日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2189-4760
Print ISSN : 1881-7319
ISSN-L : 1881-7319
29 巻, 1 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
会長講演
  • 藤本 圭作
    原稿種別: 会長講演
    2020 年 29 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    健康状態をモニタリングするための非侵襲的ウェアラブルの開発を産官学連携で行ってきた.脈波には多くの生体情報が含まれており,不整脈,呼吸数,自律神経活動の評価,循環不全の予兆,活動量の評価,ストレス管理,睡眠呼吸障害のスクリーニングなどの応用が報告されている.我々は,①脈波に重畳している呼吸成分から胸腔内圧変化を測定し,スパイロメータと組み合わせ,動肺コンプライアンスの測定,②脈波のゆらぎから自律神経活動を評価し,睡眠時無呼吸低呼吸の判定,睡眠の質の評価および睡眠構築の判定,③Fiber Bragg Grating(FBG)センサを用いた血圧,血糖値測定の試みについて解説する.また,膜型感圧センサを敷き詰めたシート型の機器を用いて,④無拘束タイプの睡眠時無呼吸症候群スクリーニング機器の開発および同機器を改良した在宅見守りシステムの開発を行ってきたので解説する.最後に医療者間のコミュニケーションツールについて紹介する.

シンポジウム
ワークショップ
  • 竹川 幸恵, 今戸 美奈子
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 23
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML
  • 今戸 美奈子
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    セルフマネジメントとは,慢性疾患患者が病気とともに生活するための日々の仕事や務めであり,治療や病気に応じた療養法を適切に続けること,日常の活動や役割を保つこと,治療や療養により生じる様々な感情と付き合うことが含まれる.慢性呼吸器疾患患者の場合,疾患の進行や息切れの増強に応じて,吸入薬による治療に加えて呼吸リハビリテーション,在宅酸素療法などの治療や療養法を適切に毎日行い,普段の役割や活動の維持,感情の調整が必要とされるが,実際には難しいことも多い.例えば,在宅酸素療法を行う患者が実際の生活では酸素を処方通りに使用していないといった状況は少なくない.患者がセルフマネジメントを継続していくことを支えるためには,患者個々の病気や生活の体験を十分に理解し,その人の目指す生活のあり方を捉えた上で具体的なマネジメント法を話し合う等の細やかな支援が重要である.

  • 松井 憲子, 井上 昌子
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    慢性呼吸不全患者では,気管支炎,肺炎などの呼吸器感染症を契機に,急速に呼吸器症状が悪化することがあり,慢性閉塞性肺疾患の急性増悪では,患者のQOLや呼吸機能を低下させ,生命予後を悪化させる.したがって,急性増悪により緊急入院した際は,速やかな回復への支援と合併症の予防が重要である.急性・重症患者看護専門看護師は,患者とその家族に寄り添い,早期回復を目指す実践と医療チームの協働を先導する役割が求められる.

    今回,急性増悪した慢性閉塞性肺疾患の患者において,急性期のリハビリテーションと合併症予防のケアによって,人工呼吸器離脱を支援した症例を報告した.症例は,入院当初は体外式膜型人工肺による補助循環が必要な状態であったが,第8病日に人工呼吸器離脱に至った.この症例で,急性・重症患者看護専門看護師の実践と多職種協働を振り返り,急性増悪した慢性呼吸不全患者の回復を支えるケアについて検討した.

  • 伊藤 奈央
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 33
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML
  • ―声なき声をキャッチするためには―
    桑田 美代子
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    認知症とは,「一度正常なレベルまで達した精神機能が,何らかの脳障害により,回復不可能な形で損なわれた状態」をいう.認知症の症状には記憶障害や実行機能障害からなる中核症状と,中核症状に伴って生活上支障をもたらす認知症の心理症状・行動障害がある.認知症の人達は,周りを困らせたいわけではなく,中核症状により心身の辛さ,不安に対し,それを他者に理解してもらえない苦悩の中にいる.その認知症の人の不安に注目し,行動を紐解く能力がケアする側に求められる.認知症の人達の不安をキャッチするためには,認知症に関する知識を身に付ける必要がある.また,認知症ケアは,一人のスペシャリストが存在すれば質の高いケアが提供できるかといえば,そうではない.“自分だったら…”と相手の立場を考えるケアリングを基盤とした態度や日常倫理が大切になる.

