超音波検査技術
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40 巻, 1 号
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学術書―原著
  • 古藤 文香, 森田 勇, 宇野 博之, 國吉 玲奈, 伊東 ひろみ, 田中 瞳, 古藤 俊幸, 平野 玄竜, 壁村 哲平
    原稿種別: 学術賞-原著
    2015 年 40 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/03/24
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)は,主として粘膜を侵し,しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である.治療や経過観察には病期の判定,罹患範囲の把握,重症度評価などが重要となる.UCの画像診断には,下部消化管内視鏡検査(CS)や注腸X線検査が用いられるが,いずれも侵襲的で,CSは活動期に前処置なしで評価する場合も多い.今回我々は,UCの経過観察の際に,体外式超音波検査(US)の大腸描出能と罹患範囲描出能,および重症度評価をCSと比較した.対象は,2003年8月から2012年7月までにUSとCSを同時期に施行した41症例85検査.大腸描出能は,CSは挿入範囲,USは系統的走査で描出可能範囲とした.重症度は,CSは厚生労働省「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班の重症度で分類,USは壁厚と層構造から,正常(U1),肥厚が粘膜層に留まるものを軽度(U2),粘膜下層まで肥厚し低エコー化が無いものを中等度1(U3),U3の粘膜下層に低エコー化があるものを中等度2(U4),全層が肥厚し,第3層の低エコー化が強く壁全体が不明瞭化するものを強度(U5)に分類した.USの90%が全大腸を描出しCSの挿入より深部の活動病変も評価可能であった.USとCSの重症度評価は強い相関があり,活動が強いほど罹患範囲が一致する傾向にあった.USは非侵襲的に罹患範囲の描出や重症度評価が可能であり,UCの画像診断として有用であると考えられた.
  • 川端 聡, 田上 展子, 尾羽根 範員, 米澤 麻子, 仙崎 菜々恵, 森 亘平, 植野 珠奈, 山片 重人, 黒川 三佳, 山田 晃
    原稿種別: 学術賞-原著
    2015 年 40 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/03/24
    ジャーナル フリー
    我々は肝癌の高危険群においてその早期発見を目的としたサーベイランスの管理システムを構築したので,その成績を報告する.対象は,主に肝炎ウイルス陽性の慢性肝炎および肝硬変患者.腹部超音波検査(以下US)施行日を追跡し,前回検査から6か月以上US,腹部CT,腹部MRIのいずれの画像検査も施行されていない患者について,主治医にUSを促す連絡を行っている.
    2006年1月から2012年12月の間に,対象患者1,805人に合計9,898件のUSが施行された.このうち1,445件(14.6%)でUS後6か月以上腹部画像検査が施行されておらず,主治医に連絡を行った.
    この7年間で対象患者に発見された初発肝癌は104例であった.これらを,直近のUSが肝癌発見の前7か月未満に施行されていた65例(f/u群)と,直近のUSが肝癌発見の7か月以上前であった39例(非f/u群)に分けた.
    平均腫瘍径は,f/u群16.55±5.81 mm,非f/u群32.95±22.68 mmで,f/u群の方が有意に小さかった(p<0.05).肝癌発見から5年以上経過した45例(f/u群30件,非f/u群15件)において,5年生存率は,f/u群は69.3%で,非f/u群の31.6%群に比べ有意に良好であった(p<0.05).
    我々の管理システムは肝癌の早期発見と5年生存率の向上に有用であると考えられた.
  • 佐藤 恵美, 西田 睦, 工藤 悠輔, 表原 里実, 堀江 達則, 加藤 扶美, 細田 充主, 畑中 佳奈子, 荒井 博史, 山下 啓子
    原稿種別: 学術賞-原著
    2015 年 40 巻 1 号 p. 31-43
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/03/24
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺疾患の良悪性鑑別診断に有用な造影超音波(CE-US)所見について検討し明らかにすること.
    対象・方法:対象は2012年9月~2013年6月までに当院で乳腺CE-USを施行し,病理組織学的に確定診断の得られた乳腺疾患75例81病変(全例女性,平均年齢56歳).組織学的診断は,悪性66病変,良性15病変.装置はAplio 500(東芝メディカルシステムズ株式会社),造影剤はSonazoidを0.015 mL/kg体重を投与し,投与後1分間撮像した.CE-US所見は,周辺乳腺組織と比較した造影効果(強い/同等/弱い),B-modeと比較した造影範囲(大きい/同等/小さい)について評価した.raw-dataにて時間輝度曲線を作成し,病変部のTime to peak (TTP, s), Ascending slope (AS, 10-E5 AU/s), Peak intensity (PI, 10-E5 AU), Mean transit time (MTT, s), Area under the curve (AUC, 10-E5 AU), Area under the wash in (AUWI, 10-E5 AU), Area under the wash out (AUWO, 10-E5 AU)を評価した.統計学的検討は,χ2適合度検定とMann-WhitneyのU検定,Tukey-Kramerの検定で行った.
