超音波検査技術
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44 巻, 1 号
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学術賞–原著
  • 山下 都, 眞部 紀明, 大地 達也, 岩井 美喜, 西野 謙, 川中 美和
    2019 年 44 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis: NASH)の予後因子として肝線維化進展が重要であり,肝線維化評価を非侵襲的に行う必要がある.そこで非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcholic fatty liver disease: NAFLD)患者に対し超音波を用いたShear Wave Elastography(SWE)による肝剪断速度測定を行い,肝生検による線維化stage診断と比較しその有用性について検討した.

    対象と方法:2016年4月から2017年3月の間にSWEを施行し,肝生検による組織評価が同時に可能であったNAFLD患者93名を対象として,両検査結果を比較検討した.また,皮下脂肪とBMIの影響を検討した.超音波診断装置はキヤノンメディカルシステムズ社製Aplio500™ Ver.6, 3.75 MHzコンベックスプローブを用いた.

    結果と考察:皮下脂肪やBMIの影響で測定不良であったものは29.3%であった.剪断速度は軽度の線維化では上昇がみられなかったが,線維化stage3以上で有意に上昇し,カットオフ値は1.52 m/s(7.1 kPa)であった.また,炎症grade間にも有意差を認めたが脂肪化steatosisとの関係はみられなかった.SWE測定には皮下脂肪・BMIの影響がある症例を認めたが,肝内脂肪の影響は少ないと思われた.

    結語:SWEはNAFLDの肝線維化診断に有用であると考えられた.

原著
  • 岡田 顕也, 黒沢 幸嗣, 丹羽 加奈子, 生駒 卓宏, 高田 智子, 小保方 優, 根岸 一明, 町田 哲男, 倉林 正彦, 村上 正巳
    2019 年 44 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:経胸壁心エコー図検査(Transthoracic echocardiography: TTE)では胸部を露出する必要があるため,女性患者では羞恥心の問題から男性検者による検査に対し抵抗を感じる可能性がある.その為,当院では2013年10月より女性患者に対して「検者性別の希望」に関するアンケートを検査前に行い,その希望に沿って検査を行う取り組みを実施している.今回,女性患者の検者性別希望に対する年齢の影響と,希望に沿った場合に待ち時間が延長するかを検討した.

    対象と方法:TTEのために来院した女性患者に対して,検査前に1)女性検者希望,2)男性検者・女性検者どちらでもよい,というアンケートを行い,その希望に沿って検者を割り振った.年代毎に結果を解析した.また検査後の感想を,アンケート形式で調査した.

    結果と考察:2013年10月から2015年9月の間に生理検査室でTTEを施行した外来女性患者連続1,274人のうち,初回アンケ-トの1,088人を対象とした.平均年齢は60.3±17.5歳であった.女性検者を希望した人は455人(41.9%),どちらでもよいとした人は631人(58.1%)であった.女性検者を希望する女性患者は年齢とともに減少傾向ではあったが,10~20代の若年女性でも39%(27/70)は検者の性別希望はなく,80~90代の女性でも検者に女性を希望する人は22%(26/120)認めた.希望に沿って検者の割り振りを行ったが,検査待ち時間に各群間で差はなかった.各施設でのマンパワーの問題・検者の技量の違いなどの問題点もあるが,TTEにおいては患者希望に沿った検者の性別も考慮することも必要と考えられた.

    結論:検者の性別希望は年齢と関連していたが,個人差もみられた.女性患者に対し患者の希望に沿いながら検査を行うことは待ち時間の延長につながらなかった.

学術賞–研究
  • 松原 進, 杉山 悟
    2019 年 44 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:膝関節屈曲困難例に対する膝関節部外側アプローチ走査法の有用性について検討すること.

    外側アプローチ走査法:膝伸展位においてプローブを膝関節部外側の大腿二頭筋腱の背側から約15°仰ぎ見るようにアプローチする.

    対象と方法:対象は背側アプローチ走査法(膝関節は軽度屈曲,股関節は軽度外旋位にてプローブを膝窩部からアプローチする)の圧迫法にて血栓を認めた連続15例(65.7±10.5歳,男性10例:女性5例,右肢5例:左肢10例,早期血栓4例:晩期血栓11例).背側および外側アプローチ走査法による長軸断面像にて膝窩静脈の1)描出深度,2) Bモード像における血栓の視認性,3)カラードプラ法による血栓の存在評価と性状評価について比較検討した

    結果:1)背側アプローチ走査法:23.1±4.7 mm,外側アプローチ走査法:30.1±9.0 mm.2)“視認不可”はそれぞれ4例(26.7%),10例(66.7%).3)早期血栓4例,晩期血栓11例中ではいずれも血栓の存在評価が可能であり,性状評価も一致した.

    結論:外側アプローチ走査法は背側アプローチ走査法に比し膝窩静脈の描出深度は深く,視認性も劣っている傾向であったが血栓の存在と性状評価は同等であった.外側アプローチ走査法は長軸断面カラードプラ法による評価ではあるもののきわめてシンプルな走査法であり膝屈曲困難例に有用と考えられた.

  • 菊地 実, 萩原 誠也, 種田 紳二, 中山 秀隆, 市原 真, 萬田 直紀
    2019 年 44 巻 1 号 p. 40-50
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:糖尿病のインスリン療法に皮膚関連合併症があり,この合併症はインスリン吸収障害を起こすことがある.インスリン吸収障害の原因は,皮下投与されたインスリンの何らかの異常と考えられるが,この原因を超音波像によって視覚的に解明できるかを検討した.

