日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
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ISSN-L : 1881-7319
28 巻, 3 号
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教育講演
  • 間瀬 教史
    原稿種別: 教育講演
    2020 年 28 巻 3 号 p. 365-370
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    本稿では,呼吸リハビリテーションで用いられることの多い体位と換気運動および呼吸機能について概説した.まず,換気運動は,駆動圧から見ると,胸部胸郭,腹部胸郭,腹部の3つの部位に分けて見る必要があることを説明した.その上で,体位変換に用いられることの多い体位でも,体位により換気運動がわずかながら異なること,呼吸介助法を行った時の換気力学的変化にも背臥位と側臥位で違いがあること,機能的残気量を中心に呼吸機能にあたえる体位の影響について概説した.さらに,慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸困難感の軽減に用いられる上肢で支持した前傾姿勢での呼吸機能の変化について概説した.

ランチョンセミナセミナー
  • 南方 良章
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2020 年 28 巻 3 号 p. 371-376
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    息切れを中心とする症状の改善は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する重要な管理目標のひとつである.息切れは,主に気流閉塞に伴う動的肺過膨張により生じるため,特に労作時に自覚しやすい.評価指標としては,間接的評価法と直接的評価法があるが,目的によって使い分けが必要となる.日本人COPD患者において,息切れは最も頻度の高い症状であり,治療によっても残存しやすい症状である.息切れは,呼吸機能,QOL,身体活動性,増悪と相関し,息切れの強い患者では総医療費は高額となる.長時間作用性β2刺激薬(LABA)は,長時間作用性抗コリン薬(LAMA)より息切れ改善効果が高い可能性があり,LAMA/LABA配合剤は単剤あるいはLABA+吸入コルチコステロイド薬よりも息切れをさらに改善する.本稿では,様々な観点からCOPDの息切れに対する整理を行う.

原著
  • 小林 佐也加, 中村 洋之, 岩崎 瞳, 大林 彩香, 山﨑 昌代, 喜田 美之, 井上 卓哉, 喜多 信之, 谷本 清隆, 岡田 節雄
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 377-382
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    「人生の最終段階」における医療・ケアに対して,医師・看護師が,「生命維持治療に関する医師指示書(Physician Orders Life-Sustaining Treatment: POLST)」を用いて終末期指示書を作成し,終末期に患者自身の意思・希望が反映されるよう取り組んだ.多くの患者が終末期に心肺蘇生や挿管を希望しなかった.抗生物質や非侵襲的陽圧換気療法(Non-Invasive Positive Pressure Ventilation: NPPV)は希望者が多く, NPPVは緩和目的を含めて8割が希望した.全ての項目において,肺癌・非肺癌で大きな差は認めなかった.家族は患者より延命治療を希望する傾向にあったが,話し合いの結果,患者自身の希望を尊重する例が多かった.

  • 岩崎 瞳, 中村 洋之, 小林 佐也加, 大林 彩香, 山﨑 昌代, 喜田 美之, 井上 卓哉, 喜多 信之, 谷本 清隆, 岡田 節雄
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 383-387
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    当院呼吸器病棟では人生最終段階における医療・ケアの決定に「生命維持治療における医師指示書(Physician Orders for Life-Sustaining Treatment: POLST)」を用いて,A項目:心肺蘇生,B項目:心肺停止前のNPPVを含めた呼吸管理,C項目:抗生物質,D項目:経腸栄養を聴取し医師指示書として運用しているが,当院入院及び外来(訪問診療)で死亡した患者50名に対して,終末期に患者自身の意思が反映されたかを検証した.当初積極的治療・措置を希望するも,終末期に患者または家族の希望変更や医学的適応がないため中止した例は認められたが,患者の意思に反する延命措置は経管栄養を行った1例のみであり,POLSTを用いることで,終末期医療に患者の意思を反映することが出来た.

  • 柏木 智一
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 388-392
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】肺切除患者における術前の運動耐容能低下が術後に及ぼす影響について検討した.

    【方法】VATSが施行された25例(平均年齢69.8±6.9歳)を対象とした.評価項目は術前と術後7日目の6MDと6MDの回復率,創部痛(NRS),術前の心機能としてLVEF,血液データとして(BNP,ALB値),BMI,喫煙指数,肺機能(1秒量,1秒率,VC,%VC,%DLCO),麻酔時間と出血量,術後の歩行開始日数,歩行自立日数,理学療法日数,入院日数,合併症の有無とした.統計解析は術前6MDに関連する因子をSpearmanの相関係数を用い,術前6MDを中央値 390 mで良好群と低下群の2群に分け比較した.

