環境の構築に努めていきたい.
シンポジウムI
  • 森 由弘, 菊池 宏, 市川 裕久, 荒川 裕佳子, 厚井 文一
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    COPDの病診連携に積極的に取り組むことにより,地域によっては成功事例も報告されているが,大多数の病院や地域では種々の課題に直面し,いまだ実現していないのが現状である.COPD病診連携の現状と課題を明らかにするため,受け入れ病院として当院と紹介する側の香川県下診療所をそれぞれの立場から検討した.当院の過去1年間のCOPD紹介患者は73例であったが,全呼吸器科紹介者の約11%にとどまった.紹介目的は息切れなどの精査依頼が40%と最も多く,急性増悪38%,肺炎合併22%であった.紹介時や退院時のタイミングや対応について具体的な取り決めが無く,COPD診療の地域連携パスの早急な作成が望まれた.また外来呼吸リハビリを実施している施設が高松医療圏に無く,呼吸リハビリの継続性において課題が残った.香川県のCOPD死亡率は過去10数年連続して全国平均を上回っており,役割分担を明確にした病診連携のネットワークを構築する必要が示された.
  • ――COPD患者の生活の再構築をめざして――
    梨木 恵実子, 山路 聡子, 大槻 雪枝, 堀江 健夫, 土橋 邦生
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    増悪で入院したCOPD患者は,運動・薬物・酸素療法,等の様々な教育をうけるが,退院して間もなく増悪し再入院することは少なくない.その背景として,高齢化に伴う認知機能の変化や介護力,患者の歴史の中で作り上げてきた価値観などが考えられる.訪問看護は,医療的側面だけでない生活者として患者の全体を捉え,病院での教育内容を引き継ぎ共有しながら,患者及び家族の生活に合うように医療・介護の調整を行い,退院後の生活の再構築を目指すことが役割としてあげられる.そのための具体的な方法には,患者の希望する生活に沿った活動の維持・拡大,薬物療法,呼吸日誌やアクションプランなどを活用した増悪の早期発見と対応ができる環境づくりがあげられる.また,患者の力を最大限に引き出すとともに,病院や介護職を含む各在宅サービスと連携した支援が必要である.
シンポジウムIII
  • 渡辺 憲太朗, 長濱 あかし
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 150
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
  • 長谷川 智子, 石崎 武志, 浅川 久美子
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 151-153
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    呼吸器疾患は喫煙や環境的化学物質への長期暴露により発症するものが多く,患者とその家族にとっては,危険因子への暴露行動が生活パターンの中に組み込まれてしまっている.そのため,呼吸器疾患を発症した患者は,まずは日常生活行動の変容を行っていく必要がある.また,慢性呼吸器疾患をもつ患者とその家族は,多岐にわたる症状や障害を持ちながら,症状コントロールや治療を生活の中に組み込み,疾患と治療をともに生きる生活パターンを作り出して行かなければならない.慢性疾患をもつ患者とその家族へのケアを考えるとき,ただ単に症状コントロールや障害を持っての生活を考えるだけにとどまらず,病気の慢性的状態がもたらす問題の多様性・多面性・複雑性を考慮し,患者と家族の人生や価値観の深い部分まで踏み込んで考えなければならないといわれている1).そのケア提供の中心的存在となり得る存在が,患者・家族の生活にもっとも近い看護師であるといえよう.
    慢性呼吸器疾患看護認定看護師は,安定期はもとより,増悪期や終末期においても身体的問題に加え,心理的,社会的,スピリチュアルな問題を理解した上で,問題解決のための援助ができる看護師であると期待されている.また,看護活動の範囲も,患者・家族に対する直接ケアや教育介入にとどまらず,禁煙指導を始めとする予防活動や呼吸リハビリテーションなどの回復期の援助にも広がっており,病棟・外来・リハビリテーション・訪問看護ステーションなど多岐にわたる部門での活動が期待されている.本シンポジウムでは,様々な部署での認定看護師の活動を紹介する.
シンポジウムIV
  • ――非侵襲的人工呼吸・ネーザルハイフロー・挿管人工呼吸の選択――
    横山 俊樹
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    急性呼吸不全の呼吸管理をいかに選択するかについては,まず病態や重症度を適切に把握することが重要である.近年改訂されたARDSの診断基準であるBerlin定義では,適切な呼吸管理のもとに酸素化を評価することが重要視され,またその重症度に基づいて呼吸管理戦略を用いることが提唱されている.全体を通じて重要なのは低1回換気量と適切なPEEPであるが,軽症例においては非侵襲的人工呼吸が重要であり,重症例については腹臥位,高頻度振動換気,膜型人工肺など様々なものが提示されている.また近年では,軽症例についてはネーザルハイフローにも注目が集まっている.重要なのは様々な呼吸管理を状況に応じて適切に使い分けていくことである.
