超音波検査技術
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43 巻, 1 号
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学術賞―研究
  • 前田 奈緒子, 佐久間 浩, 小山 広人, 伊原 文恵, 横野 秀樹, 望月 美香, 吉本 賢隆
    2018 年 43 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー

    目的:近年ではサブタイプ分類に基づいた乳癌の個別化治療がすすめられている.そこで超音波(US)画像からサブタイプ毎の特徴的所見を明らかにするため検討した.

    対象と方法:2012年2月~2016年6月に浸潤性乳癌と診断しサブタイプ分類をした193例中,トリプルネガティブ乳癌(TN)29例,HER2過剰発現乳癌(HER)25例,HER2陰性のluminal like乳癌(LUM)139例を検討の対象とし,US画像を以下の6項目において検討した.①発育形態:乳管型,圧排型,浸潤型の3型に分類,②内部エコー:高・等・低・無エコーの4段階に評価,③後方エコー:増強・不変・減弱・消失の4段階に評価,④境界部高エコー像(halo)の有無,⑤点状高エコーの有無,⑥囊胞様構造の有無.

    結果と考察:①発育形態:TNは圧排型が有意に多く(p<0.01),LUMは浸潤型が有意に多かった(p<0.01).TN, HER, LUMの順に浸潤型が増え,逆に圧排型が減った.乳管型はHERで多い傾向にあったが,有意差は認めなかった(p=0.082).②内部エコー:いずれのサブタイプでも低エコーが多い傾向にあった.③後方エコー:TNは増強が有意に多く(p<0.01),LUMは減弱が有意に多かった(p<0.01).HERは不変が多い結果となったが,有意差は認めなかった(p=0.057).④境界部高エコー像(halo):LUMで有意に多い結果となった(p<0.01)⑤点状高エコー:HERで有意に多い結果となった(p<0.05).⑥囊胞様構造:TNで有意に多い結果となった(p<0.01).これらサブタイプ毎の特徴的所見は,発生母細胞の癌発育メカニズムの違いを示唆しているものと考えられる.【結論】US画像で乳癌のサブタイプ毎に異なった特徴的所見が認められた.

  • 奥田 安範, 大杉 増美, 大塚 康弘, 高石 修, 森 いづみ, 名和 由一郎, 前田 智治
    2018 年 43 巻 1 号 p. 22-33
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー

    目的:悪性リンパ腫肝浸潤のBモード所見とドプラ所見における特徴的所見の有無について検討したので報告する.

    対象と方法:当院で2011年1月から2015年12月に腹部超音波検査を施行し,生検もしくは肝切除標本の病理組織診で悪性リンパ腫と確定診断された11例(男性8例,女性3例,年齢中央値83歳)をretrospectiveに検討した.組織型の内訳は,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫8例,粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫1例,メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患1例,Hodgkinリンパ腫1例であった.

    結果と考察:腫瘤径30 mm(≧30 mm:6例,<30 mm:5例)を境に,Bモード所見およびドプラ所見の違いがみられた.最大径が30 mm以上の腫瘤は,内部エコーが不均一な低エコーで,腫瘤内部に線状高エコーや点状高エコーがみられた.また,カラードプラでは,腫瘤内部に正常血管の貫通像がみられた.一方,最大径が30 mm未満の腫瘤は,内部エコーが均一な低エコーで,腫瘤内部に脈管貫通像がみられなかった.悪性リンパ腫の組織型の違いによる超音波所見の違いはみられなかった.

    結論:悪性リンパ腫肝浸潤の超音波所見は,腫瘤径30 mmを境に異なる可能性がある.Bモードで腫瘤径を加味して内部エコーを評価し,さらにカラードプラで脈管貫通像の有無を評価することで,悪性リンパ腫肝浸潤の超音波鑑別診断能が向上する可能性が示唆された.

  • 菊地 実, 大谷 亮, 齋藤 裕志
    2018 年 43 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー

    目的:超音波検査によるAVF(自己血管内シャント)吻合部以遠の血流観察の臨床的意義を検討した.

    対象および方法:2014年5月~12月の間に定期的にバスキュラーアクセス超音波を行った38名(右前腕内シャント:3名 左前腕内シャント:35名)を対象に吻合部遠位部の血流方向と血流量を計測した.血流方向はカラードプラ法にて判定し,血流量はパルスドプラ法にて時間平均血流速度を用いて計測した.血流方向が遠位より吻合部方向はType 1, 吻合部より遠位方向はType 2とし,二つのTypeの上腕動脈,橈骨および尺骨動脈の血流量を定量的に比較した.さらに尺骨動脈/橈骨動脈の血流量比(U/R ratio)を計測しType間で比較した.シャント血管に狭窄(血管内径2 mm未満)や上腕動脈血流量が500 mL/min以下の症例は除外した.

