超音波検査技術
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40 巻, 6 号
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学術賞-原著
  • 佐藤 恵美, 西田 睦, 工藤 悠輔, 井上 真美子, 表原 里実, 堀江 達則, 岩井 孝仁, 加藤 扶美, 細田 充主, 畑中 佳奈子, ...
    原稿種別: 学術賞-原著
    2015 年 40 巻 6 号 p. 637-648
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2016/02/11
    ジャーナル フリー
    目的:造影超音波検査(CEUS)による乳癌術前化学療法(NAC)の治療効果判定に関する有用性について明らかにすること.
    対象・方法:2012年9月~2013年6月までに,NAC後に乳腺CEUSを施行し,外科的切除を行った乳癌33例35結節(全例女性,平均年齢49.5±12.1歳)を対象とした.造影剤はSonazoid®を0.015 mL/kg体重を投与し,投与後1分間撮像した.腫瘍内で最も強く造影効果を認める部位に3 mm径の円形関心領域(ROI)を設定し時間輝度曲線(TIC)を作成し,治療後のTime to peak(TTP, s),Mean transit time(MTT, s)を算出した.病理組織学的治療効果判定(組織判定)は乳癌取扱い規約第17版に則りGrade 0~3に分類し,Grade 3を完全奏効群,Grade 2以下を非完全奏効群に群別し,CEUSの各項目との比較検討を行った.また,RECISTガイドラインに準じてUS, 造影MRIで腫瘍最大径を計測し治療効果を組織判定と比較した.統計学的検討はMann–WhitneyのU検定,Spearman順位相関係数にて行い,有意水準は5%未満とした.
    結果:組織判定は,完全奏効群6結節,非完全奏効群29結節であった.CEUSによる治療後評価でTTP(平均値±SD,範囲)は完全奏効群11.7±4.7 s, 4.7~19.7 s, 非完全奏効群6.0±3.0 s, 2.9~14.1 sで有意差を認めた(p=0.006).MTT(平均値±SD,範囲)においても完全奏効群75.7±72.0 s, 17.2~158.8 s, 非完全奏効群15.6±12.5 s, 4.3~57.7 sで有意差を認めた(p=0.007).組織判定とTTP(ρ=0.613, p<0.01),MTT(ρ=0.698, p<0.01)間には中等度の有意な相関が認められた.
    USによるRECIST評価はPD 1結節,SD 7結節,PR 27結節,CR 0結節.造影MRIによるRECIST評価は,PD 1結節,SD 8結節,PR 22結節,CR4結節であった.RECIST評価とTTP, MTTとの間には有意な相関関係は認められなかった.
    結語:CEUSは,乳癌NAC後治療効果判定に有用である可能性が示唆された.
学術賞-研究
  • 岩崎 美穂香, 戸出 浩之, 岡庭 裕貴, 吉住 聖子, 荒関 朋美, 小林 康之, 山下 英治
    原稿種別: 学術賞-研究
    2015 年 40 巻 6 号 p. 649-657
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/02/11
    ジャーナル フリー
    目的:パルスドプラ法(Echo法)の肺体血流量比(Qp/Qs)の計測精度を明らかにすること.
    対象と方法:Echo法とFick法を施行した心房中隔欠損症31例(53±18歳,M=11例)を対象に,両法のQp/Qsを比較した.また,両法の誤差20%を境として,一致群,Echo法の過小評価群,過大評価群に区分し,各群の左室および右室流出路径(LVOTd, RVOTd),およびこれらの体表面積補正値,左室および右室流出路血流時間速度積分値(LVOT TVI, RVOT TVI)を比較した.さらに,右室流出路長軸断面右室流出路拡大像における,RVOTdと超音波ビームのなす角度(RVOTd計測角度)についても追加検討した.
    結果と考察:両法の相関は良好であった(r=0.70, p<0.01).一致群と比較して,過小評価群はRVOTd indexが有意に小であり(p<0.05),過大評価群はRVOTdが有意に大(p<0.01),RVOTd indexが有意に大であった(p<0.05).RVOTd計測角度は一致群と比較して,過小評価群,過大評価群ともに有意に大であった(ともにp<0.01).これらより,Echo法ではRVOT壁が超音波ビームに対して平行に描出されることで,特に側壁の描出が不鮮明となることや種々のアーチファクトにより,RVOTdに計測誤差が生じると考えられた.
    結語:Echo法では,RVOTd計測時に超音波ビームがRVOT壁に可及的に直交するように描出することで計測精度が向上する可能性が考えられた.
研究
  • 藤崎 純, 金子 南紀子, 田中 崇, 平栗 有沙, 野呂 聖絵, 大木 晋輔, 鈴木 真事, 中村 正人, 前谷 容
    原稿種別: 研究
    2015 年 40 巻 6 号 p. 658-663
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2016/02/11
    ジャーナル フリー
    目的:下肢動脈エコー検査時,総大腿動脈のドプラ波形から収縮期最高流速(PSV),収縮期加速時間(AcT)の計測を行い,腸骨領域病変の推定に有用かを検討した.
    対象:2013年1月~10月までに下肢動脈エコーを施行した654例のうち,腸骨領域を観察している508例を対象とした.
    検討項目:1)腸骨動脈領域に病変を認めた病変群と病変を認めなかった対照群の2群に分類し,総大腿動脈でのPSVおよびAcTにおける2群間の有意差を検討した.2)両腸骨動脈病変は除外し,病変を片側にのみ認めた病変群と両側に病変を認めなかった対照群の2群に分類して,PSVの左右差を2群間における有意差を検討した.3)PSV左右差の最適カットオフ値の算出(ROC曲線).4)浅大腿動脈病変の有無における総大腿動脈でのAcTへの影響を検討した.