  • 1.薬物療法
    坂東 政司
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    間質性肺炎には種々の疾患が含まれており,原因や病理組織パターンによって臨床経過や治療反応性が異なる.薬物療法の導入にあたり,治療反応性と副作用のリスクを勘案し,治療に関する最新のガイドラインや手引きを利活用し,十分なインフォームドコンセントの下で,総合的に判断すべきである.特発性肺線維症(IPF)では,抗線維化薬が中心的役割を果たすものと考えられるが,現時点で治癒させる薬物はなく,今後さらなる新薬の開発・治験が必要である.一方,IPF以外の間質性肺炎では,一部に自然寛解する場合もあるが,有症状例や呼吸機能低下例では積極的に薬物療法(ステロイドや免疫抑制薬等)の導入を検討すべきである.

  • 神津 玲, 及川 真人, 花田 匡利, 名倉 弘樹, 坂本 憲穂, 迎 寛
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 42
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML
  • 杉野 圭史, 坪井 永保, 本間 栄
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    間質性肺炎(interstitial pneumonia; IP)には,原発性肺癌,肺高血圧症(pulmonary hypertension; PH),肺感染症,気胸などを合併することが知られており,いずれも予後に重大な影響を与える合併症である.したがって,合併症対策の意義は大きく,早期発見・診断ならびに適切な対応が求められる.

    原発性肺癌の診断は時に遅れる場合もあり,血液中の腫瘍マーカーの測定と胸部CT所見を経時的に比較することが肝要である.また,手術および化学療法は,IPの急性増悪や薬剤性肺障害のリスクが問題となるため,治療適応は制限される.

    PHの頻度は,対象患者の重症度や診断方法の相違によりその頻度は一定していないが,気腫合併肺線維症では高くなることが知られている.治療は酸素療法が主体となるが,肺血管拡張薬の適応も検討するべきである.

    肺感染症では,肺抗酸菌症,肺アスペルギルス症,細菌性肺炎,ニューモシスチス肺炎,サイトメガロウイルス(CMV)肺炎などのリスクが高くなる.したがって,定期的に血中β-D-グルカン,アスペルギルス抗原・抗体,抗Mycobacterium avium complex抗体,インターフェロンγ遊離試験であるT-SPOT,CMVアンチゲネミアなどの測定を行うことが必要である.

    IPでは気胸や縦隔気腫を合併しやすく,中等度以上の気胸では,胸腔ドレナージを考慮する.エアリークが遷延する症例では,胸膜癒着術や外科的治療なども考慮しなければならないが,IP急性増悪の誘因になる可能性があるため,実際には自己血癒着を行うことが多く,治療に難渋する場合も多い.

    間質性肺炎の合併症管理は,予後に大きな影響を与えるため,日常臨床において常に注意を払わなければならない.

  • 富井 啓介
    原稿種別: ワークショップ
    2020 年 29 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    間質性肺炎の緩和ケアはがん患者と同様に疾患進行を抑制する治療と並行して,早期からQOLの維持を目的に開始されるべきである.しかし現在薬物療法については呼吸困難緩和を目的とするモルヒネの有効性と安全性がわずかに示されたのみで,その他の薬剤や症状についてのデータはほぼ皆無である.リハビリテーションと労作時低酸素血症に対する酸素吸入については最近ようやくランダム化比較試験における有効性が示され,また海外の成績では多職種の専門家による支援チームが有効に働くことも示されている.エンドオブライフケアに関する事前意思確認は主として呼吸管理法選択すなわちコードステータスの合意形成という緩和ケアの重要なプロセスであるが,予測の難しい経過の中で多職種の関わりによる十分な病状理解の上タイミングを選んで繰り返し行う必要がある.挿管回避となる場合も多いが,NPPVやHFNCの限界を考慮してきめ細かく設定する.