    対象および方法:検体(ブタ組織),生体(成人ボライティア1名),インスリン皮膚関連合併症患者6名を対象に,検体ならびに生体で皮下注射が超音波像で可視されるかを実験し,インスリン皮膚関連合併症患者では,対象患者の患部と正常部にインスリンを投与し,両部位の超音波像の観察と血中インスリン濃度測定を行い,各投与部位の超音波像とインスリン吸収の関係を検討した.

    結果と考察:検体実験では投与液体は高エコーに描出され,その範囲は病理組織像と一致した.生体においても投与液体は検体同様に高エコーに描出された.高エコーとなった原因は,脂肪組織間の隙間に液体が滞留したことで超音波が反射,散乱したと示唆され,皮下注射は超音波像で可視できることが判明した.インスリン皮膚関連合併症患者のインスリン投与部位の超音波像は,正常部では実験同様に高エコーに描出されたが,患部では低エコーまたは混合エコーに描出された.患部の皮下投与インスリンの拡散面積は正常部に比べ有意に小さく(p<0.01),拡散部の輝度は正常部に比べ有意に低く(p<0.05),両者の皮下投与インスリンの超音波像は形態相違を認めた.インスリン吸収は患部では正常部に比べ有意に低く(p<0.05),拡散面積と正相関を認めた(p<0.05, r=0.9).したがって,患部の皮下投与インスリンは滞留範囲が制限された拡散障害の状態であることが示唆され,拡散障害とインスリン吸収低下の関連を超音波像で確認できた.

    結語:インスリン皮下注射は超音波像で観察可能であり,インスリン皮膚関連合併症の吸収障害の原因は,皮下投与されたインスリンの拡散障害であることが示唆された.

症例報告
  • 奈良谷 俊, 木下 和久, 谷川 陽彦, 橋詰 浩二, 栗山 一孝
    2019 年 44 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は80代女性.心臓カテーテル検査施行2週間後に右手関節部橈側の腫脹,圧痛を主訴に来院した.仮性動脈瘤の疑いで超音波検査を施行した.聴診で連続性雑音を聴取し,右手関節部橈側に19×4 mm大の血腫が確認され,血腫中央部に右橈骨動脈より伸びる2 mmの突出像を認めたため,仮性動脈瘤形成が疑われた.さらに仮性動脈瘤と尺側の橈骨静脈間にPerivascular color artifactが認められ,パルスドプラでは連続性の拍動性血流が観察された.以上より右橈骨動脈の仮性動脈瘤および動静脈瘻の合併が疑われた.超音波検査の結果を受け治療目的で同日に入院した.入院直後超音波ガイド下にて用手圧迫,止血用押圧器具を用い仮性動脈瘤,動静脈瘻の消失が確認されたが翌日再開通していた.フォローアップの超音波検査では橈側の橈骨静脈にもPerivascular color artifactが出現しその後仮性動脈瘤の増大やシャント音の増強が認められた.非観血的な治療では止血困難と判断され伴走する2本の橈骨静脈は結紮し,仮性瘤は切除された.術後経過は良好で入院後17日で退院となった.本症例は,心臓カテーテル検査において伴走する橈骨静脈間の交通枝を貫き,同部位に橈骨動脈仮性動脈瘤を形成し,さらに橈骨静脈間の交通枝を介する動静脈瘻を合併したまれな症例と思われたので報告する.

  • 鳥居 裕太, 西尾 進, 天野 里江, 湯浅 麻美, 松本 力三, 平田 有紀奈, 山尾 雅美, 高尾 正一郎, 坂東 良美, 佐田 政隆
    2019 年 44 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2019/02/01
    公開日: 2019/02/25
    ジャーナル フリー

    症例は60代,男性.主訴は腹部膨満感.既往歴に甲状腺癌(35歳時)がある.身長167 cm, 体重59 kg, 心拍数80回/分・整,血圧108/56 mmHg, 眼球結膜黄染なし,眼瞼結膜貧血なし.20XX年5月,食後に上腹部から右側腹部にかけての腹部膨満感を自覚し,3か月間で5 kgの体重減少を認めたため,近医を受診した.単純CT検査で,右上腹部から下腹部にかけて巨大な軟部腫瘤を認め,右腎の構造は不明瞭で腫瘤に巻き込まれていると考えられた.悪性リンパ腫の疑いで当院血液内科に紹介となり,腹腔内腫瘤の精査目的で腹部超音波検査が依頼された.腹部超音波検査では,右腎は腫大しており,右腎を取り囲むように巨大な腫瘤像を認めた.腫瘤の内部エコーは等輝度でやや不均一,血流シグナルは乏しかった.右腎の動脈は腎動脈起始部から腎実質内まで保たれており,血管径の狭小化や径不同も認めなかったが,腎実質内の末梢血管抵抗値は著明に上昇していた.また,皮質エコー輝度の上昇と軽度の腎盂拡張を認めた.MRI検査では,右下腹部の巨大腫瘤内に右腎や右腎動脈が確認でき,腫瘤内に拡張した腎盂構造を認めた.腫瘤内部の性状から悪性リンパ腫が疑われた.その後,開腹腫瘍生検が施行され,病理組織学的検査では小型~大型の大小不同を示す裸核様を呈する異型細胞が密に増殖しており,悪性リンパ腫と診断され,フローサイトメトリー検査で,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された.腫瘍が巨大であり腫瘍崩壊症候群が危惧されたため,プレドニゾロン投与後に化学療法が施行された.経過観察で施行した超音波検査で,腫瘍は右腎周囲にわずかに残存する程度まで縮小し,末梢血管抵抗値も改善を認めた.腎原発悪性リンパ腫の診断および治療効果判定に超音波検査が有用であった.

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