総説
  • 高橋 仁美, 岩倉 正浩, 柴田 和幸, 大倉 和貴, 川越 厚良, 菅原 慶勇, 柏倉 剛, 本間 光信, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
    原稿種別: 総説
    2015 年 25 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    COPD患者に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,運動療法,作業療法,理学療法,患者教育(禁煙・身体活動性の維持)などで構成される.このうち運動療法は呼吸リハの中核であり,理学療法については,効率の良い運動療法を行うためのコンディショニングの位置づけと解釈される.しかし,本来,「理学療法」には運動療法が含まれるため,「コンディショニングと運動療法を合わせて理学療法とする」ことを提言したい.COPD患者は発症早期の軽症な段階から身体活動が低下していることが報告され,身体活動が生命予後に影響することが明らかになりつつある.COPDは全身性炎症を伴う疾患として捉えられているが,身体活動と全身性炎症の関連については必ずしも明らかでない.しかし近年,歩行による身体活動の向上によって全身性炎症の低下を示唆する報告も出てきている.運動療法や身体活動の維持・向上によって,生命予後が改善すると結論付けられる日も近いと期待される.
研究報告
教育講演II
  • 陳 和夫
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 2 号 p. 168-173
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    酸素は生体の生命維持に不可欠の分子であり,組織の低酸素症の改善のため吸入気の酸素濃度を高めて酸素投与する治療法が酸素療法である.組織の適切な酸素化の維持には,酸素療法のみならずヘモグロビン,心拍出量などの組織への酸素運搬に関係する因子も重要である.酸素療法には吸入気酸素濃度が患者の換気に依存する低流量法と依存しない高流量法がある.従来の高流量法は吸入気酸素濃度の上限が50%程度であったが,最近は高流量法にhigh flow法が出現し,さらに高濃度まで投与可能になった.酸素投与が必要な呼吸不全患者の一部は,経過中にコントロール困難な低換気を伴う患者が出現し,換気補助が可能なNPPVが必要となる.一般的に酸素投与が必要な呼吸不全患者は,運動中または睡眠中にさらなる血液ガスの悪化を招くことが多く対応が必要である.呼吸不全患者の睡眠呼吸障害の対応には,睡眠時無呼吸とレム(REM)睡眠期に特に重篤となる睡眠関連低換気に関する認識が必要となる.
教育講演VII
  • ――新しい3軸加速度計システムを中心に――
    塩谷 隆信, 佐竹 將宏, 照井 佳乃, 佐藤 瑞騎, 坂田 俊一, 岩倉 正浩, 大倉 和貴, 川越 厚良, 菅原 慶勇, 高橋 仁美
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 2 号 p. 174-179
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    身体活動とは,日常生活活動と運動を合わせたものである.身体活動は,安静レベル以上のエネルギー消費に至る骨格筋の活動によってもたらされるすべての身体的の動きであり,運動,家事や仕事などあらゆる活動が含まれる.近年,日常生活における身体活動量を評価する方法としては.加速度センサーを3平面で用いる3軸加速度計が主流となってきている.
    新しい3軸加速度計システムでは,日常生活における臥位,座位,立位,歩行,車いす駆動の時間,姿勢動作変換回数を連続して測定することが可能である.本システムは,脳卒中およびCOPD患者においてその測定方法の妥当性が検証され,また両疾患の1日における歩行,立位,車いす駆動時間が報告されている.
    今後は,運動療法や薬物療法による身体活動の評価指標として,新しい3速度計システムを用いたより正確な身体活動量の測定が期待される.さらに,より簡便で客観的な評価方法の確立も望まれる.
教育講演XII
  • ――胸部X線をどう見るか――
    久保 武
    原稿種別: 教育講演
    2015 年 25 巻 2 号 p. 180-185
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    胸部X線写真は肺病変の評価に必須の検査である.評価のポイントは多いが,病態の把握に特に重要な項目として肺容積,肺野透過性,肺血管影がある.肺容積は肺の病態を評価するのに基本的な情報で,通常は横隔膜の位置を指標として判断する.正常の横隔膜の位置には幅があるが,立位で背側第10肋間に重なることが標準的である.肺透過性の異常はほとんどの肺病変で認められる所見だが,境界不明瞭な場合は意外に指摘することが難しい.左右肺の対応する部位を比較しながら読影する習慣をつけると良い.肺血管については,明瞭さ,太さ,数に注意する.立位では正常の肺血管は上肺よりも下肺で太い.肺血管は肺野病変の評価にも利用できる.血管影が局所的に不明瞭化している場合,その部位の肺野に病変があることを疑う.上記のポイントを意識して胸部X線写真を見ることにより,肺の病態についてより的確な情報を得ることができる.
シンポジウムII
  • 陳 和夫, 津田 徹
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 186-187
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
  • 蝶名林 直彦, 中岡 大士, 岡藤 浩平, 北村 淳史, 冨島 裕, 仁多 寅彦, 西村 直樹
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    Nice studyにて日本全体のCOPDの潜在的患者数を含めた総患者数がある程度予測されたが,COPD患者の日本国内の各地域での実態については,人口密度の違い,都市部か山村か,また各地方での気候や生活様式等によりかなりの影響を受けると考える.
