研究 技術 計画
Online ISSN : 2432-7123
Print ISSN : 0914-7020
39 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
  • 小川 紘一
    原稿種別: 巻頭言
    2024 年 39 巻 2 号 p. 94-96
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル フリー

    The 21st century is an era where the main arena for value creation is shifting to virtual space. From the perspective of companies and industries, usage of the virtual space has expanded to almost all industries including automotive, robot, retail, healthcare, agriculture, as well as foundational industries such as mobility, energy, civil engineering, and construction.

    Behind this phenomenon are two key developments: first, the ability to recreate objects, assets, corporate activities in virtual space as Digital Twins; and second, the ability of these Digital Twins to generate the five types of new growth factors.

    This special feature was planned against such a backdrop. We hope that this special feature will serve as a map and compass for business people involved in DX and for policy staffs, as well as academic researchers to find the direction they should take for the future.

特集 DX 阻害の論理
  • 高梨 千賀子, 内平 直志
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 2 号 p. 97-99
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル 認証あり

    In recent years, the Digital Transformation (DX) promoted by the Japanese government has not progressed as expected, leading to the emergence of the term "DX fatigue." Many companies have been struggling with DX initiatives, finding it difficult to achieve the desired outcomes. While there has been some technological progress with cloud computing, AI, and IoT, successfully implementing DX, which includes transforming organizations and businesses, requires proper management. This special issue reviews the current state of DX in Japanese companies and brings together experts from various fields to discuss the factors hindering DX, the mechanisms behind these challenges, and potential solutions. Of the five papers included in this issue, three focus on the issues of DX and corporate management. The remaining two papers address critical challenges related to AI technology and the innovation ecosystem driven by industry-academia collaboration, making them noteworthy for both businesses and policymakers. These papers collectively provide a structured analysis of the challenges and solutions for advancing DX, offering valuable insights for both practical application and further research.

  • 福本 勲
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル 認証あり

    日本国内の市場が縮小していく中,日本企業には,グローバル競争における優位性を高めていくために,DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し,業務,組織,プロセス,企業文化・風土などを変革することが必要となる。

    本稿では,こういった状況下において,日本企業におけるDXの推進状況はどうなっているのか,推進を妨げている課題はなんであるのかに焦点を当て,その原因と対策について述べる。

    DXを推進するためには,まず,経営層がDXを全社的な取組みとして認識しコミットメントすることが不可欠であり,経営層とIT部門・業務部門との協調も求められる。

    また,取組みを推進する人材の確保・育成に向けて,必要となる人材要件を明らかにし,人材のスキル評価や処遇といったマネジメント制度の整備を進める必要がある。

  • 高梨 千賀子
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 2 号 p. 107-116
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル 認証あり

    本稿の目的は,製造業における生産現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)成果を企業成長に結びつけるプロセスについて考察し,なにがそのプロセスを阻害しているか,論じることである。

    日本企業はこれまで,DXの取り組みとして業務プロセスの効率化と組織横断的製造プロセスの構築に力を注いできており,一定の成果をあげてきている。これは,これまでトヨタ生産システムに代表されるように製造現場をベースに競争力を培ってきた日本製造業においては,過去の道筋に影響を受ける経路依存的なイノベーションと言える。一方,収益化には,「デジタル技術の導入による既存ビジネスの付加価値向上」や「新規デジタルビジネスの創出」といった市場に向けたDXの必要性が強調される。その背景には,日本企業のDXの取り組みが業務プロセスの効率化にとどまっていて新たな価値創出につながっていないことを問題視する見方がある。

    では,なぜ,価値創出につながらないのだろうか。何がブレーキをかけているのだろうか。本稿では,日本企業が得意とする生産現場のDX成果を企業成長につなげてくプロセスとその阻害要因について論じる。

  • 内平 直志
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 2 号 p. 117-126
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル 認証あり

    IoTやAIなどの最先端のデジタル技術が比較的容易に利活用できる時代になり,大企業だけでなく,中堅・中小企業でもデジタルイノベーションやデジタルトランスフォーメーションのチャンスが広がっている。一方,それを実現するためには様々な困難も存在する。本稿では,経済産業省のDXセレクションおよび石川県のDX推進に取り組んでいる中堅・中小企業の事例に基づき,中堅・中小企業が抱えるDX推進上の困難を整理し,困難を乗り越えチャンスを活かすための成功のメカニズムを紹介する。また,DX推進の視点で大企業と中堅・中小企業の比較を行い,大企業より中堅・中小企業がDX推進に向いている面もあることを説明する。そして,更なる中堅・中小企業のDX推進に求められる技術経営の研究テーマについても言及する。

  • 中島 震
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 2 号 p. 127-140
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル 認証あり

    データ利活用の高度な方法として発展してきた機械学習の技術は,生成AIによって,社会のデジタル化に大きな役割を果たすようになった。生成AIの代表例である大規模言語モデル(LLM)は,自然言語をコンピューター上で取り扱う基本技術であって,チャットボットや機械翻訳など高度なアプリケーションサービスを実現する。しかし,事実と異なる内容を生成するハルシネーション,情報プライバシー権や著作権の侵害が生じるといった,社会的倫理的な問題を伴う。この不具合の原因は,LLMの基本的な機構と関わり,完全になくすことは難しい。また,民間主導で進んだLLMの急速な広がりに,技術的制度的な方策が追いつかない。LLMの原理的な問題点を補うエンジニアリングの工夫が進み,コンポーネントやデザインパターンの従来手法と,LLM上のプロンプトエンジニアリングを統合した「プロンプト×プログラム」コデザインが注目されている。さまざまなソフトウェア技術が複雑に絡み合い,その結果,多様なアクターが関わる技術サプライチェーンが形つくられる。規制面では,AIの包括的な欧州AI-ACT法が運用開始されるが,悪用につながる技術拡散や著作権侵害などの損害に対する法的責任は明らかでない。「信頼されるAI」の品質マネジメントを拠り所とした「AIガバナンス」を進めることで,オープンな技術コミュニティ活動を含めた技術のサプライチェーンに沿ってアクターが協働し,LLMの普及を阻害する要因を減らすことができる。