共同企画
  • 加賀屋 勇気, 大倉 和貴, 皆方 伸, 土田 泰大, 阿部 芳久, 塩谷 隆信
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    心不全患者では,労作時の呼吸困難・倦怠感による運動耐容能低下が問題点となることがある.こうした労作に伴う症状は心機能が低下した結果と捉えられがちだが,吸気筋の筋力低下が影響している可能性がある.実際に,心不全患者の吸気筋力は同世代の健常者と比較して低値を示し,吸気筋力は心不全患者の予後規定因子でもある.さらに吸気筋力が低下した患者に対する吸気筋トレーニング(IMT)では運動耐容能,呼吸困難感,QOLの改善が期待できる.

    一方で,心不全は,他の疾患よりもトレーニングによる心負荷に考慮が必要である.30-40%PImaxの強度ではバイタルに大きな変動はないが,期外収縮の頻度が若干増加する場合もあるため,症例によってはモニタリング下での実施が望ましい.

    心不全患者に対するIMT研究が進むとともに,IMTが心不全治療の一選択肢として認識されていくことが期待される.

  • 塩谷 隆信, 照井 佳乃, 佐竹 將宏, 川越 厚良, 菅原 慶勇, 高橋 仁美
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    COPDの終末期には,呼吸困難,疲労感,咳嗽,身体疼痛など様々な症状をきたし,この終末期の症状の中では,呼吸困難が最もその頻度が高く辛い症状である.

    COPDの終末期の呼吸困難の対策として,Rockerらの三段階の対処法がある.第一段階の呼吸困難に対しては,COPDガイドラインに基づいた最適な気管支拡張薬に運動療法,酸素療法の増加を図る.続いて,第二段階の呼吸困難に対しては,活動ペースに合わせた呼吸リハビリ,口すぼめ呼吸などを行う.第三段階の呼吸困難に対しては,緩和薬物療法として,モルヒネの容量調整と抗不安薬の併用を行うというものである.

    呼吸リハビリは,多次元的医療サービスを多くの職域にわたる専門家チームの協力によって提供する医療介入システムであり,プログラムとしては,運動療法,呼吸筋トレーニング,栄養療法などを提供する.現在のところ,COPDの終末期の呼吸困難の対策としての確立した包括呼吸リハビリ・プログラムはないが,最近,我々が経験した重度COPD事例を対策の一助として紹介する.

    終末期COPDにおける呼吸困難の対策として呼吸筋トレーニングを含んだ包括的呼吸リハビリが有用であると考えられるが,今後,多施設多数例における臨床研究によるエビデンスの構築が必要と考えられる.

  • 大塚 義顕, 石川 哲, 斉藤 雅史, 斎藤 隆夫, 大森 恵子, 渋谷 泰子, 佐藤 孝宏, 長谷川 正行
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    呼吸器疾患患者の中でも慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)には嚥下障害が高率に併存し,増悪と嚥下障害との関連が指摘されている.一般的に,呼吸と嚥下は文字通り表裏一体の協調関係にあるとされ,切り離しては考えられない.嚥下筋は呼吸中枢からの制御を受けて呼吸と協調した運動をするが,COPDでは呼吸のサイクルが増し,呼気が短くなることから異常な嚥下反射が起こりやすくなると考えられる.そのため嚥下障害の特徴を踏まえたうえで対応することが望まれる.一方,フレイル・サルコペニアを考えたときにオーラルフレイルから咀嚼障害や嚥下障害に移行しないようにしなければならないし低栄養に陥らないようにもする必要がある.