    今回,都市部の主に急性医療を担当する当院においてCOPDの入院実態を調査した.過去3年間の全入院回数は475回であったが,呼吸器内科のみに絞ると再入院例を含めて281回となり,そのうち初回入院のみを抽出すると198回(例):男女163/35,平均年齢75.9歳,入院期間21.4日であった.重症度ではstageⅡ+Ⅲが62%を占め,BMIは18.5 kg/m2 以下が75例(38%)を占めていた.合併症では肺炎を含む呼吸器感染症99例(50%)と高く,心疾患・肺癌が続いた.全例の平均の入院回数は2.19±1.69回であったが,呼吸器内科のみで悪性腫瘍合併を除いた90例について,調査期間中の単回入院と複数回入院例とで重症度(stage)・栄養状態(BMI)を比較したがその分布に特に有意差は認めなかった.呼吸不全に対する初期治療では人工呼吸管理33例(17%)〔NPPV26例,挿管7例〕,酸素療法124例(63%)であったが,退院後の在宅NPPVは4例のみであるが,HOTは32例(16%)に行われていた.
  • 武知 由佳子, 横田 直子, 遠藤 直子, 丸山 ゆかり, 石山 亜希子
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    COPD患者にとって,急性増悪は致死率が高く,著しくQOLを損じる病態である.COPDの医療費のほとんどを急性増悪による入院費が占める.重症から超重症のCOPD患者を支える在宅療養支援診療所で,急性増悪に至る手前の,自己コントロール域より逸脱した呼吸状態の変化を捉え,アセスメントし,必要な包括的COPD呼吸ケアの介入がなされ,真の慢性安定期が導き出せれば,あまり急性増悪は起こらなくなる.そしてCOPD患者のQOLが高く保て生命予後が改善し,良好な医療経済効果を生むことは間違いないと思われる.しかし全てが患者自身の生活に即したpurpose driven pulmonary care(目的に導かれた呼吸ケア)であるべきと思う.
  • 石原 英樹
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 197-198
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    COPD患者の在宅ケアには,薬物療法のみならず,包括的なアプローチが必要である.呼吸不全に対する代表的な在宅呼吸ケアメニューの一つである在宅酸素療法は,わが国でも広く普及・定着している.一方,高二酸化炭素血症を伴う患者の低酸素血症に対する治療は,酸素療法を中心に行われてきたが,肺胞低換気を認める患者には,酸素療法だけではなく,何らかの換気補助療法の必要性が指摘されていた.近年,高二酸化炭素血症を伴う患者に対する換気補助療法として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が普及しつつある.NPPVには,従来の人工呼吸法にない簡便性・早期導入の容易さなどの利点があり,在宅NPPV症例数は急増傾向にある.
    また,円滑な在宅医療継続のためには,地域医療連携が必要である.地域とのネットワーク形成によって,医療・福祉の両面から総合的に支援することが可能になる.
  • 富井 啓介
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 25 巻 2 号 p. 199-201
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    神戸市の超急性期医療の中核を担う当院では,COPD患者の外来受診は年間590例,うち25%が1回以上の入院を要した.また2回以上繰り返し入院する患者の約半数は肺癌関連の予定入院であった.一方救急入院となったCOPDは年間71例あり,50例が急性増悪であった.急性増悪例の1/4で人工換気を要したが,ほとんどがNPPVで対応され予後良好であった.むしろ急性増悪以外の理由で救急入院した症例は挿管に至る比率が高く,予後も不良で在院日数が長くなる傾向があった.
  • ――慢性呼吸器疾患看護認定看護師の立場から――
    井本 久紀, 中山 初美, 加賀 美由旗, 津田 徹
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 202
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    当院は一般病床69(10:1看護,平均在院日数18日)であり,入院患者の90%以上が慢性呼吸器疾患である.また,4床の睡眠PSG検査室を持ち,睡眠呼吸障害だけでなく,非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)のタイトレーションなどにも対応している.平成24年度における当院のCOPD患者数は271名であり,在宅酸素療法(HOT)を行なっている患者数は80名,在宅でNPPVを行っている患者数は21名である.入院回数はのべ111件.このうち増悪によるものが39件(治療日数:最短10日・最長189日・平均54.8日),呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)目的が30件(治療日数:最短9日・最長184日・平均61.2日)であった.HOT患者80名中の20名(25%)が急性増悪で入院.一方HOTなし患者の増悪は16名(約8%)であるが,この内5名が増悪を契機にHOT導入に至っている.呼吸リハビリ入院を行った患者の退院後の増悪件数はOである.慢性呼吸器疾患看護認定看護師(CN)としての活動は平成24年7月より開始,まずはHOT患者宅への訪問を行い,HOT機器,NPPVの設定・マスクフィッティング,吸入指導や家庭環境などの問題点の洗い出しと情報の集約をCNで行い,病棟看護師~訪問看護師の連携がスムーズに行えるようにした.病棟内では,NPPV専従夜勤枠を確保し,夜間のマスクフィッティングや設定変更に対応できるようにした.COPD増悪の原因をとらえ,アクションプランを作成することで増悪の重症化を防ぐことができる.今後はさらに,HOT看護外来を開設し,家族のサポート状況や経済状況・就労状況をも考慮した,個別的で実践的なアクションプランへの見直しや電話サポートの充実などを目指していきたい.