  • 野中 洋一
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル 認証あり

    イノベーション・エコシステムについて,ITやソフトウエアの分野では米国シリコンバレーを中心として発展してきた。一方で,DX,すなわち旧来の社会システムをデジタルで変革しようとしたとき,社会システムを形成する人間の活動や知見などのOTをITで変革する取り組みであるため,イノベーション・エコシステムのプレーヤーや仕組みが他の技術分野とは異なる特徴を有しているように思われる。

    本稿では,米国西海岸のシリコンバレーや東海岸のボストンにおけるイノベーション・エコシステムの変遷を振り返り,技術の萌芽だけでなく,地域に根差した風土,民間からの継続的な支援,そして国家戦略による大きなスキームなどがイノベーション・エコシステムの形成に関与していることを述べる。

    そして,このアナロジーで自動車産業の集積地である中西部をみたとき,現地はOTの集積地であることから,DXを事業として成長したいコンサルティングハウスやITベンダが積極的な投資を行い,IRA法などの国家戦略やCESMIIなど政府系団体がその動きを加速しようとしていることから,中西部はDXに関するイノベーション・エコシステム形成の初期段階にあることを考察する。更に実際にその現場を観察し,イノベーション・エコシステム形成には,ステークホルダそれぞれのオープン/クローズ戦略に関わるインセンティブ設計が上手く機能することも要件であることを考察する。

不定期連載 古典から読み解くイノベーション研究の潮流と展開
研究論文
  • 桑原 賢司, 古川 柳蔵
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 39 巻 2 号 p. 152-167
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル フリー

    日本ではかつて,職人だけでなく多くの人々が身近な資源を用いてものづくりを行い,自ら修理しながら長い期間使い続けていた。しかし,現在ものづくりを行う職人は年々減少し,過去から蓄積されてきた技術,知恵,精神は失われつつある。職人は,生業にしていない人々と同様,身近なその地の自然の資源を使用し,技術を身につけ自らものづくりをしていた。技術を習得するにつれ楽しみに変わる。職人は多様な考え方を保有していることが想像できる。職人はどのような考えに基づいてものづくりをしているのか,その考え方と外部環境との関係は構造的にどのようになっているのだろうか。本研究では,陶芸品職人を事例として職人のものづくりの概念構造をオントロジー工学の手法の一つである行為分解木手法を用いて抽出し,共通の概念構造のモデル化を行った。また,インターネットアンケートにより,共通の概念構造を自らものづくりをしているアンケート回答者がどの程度取得認識しているかを分析し,職人のものづくりの考えやそれらの獲得プロセスを明らかにすることを目的とした。その結果,行為分解木手法により,共通の概念構造を19種類抽出し,モデルを明示化することができた。アンケート結果から,ものづくりの種類や経験年数の違いにより必要とするまたは使用して認識する概念は異なることや,ものづくりの上位の概念やそれを達成するための下位の概念を取得認識する順序も示唆された。

研究ノート
  • 木村 晴行, 丸山 順子, 溝口 京子, 平塚 篤
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 39 巻 2 号 p. 168-199
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では,「京/富岳」を中核とする革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)利用研究成果への産業界からの関心動向に関する分析を行った。これまで産業界によるHPCI利用報告書のダウンロード(DL)分析では産業利用課題を対象にしてDL企業の業種を東京証券取引所の分類に従って分類し,且つDL数を基盤(ベース)としていた。本研究では産業利用課題以外の学術研究課題の利用研究成果を含めるとともに,以下の新しい視点・手法を導入した;(1)DL企業数ベースでも分析しDL数ベースの結果との比較を行った。(2)産業利用課題およびそれ以外の課題の利用報告書の,実施年度,課題の種類が異なっても比較可能な注目度評価指標を導入した。これらによって,HPCI利用研究成果は産業利用,学術利用を問わず,産業界から,それぞれの業種の実情に応じて幅広く注目され普及している状況を定量的に明らかにすることが出来た。

  • 安藤 良祐, 永田 晃也
    原稿種別: 研究ノート
    2024 年 39 巻 2 号 p. 200-215
    発行日: 2024/09/30
    公開日: 2024/10/07
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,個人の時間選好が組織的意思決定のプロセスに及ぼす影響を明らかにすることである。人間は限定合理性を回避するため,組織で意思決定を行うが,組織でも不合理な意思決定は繰り返されている。近年,行動経済学では個人のアノマリを説明する理論が提唱され発展しているが,そのひとつである双曲割引は近い将来から遠い将来にかけて低減する傾向を持つ主観的時間割引率から,長期的な効用を犠牲に短期的な効用を選好する一貫性のない人間の行動を説明する。本稿ではあいまいな状況下での集団の意思決定モデルであるゴミ箱モデルを拡張したDouble Garbage Can Modelを構築し,双曲割引を持つ個人の存在が組織的な意思決定に及ぼす影響をシミュレートした。その結果,双曲割引から目先の利益を優先する組織的意思決定をもたらしうる負の影響が示唆される一方,最も回避すべき何も決められない状況を回避できるなど正の影響も示唆された。

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