    そこで,本報告はCOPDのオーラルフレイル・サルコペニア,嚥下障害との関連,および包括的な嚥下リハビリテーションの介入でCOPD増悪の頻度を低下できた症例を提示する.

  • 松田 能宣
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 1 号 p. 75-77
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    肺がんを含むがん医療において,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は終末期の化学療法などの侵襲的な医学的処置を減少させ,ホスピスを含む緩和ケアの利用を増やすなど重要な役割を担う.非小細胞肺がん患者において早期緩和ケアが通常ケアに比べて生存期間を延長することを示したランダム化比較試験において,緩和ケアの内容にはACPの要素が含まれており,肺がん患者にACPを実践するにあたって緩和ケアの果たす役割は大きいと考えられる.また,治療の進歩や患者・医師の防衛機制などACPを困難にしうる要因についても知っておくことで,より適切なタイミングでACPを実施することが可能になるだろう.最後に,ACPの有効性については文化差がある可能性もあるため,日本人肺がん患者におけるACPの有効性を検討した研究の結果が待たれる.

  • 野原 幹司
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 1 号 p. 78-80
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    超高齢社会をむかえた日本においては,高齢者の肺炎,中でも誤嚥性肺炎の予防と対策が大きな課題となっている.そのような情勢を踏まえて,2017年に「成人肺炎診療ガイドライン2017」が作成された1).このガイドラインの最大のポイントは,繰り返す誤嚥性肺炎や終末期の肺炎などに対して踏み込んだ内容となっている点とされている.ガイドライン自体は非常に分かりやすく実践的にまとめられており,治療方針決定に有用であるということに疑いはない.しかし,嚥下障害や誤嚥を専門とする筆者にとっては気になる点が一つあった.ガイドラインの冒頭に「本ガイドラインでは感染症以外の肺炎・肺臓炎等は取り扱わない」と明記されていることである.誤嚥性肺炎や終末期の肺炎を取り上げているにも関わらず感染症による肺炎のみを扱うというのは,高齢者の「いわゆる」誤嚥性肺炎を診ている医療者に誤解を与えかねない.はじめに「いわゆる」誤嚥性肺炎と診断されていた症例の経過を提示したい.

  • 若林 秀隆
    原稿種別: 共同企画
    2020 年 29 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    誤嚥性肺炎患者には,発症前からサルコペニアや低栄養を認めることが多い.また,誤嚥性肺炎の発症でサルコペニアや低栄養がさらに悪化して,摂食嚥下機能や呼吸機能が低下しやすい.そのため,誤嚥性肺炎とサルコペニアの悪循環を断つことが,誤嚥性肺炎予防に重要である.それには,リハビリテーション栄養の視点による医原性サルコペニアの予防や,攻めのリハビリテーション栄養管理によるサルコペニアの改善が求められる.全身のサルコペニア予防が,摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎の予防につながる.また,誤嚥性肺炎入院時の「とりあえず安静」「とりあえず禁食」「とりあえず水電解質輸液」の指示が,医原性サルコペニアやサルコペニアの摂食嚥下障害の原因であり,誤嚥性肺炎の再発につながる.サルコペニアとリハビリテーション栄養を視野に入れたチーム医療を臨床現場で実施して,医原性サルコペニアと誤嚥性肺炎を予防してほしい.

コーヒーブレイクセミナー
  • 松永 和人
    原稿種別: コーヒーブレイクセミナー
    2020 年 29 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    COPD患者は労作時の息切れを避けるために身体活動性が低下しており,活動制限は全身併存症の増加や死亡リスクと関連する.症状の改善や増悪抑制のために中心となるのは気管支拡張薬である.本邦のガイドラインでは,症状や増悪の程度を考慮しながら,LAMAやLABAを単剤もしくは併用で用いることが推奨されている.心不全はCOPDと高率に合併するが,興味深いことに気管支拡張薬による肺過膨張の減少が肺血流動態を改善し,左室の一回拍出量を増加させることが報告されている.COPDに喘息病態を合併する場合には吸入ステロイド薬の併用が増悪の抑制に有用である.さらに,慢性気管支炎に対するマクロライド薬や,心不全が合併する場合のβ遮断薬は増悪のリスクを抑制する.今後は,気管支拡張薬や運動療法に加え,できるだけ早期に治療可能な臨床特性を個別に評価し,COPDと合併病態を並列に治療介入する戦略が重要と考える.