原著
  • 橋場 聡志, 宇津木 光克, 黒澤 弘行, 松崎 晋一, 山田 正信, 土橋 邦生, 丸田 栄
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)急性増悪後の呼吸リハビリテーションにおける短時間作用性β2 刺激薬の動作前吸入(アシストユース)の効果について検討を行った.対象症例は10例,急性増悪に対する標準治療終了後,呼吸リハビリテーション時にアシストユース(プロカテロール吸入)を隔日で行い,各評価項目についてアシストユースの有無で比較した.歩行練習時の同一距離歩行における「Borg Scale」「経皮的酸素飽和度(SpO2)低下値」「SpO2 低下からの回復時間」,および中止基準に至るまでの「連続歩行可能距離」において,アシストユースにより有意な改善を認めた.過呼吸法による動的肺過膨張の評価においても,アシストユースにより有意な改善を認めた.以上のことからCOPD急性増悪後の呼吸リハビリテーションにおけるアシストユースの有効性が示唆され,その機序として動的肺過膨張の改善効果が考えられた.
  • 寺田 泉, 大野 友久, 大石 佐奈美
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    経口挿管中患者において,気管内チューブによる口腔粘膜の潰瘍形成や人工呼吸器関連肺炎のリスクがあり口腔ケアが重要である.しかし一時的に固定を外すため誤抜管などのリスクがあり,その軽減のために人員や時間を要する.そこで我々はアンカーファストを導入し,口腔ケア時の有用性を検証した.
    対象は20XX年10月~20XX+1年2月に当院で経口挿管中の患者で,アンカーファストを装着した15名と,テープ固定の6名とした.対象の性別,年齢,経口挿管日数,調査日,残存歯数について調査し,口唇・口腔粘膜の潰瘍の発生率,口腔ケア対応人員数,口腔ケア所要時間,Plaque Control Record: PCRについて比較した.
    その結果,アンカーファスト群では口唇・口腔粘膜の潰瘍形成の発生率および口腔ケア対応人員数が有意に減少し,また口腔ケアの所要時間およびPCRが減少する傾向があった.
    以上のことから,アンカーファストの使用は安全・効果的・効率的な口腔ケアに繋がり,有用と考えられた.
  • 佐々木 賢太郎, 木村 剛, 小島 聖, 樋口 博之
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【目的】自転車漸増負荷下における運動中の斜角筋(Sc)と胸鎖乳突筋(SCM)の動員・活動特性の違いを明らかにすること.【方法】健常男性25人を対象とし,エルゴメーター駆動中の呼気ガス分析と吸気筋活動を評価した.多段階漸増運動負荷(20 watt/分,最大 200 watt,全9ステージ)を実施し,各ステージ後半30秒間における一回換気量(TV)と筋活動量の平均値を求め,それぞれ安静坐位時の値で正規化した. stage 1 から7までの値を解析した.【結果】運動開始時(stage 1)の筋活動と比べて,Scの活動はSCMよりも早いステージから有意な上昇が認められ,活動上昇の勾配も急峻であった.各ステージにおける筋活動量をTV平均値で除した値の推移では,Scはstage 1 と比べて有意な変化が認められなかったのに対し,SCMではstage 4 以降は有意に低下した.【結語】SCMと比べて,Scは早期から動員されたが,その要因としてmechanical advantageの大きさが関係していることが示唆された.
  • 髙橋 佑太, 川島 拓馬, 廣田 千香, 木村 雅彦, 関根 一真, 高橋 太郎, 原口 水葉, 原田 尚子, 宮尾 直樹
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 218-221
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【背景】最大歩行速度(MWS)は,歩行能力の評価指標としてだけでなく,高齢者の予後予測指標としても有用であり,健常者では下肢筋力やバランス能力の影響を受ける.一方,COPD患者のMWSの規定因子は明らかでなく,呼吸機能低下や呼吸困難が影響するとの報告が散見される.本研究では,COPD患者のMWSについて,身体機能を含めた規定因子の検討とCOPDの予後予測指標との関連を検討した.【方法】対象はCOPD患者40例とし,BMI,mMRC,%FEV1,膝伸展筋力,片脚立位時間,MWS,6分間歩行距離,BODE index,ADO indexを評価した.【結果】重回帰分析の結果,MWSの規定因子にmMRCと片脚立位時間が抽出された.MWSはBODE,ADO indexと有意な相関を認めた.【考察】COPD患者のMWSは呼吸器症状と身体機能低下の影響を受け,予後予測指標としても有用である可能性が示された.
  • 近藤 哲理, 日比野 真, 大江 元樹, 赤澤 賢一郎, 谷垣 俊守, 加藤 さくら子
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 222-224
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    われわれは以前にドイラパウダー吸入器(DPI)からの吸気パターンを表示する携帯型吸入指導器を報告した.今回は,より効率的な吸入指導を果たす目的で薬剤放出量も可視化する装置を開発した.アダプターによりタービュヘィラーないしディスカスから吸入を行い,吸気速度と放出薬剤量の時間推移を液晶画面に表示できるようにした.ともに30 L/min程度の吸気速度で薬剤の放出が開始していること,薬剤放出は吸気速度のピークに先行してピークに達していること,高い吸気速度が薬剤放出を必ずしも増加させないことなどが可視化された.さらに,低肺機能患者でも吸気パターン指導でDPIが適切に使用できる可能性も示された.