    【結果】術前6MDと術後6MD,VC,年齢で有意な相関が認められた.良好群と低下群の比較では歩行自立日数,VC,%DLCO,術後合併症において有意な差が認められた.

    【結論】術前運動耐容能の低下には年齢,VCが関係し,歩行自立期間の延長,術後合併症に影響を及ぼす可能性が示唆された.

  • 北村 智美, 五十嵐 歩, 山内 康宏, 千住 秀明, 堀江 健夫, 山本 則子
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 393-400
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】高齢慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者のセルフマネジメント(以下SM)行動の実態を明らかにすること.

    【方法】65歳以上のCOPD患者に対面式質問紙調査・診療録調査を行った.SM行動実施状況の記述統計量を算出し,息切れの程度別に各行動を比較した.

    【結果】81名(平均年齢78.2 歳)のデータを分析した.在宅酸素療法,禁煙や内服に関するSM行動実施群(以下実施群)の割合は約8割以上であった一方,呼吸法,運動やコミュニケーションに関する項目では3~6割であった.息切れ強群は息切れ弱群に比して,“急な動作を避ける”“室内の環境整備”“息苦しくなる動作を避ける”“排痰”“治療方針や療養場所に関する医療者との話し合い”の実施群の割合が有意に高く,“散歩”は実施群の割合が低かった.

    【結論】高齢COPD患者に対する,呼吸法や運動・コミュニケーションに関するSM支援が課題である.

  • 市川 裕久, 山本 晃一, 石川 淳, 片岡 弘明, 宮崎 慎二郎, 広瀬 絵美子, 松田 由美香, 荒川 裕佳子, 森 由弘
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 401-405
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【はじめに】特発性肺線維症急性増悪(AE-IPF)を来した患者に対しハイフローセラピー(HFT)は臨床現場で広く使用されるようになったが,その有用性についての知見に乏しい.

    【方法】2013年4月から2017年3月までに当院にAE-IPFのため入院しHFTを導入した患者30例について後ろ向きに検討した.

    【結果】平均年齢は78歳.男性22例,女性8例.21例(70%)が死亡し,死因は全例呼吸不全死であった.生存例と死亡例について比較検討したが,平均年齢(74.3才,78.9才),HFT導入時PaO2/FiO2比(144,105),入院時KL-6値(2,234,1,952)U/mLでは有意差を認めなかった.死亡例では,15例がHFTから非侵襲的陽圧人工呼吸(NPPV)へ移行後に死亡し,5例がNPPV不耐のためHFTのまま最期を迎え,1例は挿管人工呼吸器管理(IPPV)からHFTに移行後に再挿管となりIPPV下で死亡した.

    【結論】本病態においてHFTで酸素化が維持できず人工呼吸器管理となった16例全例が死亡した.HFTからNPPVやIPPVへの移行には慎重に適応を考慮する必要があると考えられた.

  • ―上肢・下肢エルゴメータの比較―
    宮下 誉都, 加賀屋 勇気, 古川 大, 大倉 和貴, 長谷川 弘一, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 406-411
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】本研究の目的は,吸気筋トレーニングが運動耐容能に及ぼす影響を,上肢エルゴメータと下肢エルゴメータで測定し,比較検討することである.

    【方法】本研究は,健常成人男性42名を対象にして吸気筋トレーニングを行った.吸気筋トレーニングは対象者を負荷強度によって60%PImax,30%PImax,10%PImaxの3群に群分けし,1日30呼吸2セットを2回,8週間行った.対象者に呼吸機能,呼吸筋力,吸気筋耐久力,peakO2の測定をトレーニング前と開始4週後,開始8週後の3回行った.

    【結果】60%群・30%群で呼吸筋力,吸気筋耐久力,上肢エルゴメータによるpeakO2に有意な向上がみられた.トレーニング条件による効果の差は呼吸筋力と吸気筋耐久力にみられた.

    【結論】本研究から吸気筋トレーニングをPImaxの60%負荷,30%負荷で8週間介入することによって,呼吸筋力と吸気筋耐久力,上肢のpeakO2が改善する可能性が示唆された.