原著
  • 佐々木 貴之, 古賀 隆一郎, 出田 良輔, 戸渡 富民宏, 林 哲生
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【背景と目的】頚髄損傷の死亡原因の筆頭は呼吸障害であり,呼吸状態の把握が急務の課題といえる.そのため,アメリカ脊髄損傷協会の神経学的損傷高位(neurological level of injury: NLI)と障害尺度を使用し,これまで報告のないVCの経時的推移をNLIごとに調査した.

    【対象と方法】対象は脊髄損傷データベースシステムに登録された運動完全麻痺の頚髄損傷患者201名とし,NLIを「C1-3」,「C4」,「C5」,「C6-8」に分類した.評価は受傷後3日~12か月の間の計11時期で,簡易スパイロメータを使用しVCを測定した.

    【結果】NLIが下位になるほどVCが高かった.C1-3では全時期でVCが 500 ml前後であった.C4より下位では1年後まで緩徐にVCが増加し,特に4か月以降で有意に増加した.

    【結語】頚髄損傷患者のVCはC4より下位では経時的な増加がみられた.横隔膜が十分に機能するC4レベルの残存が呼吸の自立を左右すると考えられる.

  • 牧野 富美枝, 長谷川 智子, 上原 佳子, 北野 華奈恵, 礪波 利圭, 出村 佳美, 橋本 容子
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    目的:社会心理学において,人が行動に至るまでの段階を説明するモデルである計画行動理論がある.この計画的行動理論を基に看護師がAdvance Care Planning:ACP行動に至るまでの心理的段階である「ACPの行動意図」と,それに影響する要因を明らかにすることとした.

    方法:対象は慢性呼吸器疾患看護認定看護師220名と呼吸器疾患に係わる看護師1100名の計1320名とした.調査方法は無記名自記式質問紙調査法とした.

    結果:同意の得られた324名のうち321名を有効回答として分析を行った.「ACPの行動意図」を従属変数としステップワイズ法による重回帰分析を行ったところ,影響要因として呼吸器看護の経験年数,ACPへの思い,ACP行動に対する周囲からの期待,ACPの抑制要因である【難しさ】が抽出された.下位項目の周囲からの期待「患者・家族との話し合いの自信の無さ」や,【難しさ】「在宅療養への移行の援助」,「呼吸困難のアセスメントと緩和の介入」などが強い影響要因になっていた.

  • 菅野 絢子, 澄川 皓恵, 松井 優作, 照井 佳乃, 岩倉 正浩, 古川 大, 酒井 直博, 菅原 慶勇, 高橋 仁美, 塩谷 隆信
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 104-110
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】階段昇降と自転車走行の実施時間を測定できる新規三軸加速度計を使用してCOPD患者の身体活動時間を測定し,身体機能との関連を明らかにすること.

    【方法】COPD群14名(75.2±6.5歳,一秒量49.3±19.6%pred)と若年健常者群(健常群)15名(21.7±0.5歳,一秒量90.6±7.2%pred)を対象とした.測定期間は9日間以上とし,三軸加速度計で測定した1日におけるinactive+static,walking,stair walking,cyclingの時間について二群を比較,両群において各姿勢・動作時間と身体機能との相関関係を検討した.