  • 猪飼 やす子, 田辺 直也, 岸森 健文, 渡邉 壽規, 野原 淳, 島田 一惠, 中谷 光一, 川上 賢三
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【目的】COPD,慢性間質性肺炎(IP)患者の終末期医療に関する考え方を明らかにする.【方法】非増悪期に質問票により調査し,終末期医療に関する意思決定への主体的関与を希望した例(自分群)と家族に任せることを希望した例(家族群)に分け検討した.【結果】COPD 12例,IP 9例を登録した.自分群(COPD 6例,IP 6例)は家族群(COPD 6例,IP 3例)より高齢で自覚症状が強く,全て在宅酸素療法中で,1年以内の増悪歴や過去の終末期医療に関する病状説明受歴が多かった.自分群のCOPD 33%,IP 67%,家族群のCOPD 17%,IP全例が心肺延命処置に関し「今は考えたくない」と答えた.【考察】進行した病状,過去の増悪体験,終末期医療に関する説明受歴を有する患者が終末期医療に関する意思決定への主体的関与を希望する傾向を認めたが,個別の質問には意思表示を躊躇することもあり,複雑な患者心理及び医療従事者側と患者,家族側で価値観,理解に大きな乖離が存在する可能性が示唆された.
  • 岩倉 正浩, 佐竹 將宏, 川越 厚良, 坂田 俊一, 永田 正伸, 伊藤 あずさ, 佐藤 瑞騎, 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 塩谷 隆信
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 231-237
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【背景】四つ這いは小児の代表的な移動手段であり,胸郭や呼吸筋の発達にも関与する.しかし,四つ這いと呼吸機能の関連を検討した報告はなく,簡易的に四つ這い時間を測定できる方法は開発されていない.そのため,四つ這いと呼吸機能の関連を検討するために,簡易的な四つ這い時間測定方法の開発が求められている.
    【目的】3軸加速度計による四つ這い時間測定方法を開発し,その妥当性を検討する.
    【対象と方法】健常学生5名を対象に3軸加速度計による四つ這い時間測定方法を検討した(実験1).健常学生11名を対象に測定方法の妥当性をBland-Altman分析にて検討した(実験2).
    【結果】測定方法は体幹部端末傾斜角度が>45°で立位,歩行,≦45°で四つ這い位・移動となった(実験1).立位,歩行,四つ這い位・移動でわずかな加算誤差を認めた(実験2).
    【結語】3軸加速度計による四つ這い時間測定が可能である.四つ這いと呼吸機能の関連の検討が期待される.
  • 山本 加奈子, 香川 智正, 酒井 正雄, 手塚 正美, 益田 幸, 大家 仁美, 松下 祥子, 小玉 篤, 藤江 美佳, 横澤 悠貴
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 238-243
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    本研究は,看護師の口腔ケアへの悩みを減らし,技術向上に必要なRST介入の必要性について明らかにすることを目的に,看護師を対象に自記式質問紙調査を実施した.口腔ケアに悩みがない看護師は,悩みのある看護師に比べて,知識項目の理解があり,「意識」「知識」「技術」「推進」の全ての項目間に正の相関が見られた.また,「口腔ケアが充分できる」と正の相関があったのは,誤嚥のリスクが高くケアが難しい「意識障害患者のケアができる」であった.口腔ケア技術向上には,マニュアル活用の継続と,RSTによる看護師への知識の普及とベッドサイドでの技術指導や経過記録の充実,口腔アセスメントシートとケアプロトコールの遵守の定着化の必要性が示唆された.看護師の口腔ケア技術の向上には,RSTが口腔ケア実施者として積極的に働きかける事に留まらず,看護師が口腔ケア技術向上に能動的に取り組むように働きかけることが課題と考える.
  • 白木 晶, 安藤 守秀, 中島 治典, 日比 美智子, 狩野 裕久, 堀 翔, 進藤 丈
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 244-247
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【背景】気管支喘息,COPDでは吸気流速はFEV1 と共に低下するため,FEV1 低値症例ではドライパウダー製剤(DPI)が十分に吸入できない可能性がある.【目的】FEV1 低値症例において,吸気流速の観点からDPIディバイスによる違いを比較した.【方法】安定期の気管支喘息,COPD,両者の合併例においてFEV1 1,500 ml以下の症例を対象とし,ディスカス,タービュへイラー,ハンディヘラー,ブリーズヘラー,エリプタの練習用キットを使用し,DPIを吸入するのにその流速が十分かどうかを調べた.【結果】気管支喘息12例,COPD 32例,両者の合併9例の合計53例で測定を行った.吸気流速不足と判定された症例数は,ディスカス1例,タービュへイラー6例,ハンディヘラー1例,ブリーズヘラー2例,エリプタ3例であった.【結論】FEV1 が低下した症例においてもほとんどの症例でDPIが使用可能であったが,タービュへイラーについては吸気流速不足に陥りやすいため注意が必要である.
  • 吉田 幸, 八田 順子, 岡野 安太朗, 田上 敦朗, 駒井 清暢
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 248-252
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation: NPPV)によるマスク装着にともなう皮膚障害を改善させる目的で,慢性呼吸器疾患看護認定看護師,皮膚科医師,臨床工学技士による定期的回診(マスク回診)を創案し実施した.18名の神経筋疾患患者を対象に,診療録から後方視的にマスク回診前後の皮膚障害および関連する情報を収集し比較検討した.皮膚障害は褥瘡の深達度による分類(NPUAP, 2014)を使用した.回診前はⅡ度が8名だったが,回診後は1名と減少した.マスク回診チームは,各患者のNPPVマスク皮膚障害の原因をそれぞれの専門に従って分析し,それを基に回診の場で意見交換を行い,協動チームとしての対策立案・実施と記録作成を行うことができた.加えて,病棟スタッフや家族への働きかけと共に患者への治療的介入を継続して行ったことが,NPPVマスク関連皮膚障害の改善につながった.
