呼吸不全をきたす重症肺炎患者の多くは基礎疾患をもっているので,基礎疾患を含む全身状態の把握が必須である.抗癌剤投与,エイズ,骨髄移植では感染症発症の時期,その種類が予測できるので,予防的治療,早期診断を行う.確定診断には起炎菌の分離・同定を行うが,適切な検体を得て染色,培養,抗原検索を行う.治療初期は経験的治療がされるが,起炎菌判明後は適応薬剤に変更する.
呼吸管理は気管内挿管下に人工呼吸を行うことがすべてではない.早期に呼吸不全に気づくことで,挿管と人工呼吸器という侵襲から多くの患者を救うことが可能である.そのためには患者の呼吸状態を肺理学所見から的確に得られること,呼吸不全の病態を十分に把握できること,病態に合致した治療が行えることが重要である.われわれが提唱する非挿管・非人工呼吸管理はこの概念のもとに生まれた.ここでは急性呼吸不全に対し,非挿管・非人工呼吸管理を行うために必要な「人工呼吸以前になすべきこと」を紹介する.
COPDでは呼出性呼吸障害・auto-PEEP・肺循環障害などが認められ,急性増悪時には多臓器障害をきたす.増悪原因には感染・右心不全・気道攣縮が重要であり,治療目標は低酸素血症・高炭酸ガス血症の改善と増悪原因のコントロールである.COPDの管理には急性期のRCUから慢性期の在宅ケアまでの連続した医療形態の概念に沿い,呼吸リハビリテーションや栄養管理を含めたチーム医療体制の確立が必要である.
運動時の換気応答と循環反応の関係について検討した.エルゴメータによる運動負荷時,通常の呼吸(横隔膜を使用Pdi≠0)と横隔膜を使用しない(Pdi=0)呼吸を行ったときの,換気応答と心拍出量を測定した.Pdi=0呼吸では心拍出量は低下した.しかし換気応答は横隔膜を使った呼吸と同様の換気反応の増加を認めた.以上の結果より,運動時の循環反応(心拍出量)は換気増加の直接的関与要因でないことが示唆された.
私たちは大垣市民病院呼吸器科に入院中の呼吸不全・準呼吸不全患者に対して,生活自立を目標とした系統的呼吸リハビリテーションを実施し,目標達成度と達成までの期間について検討を加えた.結果,9例の寝たきり,5例のH-JV°を含む53例の患者で,80%前後の患者が各リハビリ項目に関して目標を達成し,その必要期間は各項目とも平均2週間程度であった.しかし教育指導に関しては最終目標達成は60%に留まり,家庭での継続実施や活動能力の維持に課題を残したと考えられた.
3ヵ月以上在宅酸素療法を実施した57例(肺気腫30例,肺線維症6例,肺結核後遺症6例,気管支拡張症5例,その他の疾患10例)を対象に,自己評価式の調査表によるうつ傾向の評価やアンケート調査による在宅酸素療法実施上の問題点の把握を行った.患者は在宅での生活を強く望み在宅酸素療法を評価した.しかし在宅酸素療法患者の約1/3ではうつ傾向の存在が疑われ,同療法実施に伴って精神面・経済面・社会福祉面などさまざまなストレスを感じている可能性が推察された.酸素吸入によって自覚症状の改善はみられたが,生活の質の改善には結びつかない症例のあることも否定できない事実であった.在宅酸素療法患者間での強い親近感の表明は,患者周囲の人的交流の機会の増加をはかる立場からは興味深いものであった.心身両面にわたる包括的な医療,器具の改良や社会基盤の整備などの環境整備,社会福祉面での充実が必要であると思われた.
阪神・淡路大震災が,在宅酸素療法施行症例に及ぼした影響について検討した.対象症例102例中,震災後2ヵ月以内に14例が死亡し,過去2年に比べて明らかに多かった.震災後1週間以内に当院を受診できた症例は2例(2%)にすぎなかった.一方,震災の影響で酸素の供給が一時的に途絶えた症例は15例(21%)にすぎず,大部分が1日以内であった.避難所へ避難した症例が5例あったが,いずれもボンベによる酸素供給がなされていた.
国立療養所南福岡病院呼吸リハビリ棟では,慢性呼吸器疾患患者の入浴動作における低酸素状態や呼吸困難感を把握し,その改善のため指導法の検討を行っている.今回慢性肺気腫,肺線維症,および肺結核後遺症の3つの疾患の入浴動作の比較を行った結果,疾患による特徴がみられ,それを踏まえたうえでの動作・呼吸法の指導の必要性が示唆された.
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