    【結果】1日の各姿勢・動作の平均総時間は,COPD群と健常群でそれぞれinactive+staticが657.6分と652.2分,walkingが55.4分と62分,stair walkingが1.7分と3分,cyclingが0.3分と3分であった.stair walking時間とcycling時間はCOPD群が学生群よりも有意に低値であった.また,COPD群においてstair walking時間は吸気筋力と中等度の有意な正の相関を示した.

    【結論】COPD患者は健常学生よりも中等度~高強度の運動時間が短いことが示唆された.

  • 石田 洋子, 石井 暁, 菅原 英和, 水間 正澄, 石川 誠
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【背景】誤嚥性肺炎後の廃用症候群に対するリハビリテーション(リハ)では,回復に難渋する例や状態が悪化する例も多い.

    【対象と方法】2002~2018年,当院回復期リハ病棟に誤嚥性肺炎後の廃用症候群で入院した232例において,藤島Grade,FIM(Functional Independence Measure),急性期病院への転院率,退院先など35項目を後ろ向きに調べ比較検討した.

    【結果】急性期病院への転院率は30.6%,在宅復帰率は58.6%,3食経口摂取獲得率は41.0%であった.

    【考察】誤嚥性肺炎後の廃用症候群では転院率が高く在宅復帰率が低い.全身状態を慎重に管理することが大切である.

  • 浦上 勇也, 山地 康文, 篠永 浩, 河田 由紀子, 久家 哲也, 山本 和幸, 飯原 なおみ
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 117-124
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【背景】保険薬局において喘息患者に対する吸入指導を医師と連携して行うことは難しい.

    【目的】吸入指導連絡票を用いた,医療機関と連携した保険薬局における吸入実技指導が,臨床効果に与える影響を検討した.

    【方法】医療機関から吸入指導連絡票が発行された喘息患者に対し,薬剤師が吸入実技指導を実施した.吸入アドヒアランス,理解度・吸入手技,臨床効果指標(ACT,%PEF)を指標とし,指導1,2,3回目に測定して,その変化を全患者および年齢層別に解析した.

    【結果】解析対象31名において,全ての指標値は1回目に比べ2,3回目で有意に改善した.年齢層別では,60歳未満群では一部改善しない指標値があったが60歳以上群では全ての指標値が有意に改善した.

    【考察】吸入指導連絡票を用いた保険薬局における吸入実技指導は,医師と薬剤師の双方向の情報連携を可能とし,喘息コントロールを維持する上で有効である.

  • 宮崎 慎二郎, 北山 奈緒美, 林野 収成, 長井 梓苑, 市川 裕久, 荒川 裕佳子, 森 由弘
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】男性COPD患者における,握力と各指標およびCOPD増悪入院との関連を明らかにすることを目的に検討を行った.

    【対象・方法】安定期男性COPD患者43例を対象とした.握力と年齢,BMI,%1秒量,CAT,膝伸展筋力,6MWDそれぞれの相関関係を求めた.また,増悪入院までの期間を従属変数,年齢,BMI,%1秒量,CAT,握力を独立変数としてCox比例ハザードモデルを用いた多変量解析を行った.

    【結果】握力は年齢(r=-0.323),膝伸展筋力(r=0.773),6MWD(r=0.687)と有意な相関関係を認めた.2年間の観察期間中16例が増悪入院し,握力が独立した関連因子として抽出された(HR: 0.859,95%CI: 0.770-0.961,p=0.007).

    【結論】男性COPD患者において握力は膝伸展筋力および運動耐容能と相関し,COPD増悪入院に関連する独立した因子であった.

  • 武村 裕之, 守川 恵助, 今岡 泰憲, 稲葉 匠吾, 楠木 晴香, 天白 陽介, 橋爪 裕, 廣瀬 桃子, 鈴木 優太, 畑地 治
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】本研究は急性期呼吸器疾患患者における筋力トレーニングの回数が筋肉量に及ぼす影響について調査する.