  • 市川 裕久, 永井 仁志, 森 規子, 横内 美和子, 日高 ゆかり, 菊池 宏, 荒川 裕佳子, 森 由弘
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】遷延性・慢性咳嗽の原因疾患として喘息・咳喘息の頻度は高いが,日常診療において診断に苦慮する場合があり,有力な補助診断が求められている.【方法】2012年4月から2013年2月までに遷延性・慢性咳嗽を主訴に来院し,画像上,肺野に異常を認めず,呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)とモストグラフを測定した45人について後ろ向きに検討した.【成績】平均年齢は54歳,男性20人,女性25人.喘息・咳喘息と診断した患者は34人,その他は11人.喘息・咳喘息患者34人の平均FeNO値は48.1でその他の患者の13.6より有意に(p<0.01)高値であった.モストグラフのデータでは,R5,R20,R5-R20,X5で有意差を認め,これらについてROC曲線を作成したところ,R5のAUCが0.791と最も良好で,cut off値は2.91であった.両者を組み合わせることにより陽性尤度比5.2と良好な診断特性が得られた.
    【結論】FeNOとモストグラフは遷延性・慢性咳嗽患者の診断において有力な補助診断法と考えられた.
  • ~60歳以上の併存群と非併存群の比較~
    宮崎 慎二郎, 宮川 哲夫, 片岡 弘明, 石川 淳, 北山 奈緒美, 林野 収成, 船田 幸奈, 松元 一郎, 高木 雄一郎, 市川 裕久 ...
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 258-261
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    COPDの併存は虚血性心疾患の死亡リスクの増加に関連している一方で,軽症から中等症のCOPDは潜在的なリスクのまま見過ごされていることが多い.今回,60歳以上の虚血性心疾患患者177例を対象に潜在的なCOPDの併存率を調査し,COPD併存群と非併存群の比較を行った.潜在的なCOPD併存率は21.5%であり,9割以上が軽症および中等症であった.また,COPD併存群は非併存群に比べ,血管弾性と運動耐容能が有意に低下しており,これらがCOPDの併存が虚血性心疾患の予後を悪化させる一因と考えられる.虚血性心疾患患者においては,COPDの併存を疑い科科連携を図ること,両疾患に重要である運動療法や患者教育などのリハビリテーションを積極的に行う必要性が高いと思われる.
  • 乾 亮介, 森 清子, 中島 敏貴, 杉島 裕美子, 森 金子, 中島 雅美, 八川 公爾, 田平 一行
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 262-266
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】入院患者の誤嚥・窒息予防は重要であるが,具体的な取り組みに関する報告は少ない.今回,当院で誤嚥・窒息予防の現状を調査し,改善対策の後,その効果について検討したので報告する.
    【方法】院内の全看護師278名に対し誤嚥・窒息に関するアンケート調査を実施した結果,改訂水のみテスト(MWST)やフードテスト(FT)のマニュアルの認知度は48%と低く,食事介助中の誤嚥・窒息経験者は21%と高かった.対策としてマニュアルを改訂し,研修会や病棟で実技勉強会を実施し,マニュアルの周知徹底を図った後,同様の調査を実施した.
    【結果】MWST及びFTマニュアルの認知度は73.5%に上昇し,食事介助中の誤嚥・窒息経験者は1.8%に減少した.
    【考察】MWST,FTは一般的な嚥下機能評価であるが,看護師の認知度や実施率は低かった.周知徹底の取り組み後,MWST,FTマニュアルの認知度は向上し,誤嚥・窒息の経験は減少したが,十分ではなく継続した取り組みが必要と考えられた.
  • 木原 一晃, 鎌田 理之, 松尾 善美, 橋田 剛一, 川村 知裕, 平田 陽彦, 藤村 まゆみ, 井口 和江, 木島 貴志, 奥村 明之進
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 267-271
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    早期離床は肺癌術後周術期管理の重要な課題の1つである.私たちは肺癌術後患者の早期離床に関連する因子を,栄養指標を含む術前因子や術中因子から検討した.肺癌手術患者で呼吸リハビリテーションを施行した45例に対し,年齢等の背景因子,術前のGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)や呼吸機能,肺切除割合等と術後病棟歩行自立までの日数を調査した.その結果,術後2日以内に病棟歩行が自立した群(24例)は歩行が遅延した群(21例)よりGNRIが有意に高値(102±5/97±8),肺切除割合が低値(14±8%/22±10%)となった.さらに,多重ロジスティック回帰分析でもGNRIと肺切除割合は術後2日以内病棟歩行自立に影響し,ROC曲線によるカットオフ値はGNRIで99,肺切除割合で21%を示した.以上より,術前栄養状態及び手術侵襲の程度が肺癌術後患者の早期離床に影響することが示された.