    結果:1)PSVは,病変群は対照群に比較して有意に低値であった(p<0.01).AcTは,病変群は対照群に比較して有意に延長した(p<0.005).2)PSVの左右差は,病変群は対照群に比較して有意に差が大きかった(p<0.005).3)PSV左右差の最適カットオフ値は,30 cm/sとした場合,感度64%,特異度77%で腸骨動脈領域の病変推測を鑑別することができた.4)総大腿動脈でのAcTは浅大腿動脈病変の有無で影響を受けることが明らかとなった.浅大腿動脈に病変があると,総大腿動脈でのAcTは有意に短縮した(p<0.005).
    まとめ:総大腿動脈のAcTや左右のPSVを比較することで腸骨動脈領域病変を推定するうえで有用であることが示唆された.
症例報告
  • 一宮 謙太, 内田 享, 石田 克成, 山崎 清二, 山崎 理恵, 都甲 真弓, 田中屋 真智子
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 40 巻 6 号 p. 664-669
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2016/02/11
    ジャーナル フリー
    症例は70代女性.他院にて心室中隔欠損症を経過観察中であったが,労作時呼吸苦と動悸の増悪が認められたため,精査目的で当院受診となった.心エコー図検査では左室から右室への短絡血流がみられ,右室流出路は全周性隆起病変により高度狭窄を呈しており,一部に高エコー輝度で可動性のある小塊状構造物を認めた.また短絡血流の高速ジェット血流はこの小塊状構造物に当たるように吹いていた.右室流出路狭窄を合併したKirklinII型心室中隔欠損症と診断,右室流出路狭窄の解除を目的に右室流出路拡張術,心室中隔欠損孔直接閉鎖術,および三尖弁形成術を施行した.右室流出路の切除組織の病理学的診断では,肥厚した心筋組織の一部分に小乳頭状病変がみられ,乳頭状線維弾性腫と診断された.これは心エコー図検査でみられた高エコー輝度の小塊状構造物と一致すると考えられた.乳頭状線維弾性腫は有茎性で左心系の弁表面に好発する.本症例では非有茎性で,発生部位も報告例がわずかしかない右室流出路であった.短絡血流が吹き当たる部位に一致して腫瘍が発生していたことも含め,乳頭状線維弾性腫の発生機序を考える上で示唆に富む症例であると考えられたため報告する.
  • 岩下 和広, 御子柴 恵, 宮下 昌徳, 小松 昭彦, 熊谷 金彦, 渡邊 智文, 岡庭 信司, 尹 漢勝
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 40 巻 6 号 p. 670-676
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2016/02/11
    ジャーナル フリー
    腸管子宮内膜症は近年子宮内膜症の増加に伴い報告例も増加傾向にあるが,超音波検査を施行した腸管子宮内膜症の報告例は少ない.今回超音波検査にて描出し得た小腸の腸管子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は44歳女性,心窩部痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.腹部CTでは小腸は拡張しており,左下腹部の小腸に腫瘤状の壁肥厚を認め腸閉塞の原因と考えた.超音波検査でも左下腹部の小腸に内腔側へ凸となる最大径25×15 mmの腫瘤を認めた.腫瘤は粘膜下層に比べて低エコーで内部に高エコーが混在し不均一であり,第4層の固有筋層を主座とする粘膜下腫瘍を考えた.ドプラでは血流信号を認めなかった.以上より粘膜下腫瘍による腸閉塞と診断し,小腸の部分切除術を施行した.切除標本の割面像では筋層から漿膜下組織にかけて淡褐色の病変を散在性に認め,病理組織学的所見で肥厚した固有筋層内に多数の子宮内膜様腺管構造と周囲に子宮内膜間質を認めることから腸管子宮内膜症と診断した.腸管子宮内膜症の主座は固有筋層と漿膜下組織であり,それを反映し超音波検査では固有筋層を主座とする粘膜下腫瘍様病変として描出されたと考えられた.
  • 大久保 洋平, 倉重 康彦, 高尾 壽美恵, 安長 梨恵, 吉戒 勝, 古賀 伸彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 40 巻 6 号 p. 677-687
    発行日: 2015/12/10
    公開日: 2016/02/11
    ジャーナル フリー
    はじめに:まれな成人大動脈一尖弁を2例経験したので報告する.
    症例報告:症例1. 44歳,男性(現病歴)検診で心電図異常,心雑音を指摘され当院受診.(TTE)LVDd/Ds 63/47 mm, IVS/PW 8/9 mm, EF: 50%,大動脈弁は収縮期に大動脈側へドーム形成し,拡張期に左室側に落ち込んで観察された.交連部は無冠尖-左冠尖相当部に認めるのみであった.ARIV度.(TEE)無冠尖-左冠尖相当部にのみ交連部を認め一尖弁を疑った.(手術所見)unicomissural typeの一尖弁であった. 症例2. 35歳,男性(現病歴)2010年12月胸部違和感のため来院.(TTE)LVDd/Ds 58/35 mm, IVS/PW12/12 mm, EF 72%,ARIV度,mild AS. 大動脈弁は収縮期に無冠尖相当部にドーム形成あり.交連部は無冠尖-左冠尖相当部に認めたが,石灰化により描出不明瞭であった.(TEE)交連部は無冠尖-左冠尖相当部のみで一尖弁を疑った.(手術所見)unicommissural typeの一尖弁であった.
    考察:本2症例ともunicommissural typeであった.TTEのみでは術前診断は困難なことが多く,TEEが交連部の観察に有用であった.
    結語:大動脈一尖弁は超音波診断装置の進歩に伴い,AVR術前に診断されるケースも増えつつある.日頃から本症を念頭に置き検査することが大切である.
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