    【対象と方法】対象は介入時に病棟ADLが自立していた急性期呼吸器疾患患者20名を介入時期により低回数群(以下L群)12名,高回数群(以下H群)8名に分類した.L群が修正Borg scale 3,H群は修正Borg scale 5 に達するまで筋力トレーニングを実施した.

    【結果】筋力トレーニングの回数は上肢がL群で54.5回,H群が182.6回,下肢においてもL群で69.0回,H群が182.0回で有意差を認めた.介入前後の筋肉量の比較では上肢がL群で介入時 4.4 kg,退院時 3.8 kg,H群で介入時 3.8 kg,退院時 3.6 kgと有意差を認めなかった.下肢においてもL群で介入時 13.8 kg,退院時 13.4 kg,H群で介入時 10.9 kg,退院時 11.0 kgと有意差を認めなかった.

    【結語】急性期呼吸器疾患患者に対する筋力トレーニングの回数は退院時の筋肉量に影響を及ぼさなかった.

  • 白仁田 秀一, 日高 晴菜, 上村 育久, 猿渡 聡, 林 真一郎, 渡辺 尚
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 136-140
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    目的:慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease,以下COPD)に対して,セルフマネージメント日誌(以下,日誌)記載の継続と,軽度認知障害(mild cognitive impairment,以下,MCI)との関連性について,日本語版Montreal Cognitive Assessment(以下,MoCA-J)を用いて検討した.

    方法:COPD47例が対象で,日誌記載を2ヶ月間継続できた者を継続群(n=22),以外を非継続群とした.各群でMCI有病率を調査し,また,日誌記載の継続の影響因子をMoCA-Jの項目から抽出した.

    結果:継続群のMCI疑い有病率は36.3%,非継続群は92.0%(p<0.05)であった.また,日誌記載の継続の影響要因として時計描画と文章復唱が抽出された.

    考察:日誌記載の継続にはMCIが影響していた.

  • 藤沢 千春, 川浦 元気, 玉木 彰
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 141-146
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】COPD患者に対して週1回の筋力トレーニング漸増性過負荷法と身体活動計を用いた教育指導による呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)を8週間行うことで,身体活動量が増加するか検討した.

    【方法】9名のCOPD患者をグループA/Bに無作為に分けて,グループAは週1回の呼吸リハ介入を8週間行い(呼吸リハ群),その後8週間呼吸リハ介入を行わずに経過観察した(非介入群).その後グループA/Bをクロスオーバーさせて,呼吸リハ群と非介入群とのデータを比較検討した.主要評価項目は1日の平均歩数,副次評価項目は大腿四頭筋筋力と生活活動範囲とした.

    【結果】呼吸リハ群は非介入群と比較して,平均歩数と大腿四頭筋筋力が有意に増加した.一方,生活活動範囲は両群間で有意な差は認められなかった.

    【結論】COPD患者において,筋力トレーニングと教育指導を併せた週1回の呼吸リハを8週間行うことで,身体活動量と下肢筋力が増加する可能性がある.

  • 両角 和恵, 利部 なつみ, 千葉 史, 阿部 雄介, 小林 誠一, 矢内 勝
    原稿種別: 原著
    2020 年 29 巻 1 号 p. 147-153
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    COPD患者が生きがいをもって生活することは日常生活のQuality of life(以下QOL)維持に役立つと思われるが,そのエビデンスは乏しい.「石巻地域COPDネットワーク(ICON)」では,安定期患者のセルフマネジメント支援として,患者自身の生きがいに着目した長期目標を立案し,それに基づいた目標を作成している.そこでICONに登録された最重症COPD患者のうち,外来に5年間通院継続できた13名を対象に,登録時と5年後のADL・QOL・身体活動性を比較し,生きがいに着目したセルフマネジメント支援の有用性を検証した.対象患者は全員5年間アクションプランが継続できており,COPDに関する情報量が増加していた.ADLは低下していたが,COPD Assessment Test(以下CAT)スコアや1日歩数は保たれていた.以上の結果から,生きがいに着目して長期目標・短期目標(以下アクションプラン)を立案するセルフマネジメント支援はQOLや身体活動性の維持に有用でありCOPD患者教育プログラムとして有効である可能性が示唆された.