  • 垣内 優芳, 藤原 麻子, 河原 由梨香, 森 明子
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 272-275
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中高齢者の随意的咳嗽力に関連する因子を検討することである.対象は中高齢者16名であった.咳嗽力に関連する予測因子は,年齢,胸郭拡張差,最長発声持続時間(MPT),口腔湿潤度,呼吸機能,呼吸筋力とした.咳嗽力の指標である咳嗽時最大呼気流速(CPF)と各予測因子を測定し,それぞれの相関分析を行った.CPFと関連を認めたのは,年齢,MPT,呼吸機能,呼吸筋力であった.咳嗽力は,加齢の影響を受ける可能性が示唆された.呼吸機能や呼吸筋力は,咳嗽メカニズムの第2相(吸気)と第4相(呼出)に,MPTは第3相(圧縮)に関連すると考えられた.
症例報告
  • 柳澤 幸夫, 竹田 絵理, 松尾 善美, 山村 篤司郎, 堀内 宣昭
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 276-278
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    【はじめに】携帯型酸素ボンベからの酸素投与は呼吸同調器を使用することが一般的である。今回,呼吸同調器の使用有無により酸素化が異なった症例を経験したので,若干の考察を加え報告する.【対象と方法】対象は85歳,女性で6ヶ月前より,間質性肺炎にてHOT施行中であった.本症例の安静時および運動時の呼吸による圧変動から呼気,吸気時間,IE比および呼吸数を算出し,酸素投与の連続式,同調式による各項目の比較を実施した.【結果】安静時,運動負荷時ともに連続式と比べ,同調式ではIE比で呼気比率が短縮し,呼吸数が増加した.また,呼気・吸気時間において吸気時間には有意差を認めなかったが,呼気時間には有意差を認めた.運動負荷では同調式でSpO2 の顕著な低下を認めた.【結語】本症例と同様のケースでは,同調器の使用有無での酸素化変動を確認し,呼吸法の指導や酸素の投与方法の検討などが必要である.また,精神的要因による影響も今後,検討すべき課題と考えられた.
  • 山越 志保, 川畑 雅照, 田中 舘基親, 成井 浩司
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 279-281
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,女性.8歳で筋ジストロフィーと診断,12歳より従量式人工呼吸器を用いた非侵襲的陽圧人工呼吸(Noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)を導入し,約20年継続していた.今回,人工呼吸器の更新のため入院して従圧式NPPVを試みたが,EPAPを 0 cmH2O にできず,また自己習得したエアスタックによる痰の喀出ができなかったため,再び従量式人工呼吸器を用いたNPPVを導入した.従量式NPPVを約20年間継続し,エアスタックにより長期生存し得た1例を経験したので報告する.
  • ――QOLの改善がみられた一例――
    岩満 加奈, 角 謙介, 榮 圭子, 藤原 直子, 田中 茉由, 白井 亮一, 樋口 久子, 川上 起久子, 椎葉 尚子, 坪井 知正
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 282-285
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    ネーザルハイフローは高流量・高濃度・高加湿の酸素を鼻カニューレで投与することが可能であり,近年注目されている酸素療法である.肺癌による低酸素血症に伴う呼吸困難を抱える1症例に対して,ネーザルハイフローによる呼吸管理を行った.マスクを用いた酸素管理に比べ,顔面の圧迫感がなく,呼吸困難を軽減することができた.そのため食事や排泄などの日常生活の動作から,家族との会話や仕事の継続などの精神的・社会的側面に至るまで,人間らしく生きたいという本人の思いを幾らか叶えることができた.
研究報告
  • 五十嵐 幸広, 安野 仁, 新田 俊介, 福村 直毅
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 286-290
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    肺炎発症は脳血管疾患の回復阻害因子となる.当院では呼吸リハビリテーション委員会(以下呼吸リハ委員会)を組織し,誤嚥性肺炎予防を目的に活動したところ回復期病棟における過去5年間の肺炎発症率は0.7%と低値を示している.呼吸リハ委員会では呼吸機能評価と経験を基に誤嚥性肺炎リスクを診断し,重症度別に介入計画を立案施行していた.そのため統一した基準の診断ではなく,経験の乏しい検者では判断に苦慮するものであった.
    そこで今回,誤嚥性肺炎発症リスクの重症度診断基準を作成するために,入院時呼吸機能評価の結果を後方視的に分析し,主観的な判断から客観的な指標の抽出を試みた.その結果,「肺炎既往」「日常生活動作自立度」「嚥下機能」「呼吸数」が感度73.1%,特異度92.6%と高い値を示した.この結果を基に医療指標を作成したことで,経験の乏しい検者であっても誤嚥性肺炎のリスクを診断できると考える.
  • 祝 貴子, 山本 由美
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 291-294
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    当院ICUは,独自の人工呼吸器ウィーニング評価表(以下評価表)を作成し,看護師がアセスメントを実施している.どのような条件下で人工呼吸器離脱が行われているかを調査し,当院ICUの人工呼吸器離脱前の呼吸状態の現状を明らかにした.対象は人工呼吸器から離脱可能であった患者76名.評価表を用いて,1回のみのウィーニング評価後に離脱できた群(以下離脱群)と2回以上のウィーニング評価後に離脱できた群(以下非離脱群)に分け,評価表項目の内容を比較した.Rapid shallow breathing indexの平均は,離脱群,非離脱群とも約45前後であり,有意差はみられなかった.意識レベルが低く,粘稠度の高い痰があり,PaCO2の蓄積した患者は,非離脱群に多く認められた(P<0.05).ウィーニング成功のポイントは,人工呼吸器離脱前の意識レベルの改善,粘稠痰の改善,PaCO2上昇を回避するケアにあると考える.今後,看護師主導の離脱の実現に向けて,安全なウィーニング評価が実践できる体制づくりが必要である.