    結果:血流方向は,Type 1: 65.8%(25例),Type 2: 34.2%(13例),血流量はType 1: 126.1±114.9 mL/min, Type 2: 80.4±57.6 mL/minだった.上腕動脈,橈骨および尺骨動脈の血流量はType間に有意差はなかったが,U/R ratioは,Type 2(0.29±0.25)はType 1(0.44±0.22)に比べ有意に低かった(p=0.02).

    考察:AVF吻合部以遠の血流方向は順方向と逆方向の二つのTypeを認めた.血流方向の決定因子は,尺骨動脈,橈骨動脈の血流量比と関連を示した.吻合部以遠が順方向血流の場合には,上腕動脈血流量とシャント血流量が近似値とならない可能性があるため,橈骨動脈血流量または尺骨動脈血流量を差分した上腕動脈血流量で評価することが適当と考えられた.

    結論:バスキュラーアクセス超音波におけるAVF吻合部遠位血行動態の調査における臨床的意義については明確に示すものは認められなかった.しかし,我々は今回の検討で吻合部遠位の血流方向は尺骨動脈と橈骨動脈の血流量比が関与していることを示し,吻合部遠位が順方向血流の場合は上腕動脈血流量から推定するシャント血流量は補正が必要であることを提案した.

症例報告
  • 尾形 裕里, 古川 優貴, 寺園 結貴, 大原 未希子, 山本 多美, 前田 るりこ, 松元 香緒里, 富田 文子, 堀端 洋子, 西上 和 ...
    2018 年 43 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー

    今回我々はネフローゼ症候群の診断を契機に発見された門脈内血栓および左腎静脈内血栓の1例を経験したので文献的考察を含めて報告する.

    症例は60代女性.下肢浮腫と腹部膨満感を自覚し近医を受診したところ,高度蛋白尿を認めたため当院受診となった.血液生化学検査で低アルブミン血症,肝胆道系酵素の上昇,凝固検査でフィブリノーゲン,FDP,D-dimerの上昇を認めた.下肢浮腫の原因精査で施行した血管エコーで門脈内と左腎静脈内に血栓を認めた.CT検査でも同様の所見であった.ヘパリンとプレドニンを投与開始して経過観察を行った.

    第10病日に施行した血管エコーで血栓は縮小していた.門脈内血栓は背側に辺縁高エコー部分を認めたが,内部性状は変化なく均一であった.また,中枢端はわずかに揺れていた.

    左腎静脈内血栓は溶解が疑われる低エコー領域を認めた.第20病日の検査で門脈内血栓は上腸間膜静脈の一部に付着していただけで浮遊血栓となっていた.左腎静脈内血栓は腎静脈起始部から左卵巣静脈合流部を超えて索状に認めた.第27病日の検査で門脈内浮遊血栓に変化はみられなかった.左腎静脈内血栓は紐状に観察された.ネフローゼ症候群で腎静脈内血栓症の報告は多いものの,門脈内血栓などを伴った多発血栓の報告例はない.同疾患における血栓形成のメカニズムは複雑であり,検査を行う際には多発血栓の存在も念頭に置かなければならない.ネフローゼ症候群で浮腫の原因精査を行う際には,腹部血管の観察も行うなど広い範囲での検索が必要であることを経験した教訓的症例であった.

  • 上田 彩未, 宮元 祥平, 青地 千亜紀, 清遠 由美, 谷内 亮水
    2018 年 43 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー

    患者は60歳代の男性.左足のしびれ,冷感を主訴に他院を受診.左外腸骨動脈から下腿動脈に狭窄,閉塞が認められ,閉塞性動脈硬化症の疑いで当院紹介となった.術前の心エコー検査にて右房圧推定の目的で下大静脈を描出した際,開口部に14×15 mm大の高エコー腫瘤を認めた.コンベックスプローブでも下大静脈の観察を行い,短軸,長軸の2方向で腫瘤を描出し,下大静脈内の血栓,または腫瘍塞栓が疑われると判断した.しかし,同日に撮像したCTでは下大静脈内の腫瘤と血管外の脂肪組織との連続性が認められ,エコーで描出された高エコー腫瘤は下大静脈内に存在するのではなく,血管外の脂肪組織であり,これが下大静脈を圧迫し,変形させていると判断された.肝静脈が下大静脈に流入するレベルにおいて下大静脈周囲に脂肪組織を認めることがあり,juxtacaval fatと呼ばれている.本症例でみられた脂肪組織はこのjuxtacaval fatであったと考えられた.今回我々は,血管外の脂肪組織が下大静脈を圧迫し,変形させ,あたかも下大静脈内に存在しているようにみえた比較的まれな1例を経験した.

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