症例報告
  • 阿部 夏音, 関川 則子, 江上 真由子, 仲本 宏, 関川 清一, 奥道 恒夫
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 29 巻 1 号 p. 154-157
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    脊柱側弯症は脊椎の側屈および回旋によって引き起こされる脊柱の変形であり,まれに気管支閉塞による無気肺を生じる場合がある.外科的治療によって圧迫が解消され,無気肺が改善した症例はいくつか報告されている.一方,保存的治療によって改善された報告はない.本症例では,右中間気管支の閉塞により生じた無気肺の改善を目的に,胸郭可動域練習や呼吸練習等の呼吸リハビリテーションを実施した.呼吸リハビリテーションを実施する際,脊柱側弯症患者に対して広く用いられているシュロス法を参考に肢位を工夫した.その結果,無気肺の改善,呼吸困難感や疼痛等の自覚症状の軽減が認められた.特発性脊柱側弯症に伴う無気肺に対して,呼吸リハビリテーションに脊柱側弯症による運動機能制限に対するアプローチを併用することが有用であると示唆された.

  • 木戸 悠人, 奥田 みゆき, 加藤 悠人, 林 祐司, 藤本 風太
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 29 巻 1 号 p. 158-161
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【緒言】CPAP(continuous positive airway pressure)装置自動検出によるAHI(Apnea Hypopnea Index)とOCST(out of center sleep testing)によるAHIとが乖離するケースにおいて,波形解析が有効であった症例を報告する.

    【症例1】68歳 男性.CPAP装置検出のAHIは3-6回/h程度で安定していた.しかしFlow波形の目視解析では,吸気波形の後に呼気波形を認めない波形が頻繁に記録されていた.OCSTを施行すると3%ODI(oxygen desaturation index):50回/h,REI(Respiratory event index):50回/hと呼吸イベントが多く残存しており,CPAP装置検出AHIと大きく乖離していた.

    【症例2】63歳,男性.CPAP装置検出のAHIは1-3回/h程度で安定していたが,本人より睡眠が浅い気がするとの訴えがあり.波形解析を実施すると症例1同様の異常波形を認めた.OCSTを施行すると3%ODI:18.0回/h,REI:23.7回/hであった.

    【考察】CPAP装置では検出できない呼吸イベントの把握において波形解析が有効であった.Auto CPAPが機能しないため,呼吸イベントの検出が不良であると推察された.更なるFlow波形の研究やArtificial Intelligenceによる画像解析によってCPAP装置の解析精度向上が望まれる.

研究報告
  • 手間本 真, 佐藤 伸之, 佐藤 照樹, 上田 歩, 逢坂 みなみ
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 29 巻 1 号 p. 162-166
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/02
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】これまでのRST活動をまとめ,その成果をインシデントレポートの変遷から考察する.

    【方法】2014-17年の人工呼吸器関連のインシデントを抽出し,内容と変遷についてRST活動との関連を検討した.当院RSTの主たる活動は週1回の病棟ラウンドで,安全管理,離脱,合併症予防などの観点から評価,提案を行なっている.また院内研修会やセミナーを開催している.

    【結果】人工呼吸器関連のインシデントは全体の2-3%程度であった.項目別では呼吸器本体とチューブ関連が多かった.チューブ関連では当初予定外抜管が多く見られたが2017年には全インシデントに対する割合は有意に低下していた.

    【考察】インシデントの内容は多岐にわたるが,予定外抜管に関しては低下していた.チューブ固定や鎮静に関するラウンドでの指導や研修会の開催,体位変換時のチューブ固定に関するマニュアル作成などのRST活動が寄与したと考えられた.

奥付
feedback
Top