  • 牛村 美穂子, 佐々木 由美子, 光國 若也, 久保 規彦, 杉本 親寿, 新井 徹, 井上 義一
    原稿種別: 原著
    2015 年 25 巻 2 号 p. 295-298
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    自己免疫性肺胞蛋白症(APAP)は,抗GM-CSF抗体による肺胞マクロファージ機能低下のため,肺胞腔末梢気腔内にサーファクタント由来物質の異常貯留を来す稀少疾患であるが,呼吸リハビリテーション(以下リハ)の報告は少ない.今回,当院で全肺洗浄(WLL)を施行したAPAP症例のリハ実施状況を報告する.対象は2007年6月から2014年3月にWLLを施行したAPAP患者17例(年齢中央値51.7歳,男性12例),のべ25回の入院で39回のWLLが実施され,リハは21回依頼された.WLL前のリハ介入は13回で,リハ実施期間の中央値は23日であった.患者のPAP重症度と症状(修正MRC)に有意な相関は認めなかった.WLL前後では呼吸状態はダイナミックに変動するため,リハ中は自覚症状による評価だけに頼らずきめ細かい患者への対応が必要である.リハの介入の役割は重要と考える.
  • 小金澤 敦, 山﨑 忍, 深町 秀彦, 吉田 雅俊, 萩原 和章, 田中 亜希, 宮城 浩一, 泉 從道, 黒岩 靖
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 299-301
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    当院は,療養病床,指定療養介護事業所,回復期リハ病棟を有しており,呼吸ケアに関して複雑多岐な問題を抱えている.そこで,2013年5月に呼吸サポートチーム(RST)を立ちあげた.当院の取り組みや課題について報告する.
    立ち上げまでの経過として,当院では2007年より指定療養介護事業所を開設したため,人工呼吸器管理されている神経筋疾患,重症心身障害児(者)の入所者数が増加してきた.適切な呼吸および人工呼吸器管理が行えること,院内スタッフに対しての教育・指導を目的としてRSTを立ち上げた.
    活動内容は会議と病棟ラウンドを定期的に実施.会議やラウンドを通して人工呼吸器設定等の検討を行ってきた.院内スタッフに対しては呼吸器の解剖,MI-E機器の使用方法に関する勉強会を行った.
    当院では2014年10月の時点で46名の方が人工呼吸器を使用していた.NPPV患者の呼吸ケアの統一やRSTから発信された情報を共有し,日常のケアに繋げていくことが今後の課題となる.
  • 星野 美穂子, 小野 薫, 家田 訓子
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 302-304
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    小児在宅医療特に在宅人工呼吸療法では,個々の疾患の重篤性や特殊性から,成人とは異なる退院支援や家族支援が必要である.当院は,1996年から院内多職種連携により小児在宅人工呼吸療法を開始した.当初より「在宅人工呼吸療法必要物品チェックリスト」や「在宅人工呼吸療法導入マニュアル」を使用して在宅移行をすすめた.そして,2011年に院内連携と家族支援のために,電子カルテを利用した「在宅調整表」および「在宅人工呼吸療法移行支援パス」を作成し,翌年にそれらを利用して在宅移行した症例を経験した.それらは,ともに在宅移行への院内連携および家族支援に有効であった.
  • 脇 実花, 秋田 馨, 宮本 直, 笹木 栄子, 原口 友里恵, 松井 弘稔, 金子 ひろみ
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 305-308
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    当院では,2012年7月よりFisher & Paykel Healthcare社より発売されたOptiflow®(ネーザルハイフロー:以下NHFとする)を導入した.NHFには様々な使用効果があるが,新しい酸素供給デバイスのためエビデンスが少ない現状がある.2013年度途中までに当院でNHFを使用した患者25名の疾患内訳,NHF使用前の酸素デバイス,NHFの使用時期,NHF使用後の転帰,NHFの使用期間,NHF使用中に経口摂取や会話が可能だったかを分析した.その結果,NHFを使用することにより,人工呼吸器装着以外の治療の選択肢が広がり,高流量酸素投与下でも会話や食事ができる機会が増えたことを認めた.
  • 木原 一晃, 間瀬 教史, 野添 匡史, 岡田 誠, 村上 茂史, 荻野 智之, 松下 和弘, 加治佐 望, 和田 智弘, 眞渕 敏, 寺山 ...
    原稿種別: 研究報告
    2015 年 25 巻 2 号 p. 309-314
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/10/06
    ジャーナル フリー
    術者20人において,呼吸介助中の手掌面圧分布をシートセンサで測定した.その結果,全例で手掌面圧は呼気開始より徐々に増加し,呼気終末で最大となった.圧増加の経過や呼気終末での手掌面圧分布は術者により違いがみられた.呼吸介助を客観的に評価するうえで手掌面圧分布の解析は有用であると考えられた.
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