  • 名倉 弘樹, 千住 秀明, 髻谷 満, 田中 貴子, 陶山 和晃, 田中 健一朗, 森 駿一朗, 福満 俊和, 神津 玲
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 412-416
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】漸増シャトルウォーキングテスト(incremental shuttle walking test:以下ISWT)は高齢者の運動耐容能評価にも適用できるが,最高歩行速度への到達が制限因子となり,特に女性健常高齢者の運動耐容能を過小評価している可能性がある.そこで本研究では,ISWTに走行を許可した漸増シャトルウォーク・ランテスト(incremental shuttle walk and run test:以下ISWRT)とISWTの試験結果および呼吸循環反応を比較して,ISWTが女性健常高齢者の運動耐容能として適用できるか否かを検討した.

    【方法】女性健常高齢者8名を対象にISWTとISWRTをランダムな順序で行い,各テストの総移動距離および呼吸循環反応を比較検討した.

    【結果】総移動距離および呼吸循環反応は,ISWTとISWRTとの間に有意差を認めなかった.最高酸素摂取量と総移動距離との間には強い相関(ISWT: r=0.74,ISWRT: r=0.80)を認めた.

    【結論】ISWTは十分な運動負荷を与えることができ,女性健常高齢者の運動耐容能評価としてその適用を支持する一つの根拠となると考える.

  • 大村 一之, 須賀 達夫, 長田 知美, 今 瑞季, 鈴木 結香理, 吉野 宗明, 中村 美樹, 根松 香織, 原 史郎, 青木 康弘
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 417-423
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【背景と目的】閉塞性睡眠時無呼吸症のCPAP治療において,当院の検査技師は導入1週間後に電話連絡を行うなどしてアドヒアランス向上に努めてきた.CPAP継続群と脱落群の電話介入時に得られた訴えと,脱落群の脱落理由を比較検討したので報告する.

    【方法】対象はCPAP加療中の232例.導入1週間後の訴えを調査し,1年継続群と脱落群の中止理由,性別,年齢,BMI,ESS,AHI,各種睡眠変数,SpO2,3%ODI,周期性四肢運動障害指数(PLMI),体位およびREM依存性の有無,CPAP圧等を比較した.

    【結果】治療早期に多い訴えはマスクと鼻口症状で,治療中止は半年までに多く,脱落群の中止理由は入眠障害や鼻症状,違和感が多かった.また脱落群では有意にBMIとAHI,3%ODIが低く,平均SpO2,PLMIが高かった.

    【考察】治療後半年間は,入眠障害や鼻症状,違和感などに注意し,導入早期の訴えが中止理由に繋がる可能性も考慮して,電話などで早期に問題を抱える患者に介入していく必要がある.

  • 梶原 浩太郎, 兼定 晴香, 田口 禎浩, 甲田 拓之, 牧野 英記, 三好 真理, 西岡 茉莉, 山内 美和, 松本 早苗, 兼松 貴則
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 424-428
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的・方法】医薬連携において吸入手技不良の患者背景のリスク因子を解析する.診療録による後ろ向き解析で,2015年2月から2018年5月に,院外薬局で気管支喘息またはCOPDの吸入指導を行った631件を解析した.

    【結果】患者背景は平均年齢 63.4歳,男性 54%.気管支喘息 60%,COPD 38%,咳喘息/アトピー咳嗽 13%(重複を含む).指導薬剤は810件.吸入手技不良は16%でみられ,内訳は薬剤セット3%,吸入器の操作 3%,握力 4%,吸入力 5%, タイミング 5%,息止め5%であった(重複を含む).

    吸入手技不良を目的変数に,患者背景(70歳以上,男性,DPI,pMDI,吸入力低下,手指関節変形・握力低下,自己中断歴,認知機能低下,COPD,気管支喘息,咳喘息/アトピー咳嗽)を説明変数としてロジスティック回帰分析を行ったところ,70歳以上が有意に吸入手技不良と関連していた(p<0.001).

    【結論】70歳以上は吸入手技不良の最大のリスク因子である.

  • 片桐 夏樹, 羽根田 陽平, 赤塚 清矢, 伊橋 光二
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 429-433
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】咳嗽およびハフィング時の体幹屈伸運動の有無が呼気流速に与える影響を検討する.