    結果:周辺乳腺組織と比較した造影効果は76病変で行い,悪性病変では強い60病変,同等3病変,弱い0病変,良性病変では強い3病変,同等6病変,弱い4病変であり,良悪性間で有意差を認めた(p<0.001). B-modeと比較した造影範囲は79病変で行い,悪性病変では大きい52病変,同等13病変,良性病変では同等13病変,小さい1病変であり,良悪性間で有意差を認めた(p<0.001). AS, PI, AUC, AUWI, AUWOは,良悪性間で有意差を認め,悪性で有意に高値を示した.TTP, MTTは良悪性間で有意差はみられなかった.
学術書―研究
  • 市原 真, 北口 一也, 長谷川 聡洋, 島崎 洋, 大村 卓味
    原稿種別: 学術賞-研究
    2015 年 40 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/03/24
    ジャーナル フリー
    細胆管細胞癌CoCCは,超音波所見上,被膜がなくnotchを伴う分葉状の結節として描出される.造影超音波にて動脈相では分枝状血流にて造影が始まり,その後全体が淡く造影されるように観察される傾向があり,病変内を貫通する門脈枝がみられることも多い.超音波検査にて得られる所見がどのような病理像を反映したものであるか対比し検討する研究(超音波画像・病理対比)において,病変の形状や細胞密度,病変内の多彩性,線維化の多寡などは過去にも検討がなされているが,病変内の血管走行については従来の組織学的検索法のみでは詳細な対比が困難であった.今回我々は,連続切片作成と血管走行の仮想再構築を行うことで,造影超音波所見の根拠となり得る血管走行を同定・検討した.
    CoCC成分が主体である1病変において連続切片作成を行い,病変外のグリソン鞘がほとんど破壊を受けないまま病変内に入り込む像,病変内に残存したグリソン鞘内の動脈性血管から分岐する細い動脈枝が腫瘍間質内に侵入していく様子を観察した.以上の病理所見は,CoCCの超音波所見として特徴的である動脈相での分枝状血管構造を説明し得るものと考えられ,CoCCを栄養する血管はグリソン鞘内に存在する既存の動脈に端を発するものであると推察された.CoCCの栄養機序は,肝細胞癌HCCにおけるunpaired arteryのようないわゆる腫瘍血管による栄養とは異なる可能性が示唆され,CoCCの造影所見における動脈相初期での分枝状血流はCoCCに特有の血管走行を観察している所見ではないかと考えられた.
症例報告
  • 田中 和幸, 寺島 茂, 岩本 洋, 黒石 正子, 山内 格
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 40 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 2015/02/01
    公開日: 2015/03/24
    ジャーナル フリー
    今回我々は,妊娠中期での胎児超音波スクリーニング検査にてまれな先天性奇形の一つとされる単眼症を強く疑う1例を経験したので報告する.症例は22歳女性(妊娠17週5日),妊娠歴は1経妊1経産.超音波検査で体幹は週数相応で異常を認めないが,頭部は小さく,大脳の位置する前頭部頭蓋内部構造は非対称性でやや偏位しmid line echoおよび透明中隔の描出は困難であった.また顔面には二つの眼球が接して存在し,前額部に長鼻構造を認め単眼症が強く疑われた.流産児は,顔面中央一眼裂内に二つの眼球が接した接眼と前額部に長鼻構造を認め,耳介は両側頭部下部に認めた.胎児染色体検査では異常は認められなかった.
    本症例は顔面所見より単眼症が強く疑われ,小頭症,頭蓋内構造異常も認められた.単眼症の多くは自然流産すると考えられ出生はまれとされる.また出生できても予後は非常に不良とされる.成因については染色体異常も報告されているが詳細は不明とされる.本症例でも明らかな成因はなく,偶発的に発生したものと思われる.
    生存の可能性がない単眼症を妊娠早期に診断できれば,早期に母体の負担を軽減することも可能となることから,これを十分に考慮した胎児超音波スクリーニング検査が重要と考える.
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