    【方法】健常成人男性20名を対象に,椅子座位にて体幹直立位で固定した方法,体幹直立位から体幹の屈伸運動を許可した方法の双方で咳嗽とハフィングを行い,咳嗽時最大呼気流速(PCF)とハフィング時最大呼気流速(PHF)を測定した.また,胸郭拡張差と体幹可動域も測定した.

    【結果】体幹屈伸運動を許可した方法でPCF・PHFともに,直立位で固定した方法よりも高値を示した(p<0.01).また,各方法間の呼気流速の差と体幹可動域,胸郭拡張率には相関を認めなかった.

    【考察と結論】体幹伸展によって呼気筋群が伸張され,長さ-張力関係から胸腔内圧が高まることでPCF・PHFは高値を示したと考えられる.よって,咳嗽力測定時や気道クリアランス時には体幹屈伸運動を許可することで,より最大の機能が発揮されることが考えられた.

  • 遠藤 康裕, 牧野 荘平, 笛木 真
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 434-439
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】身体活動量の評価として用いられる歩数・歩行距離に関して,1日の最大値・最小値を評価することの有用性を明らかにするために,肺機能,運動耐容能,日常生活活動能力,Quality of life,うつ度との関連を検討した.

    【方法】外来受診している慢性閉塞性肺疾患患者11名を対象とした.身体活動量と各項目間の相関をSpearmanの順位相関係数により分析した.

    【結果】身体活動量の最大歩数を除く項目でSGRQのActivity scoreと有意な負の相関を認めた.また,歩数平均値・最大値ではFEV1.0と有意な正の相関を認めた.歩数最小値と歩行距離最小値ではSDSと有意な負の相関を認めた.歩行距離最大値では6MWDと有意な正の相関を認めた.

    【考察】歩行距離最大値は運動耐容能と,歩数・歩行距離の最小値はQOL,うつ度と相関する点から,身体活動量の評価指標としては有用である可能性が考えられた.

  • 鈴木 遥佳, 藤本 圭作
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 440-444
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】日中の過度な眠気(EDS)を主訴に受診した患者を対象として,睡眠呼吸障害(SDB)以外の疾患の有病率を算出した.

    【方法】2012年4月~2017年3月に信州大学医学部附属病院,松本協立病院,新生病院,ひろ内科医院のいずれかを受診し,睡眠ポリグラフ(PSG)及び睡眠潜時反復試験(MSLT)が実施され,その結果中枢性過眠症に分類された患者のうち,15歳以上の者(計92名)を対象に,PSG, MSLTの他,主観的睡眠評価表,睡眠日誌,基本情報を用いて,総合的に検討を行った.

    【結果】ナルコレプシー37名,特発性過眠症33名,睡眠不足症候群18名,非器質性過眠症4名であった.

    【結語】EDSの原因を考える際には,SDB以外の疾患にも留意すべきである.

  • 森下 辰也, 陶山 和晃, 板木 雅俊, 宮城 昭仁, 田中 貴子, 神津 玲
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 445-450
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)を施行した医療・介護関連肺炎(NHCAP)患者の臨床的特徴を転帰別で明らかにすること.

    【方法と対象】肺炎の診断にて入院治療および呼吸リハを施行したNHCAP患者を対象に,対象者背景,肺炎重症度,併存疾患,身体機能,呼吸リハ関連項目,転帰について診療記録より後方視的に調査した.

    【結果】解析対象者は83例(89[85-94]歳,男性37例)であった.転帰は死亡群30例,生存群53例であり,生存群のうち18例(34%)は退院先が入院前の生活場所から変更となっていた.死亡群は生存群と比べて身体活動レベルが低く,併存疾患や肺炎重症度もより重症であった.生存群のうち,退院先が変更となった群は,呼吸リハ開始までの期間が有意に長く,退院時に身体活動レベルが有意に低下していた.

    【考察】NHCAP患者に対して早期の呼吸リハ介入,特に入院後可及的速やかな開始が身体活動レベルの維持につながり,入院前の生活場所への退院に影響する可能性が示唆された.

  • 池内 智之, 金田 瑠美, 北村 朋子, 岡本 香保里, 山口 清香, 田中 雄也, 大場 健一郎, 津田 徹
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 451-455
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【背景と目的】在宅移行をすすめる地域包括ケア病棟では,退院後90日以内の入院は健康保険上認められていない.しかし,重症COPDでは退院後90日以内の再増悪が多く,どのような因子が再入院の要因になっているか検討し,再増悪予防の呼吸リハ介入のポイントを考察すること.

    【対象と方法】H25年4月からH29年2月までに当院に入院し,呼吸リハを行ったCOPD患者120例を対象とした.後方視的に患者特性,身体活動性,NRADL,運動耐容能,QOLと90日以内の再入院との関係を検討した.単変量解析後,有意差の認められた項目でロジスティック回帰分析にて統計解析を行った.

    【結果】charlson comorbidity index(OR 0.527,95%CI: 0.243-0.863),歩数(OR 1.246,95%CI: 1.074-1.589),体重減少量(OR 1.618,95%CI: 1.184-1.852)が有意な因子として抽出された.

    【考察】呼吸リハを実施するにあたり,併存症の管理,身体活動性の向上,体重の管理を包括的に行う必要があると考えられた.

  • 篠田 千恵, 和田 攻, 長澤 千和
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 456-461
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【背景と目的】肺がんCT検診はがんの早期発見を目的として実施されるが,肺の気腫性変化のほか,冠動脈石灰化も定量的に評価することができる.しかし,現在のところ両者について同時に検討した報告はない.今回,「肺がん心臓CT検診」を喫煙男性を対象に実施し,呼吸機能と気腫性変化,冠動脈石灰化の関係について検討した.

    【対象】40歳から70歳の喫煙男性46名.

    【方法】胸部CTと心臓CTを撮影し,気腫性変化と冠動脈石灰化スコアを算出した.併せてスパイロメトリーを実施した.

    【結果】一秒率70%未満の気流制限をみとめたものは28%だった.また高度の冠動脈石灰化を認めたものが37%だった.気流制限をみとめたものの76%に高度の冠動脈石灰化がみられた.冠動脈石灰化に関係する要因をロジステイック回帰分析で検討したところ,年齢と70%未満の気流制限が独立した要因であった.

    【結語】冠動脈疾患発症の高リスクとなる冠動脈石灰化は,気流制限のある喫煙者から抽出が可能だった.

  • 神宮 大輔, 須田 加奈子, 吉野 一央, 菅田 奈々子, 池本 あゆみ, 奥田 舞, 青木 絵美, 渡辺 洋
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 462-466
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】本邦の呼吸器科非ICU入院例における多職種参加型定期カンファレンス(以下,カンファレンス)の有用性は未確定であり,カンファレンスの有用性を検証する.

    【方法】2015年4月1日~2016年3月31日の呼吸器疾患非ICU入院症例を対象とし(調査群),カンファレンス開始前の2013年4月1日~2014年3月31日の同様の症例を比較対象に設定し(対象群),診療録を元に後方視的に検討した.

    【結果】症例は調査群581人 vs 対象群604人で,リハビリ実施率は調査群で有意に上昇した(調査群39.1% vs 対象群32.9%;p<0.05).リハビリ実施例の平均在院日数(調査群16.4日 vs 対象群19.8日;p<0.01)は有意に短縮し,死亡退院率(調査群8.8% vs 対象群10.8%;p=0.13)も低下した.【結語】呼吸器疾患非ICU入院例における多職種参加型定期カンファレンスは有用である.

  • 宇津木 光克, 岩下 広志, 松崎 晋一
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 467-470
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー HTML

    COPD患者に対する運動前の短時間作用性β2刺激薬吸入(アシストユース)の有効性が報告され,この機序として動的肺過膨張の改善効果が示されている.本研究ではグルコピロニウム/インダカテロール配合剤使用下でも体動時息切れを有する症例を対象として,プロカテロールの動的肺過膨張改善効果について検証した.動的肺過膨張は「過呼吸法による呼吸数増加時の最大吸気量(inspiratory capacity: IC)の減少」にて評価した.呼吸数40回/分のIC(IC40)は安静時のIC(ICrest)と比較し有意に低下し,動的肺過膨張の存在が考えられた.プロカテロール吸入は呼吸数増加に伴うICの減少(ΔIC40-ICrest)を有意に改善し,動的肺過膨張を改善させた.以上のことから,プロカテロールはグルコピロニウム/インダカテロール配合剤併用下においてもアシストユースの効果が得られる可能性が示唆された.

  • ―運動耐容能におよぼす影響―
    山口 育子, 内田 学, 丸山 仁司
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 471-479
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】高齢者の吸気筋に対する直接介入が身体機能に及ぼす影響について明らかにした.

    【方法】介護予防デイケアに通う高齢女性21名を対象に,従来の運動プログラムに吸気筋トレーニング(IMT)を追加併用する1ヶ月間の介入を行った.身体機能の指標として,呼吸機能はVC,FVC,FEV1,呼吸筋力はPImax,PEmax,運動機能は握力,膝伸展筋力,歩行速度,CS-30,TUG,片脚立位,FR,6分間歩行距離(6MWD),身体組成は体重,BMIとした.運動耐容能である6MWD,Borg スケールを主要アウトカムとして,前後比較にて効果検証を行った.

    【結果】対象者全体では呼吸機能を含む身体機能に有意な変化は認められなかった.しかしIMTにより吸気筋力が増加した高齢者では,息切れ感や疲労感が増加せず有意に歩行距離が延長した.〔結論〕IMTの方法や適応対象者を詳細に検討する必要はあるが,運動プログラムにIMTを追加併用することは,運動耐容能を向上させる可能性があることが示唆された.

  • 黒山 祐貴, 髻谷 満, 大松 峻也, 山根 主信, 高尾 聡, 角田 健, 大野 一樹, 川原 一馬, 吉田 直之, 千住 秀明
    原稿種別: 原著
    2020 年 28 巻 3 号 p. 480-483
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
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    【目的】今日,肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)の世界的な増加が注目されている.治療の主体は薬物療法だが,時に外科治療が適応される.肺NTM症におけるHealth-related Quality of life(HRQOL)評価として,簡易的かつ短時間で評価が可能なCOPD assessment test(CAT)の有用性は既に報告されているが,外科症例におけるCATの有用性や術後HRQOLの経過を示した報告はない.本研究の目的は,CATの有用性の検討と,術前術後のHRQOLについて調査することである.

    【対象と方法】肺NTM症外科患者17例.対象者の術前,術後3か月のHRQOLをCATとSt.George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ),Short Form-36 Health Survey(SF-36)を用いて評価し,CATの有用性とHRQOLの経過について検討した.

    【結果】術前および術後3か月において,CATとSGRQ(Total)に関連を認めた(術前r=0.64,p=0.006,術後3か月r=0.68,p=0.003).術前と比べ,術後3か月におけるSF-36の身体機能と体の痛みのスコアが有意に低値であった(p<0.05).

    【結語】肺NTM症外科治療前後のHRQOL評価において,CATの有用性が示唆され,術後3か月でのHRQOLは術前に比し低下していた.

症例報告
  • 杉谷 竜司, 西山 理, 白石 匡, 藤田 修平, 水澤 裕樹, 大城 昌平, 東本 有司, 木村 保, 東田 有智, 福田 寛二
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 28 巻 3 号 p. 484-487
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー HTML

    慢性肺疾患患者に対する吸気筋訓練(inspiratory muscle training: IMT)の効果については,様々な疾患にて報告されているが,米国胸部医師学会/米国心血管・呼吸リハビリテーション学会(ACCP/AACVPR)ガイドラインでは,呼吸リハビリテーションの必須の構成項目としてルーチンに行う事を支持するエビデンスはないとしている.また小児に対するIMTの効果についても,有効性を示すエビデンスは乏しい.今回,我々は,横隔神経麻痺を合併した小児患者に対して労作時呼吸困難感の軽減を目的に,通常の理学療法に加えて4週間のIMTを行った.その結果,VC(vital capacity),IC(inspiratory capacity),PI max(maximum inspiratory pressure)が改善し,労作時呼吸困難感も改善を示した症例を経験したため報告する.

  • 魚井 雄貴, 濱口 達也, 木曽 健太, 橋本 直樹, 川 二美, 吉田 寛, 北村 克司, 越久 仁敬
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 28 巻 3 号 p. 488-490
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー HTML

    パーキンソン病の経過中,急性声門下喉頭炎を発症し,挿管人工呼吸管理となり,離脱困難となっている症例の理学療法を経験した.介入時は,意識的に呼吸練習を促しても傾眠様となり自発呼吸が持続しなかった.そこで日中の覚醒改善目的に多職種で目標や離床方法,スケジュールなどを共有し離床時間延長を図った.離床時間確保に伴い嚥下訓練,ADL練習,吸気筋トレーニングなど日中の能動的な活動や呼吸練習にチームで取り組むことで,装着332日目には人工呼吸器の離脱に成功した.

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